恋の行方
「突如現れた謎の3人!これは一体どうなっているのでしょうか?」
突然の出来事に周りが驚く中、リーが興奮気味にアナウンスを入れた。
「はじめましてみなさん、私達は愛と平和の使者、マジカルガッデスのピンク、イエローそしてグリーン。」
集まっていた観衆にピンクが答えるとイエローとグリーンは横で会釈をした。
「はじめまして、マジカルガッデスのみなさん!見ての通り今日は森の祝いの宴なので飛び入り参加ありがとうございます!ちょっと周りがびっくりしているようなので、参加目的を教えてもらってもいいですか?」
リーが自然に司会を続けるので、周りはこういう演出なのだと思うようになっていた。
まあ、実際こういう演出だったのだが。
「今日のめでたい宴に参加できて嬉しいわ。私達はこの宴でみなさんがもっと幸せになれるようにやってきました!」
グリーンがにっこり微笑みながら答えると、小さな妖精のイエローはステージ上をゆっくり移動した。イエローは光を纏っているのでその軌跡にはキラキラした光の道が出来ていた。
ステージ上のカーラとライアンは始めは儀式の途中で固まっていたが、今は刀を置いて事の成り行きを見守っている状態だった。
「ライアン!あなたにはナイト叙任の前にやらなくてはならない事があるのよ!」
嘘である。そんな事はない。
いきなりピンクに話を振られたライアンはまた固まってしまった。
「そんな話は聞いてないわ!」
カーラがいきり立って叫んだ。聞いていなくて当然だ、話していないのだから。
しかし女神達が揃いも揃って変身までして何の冗談なのだろうか。
「ライアン、あなたはまだ何も残していないわ。そんなあなたに何故ナイトが与えられるのかしら?」
グリーンがライアンに問いかける。
ライアンは答えられなかった。
「ライアンは名誉の為にナイトを欲しがっているわけじゃない!ウィルの・・・先祖たちの想いを叶える為にナイトを望んでいるのよ!」
「それは自分の名誉ではないが先祖の名誉の為だろう。いや、別に悪い事じゃないんだ。先祖の名誉を守るのは当主の当然の務めだ。しかし少年よ、お前が言うナイトとは文字通りカーラを守るためのナイトなのだろう?」
イエローは一生懸命言葉を選んでライアンに問いかける。
「はい、その通りです。私自身がカーララートリー様をお守りする為にナイトになりたいのです!」
ライアンははっきりと言った。
「そうかわかった。しかしカーラは強いぞ、さっき見ただろう。少年に守れる力があるか試させてもらおうか!」
そう言うとステージに3匹の魔獣が出現した。
ライアンは刀を拾うと構えて魔獣の様子を観察していた。
魔獣は少し大きなオオカミくらいの大きさで距離を開けてこっちを見ている。
ライアンは深呼吸を1つすると、魔獣に向かって駆け出し、あっという間に3匹を切り倒してしまった。
「さすがに言うだけはあるわね。ではこれはどうかしら?」
グリーンが言うと次は馬ほどの大きさの魔獣が出現した。
素早さだけでなくパワーもありそうだ。
すると今度は魔獣の方が向かってきた。
ライアンは無駄な動きもなく綺麗にかわすと向き直った魔獣と対峙した。
また魔獣が向かってきた。
ライアンは避けながら魔獣に刀を切った。
「!?」
手応えはあったが、魔獣に傷はなかった。
またも魔獣が向かってきたが今度はライアンも向かっていき、
すれ違いざまに魔獣の側面に刀を当て続けた。
「あー!傷が消えていきます!」
リーのアナウンスが状況を説明した。
