タジマ派亜流ミーシャ派
「ところで詳しく訊いてなかったんだけど」
空を飛びながらミシェルが尋ねてくる。
にゃからんてぃは相変わらず俺の肩で絶唱を続けている。
「なんですか?」
「ゴブリンの大旅団に対する補給とか、王国内の通行の保障とかだいじょうぶなわけ?」
「マイカが大老ミイに恙無く伝えてくれていると思いますよ」
「ああ、あの子ならちゃんとやるでしょうね」
「古くからの知り合いなんですか?」
「んー……まぁ腐れ縁と言うか……実験対象と言うか……」
とミシェルは言葉を濁して、前方を見つめる。
「久しぶりに飛んだから心配だったけど、さすがミシェル様ね」
そう言いながら、第三王子領の北側の山に囲まれた大平野を指差す。
ああ、確かにあれだけの広さと自然があれば、ゴブリンたちが
全員そこで生活しても問題無さそうだ。
と思いながらミシェルに吊られた俺は、それを眺める。
歌うのを止め、不意ににゃからんてぃが俺の耳を右に引っ張った。
「ミシェルさん!!右に回避し……」
と言う間も無く、雷が絡まった巨大な風の玉が飛行している俺たちに向けて
超高速で飛んでくる。
「ほいさーっ!!」
と叫びながら、右方向へと急速にミシェルは方向を変える。
そこに向けて、また同じ風雷球が飛んでくる。俺は周囲を見回すが
どこから射出されているのかは分からない。
だが、明らかに俺たちを狙って撃たれているのは確かだ。
今度は左に急旋回してミシェルは避ける。
「ミャグルちゃんが、からかってるわね……」
と呟いて、ミシェルは高度を急激に下げ、俺たちを大空白地帯の大平原の端の草原に降ろすと
「ちょっと遊んでくるわ。歌う式神ちゃん借りていい?」
と言う間もなく、俺の肩からにゃからんてぃをひったくり
むりやり肩に乗せて、上空の雲中まで急上昇していった。
晴れた上空に漂う白雲の中で閃光が何本も走る。
うん……遊んでくるという名のガチの決闘ですね……わかります……。
と思いながら、俺は口を半開きにしてその様を見上げていた。
ミーシャやジャンガスの介抱をしたり、空を見上げたりしながら
二十分ほど待っていると、上空が不意に陰って、雲の中から
巨大で緑色に輝く鱗をもつドラゴンが、ゆっくりと羽ばたきながら降りてきた。
武骨で恐ろしげなライグァークよりも見た目がシャープで、スマートな感じがするな……。
と思いながら、俺はまたその光景を口を半開きにしながら見つめる。
草原で立ち尽くす俺の眼前に地響きをさせながら着地した、
その巨大な羽根のあるグリーンドラゴンは
威圧感はまったくなかった、代わりにどこか神聖な感じがする。
体長はおそらく百メートルくらいあるだろうか……。
鼻の長い顔についた睫の長い巨大な二つの緑の瞳で俺は見つめられているのだが
目を逸らせない不思議な、雰囲気をもっている。
そのドラゴンの頭の後ろからヒョコッと顔を出したミシェルは
にゃからんてぃを抱きながらトトトっと巨大な顔を伝って
俺のところまで降りてくる。
「さっそく魅入られてるわねー」
と目が逸らせない俺の顔の前に飛び上がって
ハイジャンプしたにゃからんてぃと共に「パンッ!!」と
ミシェルは強く手を打ち合わせる。
「はっ……ああ、目が逸らせる……」
と俺は瞬きをしながら、何気にマインドコントロールされていたことを悟った。
ミシェルはグリーンドラゴンの方に向き直り、腰に手を当てると
「ミャグルちゃん、あんたさー、私たちを試しすぎだわ。
というか遊びすぎでしょーよ」
「……」
ミャグルと呼ばれたグリーンドラゴンはジッとミシェルを見つめる。
「私に負けた腹いせに、タジマ君もっていこうというのは関心できないわねー」
そこからミシェルの謎の説教タイムが、グリーンドラゴンに向けて始まった。
「だいたいあんたは、やる気が無いのよ。リングリングちゃんは別格としても
ライグァークとかオギュミノスくらいなら本気出したら並べるでしょうに
若いからって自信がないの?それともあれなの?
