犬耳メイドとベタ惚れ父
第一章:幼少期編
犬耳メイド剣士 と ベタ惚れ父
「若様!朝でございますよ!お館様もお待ちです!早くお起きになって下さい!」
いつものことだが、このメイドは声がでかい…
声だけではなく胸もでかい
大人達が鼻の下を延ばして彼女を見ているのを僕は知ってる
「わかってるよヘレン…朝から大きな声出さないでよ…」
「早く起きてくださらないとヘレンがお館様に怒られるんですからね!」
起き上がって着替え始めると彼女は素早くベッドメイクを始める
お尻から延びた尻尾をフリフリさせながら
彼女は人と獣の神の眷族「獣人」の1つ犬人族であった
特徴的な犬耳と尻尾が彼女の種族を物語っている
その腰には可愛らしい外見には似付かない刀が下がっている
メイド兼護衛兼剣術の先生、それが彼女の立ち位置だ
ラグナロク以降世界には様々な種族が増えていた
この街にも彼女のような獣人の他にも、魔人、海人、虫人、様々な種族が平和に暮らしている
ただ一つ龍人族だけは少ない
嘗ての戦争で彼ら龍族はその圧倒的な力から、他種族の連合軍によって只でさえ少ない数を更に減らしていた
今では山脈などに集落を作り、滅多に姿を現さない
数十年から数百年の内に稀に現れると、恵か禍、どちらかをもたらす何とも近寄り難い者達だった
ヘレンと話ながら食堂に入ると、父はもう席に着いていた
「父上おはようございます」
「おはようキヨシ
今日もヘレンに怒鳴られていたな」
父は朝から僕をよくからかう
「はい…ヘレン先生には剣術のウデよりも耳の耐久を鍛えられてるようです…」
僕が返すと父は大笑いし、ヘレンはバツの悪い顔をした
「ヘレンはただ若様に助けて頂いた恩を返したいだけですのに…」
ヘレンは僕が産まれた日、氾濫した川に流され溺れていた
僕が産まれた時、嵐が止み陽の光が刺したことで、僕に助けられたと思い込んでいる…ただの偶然なのに
「来週にはキヨシも洗礼の儀を受ける
ヘレンもここに来て6年になるのか
月日が経つのは早いものだな…
私がおじさんになる訳だ!」
「お館様はお髭がダンディで格好いいですよ」
流石は犬人族…髭には一家伝ありそうだ…
「ほう…お世辞でも君の用な美女にそう言われるとその気になってしまいそうだ」
父はダンディな顔を作りつつも鼻の下が延びている
「父上!母上に言い付けますよ!」
「ハハハハハ!私が誰より彼女に惚れてることは彼女が誰より知っているさ!」
父、清一郎は伯爵という身分にも関わらず側室を取っていなかった
母にベタ惚れだったからだ
この国指折りの大貴族である父にはこれまでも政略結婚の話は幾度となく来ていた
その度に父は
『ほう…我が妻以上の女がおると?
この大和国一の美女「月の巫女」である我が妻以上の女がおるとでも?
身の程を知ったならすぐに帰られよ!』
と、叩き返していた
母にベタ惚れだったからだ
「して、ヘレンよ
キヨシの剣のウデはどうかね?」
「坊ちゃまに剣を教えて3年になりますが、正直言って天才です!私でもこの境地に達するまで10年は掛かりました!」
「ほぅ…魔狼流の天才師範代にここまで言わせるか」
「若様には本日の稽古の折伝えようとは思っておりましたが、今日にでも奥義を伝授致します!」
「えっ!?」
今日僕は奥義を伝授されるらしい




