ポーションの可能性
「エミリーは美味しいポーション用の薬草を探しに来たって言ってましたね。」
カーラとライアンはショックを受けて呆けているので、ウンディーネはエミリーに声をかけた。
「そうなの。だってポーション不味いんだもの。せっかくなら美味しい物が飲みたいなぁって。」
カッコつけてもしょうがないの正直に答えた。
「エミリーは凄い魔力を持っていますから、回復魔法を覚えたらいいんじゃないかな。」
「私、回復魔法使えるの?」
「え?使えないの?そんなに魔力が溢れてるのに!どうゆう事?ちょっと手のひらに魔力を集中させて解放させるイメージで放出させてみてくれる?」
言われた通り、右の手のひらを上にして、魔力放出をイメージした。
「あーっ!ちょっと待って!ストップ、ストップ!手のひらじゃなくて指にして!」
ウンディーネが慌てて指示を出した。
そのまま手を軽く握って人差し指を上に向け、魔力放出をイメージした。
指先から見慣れたつむじ風が現れた。
「そのまま続けて!」
続けているとやっぱり消えてしまった。 ブレスレットのおかげである程度は持続するようだ。
「まだよ!まだ止めないで!」
「え?」
すると指先から大量の虹色の光が溢れ出した。
虹色の光は周りに漂っていたキラキラした精霊達に触れるとあらゆる色に変化して消えていった。
「何これ?きれい!」
エミリーは光の変化を見つめながらつぶやいた。
「エミリーは今は風属性の魔法使いです。でも全ての属性に使える虹の魔力をいっぱい持ってるです。たくさんの魔法を経験すればどんな魔法でも使えるようになるです。」
「さすが魔法神ですね!なんでも使えるなんて!」
リーは興奮してこっちをみている。
「リーさん、まだ使えないんだから凄くないよ。でもシルフ、魔法を経験するってどうするの?」
「魔法は呪文で出来ているから解読するですよ。エミリーなら簡単な魔法は見たら解読できるです。あと自分の身体に経験させてもいいです。」
「そうなんだ。ならよく見てるこれならできるかしら?」
エミリーはステッキを持って呪文を唱えた。
「火の精霊よ、集まり玉となれ!ファイヤーボール!」
ステッキの先に火の玉ができていた。
「そうそう、そんな感じです。簡単な魔法はイメージだけでもいけるです。風の魔法と同じなのです。」
しばらく試してみると、見た事のない属性魔法はできない事がわかった。
今のエミリーが使える魔法は風、火、雷、土と空間魔法だった。
雷魔法はジェシカの神撃が雷属性だったからで、空間魔法はエミリー固有の防御魔法由来のものだ。
残念ながら回復魔法は使えなかったが、サクヤ姫が得意なのだから後で教えてもらえばいいだろう。
さて随分脇道にそれてしまったけれど、本来の目的はポーションのための薬草探しである。
「ちょっと遊びすぎたけど、話を戻しましょう。ウンディーネ、シルフは美味しいポーションの作り方を知ってる?」
「私達精霊は材料の良し悪しはわかるから、魔力効果の高い薬草はわかるけど、食事をしないから美味しくする方法はわからないわ。」
「そうかぁ、いい薬草だけあってもダメなのね。どうすればいいのかなあ?」
「それは人間やエルフの方が得意なのです。人間は料理するです。そのまま食べるだけじゃないですね?煮たり焼いたり味付けしたりするですね?それとおんなじです!」
「シルフ、それはやってるわ。ポーションは薬草のエグ味を取るため水にさらして刻んものを茹でて灰汁抜きをしたものからエキスを抽出するの。これをしないで作るったら効果は高いけど苦味がひどくて飲めたもんじゃないの。しかも味付けしようとするポーションの効力がすごく下がってしまうって味も対して良くならないのよ!」
リーが精霊達に説明した。
「それで味付けしても効果が残るようにまずはいい薬草を探してみようってなったのよ。」
エミリーは薬草探しの目的を話した。
話を聞いていたウンディーネはテーブルにあった空のコップに水を満たすと
「この水はなんだかわかる?」と聞いた。
「ただの水じゃないの?」
「違います、これは魔法で作った魔法の水、飲んでみますか?」
そう言われてエミリーはコップの水を飲んだ。
とても普通だ。別に美味しくも不味くもない普通の水だった。
「どう?普通でしょう。」
「これがなんで魔法の水なの?」
「魔力を持っているから。実は泉の水も同じ魔法の水なの。」
そう言ってウンディーネはまたコップに水を満たした。
シルフがどこから持ってきたのか薬草を2、3枚コップに入れた。
コップの水は一瞬濁ったがすぐに透明になった。
その間にウンディーネはボールに泉の水を汲んできていた。
シルフはコップから薬草を出すと適当に薬草をちぎってボールに入れた。
するとちぎった薬草からびっくりするくらい大量のエキスが滲み出てきて、あっという間にボールの水は緑の液体に変わってしまった。
ウンディーネがその中に小さな白い実を入れると、シュワシュワーっと細かい泡を発生し、ボールの中は淡い緑の液体に変わっていた。
「さあ、飲んでみて。」
それは炭酸のポーションだった。味はない。さっき飲んだ水の味だ。そう、不味くない!
