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星の想い  作者: 景虎
新たな魔法神
17/51

カーラの御神体

「おはようございまーすっ!」

サクヤ姫の部屋に入ると、サクヤ姫は朝食の準備をしているようだった。

「おはよう、エミリーさん。ちょっとジェシカを起こしてきてくれるかしら。隣の部屋で寝てるから。」

奥から声が聞こえたのでジェシカの様子を見に行くことにした。


部屋に入ると、丸いベッドでジェシカが寝ていた。

ジェシカは枕を抱いて可愛らしく寝て・・・はいなかった。

枕に顔を埋めて爆眠している。右手を前に出して倒れたように寝ている姿は、なんとかベッドにたどり着いた末のようだ・・・呑んだくれのおっさんか!って実際、遅くまで飲んでいたようだが・・・


「ジェシカ!朝よ!起きなさい!」

「うーん?わかった・・・あと5分・・・」

「ダメよ!起きなさい!」

「うー、じゃあ、10分だけ・・・」

伸びた!

ジェシカは身長が25センチくらいの大きさだ。乱暴に扱うわけにはいかないと、結局15分くらい突っついたり揺すったりしたが一向に起きそうもない。

「あらあら、今日はずいぶん寝坊助(ねぼすけ)さんね。」

サクヤ姫がやって来てそう言うとおもむろにハリセンを取り出し、スパーンっといい音で引っ叩いた(ひっぱたいた)

「えーっ!そんなんでいいの?!」

「いいのよ、ジェシカは常時身体強化魔法が発動していてちょっとやそっとじゃ起きないの。」

そういってもう一発引っ叩いた。

「もう!先に言ってくださいよぉ。」


「うー、昨日は少し飲み過ぎたぜ・・・」

ようやく起きたジェシカとリビングに行くと、カーラが朝食の用意を手伝っていた。

「おはようございます、お姉様!と、エミリー。」

「おはよう、カーラ。今日もよろしくね。」

カーラは少し緊張しているようだ。女王に会うからだろうか?

「ん、なんか緊張してんな?ああ、イワナガに会うのが怖いのか。そんなに怖がらなくていいぞ、カーラ。向こうが会いたがってるんだから。」

「なんで!なんでイワナガ様が?」

「なんでかなぁ、独り立ちできる頃になったら連れて来いって言われてたんだよ、サクヤは聞いているか?姉ちゃんだろ?」

「姉さんからは聞いてないけど、この前アランに会わせてやって欲しいと頼まれたわ。でも姉さんが何をしたいのかはわからないわね。」

「アランは昔、イワナガんとこに怒鳴り込んだって言ってたから、それと関係あるのかもなぁ。」

「に、兄様がイワナガ様を怒った?!なんてことを!」

人間嫌いと言われるエルフの女王に会いにいくのに、さらに不安な材料が増えただけの気がしたカーラであった。


さらに緊張の増したカーラは食事も上の空だった。

イワナガ姫はどれだけ人間嫌いと伝わっているのだろうか?

美味しいポーション計画に一抹の不安はよぎる。

「ねえ、サクヤ姫、お願いがあるのだけれど。いいかしら?」

「いいわよ、どんなこと?」

「実は美味しいポーションの作り方を知りたいのだけど、イワナガ姫に聞いてもらえるかしら?」

「そんなことなの?姉さん知ってるしら?そういえば聞いたことなかったわ。聞くのは構わないけど・・・そうだ!あなたが聞いた方がきっと喜ぶから直接聞いてごらんなさいよ。」

「えっ?私が聞くの?初対面で失礼じゃないかな?大丈夫かしら・・・」

なんてことだ、予定が狂ってしまった!何故私が喜ばれるのか全くわからない!

サクヤ姫の切り返しに動揺が隠せない私は不安そうにカーラの方を見た。

どうやら話を聞いていたカーラは私の動揺に気づいたらしく、ニヤリと意地の悪そうな悪魔のような笑顔を見せた。そしてテーブルのカゴからバゲットを取り出すと頭から丸かじりした。

やっと食べれたからかそれとも美味しかったのか、カーラは満足そうな顔でフーっと息を吐いた。


朝食を食べ、昨日と同じように大神様に挨拶をしてからゲートの部屋に入った。

ゲートから出るとそこは街の跡地だった。

破壊の跡はあったが、昨日のように何もない場所ではない。

周りを見ていたカーラが不思議そうな顔でジェシカを見ている。

「?!お姉様ここは・・・オーム?」

「そう、ここはオームの跡地さ。」

「オームって、聖地オーム?『魔石の森』の入り口の?」

「そうよ、魔石探索の聖地オーム。エミリーさん達の『魔石の森』が『エルフの森』のことなの。」

「「えーーーっ!!!」」

カーラと一緒に盛大に驚きの声をあげた。


『エルフの森』は私たち人間が『魔石の森』と呼んでいた秘境のことだった。

その森は奥までは誰も入ることが出来ず、空から見ても機械を使って探索しても全く詳細がわからない不思議な場所だったが、魔石が見つかる稀有な森として世界中で有名な場所だった。