芸術家気取りなの?そんなちっぽけな才能よりもあんたは竜としての自身を
自覚すべきよ。いい?これは別にガーヴィーちゃんが居なくなったから
親切心で言っているわけじゃないのよ?魔女としての私が世界の
パワーバランスを勘案したときに、ミャグル・マ・ナンキともあろう雷竜が
こんな辺境でダラダラと他種族の芸術家の真似なんてしてるのが
私は我慢なら無いのよ。大体あなたはちょっと優しすぎよ。
巨竜として生まれたならもっと自信をもって生きなさいよ。
他種族なんか食い散らかしたっていいのよ。マシーナリーや我々魔族とも
死闘を繰り広げて、ローレシアン王国なんか一呑みにしなさいよ。
ほんとつまんない人生よね。絵描いたり彫刻彫る竜なんて他にいないのよ。
なんでだか分かる?意味がないからよ。見る人がいないの。
大体考えて見なさいよ。竜の造った石像なんて他種族から見たら
巨大仏像にしか見えないわよ。絵もそうよ。っていうか絵画で例え名作が
出来たとして誰が管理すんのよそんなもん。他種族がやったら大量の維持費と
手間ですぐ額縁ごと腐るわよ。ほんと人生……いや竜生の浪費はやめなさいよ」
その後にも、長々と喋り続けるミシェルに人が飛びそうな大きなため息を
ついたミャグルと呼ばれたドラゴンは
「……はいはい……わかってますよぉ……」
とやる気無さそうに小さく呟いて……(呟くといっても人間の大声並みの音量だが)俺を見る。
「……で、ローレシアンの支配者が、辺境のドラゴンになんの用かね」
再び、俺を長い睫で見つめるミャグルに
俺は何も答えられない。ローレシアンの支配者?誰のことだ……?
黙っていると、やっと説教を言い終えたミシェルが話しに加わってくる。
「あんたさぁ、人間をモデルに、絵を描きたいって言ってたわよね」
「そうだな。そう言ってたわぁ」
「男の子と女の子がいいって言ってたわよね」
「ああ……なんだ、絵のモデルを連れて着てくれたのか、優しいなぁ」
とミャグルは俺の背後で寝かされている二人を認識したようにゆっくりと呟く。
「代わりにー」
とミシェルが言うのを遮るように
「わかったわかった。ゴブリンとオークをここで受け入れるよぉ、でもなぁ……」
今度はミシェルが話を遮って
「あんたに統治能力がないのは知ってるわよ!!そこに残した二人は
ここに暢気な顔で突っ立ってる"ローレシアンの支配者"の親族なの!」
「あぁ……気が効くねぇ……」
「ミシェルさん……どういうこと?」
「あーもう、朴念仁ばかりか!!!」
とミシェルは癇癪を一瞬起こして、何故かミシェルの動きをさっきから真似ている
にゃからんてぃと共に飛び上がると
「タジマ君の親族に、こいつの後見を受けさせながら
ここでゴブリンとオーク達の国を治めさせるって言ってんの!!」
とビシッと俺に向けてにゃからんてぃと共に指をさしてくる。
「……つまり、ミーシャたちをこのドラゴンに守らせながら
ゴブリンとオーク達の国づくりを手伝わせると……」
「あー!!ぬるい!!『手伝わせる』じゃなくて!!
あんたの妹たちにゴブリンとオーク達を直接支配させなさいよ!」
「いやいやいや、それはこう、ゴブリンとオーク達が自主的にやった方がよくないですか?」
「タジマ君は優しすぎんのよ!!こいつと同じね!!
