奇襲
用意されていた旅装に着替えてリビングに出ると、サーニャ以外の全員揃っていた。
テーブルには料理が広げられていて、それを囲むソファにぎゅうぎゅうに
詰めて座っている全員がそれに静かに食べている。
「タカユキ様どうぞ。朝食を食堂に特別に作ってもらいました。
サーニャさんは大老ミイ様と打ち合わせです」
「ありがとう」
さっそく肩に乗ってきたにゃからんてぃを撫でてから
食べ始める。
「うー緊張するなー。うち、実戦は初めてや」
タガグロは真っ黒な装束を身にまとい、首にも黒いスカーフを巻いている。
たしかに忍術を使う、忍者だな……と思いながら俺は眺める。
「……タガグロ……強い……自信もて……」
「ありがとな。さっきからマイちゃんが励ましてくれててなぁ」
「私は契約の都合上、魔族の居る戦場に同行できませんが、
タカユキ様たちを中央山外まで移送したあとは、
この中央城で女王様の周辺に張り付かせていただいて、
全体の様子の経過観察と記録をしますね。今後の国家運営に役立つはずです」
「ああ、助かる。女王によろしくいっといてくれ。
こっちまでは敵はこないんだろ?」
「まさか。ありえませんよ。魔族の軍隊と言うのは文民統制されていて
西部大陸最強のモルシュタイン閣下ですら、"国家から雇われた軍人"というご身分ですから
国民から選ばれた政府に従わざる得ません」
「……窮屈だが……悪い制度では……ない……軍が暴走しない……」
「その通りです。ですが、今回はそれを逆手に取ります」
「そうだな。でもこっちも魔族を害する気はないからな」
「もちろんです。誰も傷つけずに穏便に帰っていただきます」
「……モルシュタインは……多少……傷つけても……おけ……」
「それは仕方ないですね。けれど閣下は強い方なので気にする必要はありませんよ」
「よしっ!!やる気なってきたわ!!」
食べ終わったタガグロが立ち上がった。そして
「あ、でも、その前に保湿や保湿~乙女は肌が命やでー」
と化粧品などの入ったバックをもって洗面所に入っていった。
皆も一息ついて肩を降ろす。アルナが
「わっ、わたしはこの城に待機でいいんでしゅか?」
と噛みながら、俺に尋ねる。
「うん。アルデハイトについていてくれるかな?
たぶんザルグバインやザルガスも中央山で戦況を見るんだろ?」
「とのことです。領主と領主代理なので動けないのでしょう」
「……ザルグバイン……戦場行かない……不思議……」
マイカが首を捻る。何かが引っかかっているようだ。
「わっ、わかりましゅた……アルさんよろしくっ」
「ふふっ、まぁ肩肘はらずにゆっくり見ておきましょう。明日には無事終わってますよ」
アルデハイトがアルナに微笑んだ。
ソファの端に黙って座っていたライーザが、窓の方を見て
「大雪になるかと思っていたが、晴れたな……」
と呟いた。
二時間後に準備を済ませて、俺たちは計画通りにアルデハイトの飛行移送で
中央山北部から半日ほど歩いた距離の、
ローレシアン各地の軍隊と、ゴブリンとオークの大兵団が
東西に分かれて、陣を張っている場所に移動する。
メンバーは、二刀を背中と腰に差した俺、万象の杖を握ったマイカ、
黒装束のタガグロ、そして鎧と大剣姿の右手の無いライーザだ。
にゃからんてぃも勿論俺の肩に乗っている。