「これは一体?こんな簡単に作ったのに今までより効果の高いポーションだわ!」
リーは興奮していた。
「つまり、魔力を持った魔法薬の製造には魔力のある材料で作ればいいって事なの?」
エミリーは精霊達に尋ねてみた。
「半分正解です。」
「半分?」
「作ったポーションを見るです。」
「あ、薄くなってる!」
「そうなのです。ちゃんとしたポーションを作るには材料だけじゃダメなのですよ。効果を固定させる魔術・・・まあ調理法が必要なのです!」
「ねえ、ウンディーネ。私はその泉に水を汲んできて試したこともあるのよ。でもかわらなかった。なんでかわかる?」
「リーは村まで戻ったでしょう。さっきのポーションと一緒。時間が経つと魔力は無くなってしまうの。」
「そうなのね。じゃあ、新鮮な材料と適正魔法が必要・・・いえ、時間がかかる場合もあるから適正魔術ね。もし魔導具が作れればもっと安定して生産できるわ!エミリー様!美味しいポーション作りに光明が見えました!」
「魔導具を作るなら、土の精霊ノームを訪ねてみるといいわ。ちょっと頑固な小人だけどきっと役に立ってくれるはずよ。」
ウンディーネはそう言って、ノームのいる森を教えてくれた。
その場所は偶然にもエミリーの祠のある森だった。
魔法水と泉の近くに生えている炭酸の実で作ったポーションは生ポーション(仮)と呼ぶことにした。
これは出来立てを密封すれば効果が持つ事がわかったので早速小瓶に詰めていった。
ふと気づくとカーラとライアンがいない。
2人は少し遠くで火と氷の魔術を練習しているようだった。
「健気ね、リーさん。」
「はい、キスするまで20年というのはちょっとかわいそうですね。」
「ねえ、シルフ?もっと短くならないの?」
エミリーは瓶に魔法の封をしていたシルフに聞いてみた。
「サムライくんが受ける魔力の影響が強すぎるです。だから心と体が強い魔力に耐えられるように鍛える必要があるです。」
「それはなんとなくわかるんだけどねえ。」
「エミリーならすぐなんとかする事も出来るです。」
「えっ?私が?」
「はいです。魔法のことなら魔法神の加護をあげれば解決するです。エミリーしか出来ないです。」
「エミリー様、いくらなんでもキスの為に加護を与えてはいけませんよ!」
確かにキスのために加護を与えるのはさすがにできないと思う。
しかし、美味しいポーションができたならどうだろう?
