カーラのメイス
「私もそのステッキが欲しかったのにー!」
カーラはステッキを見つめながら拗ねていた。
私が使えなかったら、自分が使えるかもしれないと思っていたらしい。
うん、可愛い!
確かにカーラのメイスは装飾されているとはいえ打撃系武器の武骨さは否めない。
女の子が可愛いステッキをほしがるのは当然だと思う。色もピンクだし。
とはいえ、このステッキは魔力コントロールのための大切な道具だ。
カーラが可愛いからといってあげるわけにはいかない、と思う。
「新しいステッキができたらあげればいいんじゃね?」
ジェシカが提案した。
「お姉様!じゃあそれまでこの可愛くないメイスを持ってないといけないのッ!」
カーラはジェシカとサクヤ姫に食ってかかる。
「でもそれ強いじゃねーか。」
「そ、それは確かに、ケモノなんかは一発で退治できるのはありがたいけど・・・」
あ、実際使ってるんだ、しかも実用性も高いのね。
「か、可愛くない・・・」
サクヤ姫はショックを受けていた。
やはりメイスはサクヤ姫の贈り物のようだ。
「さ、さ、サクヤ様、こ、こ、このメイスの攻撃力はとても高いので、す、す、すごく感謝しておりますのよ!」
カーラは顔を真っ赤にして軽くパニクっている。
「まあ、確かに可愛くないけどね、ジェシカもそう思うでしょ?」
「ば、馬鹿ッ!ちょっとあんた何言ってんのよぉ!!」
カーラは真っ赤な目に涙を浮かべて叫んだ。
「可愛いかどうかはわかんねーけど、サクヤが選んだ物だからカーラに合ってると思うぞ。あたいは使いやすい方がいいから、ステッキよりメイスの方がいいな。」
ジェシカはこともなげにそう言った。
「なあ、サクヤ、そのメイスはただブン殴るだけじゃないだろう?」
「そうね、いろいろ出来るようにしてるのよ。例えば、そう言いながら、メイスを突くように前に出した。
すると1メートルくらい伸びた!
「もっと伸びるわよ。」
そう言うと、メイスの先は一気に壁まで届いてしまった。
「如意棒機能を付けてあるの。」
サクヤ姫はにっこり笑ってそう言った。
メイスの先はいろんな形に変える事ができるようになっていた。大きな玉になったり、刺を生やしたり、棍棒にしたり、中でもサクヤ姫はハンマーがお気に入りのようだった。
「100トンハンマーに出来るのよ!このいきなり出てきた感!空間魔法を使えば、本当にいきなり出たみたいに出来るわ!まるで魔法みたいに!!」
・・・魔法だし、っていうか始めからハンマーでいいんじゃ、とつっこむのは我慢した。
「魔法だよ!」「魔法だし!」
ジェシカとカーラは我慢出来なかったようだ。
「変形ギミックはおまけなの。このメイスは打撃攻撃強化をしやすくした魔導具なのよ。ちょっと見ててね。」
サクヤ姫は魔石調整の時と同じように、地面から土の台を出して台の上に獣の像を作って石にした。
「カーラ、ちょっとこれを叩いてみて、おもいっきりね!」
カーラは言われた通り、両手でメイスを持って叩きつけた。
キーン!
「うわっ!」
カーラのメイスは勢いよく像に弾かれた。
「サクヤ様、硬いわ。傷も付かない。」
「そう、宝石くらい硬くしたの。ちょっとやそっとじゃ傷はつけられないわ。」
像もすごいがメイスにも傷一つ付いていない。きっとメイスの方が硬くて力があれは破壊は可能なんだろうなあ。とぼんやり考えていた。
「魔力をメイスに流すようにイメージして。」
サクヤ姫に言われてカーラは集中しているようだ。
うーん、とほっぺを膨らますカーラは可愛いかった。
しばらくすると先端の石がぼんやり光出し、やがて輝きだした。
「まずまずね。じゃあ、軽く叩いてごらんなさい。」
カーラは素直に軽く、コツンと像を叩いた。
ガキッ!