ライアンの刀は魔獣の体に傷をつけるのだが、すぐに治ってしまうのだった。
少し距離を取り観察すると、魔獣の体に魔石があるのが見えた。
どうやらこれが本体だろう。
魔石は首の付け根あたりにあるのでダメージ与えるには正面から攻撃しなくてはなさそうだ。
ライアンの攻撃は魔石を狙った攻撃になった。
魔獣は前脚で蹴りを飛ばしてきたり体当たりで応戦する。
パワーのある攻撃はかすっただけでもよろめき、当たれば体を吹っ飛ばされた。
「ライアンの攻撃はなかなかクリーンヒットが出ません。あー、危ない!」
バランスを崩したライアンの体に魔獣の右脚がまともにヒットし、ライアンは転がり倒れた。
「ちょっと、何すんのよ!」
カーラが飛び出してメイスでぶん殴ったが、弾かれてしまう。
「!?」
「ここではあなたの魔法は使えないわ。今は黙って見ていなさい。」
グリーンに言われてカーラはしょうがなくステージの端に下がった。
「ライアン!負けたりしたら承知しないわよ!あんなの余裕で勝っちゃいなさいよ!」
「はい、カーラ様!お任せください!」
「お、これはライアン!女神からの応援で元気百倍か!」
ライアンは再び魔獣に挑み出した。
しかし果敢に攻めるが決定打が出ない。
ライアンに疲労の色が出始めると徐々に手数が少なくなっていった。
いつの間にかカーラだけでなく観衆もライアンを応援していた。
隙を探るように魔獣の攻撃を交わしながら、ライアンは攻撃のチャンスを窺っていた。
「ライアン、避ける、避ける!おっと、危ない・・・避けた!これはチャンスか!魔獣がバランスを崩している!」
「うぉおおおーっ!」
刀を魔石目掛けて突き出したライアンだったが、魔獣の左前脚が膝をあげ、刀を弾き飛ばしてしまった!
「ライアン!!」
カーラが叫び、周りは絶対絶命と思い悲鳴が上がった。
だが体勢を崩されたライアンは体を回転させ、その勢いのまま脇差しを抜くと逆袈裟に魔石を切り上げた!
「!!!」
瞬間、魔獣が消えステージに魔石が転がった。
ライアンが魔石を拾うと辺りは大歓声に包まれた。
「なかなかの強さね、これならカーラのナイトも務まりそうね、イエロー?」
「そうだな。まあ、テストは合格だ、まだまだだけどな。」
「じゃあ、ライアンのナイト授与を認めてくれるのね?」
カーラはライアンのもとに駆けつけるとイエローに尋ねた。
「まだよ!」
ピンクが答える。
「ちょっとあんた、何言ってんのよ!意味わかんないわ!」
カーラは怒っている。
「ライアン、あなたの強さと覚悟はわかったわ。あなたには充分ナイトの資格があるでしょう。でもあなたの本当の気持ちはそこにあるの?あなたの気持ちは伝わっているの?」
ピンクはカーラを無視してライアンに話しかけた。
「私は人間です。女神のカーララートリー様とは住む世界が違います。私の気持ちなど女神様が気にするような大したものではありません。」
「ライアン、あなたは間違っている。女神も相手の気持ちを大事にしているのよ。たとえ世界が違う人間だったとしてもそれは変わらない!カーラ、そうじゃないの?」
「そ、そんな事当たり前よ!相手の気持ちを大事にするのは女神として当然でしょ!何?あなた私に言いたいことがあるのね?何でも言いなさいよ!女神の私があなたの望みを何でも叶えてあげるわ!」
これは予想以上だ。カーラには女神だって相手の気持ちを大事にするっていって貰えればよかったのに。
望みをなんでも叶えるなんて!さあ、ライアン!早く言ってしまいなさい!