エミリーはもともと美味しいポーションを作った者に加護を与えるつもりだったのだ。
ならそれに協力した者ももらう権利があるはずだ。
「そうね、じゃあ頑張ったら加護をあげましょうか。」
「エミリー様、何を頑張ったらですか?」
「もちろん、美味しいポーション作りよ!初めから決めていた事だもの。」
リーはポカンとした顔をしていたが、やがてこう尋ねてきた。
「で、では私も頑張ったらエミリー様の加護が貰えるんですか!」
「当たり前じゃない。むしろうっかり他の人が見つけちゃったら協力している魔法神の立場がなくなっちゃうわ。だから頑張ってくださいね、リーさん!」
「何これ!新しいポーションはもう出来たの?味はないけどシュワシュワして飲み心地がいいわ!」
カーラ達に生ポーション(仮)を持っていくと好評だった。
ちょっとした運動の後には爽快感があって良さそうだ。
「まだまだ完成じゃないけど、急な入り用な時に便利な作り方がわかったわ。」
エミリーは小瓶を見ながら話しを続ける。
「そして美味しいポーションを作るのに必要なものもわかったわ。」
「ふうん、なんなのそれ。」
「火属性と水属性の優秀な魔法使いと魔導具職人よ!あと味付けに使える魔力の実も欲しいわね。魔導具については精霊ノームを訪ねることにしているわ。魔法使いはこれから探さないといけないけどね。」
「エミリー、火属性の魔法使いならここにいるじゃない。探す必要なんてないわ!」
「カーラ?必要なのは優秀な魔法使いよ。強い魔法使いじゃないのよ?」
「なら私が優秀な魔法使いになるわ!そしてライアンを立派な魔導騎士にするの!この旅はきっと役にたつ、そんな気がするの!」
カーラはやる気になっている。予定通りだ。
エミリーとリーはニヤリと笑う。
カーラとライアンには加護のことは言わないことにしていた。
きっとカーラならそう言うと思っていたし、自発的に参加してもらう方が都合がいい。
それにはカーラ自身のやる気が必要なのだ。
「じゃあ、カーラは火の精霊サラマンダーに認めてもらえばいいわ。」
ウンディーネがカーラに言った。
「そうすれば優秀な魔法使いになれる?」
「そんなすぐにはなれないわよ。でも気に入ってもらえれば契約を結べるわ!そうすればいろんな魔法を学ぶ事ができるの。優秀になれるかどうかはカーラ次第だけどね。」
カーラが自発的に願ってくれないと火の精霊に会いに行く理由がなかった。
これなら自然に会う理由になるし、これで四大精霊全てと結びつきができる。
水属性の魔法使いを探すのも大変なのに本当に優秀な火属性の魔法使いを探すことになるとどれだけ時間がかかるかわからない。
契約が結べれば理想的だけど仲良くなれればそれでいいのだ。エミリーはそう思っていた。
さあ、やる事が決まった。材料はこの森にあるけれど必要な物や人を探さすためには他の土地に行かなくてはならない。
もう一つとても大事な事がエミリーにはあった。
新しい神として初めての信徒に加護を与える事だ。
そもそもそのために地上に来たのだから。
なのでまずはエミリーの祠がある森が初めの目的地になる。
エミリーはウンディーネとシルフにお礼を言った。
「ありがとう、ウンディーネ、シルフ。おかげで美味しいポーションが作れそうよ。とても助かったわ。何か私に出来ることはあるかしら?」
「どういたしまして、また遊びに来てくれれば十分よ、また歓迎するわ!」
ウンディーネは笑って言った。
「エミリー、私は欲しいです。お礼くれますか?」
シルフは小さな声でそう言った。
「もちろんよ!私にできる事ならいいけど?シルフは何が望みなの?」
「私と契約して欲しいです!風の精霊として風の魔法使いエミリーの役に立ちたいです!」
「えっ?」
予想外の申し出だった!
「嫌ですか?」
「ぜ、全然嫌じゃないわ!むしろこっちからお願いしたいわ!でも契約ってどうすればいいの?やっぱり魂を対価に好きな望みをひとつだけ叶えてくれる、的な感じなの?」
「?ちょっと何言ってるかわからないです。精霊が魂を対価に交換条件を出すなんてありえないです。」
「そ、そ、そ、そうよね。ちょっとそんな話を前に聞いた事があって・・・えへへ。」
「契約はお互い納得できれば成立するです。何も難しくないです。ちょっとそのままでいるです。」
そういうとシルフは光の玉になってエミリーを包んだ。
光の玉は少し輝きを増したかと思うとパッと弾けた。
するとそこには小さな茶白ネコが浮かんでいた。
「契約成立です!これがエミリーのイメージです?」
茶白のシルフが尋ねる。
「・・・ネコサンだー・・・」
エミリーがつぶやいた。
パリパリっと青白い電気が走る!
茶白が右足で空を掻いた。
「なんのダジャレです!」
雷撃が直撃しエミリーはその場に倒れた。
どうやらブレスレットの効果は本物らしい。
魔導具と魔道具の表記を魔導具で統一しました。