物凄い数の兵士やテント、そして食料や武具移送の馬車などで
ごった返す東側のローレシアン軍の陣地に俺たちを降ろしてから
アルデハイトは
「これから大老ミイ様とサーニャさんを移送しますのでこれにて。
幸運を祈ります」
と再び、背中に括りつけたいつもの「ローレシアン公認飛行物体」の旗をはためかせながら
中央山の頂上の王都まで、飛び去って行った。
とりあえず俺たちは、まずはこの大兵団の主将の居るテントへと
駆け寄ってきた兵士たちから案内される。
入った瞬間に俺は背の高いゴツイおっさんから力強く抱擁された。
「あーら!!私の幸運の流れ人ちゃんじゃなーい!!」
「クラーゴンさん……そうか……」
「そうよー!!こんな大軍団纏める能力なんて
他の平和ボケしたボンクラどもにあるわけないわーっ!!私じゃなきゃね」
とクラーゴンは言いながら、抱擁を解き
他の三人に握手しようとしていく。
マイカが「……よろしくな……」と握手し終わった後
ドン引きしたタガグロがクラーゴンから手を伸ばされ、戸惑いながら
「たっくん……知り合い?」
と俺に訊く。
「あーら!!水棲族の皇族のタガグロ様ですよね。
北部征伐軍主将のクラーゴン中将でございます。以後お見知りおきを」
「……なんかよくわからんけど、有能そうな感じはするわ」
「あらーっ!!私のこと見抜くなんて、さすがですわね。
シーズ一族が伊達じゃないのは、我々人間にも良く知られておりますよ」
「うちは、出来が悪いですから。まぁだから戦場に行くって言うても
誰も止めにこんのですけど。常時監視はついてるはずですが」
「でも、猛獣はあえて崖から子供を落とすといいますけどねぇ……」
クラーゴンはにっこりしながら、タガグロとも握手をし終えて
ライーザの方を向く。
「今のローレシアン軍は、オカマが一番偉いのか」
と仏頂面のライーザがいきなり言い放って、いや、それはさすがに
クラーゴン切れないか、と心配していると
「オカマは差別用語ですー。ゲイって言ってくださいー。伝説のライーザ様」
とクラーゴンは意外にも楽しそうにウインクして右手を伸ばす。
「ああ、よろしく」
ライーザはそっけなくその手を軽く握り返した。クラーゴンは驚きながら
自らの手をパッと話して、興味深そうに眺める。
「おおっ、ちょっと吸われたわ。噂どおり幽鬼なのね」
「俺の無尽蔵の生命力を吸ってるから、他の人達には迷惑かけないからな」
一応フォローしておく。
「だと思いましたー。身体の周囲のオーラがライーザ様に流れていってるわよ」
「そんなもん見えんの?」
「私を誰だと思ってるの。ローレシアン聖騎士勲章のクラーゴン中将様よっ」
クラーゴンは上機嫌に笑いながら、
再び作戦を説明してくれる、アルデハイトが言った通り
このまま北上して八宝使用者とローレシアン精鋭軍と合流
そして国王領境界付近のマルグ平野に軍を横に並べて着陣、
その後は、軍は様子を見つつ、俺とモルシュタインとの決闘を待ち
俺がモルシュタインを退けた後は、必要なだけの戦力を北上。
ゴブリン・オーク軍はそのまま南東に移動して自国に帰還。
「昨日、向こうの総大将のナーズルちゃんとも話したわよ。
大空白地帯に、ドラゴンと魔女の助けを借りて、新しい国造ってるんだって?