「?!」
叩いた所が割れて壊れていた。
「今度はさっきみたいに、メイスを使わないで普通に魔法の玉を壁にぶつけてみて。」
「えー!魔力をメイスに使っちゃったから上手く行くかなぁ?」
カーラは恐る恐る、やってみると、あっさり出来た!
「このメイスは魔導具だからちょっとの魔力で攻撃強化が可能なの。だからあんまり魔力を消費してないのよ。」
サクヤ姫はメイスを手にしながら、またハンマーに変形させていた。
「でも、形を変えるのは別。魔力量に応じて大きさやディテールが変わるのよ。あんまり武器としての意味はないんだけど、こんなことも出来るのよ、ほら!」
そう言ってメイスを綺麗な装飾を施したハート型のステッキに変化させた!
「わあ、素敵!」
元のメイスも綺麗な物だったが形が違うと受けるイメージはまるで違う。
カーラはキラキラした目でステッキを見つめていた。
それからしばらくカーラは元の形に戻されたメイスを一生懸命ステッキにしようと頑張っていたが、丸くなったり、刺が少し生えるくらいしか出来なかった。
ガッカリしていたが、ステッキが使えない事がわかった時ほどではなさそうだ。
「二人共、これから魔力コントロールの練習だな。」
「カーラは魔力イメージ、エミリーさんは魔力制御の練習ね。」
ちょっとステータスボードを見てみたら
魔法力:D(要魔導具){SSS}
となっていた!嬉しい!!
サクヤ姫とジェシカが的を用意してくれた。始めは同じ的だったが、魔法玉をだすのに慣れてきたら、大きさや硬さを変えた的に変更された。
ちなみにサクヤ姫の的はきれいだったが、ジェシカは気分屋らしく的の造形はまちまちだった。
だけどこれが練習にはもってこいな状況になった。
サクヤ姫の的は大きさや硬さが見た目でわかるように作られていたが、ジェシカのそれはまったくランダムに作られていた。
考えながらの魔法攻撃はミスも多くなり、感情のコントロールも難しかった。
そもそも魔力が有り余っている私は当たりさえすれば的は簡単に破壊できるので、丁度いい魔力、像か割れるくらいの力にするのにてこずっていた。だいたい像は木っ端微塵になってしまうのだから。
カーラはメイスに注ぐ魔力を調整して攻撃力をコントロールしようとしていたが、彼女の場合は弾かれると、体力を消耗するので筋トレも兼ねているようだった。
しばらくすると二人共魔力が無くなり、フラフラになったので休憩しながら薄めた神酒を飲んで体力と魔力とメンタルを回復させた。
二回目の魔力切れの頃には二人共なんとかコツが掴めてきたが、あんまり祠の周りを壊すのもなんなので次からの練習は外で行うことになった。
壁や地面の穴が空いた所は直して、みんなで外に出た。
太陽が少し傾いていてお昼は過ぎているようだ。
「お腹減ったね。」
空を見ながら呟いた。
「それじゃ、ちょっと移動して、お昼にしましょう。」
「「「賛成!」」」
三人は元気よく言った。
少し行くと開けた場所が見つかって、そこで昼食を取ることにした。
サクヤ姫が料理を用意してくれていたのですぐに食事になった。
メニューはコメと呼ばれるライスを三角にして黒いノリという物を巻いたオニギリと鶏肉を薄い衣で揚げたカラアゲという食べ物がメインだ。 野菜の煮物は柔らかく味付けは濃いめで冷えていても美味しかった。
「美味しい・・・」
「お口に合ってよかったわ。お弁当っていうの。温めてもいいんだけど、冷めても美味しいように作っているのよ。」
「つまみとビールがあれば最高なんだけどなー」
ジェシカはクッキーを頬張りながら、そんなことを言っていた。
「もう、お姉様は食べるとすぐお酒のこと言うんだから!」
まったくまったく、困ったものだわとばかりにカーラがいう。
「いつも美味しいお酒と料理が食べれて私達は幸せね。」
三人が大きく頷くと、サクヤ姫は優しく微笑んでいた。
魔導具と魔道具の表記を魔導具で統一しました。