もっと上からいきなさい!!王者たるもの常に上から目線よ!!」
手足を振り乱して小さな身体で俺に説教するミシェルを
にゃからんてぃも隣でそっくりに真似続ける。
お陰で責められているのに何かあまり凹まない。
「いやいやいや、俺は流れ人の能力無ければ、どこにでもいる人間ですし……」
「はぁ!?そんなんじゃ人生やっていけないわよ!?
人生強気でしょ!!もってるカードは全部、堂々と使いなさい!!」
「いやいやいやいや、そうは言われましても……人様のご迷惑に……」
とミシェルと堂々巡りを繰り返していると、いきなりミャグルが
噴出して、その鼻息で草原に大きな風が吹く。
そして堪えきれなくなったミャグルはそのまま
ゴゴゴゴゴゴと地鳴りをさせながら立ち上がり、そして羽を広げて晴れた空へと急上昇してから
そこら中に聞こえるような声で飛びながら笑い転げる。
「あっはっはっははははははははははははは!!!!!愉快愉快!!!」
地上からミシェルは顔を真っ赤にして叫ぶ。にゃからんてぃも真似している。
「何がおかしいのよ!!もっかいいてこまされたの!?」
空中で転げるように飛びながら、笑い続ける巨大なグリーンドラゴンを
俺は呆然と眺め続ける。
しばらくして笑い止んだグリーンドラゴンのミャグルは
そこら中の大地が震えるような大声で上から俺たちに声をかける。
「わかったぁ!!『ローレシアンの"優しき"支配者』の頼み、引き受けよう!!
ただし!!君の妹君たちに!!僕の絵のモデルもしてもらうからなぁ!!」
あんなに気高くて恐ろしい成りをしているのに
一人称が"僕"なんだな……俺はそこが妙におかしくて、顔を崩しながら
自然と空に向けて拳を突き出して、頷く。
それを確認したグリーンドラゴン気持ち良さそうに
空へと咆哮した。隣ではミシェルが相変わらずプリプリと怒り続けている。
しばらくして、やっと起きたミーシャたちは、
事情を俺に聞かされて、驚愕の表情を浮かべる。
うっ血や凍傷、骨折や酸素欠乏等の症状がないか聞いてみたが
二人とも身体に異常はないようだ。
にゃからんてぃやミシェルが見えない何らかの保護方法を
とっていたか、飛行時間が極短かったからかもしれない。
とにかくよかった。
周囲の草原は、晴れ渡った空から気持ちの良い風が吹いている。
「絵のモデルはいいけど……わ、私、国造りなんて手伝えるかな……」
「俺、ゴブリンやオークの友達いませんよ……」
「ミシェルさんと共に、ゴブリンやオーク達の移送に行っていて、
今はここに居ないけど、ミャグルさんっていうグリーンドラゴンが
手伝ってくれるらしいから、彼に色々聞くといいよ」
「ドラゴンの知り合いもいないっすよ……」
「兄さん……自信ないよ……」
「んー……そうだよなぁ」
「うん……」
うな垂れるミーシャの肩に、にゃからんてぃが乗っかってきて
さり気なくゴンドラの三角形の黄金の移動装置を渡す。
おそらくアルデハイトから拝借したものをマントを巻いた首元に隠していたようだ。
「これは……?」
「あ、説明し忘れてた。にゃからんてぃナイス」
風にマントをはためかせたにゃからんてぃは
ミーシャの肩から腕を突き出して、
「シャケナベイベー!!ユーアーロックンロール!!アイムロケンローオウイエ!」
と謎の英語もどきで俺に発破をかける。それに頷きながら
俺はゴンドラの移動の仕組みを二人に話す。
「そうか……いつでも帰れるんだね」
「ちょっと安心したっす」
二人が安心したのを見て、もう一押しする。
「ここなら、修行するのに最適な環境じゃないか?