もちろんどこの国も国益という大義名分でこの場所を自国の領地にしようと考えた。

しかし歴史によると周囲を開拓するとすぐ災難が起こり、人も建物も全て壊してしまったのだという。

いつしか誰もがこの森を手に入れることを諦めた結果森だけがポツンと残されていたのだった。

いや、たった一つ例外があった。いつからかどこの国にも属さない小さな町が誕生し森の入り口の役割を担っていた。


魔石探索を行う者は聖地オームへ行く。何故なら『魔石の森』の入り口はたった一つ、聖地オームからの入り口しかないからである。

『魔石の森』に入る前に探検者は神社で必ずお参りをしたと言う。

魔石探索が無事に行えますようにと。


『魔石の森』は魔石が取れるため探検者は跡を絶たなかったが、周りにできるどの村や町も長くは続かず発展しなかった。利権争いはもちろんあったが、なぜか不幸が度々起こることが一番の原因だった。

しかしこの町は探索拠点として唯一発展したのだ。


伝わっている昔話を要約するとこんな感じだ。

一人の少女がこの町で生まれ、僅か10年という短い生涯を終えた。

関わる者は皆不幸になることから、その少女は貧乏神と呼ばれ嫌われひとりぼっちで生きていた。

最後の時、誰もいない中で、少女は生まれてきたことを謝り、死に行くことを神に感謝した。

これでもう誰も不幸にならなくていい、と涙を流しながら。

そして祈った、生まれ変われるなら人々を幸せにできる力をください、と。強く。強く。

息をひきとる時、天から光が射し、少女を包んだ。

天からの光に驚いて集まった人々に天の声は告げた。

『この少女を森の守り神として祀り、この地をどの国、どの権力者からの支配も受けぬ聖地として守り抜け。さすればこの地は永きに渡り森の災いから守られ繁栄するであろう!』

お告げの後、少女を祀るべく光が射した場所へ行くと、そこに少女の姿はなく、仄かに光を放つきれいな短刀があった。

人々はこれを御神体として祀り、お告げの通り、町を不可侵の聖地として守り通した。

こうして聖地オームが誕生したのだった。


しばらく歩くと森の入り口に着いた。

側には石造りの建物があり、これが探査前にお参りしたという神社だろう。

建物は壊れていて、中に祠が見える。

見覚えがある気がしてよく見ようとすると、カーラが泣いていた。

「みんな・・・死んでしまった・・・」

「!!」

カーラの祠だ!

ここは、聖地オームはカーラを祀っていたんだ!



建物は壊れていたが、内部はホコリもなくきれいの状態を保っている。

誰かがこの場所をきちんと管理しているようだ。

「ねえ、カーラ、ここおかしいわよ?」

「何言ってるの!私の大切な場所がおかしいっていうの!!!」

「違うわよ、よく見て!建物は壊れているのに瓦礫もないし、ホコリすらないのよ!この場所は綺麗に・・・今でもあなたのいるこの場所は聖地として大事にされているのよ!」

「?!」

「あなたの信徒はいなくなったりしていないわ!」


「祠の中は?」

近づいてみると祠は修復されているようだったが大事にされているようでやはり綺麗な状態で周りには花が添えられていた。カーラと祠の扉を開けてみると中には木製の短刀があった。

「御神体じゃないわ?」

覗いていたサクヤ姫が不思議そうに呟いた。

「何で?兄様は何も問題なかったって言ってたのに・・・」

そう言ってカーラは木刀を手に取りじっと見ていたがやがて小さく震えだした。

「私があげた木の短刀だ・・・神様になって初めて加護をあげた時、お守りにって一緒に渡したの・・・」

「じゃあここに来ているのはあなたの加護を受けた人ってことかしら?」

「いや、カーラが加護をあげたのは何百年も前だからあげた本人はもう亡くなってるさ。来ているのはその子孫じゃねーかな。もしかすると加護持ちかもしれねーな。」

「「加護持ち?」」

「加護をもらった人の血筋には生まれつき加護を持った人が生まれることがあるの。初めて加護をあげた人なら信仰は強かったでしょうから。カーラならオーラが見えるからすぐわかるわ。」

「街の跡には生活感はなかったよ?どこから来ているのかしら?」

「どこって森からだろ?」

ジェシカが事もなげにそう答えた。

「えっ?だってお姉様、森には人間は住めないわ!そんな事は今まで一度もなかったもの。それにこの森はエルフ女王、イワナガ様の森なのでしょう?ますます考えられないわ?」


人間嫌いのイワナガ姫。確かにそう考えるのが普通だ。でもこの場所はこんなに綺麗に保たれているのだ。

となれば、近くから訪ねて来ているのだろう。街の中でないなら森の中ということになる。


「森へ入りましょう。エルフの女王に会えばわかるわ。祠のことも御神体のこともきっとね。」

サクヤ姫はそう言うと祠にお参りをした。みんなも続いてお参りをした。

カーラは特に念入りに願っていた。

一生懸命自分にお願いをするカーラを見て3人はとても幸せな気分になるのだった。

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