アミュレットの導き
薄暗い森。灰色の雲が重く垂れこめている。
そこにある古ぼけた井戸。誰かに何かに追い詰められてここきた。
禍々しい黒い霧に追い詰められて、奈落の底に落ちる。
ティアは、恐怖のあまり飛び起きた。
まだ夜が明けきらない。
カエルムの朝は早い。もうそろそろ神官たちが起きてくるころだ。
呪いを解いてもらってから、王宮の…カーライルの夢は見なくなった。その代りに見るようになった夢は痛みよりもティアの心に恐怖を刻む。ガタガタと寒気で震える体を一人抱きしめる。
ティアは呪解師カミーユから貰った――肌身離さず持っている――アミュレットを握り締めた。
琥珀のアミュレットは、新たな呪いを弾き、中和するものだ。弾くといってもあまりにも強い呪いは、アミュレットもティアの心も破壊してしまう。中和は追いつかず、美しい琥珀色が、ティアが身に着けたその日から醜く濁り始めた。濁りが消える頃には呪いも解けるという。しかし、百年後か数百年後かわからない。
ティアはこんな夜、大きな不安を覚える。
呪術師に掛けられた呪いと、カーライルにかけられた魅了とともに、心の奥に、何かとても大切なものが、二度と浮かび上がることのないように、鎖で縛って奥深く沈められているような……。忘れてはいけない何か、命に代えても守らなくてはならない何かが、掴もうと手を伸ばすと闇に沈む。
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神殿で働く日々、ティアはカミーユからメラニア修道院の院長ヒルデガルドへと、今にも崩れそうなほど古いペンダントを託された。チャームはまるで二つに割った片割れのようだった。