楽しそうじゃないーっ!!」
「上手くいったらいいなと思ってるよ。平和になるといいな」
「そうね。平和が一番よ。でもタジマ様ね」
「うん?」
「色々と落ち着いたら、私のゴルスバウ討伐軍にも手を貸してね。
もしずっと忙しかったら、あなたじゃなくてもいいからさ」
とタガグロやライーザを見回す。マイカはテント内の棚から
戦地の地図を勝手に取り出して眺めている。
「うっ、うちはたっくんと離れないですしー」
驚いたタガグロは俺の背中に隠れて、ライーザは頷いて微笑んだ。
「どっちが行くかは決まりね。
ま、吸う分の生命力の問題はあるけど、何とかするわ」
鼻歌を歌いながら、クラーゴンは兵士をテント内に数人呼びつけ
ローレシアン大軍団の前進の開始と、ゴブリン・オーク軍にもそれを告げるように指示した。
俺たちはクラーゴンが用意してくれた
大きな馬車に乗り込んで、五十三万の大軍団と共に北上していく。
これに北部に待機している七万が加われば六十万である。
「……なんかすげぇな」
外の兵士たちが足早に歩く足音や、馬の蹄の音、
そして馬車の車輪の音を聞きながら俺は呟く。
マイカは馬車の天井ににゃからんてぃと共に登って
軍が行軍する様子を見ている。ライーザも天井だ。
「陸上の戦地への移動ってこんな感じなんやね。ゆっくりやな」
胸元から保湿液を取り出したタガグロが顔につけながら言う。
「水中ではどうなの?」
「うちは戦経験無いけど、マーキィーが言うには
遠方からの移動が始まった時点で、ほぼ戦の勝敗が決してるらしいわ」
「そうなの?」
「うん。一瞬の陣取りみたいなもんらしい。
得意な角度をとれば勝ちなので、最初の一手で大体決まるみたいよ」
「そうか……水中なら移動できるのが三百六十度だもんな……」
「たっくんは、水中で水棲族相手せんようにしときよ?」
「うん……何かそれは分かる」
意識の底でも、節々で美射に水棲族は水中では恐ろしいくらい強い。と言われてきた。
「うちら、水の中が得意やからね。陸地とまったく違うで?」
「肝に銘じとく」
気持ちの高ぶりを収めながら、タガグロと雑談をしていると、
あっという間に戦地であるマルグ平原へとたどり着く。
俺の中では一時間くらいの感覚だったが、気付くと五時間以上経っていたようだ。
気持ちが高ぶって、時間間隔が鈍っていたらしい。
馬車はどうやら布陣の中央で俺たちを降ろすらしく
大量の足音が左右に散っていく音を聞きながら、直進していく。
「着きました。幸運を」
という御者の兵士のおじさんが声をかけてくれて
俺たちは、馬車から降りる。天井からマイカやライーザ
にゃからんてぃも降りてくる。
乗ってきた馬車はゆっくりと右側の兵団の中へと
吸い込まれるように入っていった。
どこまでも広がる広大な荒野の左右に大量の軍が布陣し始めている。
柵を立て、テントを立てたり、整列をしているその六十万人の兵士たちを
俺は目を丸くして見つめる。
数キロ先の森の近くには、確かに魔族軍の陣らしきものも見える。
「……昨夜……八宝使用者と精鋭軍が……こちらに魔族軍……誘い出した……予定通り……」
よく見ると、俺たちの周囲には兵士がまったく居ない。
俺たち五人だけだ。
それをマイカに問うと
「……タカユキ様……視認……し易いように……布陣した……」
「そうか。俺が居るとはっきり分からないと、作戦の効果がないもんな」
魔族の感覚能力は抜群に高いので、数キロ先からでもはっきり
俺を確認しているはずだ。
「……そう……モルシュタインも……今……タカユキ様……見て……歯軋り……してるはず」
「ま、めんどくさい陣中挨拶とか無さそうだから、
しばらくここでのんびりしとくよ」
俺は一息ついて、地べたに座り込む。
空は晴れていると、風も気持ちよい。
予定通りならしばらく戦闘自体は無さそうだ。
マイカは広いピクニックシートを取り出して広げ
「……ここ……座れ……もうお昼……食べ物……貰ってくる……」
と左側の陣地へと走って行った。
左右に数十万の軍隊の陣地が見える戦場で
俺たちはピクニックシートの上でマイカの貰ってきた昼飯を食べる。
大老ミイとサーニャは、クラーゴンと左奥の陣中で今後の方針について
打ち合わせをしているので来られないらしい。
「そろそろ、監察官が魔族国に行ったころかな……」
「……うん……にゃからんてぃ……教えてくれた……怯えて……行った……」
