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星の想い  作者: 景虎
新たな魔法神
33/51

四大精霊

四大精霊とは火、水、風、土の四大元素を司る精霊である。

すなわち

火=サラマンダー、

水=ウンディーネ、

風=シルフ、

土=ノーム

である。

元素とは古代から中世において万物の根源を成す究極の要素であった。


火、水、風、土は生命が生きていくのに欠かせない大切なものである事に異論はないだろう。

が、しかし、同時に生命を奪う圧倒的な力ー災害ーも持っている事もまた事実である。


この世界に生まれた知的生命体は、この大切だが制御しきれない自然を畏れ敬った。

これを自然崇拝という。自然崇拝とは特定の自然現象や自然物の背後に超越的な人格的な存在を感じ、それを崇拝することだ。

太陽や月、森や山、湖や海はその存在そのものが崇拝の対象となった。

山火事、洪水、台風、地震などの自然災害はその大いなる存在の怒りによるものと考えられた。

崇拝され信仰される大いなる存在、世界に神が誕生した。


自然現象が神によるものならば、神はそれを生み出す自然そのものだ。

神は自然そのもの、世界そのものである。

自然現象が神の意志であるならば、現象を引き起こすものが存在する必要がある。

その存在が精霊である。精霊はあらゆる物の中に存在し神の意志に応える。

本来精霊は目に見えないが、固有現象を持つ事で擬人化された。

四大精霊は神が生んだ自然現象の四つの現象それぞれを司る擬人化された精霊である。

そのことから四大精霊もまた崇拝される対象となっていった。


現代では元素は原子の数により分けられた特性の違いを表す概念である。この元素を化学元素という。

元素は1番から118番まであり(予測されているものは173番まである)、自然に存在する元素は約90種類ほどだ。これが集まったり組み合わさったりして物質が出来る。

例えば原子番号1番はH(水素)で集まる事で物質としての水素になる。

原子番号8番はO(酸素)で同じように呼吸に必要な酸素となる。

水素と酸素が結合すると水(H2O)になる。

このように全ての物はこの元素とその化合物から出来ている。

元素は最初からこの世界に存在していたが発見されたのはずっとずっと後の話である。


中世まで世界は神の意志で動いており、世界は精霊で満たされていた。

しかし人間はこの世の中の現象を一つずつ解明していき、あらゆる物を自らの力で作り出しその生活圏を広げていった。人々が新しい発見をし生活を向上する度、無くなっていくものがあった。

かつて究極要素としての元素の中に存在していた精霊は、化学元素の発見により急速に居場所をなくし、昔話や神話にのみ存在する架空の存在となっていった。

自然信仰はいつしか文明の中に飲み込まれ、信仰自体は残ったが神は実体化した存在ではなく、見ることのできない概念となってしまっていた。


魔力を持たない人間は、魔法の代わりに科学の力で文明を発展させ、この星最強の支配者となった。

自然の力は相変わらず強大で、どうやっても抑えられるものではなく、一度起こればその被害は決して小さなものではなかった。

しかし幾度も経験し、乗り越え、予測し、備える事で災害は当たり前のことにすらなっていた。

畏れるべき自然を畏れない人間は傲慢だったのかもしれない。

圧倒的存在であるはずの神を失った人間はその行為を戒められることがなくなってしまった。

その結果、人間は自らの行いで自滅していった。


人間から魔法を奪った魔法神ダリルにとってこの結末は予想していたものなのだろうか?

それとも想定外の出来事だったのだろうか?

今となってはもう誰もわからない。


神や精霊は人間が生み出した存在ではない。

人間以前の知的生命、ドワーフやエルフよりもっと前の時代に生まれたものである。

自然と共に生きていた彼らからドワーフやエルフが生まれた。

その時代になると精霊は感じるだけでなく姿を現し、世界の一部になっていた。

その上位の存在である神は畏れられる対象であったものの、精霊を通し世界と繋がっていた。


ドワーフやエルフは魔法を使うことができる種族だ。

そして魔法は精霊の力を借りて発動させるもの。

魔力とは簡単に言えば魔法を継続させるためのエネルギーと考えればいいだろうか。


火の魔法を例にとってみよう。

火属性の者は「火よ。」などの簡単な呪文で火を発生させることができる。

火の精霊が応えてくれるからだ。

魔力を適切に魔法の火(精霊)に与え続ければ火は消えない。

大きな火を出すには力の強い精霊の力を借りるか、少し複雑な呪文を唱えなければならない。

そして火の力(精霊の力)が大きければ与える魔力も大きくなくてはいけない。


魔力量は才能だ。成長と共に使える魔力は大きくなるがそれはもともと持っているもので後から増えるものではない。

しかし魔力量だけで魔法の優劣、魔法使いのレベルが決まるわけではない。

エミリーとカーラを見てみるとわかるだろう。

潜在能力の差は圧倒的なのに二人の魔法レベルは同じくらいだ。

しかもエミリーは魔導具の補助がないと魔法が使えないほど魔力コントロールが苦手なのだ。


大きな魔法は強い精霊の力を借りて発動させることができるが、この大きな魔法を維持するには相応の魔力が必要になる。

自分の魔力だけで魔法を使える者はそうはいない。それこそ神レベルの魔力が必要になるからだ。

そこで普通は大気中から魔素を補い魔法を維持させる。

これは実は魔術である。

この作業に必要な行動が呪文の詠唱だったり、魔法陣を発動させることなのだ。

呪文や魔法陣を使うことで細かい制御や正確さを与えることができる。しかし精度を高めれば高めるほどより正確で細かい情報をインプットする必要があり、長い呪文詠唱や大きく細かな魔法陣の作成が求められた。