「ライアン、わかったでしょう。カーラもあなたの気持ちを聞きたがっているわ。さあこっちに来て。カーラも彼の前に立って、そう、その位置!ではライアン、あなたの本当の気持ちを伝えるのよ!」
ライアンは真っ赤になってカーラを見つめていた。
カーラはエミリーピンクに腹を立てていたが、真剣なライアンの目を見つめ返していたらそんなことは忘れてしまった。
周りは声を殺してじっと2人を見守っている。
しばらく沈黙が続いていたが、周りはぐっと堪えていた。
やがてライアン口元がわずかに動き絞り出すように言った。
「あ、あ、あなたのことが好きです!」
「え?なんて言ったの?よく聞こえなかったわ。もう一度言って?」
「あなたのことが大好きです!初めて会った時からもうどうしようもないくらいに!あなたの側にいたいからナイトになりたかったんです!それだけで充分幸せです!本当です!でももし・・・もし叶うのならあなたを私のものだけにしたい!私の妻になって欲しい!」
まさかのプロポーズだった。
しかし人間が少ない時代、しかも村長の息子である。好きな女性がいるなら当然のアプローチだ。
観衆はこのプロポーズの返事を固唾を飲んで待っている。
カーラは予想以上のことにポカンとしていた。
「ちょっとカーラ!大丈夫?」
「はっっ!」
カーラは我に帰り、ピンクを見て、そしてライアンを見た。
ライアンは真っ直ぐカーラを見ている。
「私のどこが好きなの?」
カーラはボーっとした目でライアンを見つめていた。
「美しいところ、優しいところ、強いところ、ちょっと頑固そうなところも可愛いらしい。そして何より純粋な心を持っているところに惹かれています!」
カーラは顔が赤く熱くなるのを感じていたが、褒められて恥ずかしいのか、それとも嬉しいのかわからなかった。
「あなたは私を・・・つ、妻にしたいって・・・本気なの?」
カーラは耳まで真っ赤になって尋ねた。
「それは・・・その・・・そうなればいいなって・・・いや、本気です!一緒にいたいのです!」
「あなたの想いはまっすぐなのね。なら私もまっすぐに向き合わないといけないわ。でも私は子供だからあなたの言う好きがわからないの。」
「カーラ、手を貸して。」
ピンクがカーラの手を取りライアンの手を握らせた。
「どんな感じ?」
「ドキドキする。胸が苦しい・・・」
「手を離して。どう?」
「まだドキドキしてるけど、さっきより楽だわ。」
「手、握りたいでしょ?」
「あれ?ほんとだ、苦しいのに、手、繋ぎたい!」
「それが好きってことよ。一緒にいたいってことなの。わかった?」
「これが好きって気持ち・・・」
「手を繋いでごらんなさい。」
2人は手を繋いだ。
「あなたの手はあったかいわ。」
「カーララートリー様の手はとても艶やかです。」
「ねえ、カーララートリー様って呼ばないで欲しいの。カーラって呼んでくれる?」
「そ、そ、それは・・・」
「じゃあ、2人の時はカーラって呼ぶのよ!約束して!」
「はい、約束します。」
「はーい、お二人様、これであなた達は恋人同士ね!これなら私達も森のみんなもライアンがナイトになる事に異存はないわ!そうよね、みんな!」
歓声が上がり、あちこちで祝杯が上がった。
「さあ、では改めて、ナイトの叙任式を行います。よろしいですか?」
リーのアナウンスが響き、舞台が片付けられる。
「私、ライアン・ダールマは我が愛しの女神カーラの為に戦い、その御身を守るため共に生きていくことをここに誓います!」
ライアンの肩には刀の代わりにカーラの右手が乗せられていた。
誓いが終わるとカーラは右手をライアンの前に差し出した。
ライアンはその手を取り、甲にキスをした。
するとその瞬間、カーラはブラックに変身した。
顔を上げたライアンは目の前の光景にポカンと口を開けていた。
「どう?この格好も可愛いでしょ?私達は愛と平和のカルテット『マジカルガッデス』!ブラックに恋を教えてくれてありがとう。あなた達の恋路はマジカルガッデスが見守っているから安心して付き合ってもらって構わないからね!」
グリーンはそう言ってにっこり笑った。
「ああ、もうお姉様達、絶対に邪魔しないでくださいね!ピンク!あんたは今度変な事したらだだじゃおかないんだからね!」
「あら、今回は良かったでしょ?」
「ま、まあ今回は良かったわ。ちょっとこっち来なさいよ!」
カーラはエミリーを袖まで引っ張っていくと、小声で囁いた。
「あんたはこの胸のドキドキを何とかできるんでしょうね!き、期待してるんだから、頑張りなさいよね!」
「うん、約束するわ!」
エミリーにも恋愛はよくわからない。でもこの可愛い女の子の為に頑張ってみようと本気で思うのだった。