「会話できんの?」
「……心……似てる……分かる……」
「そうか。それは便利だな」
もうマイカに関する新事実が分かっても、俺は一々驚かない。
とにかくマイカには皆の平和のために、役に立ってもらうだけである。
俺は乾パンやら、ソーセージを頬張りながら、
向こうの森に布陣している魔族軍を見て、少し違和感を感じる。
それが何なのか分からないが、何かおかしいのだ。
何故だろう……。タガグロやライーザに一応聞いてみるが
「うちはわからんなぁ。ちゃんとモルシュタインと兵士が七千おる様に思うけど」
「私も分かりませんね。全て予定通りに思えますが」
二人は以上は察知していないようだ。
マイカも首を横に振る。
「そうか……勘違いかな。あ、そうだ」
「なになに」
「にゃからんてぃなら偵察いけるんじゃない?猫の振りしてさ」
にゃからんてぃは俺のその言葉になぜかドン引きして
「ニャという音は静寂であります、そしてンというのは全ての音の終わりです。
つまり合わせると死と言うことです。不吉は遠ざけるに限ります」
と猫の鳴き声についての不満を、以前と同じように何となく分かる言葉で力説してくる。
美射とのデートで猫役がまだトラウマになっているようだ。
「ごめんごめん。猫の真似は無しで。とりあえずこっそり行ってみてくれよ」
機嫌を直したにゃからんてぃは素早くうなづくと、
荒野を四本足で向こうの森の方角まで疾走して行った。
「にゃか話し面白いな……」
タガグロが走って行ったにゃからんてぃを見つめる。
「あいつ歌うの知ってる?」
「ほんと!?うわーめっちゃ見たいわー」
マイカも交えてタガグロとしばらく和気藹々と雑談していると、
血相を変えたにゃからんてぃが戻ってきて、マイカに身振り手振りで
必死に何かを説明する。顔面蒼白になったマイカが
「……やられた……タカユキ様……七百……足りない……」
「向こうの兵士が?」
「……そう……タガグロ……クラーゴンに……至急……報告を……
あと……『すぐ戻る』……伝言……」
と左側の陣地の奥地を指差す。
「わ、わかった」
タガグロは指差された方へ風のように走っていく。
マイカはにゃからんてぃからゴンドラの移動装置を貰って
土に埋めている。そして上空の光の線を、冷や汗を流して眺める。
こいつがこんなに焦ってるの始めてみたな。
と俺は何が起こって居るのか分からないので暢気に
その様子を眺める。
「向こうの兵士が、七百人足りないのが何が問題なの?」
休憩とか交代で七百人くらい一斉に休むんじゃないだろうか。
仕事のシフト制みたいに。
「……移動しながら……話す……」
光の線を辿ってやっと移動してきたゴンドラに
俺を押し込んで、ライーザを乗せ、左側の陣地から
走って戻ってきたタガグロが飛び込むと、マイカは
「……我移動せんと欲す……ローレシアン中央城……裏庭……」
と呟いて、にゃからんてぃとゴンドラに飛び乗る。
そして上昇し始めたゴンドラの中で
「……作戦……読まれてた……監察官……止められる前……
予め……こっそり……七百人……別働隊……飛ばしてた……」
……俺は鳥肌が立ちはじめる。ゴンドラの向かっている先は……まさか……。
ライーザは表情が険しくなる。
タガグロは想像が出来てしまい泣きそうだ。
すぐに煙の筋が何本も出ている中央城が見えてきた。
「たっくん!!?スカイドラゴンや!?でかいで!?こっちに来とる!!」
振り向いてすぐに俺にしがみついたタガグロの言う方向を眺めると
背後から巨大なグリーンドラゴンのミャグルが飛行して瞬時に近づいてきて、
その背中から、ゴンドラの天井に飛び移ったミシェルが
ゴンドラの扉を開けて、無理やり入ってくる。
ミャグルはそのまま、煙の出ている中央城へと高速で飛んで行った。
「あんたたち!!なんて底の浅い作戦で、本気のモルシュタインに挑んだの!!」
ミシェルは顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「……すまん……痛恨の……極み……」
「ミシェルさん!!城はど、どうなってるんですか!?」
「ミャグルに頼んで、魔族を恫喝させに行ったわ。これで占拠しようとしている魔族は
去るでしょうけど……あーあ、私、しーらないっと」
遠くでは空中からミャグルが
「雷竜のミャグル・マ・ナンキである!!直ちに占拠をやめて去れ!!