これを簡単に行えるのが精霊魔法である。

精霊魔法は精霊が使う魔法だが、契約魔法使いも使うことができる。しかも自身の魔力が少なくても発動が可能だ。不足分は精霊が大気から勝手に補ってくれるからだ。

この便利な魔法の為に多くのものが精霊との契約を望んでいたが、精霊には本来意志などはなく、誰にでも何にでも平等な元素に宿るものでしかないため契約などできるはずもなかった。


しかし精霊の中には特定の現象において崇拝される事で擬人化した精霊の集合体がいる。四大精霊がその筆頭だが、時代が進むにつれて多くの擬人化した精霊が生まれていた。

姿を手にした精霊達は同時に個別の人格を持っていた。多くは好奇心旺盛でフレンドリーだったが、中にはその反対もいた。

これは同じ属性の精霊でも性格が違うことを意味している。

火と言っても赤い火や青い火、更に各色の火があるのを見たことがあるだろう。水に蒸気、液体、氷の三つの状態があるのは経験的に知っているだろう。氷は冷たい物だと思っているかもしれないけれど暖かい氷があるのはご存知だろうか?

このように同じ属性でも違いがあり、同じと思っていても違うものがある。

この世には様々な精霊がいるのだ。精霊と契約が結べるかどうかは相性と運にかかっていると言っても過言ではない。


精霊と契約を結ぶには条件がある。精霊の長に気に入ってもらうことである。

精霊は普段姿を見せないので、精霊のいる場所に行って気に入ってもらう必要がある。

どう気に入ってもらうか?

魔力や魔法で興味を誘う方法。好みの物をお供えするお参り。歌や踊りで一緒に楽しく過ごすお祭り作戦などなど様々な方法で気を引くのだ。

精霊は基本的に好奇心が旺盛なので、精霊の棲家であればすぐに現れてくれる。


そこでまずは現れた精霊と仲良くならないといけない。

ここで現れた精霊との相性が試される。

仲良くなれたなら長を紹介してもらうよう話をする。

仲良くなった精霊が上位精霊ならすぐに長を紹介してもらえるが、下位の精霊ならすぐというわけにはいかない。段階を踏んでいく必要がある。

が、そもそもある程度の魔力がないと上位の精霊が現れない。

この時点で魔力が弱い者は契約が絶望的なのだ。


長のところ連れて行ってもらっても、会えるとは限らない。

結局のところ長の気分次第なのだ。

こればかりは運頼りなのである。


長の許可がないと精霊は契約が出来ない。

この点で言えば、四大精霊のノームは厄介な大精霊と言えるだろう。

ノームは魔力や魔法の大きさには興味がなかった。

ノームの興味は魔法の元になる元素が、結合により新しい変化を起こすことに向いていたからだ。

魔法はイメージで発動するが、ノームは理論を重視していた。

この頃の魔法使いは魔力の量や魔法の力の強さばかりを誇っていたのでノームには興味が向かなかったのだ。


ドワーフはエルフに比べると魔力が少ない種族だった。

そのため魔法も使うが、自分達で物を作り出すことに長けていた。

その一方で魔法を研究し、自然の魔素を上手く使えるように魔導具を生み出していった。

ドワーフはどちらかと言えば職人気質な種族だが、それゆえに一途に一つのことに打ち込み研究と実験を繰り返す姿勢はノームを感動させた。

ノームはドワーフの工房で見つけた才能ある若者と契約し、一緒に様々な魔導具を開発したのだった。


★☆★☆★☆★☆


「ふむ。」

ノームはエミリーを眺めた。

エミリーもノームを見た。

「はじめまして、精霊ノーム。私は魔法神エミリー。今日はお願いがあってここに来たの。」

ノームは不機嫌そうだったがエミリーは無視して話かけた。

「女神の願いとあれば聞かなくてなるまい。じゃが応えるかどうかは話次第じゃ。」

ノームは不機嫌そうに答えた。

「もちろんそれでいいわ。私のお願いはあなたに魔導具の事を教えてもらいたいってことなの!」

「は?なんじゃ、そりゃ?」

てっきり仲間の契約を願ってくると思ったノームはポカンとした顔になった。


「お前様は一体なんで魔導具のことなんて知りたがるんじゃ。その膨大な魔力を使えるようにするためか?今使っているステッキやブレスレットのように!」

「ああ、それは考えてなかったわ。でも流石は四大精霊ノーム、この魔導具のことも私の魔力のこともわかるのね。」

「そのくらい造作もないことじゃ。で、何でなんじゃ?」

「美味しいポーションを作るためよ!」

「はあ?」

ノームは予想の斜め上をいくエミリーの答えにまたもポカンとした顔になった。



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