僕はこの地が血で染まるのを好まぬ!!魔族は直ちにたちされぃ!!!」
ゴンドラが揺れるような大音響で城に向けて叫んでしばらくすると、
黒い羽根が生えた人影が
中央城から大量に飛び立って北西方角へと去っていく。
それを見て居る間に裏庭の上空にゴンドラがついて
俺たちは一斉に降りる。
「うわぁ……」
見上げた城郭は、
形は保っているが、所々かなり破壊されていて
燃えている場所もかなりある。
遠くでは高い塔が崩れ落ちていくのが見える。
「マイカ!!あんたは他の女子たちと地下の封印室や牢屋の確認に行きなさい!!」
「……らじゃ……」
「私はこのままタジマ君と飛んで、女王の安否を確認してくるわ!!」
にゃからんてぃを肩に乗せた俺の手を引っつかむと
ミシェルは裏庭を飛び上がり、
高層階にある女王執務室の近くの通路の壁を蹴破って、中に入る。
「ああ……」
様々な武具などが展示されていた通路はぐちゃぐちゃに荒らされている
倒れてうめいている兵士たちを見ながら俺たちは、女王執務室に走る。
扉を開けると、ミサキは、アルナや侍女たちと共に全身血まみれのアルデハイトの介抱をしていた。
「ああ!!よかった!!アルデハイトさんとアルナさんが、私達を守ってくれて……」
俺の姿を見ると抱きついてくる。
メイド服がボロボロのアルナも言葉が出ないようで、
血まみれの拳で、抱きついて泣きじゃくる。
俺はミサキやアルナが無事で安心したのと、アルデハイトが心配なのとで
パニックを起こしそうである。
ミシェルが横たわっているアルデハイトの傍に駆け寄って
脈と呼吸があるのを確め、一息つくと
「他種族のために命かけるなんて、あんたも変わったわね」
と優しい顔をして呟き
「城とアル坊は私とミャグルに任せなさい!!
タジマ君はマイカたちと合流して戦場に戻って!!」
「この様を見たならば、せめて、怒りを糧にしなさい!!」
と俺からミサキとアルナを引き剥がし、背中を思いっきり蹴り出して、部屋の外へと出す。
俺は涙目をぬぐいながら、さっきミシェルが空けた穴から
建物の壁を落ちるようにつたって降りていき、中庭に着地する。
ゴンドラの中に入って、肩に乗せたにゃからんてぃを触ったりしながら
ソワソワしながらしばらく待っていると、
倉庫の方角からタガグロが走ってきた。
「たっくん!!行くの私だけや!!出して!!」
と叫ぶタガグロがゴンドラに飛び乗った瞬間に俺は外に向かって
「我移動せんと欲す!!マルグ平野!!」
と叫んで、ゴンドラが上昇していく。
光の線に接続されて北上し始めたゴンドラの中で
それぞれ見た状況を話す。
タガグロの話では、セイが取り返され、
そして城の牢からは捕えられていたラングラールとメグルスも連れ去られていたらしい。
残されたルーナムが半狂乱になっているそうだ。
「ミサキちゃんやアルナちゃんは無事やったんか……良かった」
「けど、アルちゃん心配やな……」
とタガグロは考え込む。
「やっぱり女王や王族も狙ったのか……」
「だと思う。占拠もするつもりだったみたいだけど、
あのグリーンドラゴンが助けてくれたな」
中央城の上空でホバリングしているミャグルを見つめながら言う。
「ザルガスたちは、大丈夫だろうか……」
「わからんけど、城を集中的に襲ってたみたいよ」
「なら、一先ずは安心かな」
「ライーザさんとマイちゃんは、連れ去られた人らの探索や
魔族がまだ城内に潜んでないか調べるんやて」
「ライーザさんなら、生き物の匂いが分かるから、うってつけかもな……」
それからしばらく無言が続き、不意にタガグロが呟く。
「……モルシュタイン……いてこまそうな……」
「うん……ボコボコにしよう……二度と立ち上がれないくらいに……」
俺とタガグロは右手を強く握り合い、見つめ合って
ゴンドラ内でそう誓った。
さっきから不気味なほど静かなにゃからんてぃは
俺の肩の上で立ち上がりマルグ平野の方角を指差す。