自然も溢れているし、ゴブリンやオークたちの国造りが軌道に乗ったら
時間も出来るし、二人でずっと居られるだろ?」
「……そうか!そうだよね!!」
「確かに。俺らも色々と修行期間なのかもしれないっすね」
「たぶんミシェルさんはな」
「うん」
「ここでミーシャたちに国の統治の勉強をして貰いたいんだよ」
「……」
「俺はそれを学んでいる暇がたぶん無いからね。その代わりに
一番信頼できる親族にそういう能力を身に着けてもらいたいと思っているはずだよ」
もちろん適当に言っているだけである。当たっているという保証は無い。
しかし本音を言えば、戦地から遠いここに、妹たちが居てくれるのは助かる。
もしローレシアンに何かあっても、少なくともこの二人の身の安全が保障されるからだ。
「分かった……頑張って学んでくるよ」
「修行もするっす!!師匠見ててくださいよ!!」
と二人がやっと納得したところに、
背中にゴブリンやオークを満載したグリーンドラゴンのミャグルが飛んでくる。
そして地響きをさせながら着地して
千人近いゴブリンやオークたちを地上へと降ろしていく。
全員降りて、すぐに俺たちの姿を確認すると
駆け寄ってきて、周囲を輪のように囲み、跪いて祈りだした。
「兄さん……これ……」
「ゴブリンやオークたちは信心深いし、穏やかで朴訥な人たちだよ」
「そうなんすか……もっと怖いものかと……」
「だから見た目で差別しないで、しっかりと国造りをサポートしてあげてくれよ」
「分かった!!私頑張る!!」
「俺もやるっす!!一人前の男になるために!!」
「剣の修行して、国造りも終わったらミーシャと結婚してやってね」
さり気なく念を押しておく。ここが一番重要である。
ミーシャの重度のブラコンを解消してやらねばならない。
「はいっす!!立派なタジマ一族の一員になるっす!!」
「私もタジマ派の師範代目指すよ!!ついでに結婚もしてやる!!」
微妙な温度差に若干不安になりながらも、まぁいいかと俺は苦笑いした。
にゃからんてぃはミーシャの頭の上に立ちあがり、周りの祈りを一身に受け
「神社というのは神域である時と魔が居る時間があります。
魔については語る言葉を持ちませんが、時にそれは我々を覗きます」
と久しぶりに意味不明な言葉を言いながら、目を細めていた。
その後、ミャグルは細かく何度もゴブリンやオーク達やその荷物を移送し続けた。
ミシェルの姿が見えないと思ったので、
近くのゴブリンたちに聞くと
何ともう勝手にゴンドラで自分の屋敷まで帰ってしまったらしい。
気の早い人だな……いや、約束のショートケーキを食べる時間だからか……。
と思いながらも、俺は次々に草原に移送されてくるゴブリンとオークたちの
誘導をミーシャたちと、日が暮れるまでやり続けた。
日が暮れるころには、草原中に何万というテントが立ち並び、
ご飯の焚ける匂いがし始める。
俺たち三人はナーズルたち幹部たちとともに、焚き火を囲んで
干し芋のようなものを齧りながら、今後の方針を話し合う。
そのすぐ近くには、広い夜の草原に寝そべったミャグルが巨大な顔を寄せて
その会合を聞いている。
「ありがとうございます……これで、一先ずは襲われたり
飢えに苦しんだりすることはなくなりました」
「よかった。兵団の方は北上し続けてるの?」
「そうですね。こちらに移送してもらったのは四十万人の民間人と
打ち合わせのために来た、我々老幹部五名のみです」
「わかった。ミシェルから聞いてると思うけど、
通行の安全は保障されてるから、あと中央城付近で補給も受けられると思う」
「ええ。それを信じて、兵糧は最低限を残して、
こちらに移送してもらいました」
「明日から町の設営はするの?」
「はい。ミシェル様とミャグル様に適地を教えてもらいましたから
森から木を切り出して、さっそく始めようと思います」
「ここにうちの妹と、婚約者残していくから、手伝わせてやってよ」
と俺は車座の端で黙って話を聞いているミーシャとジャンガスを指差す。
「どうも。タジマの妹でローレシアン剣術タジマ派師範代のミーシャです。
草原流弓術と体術の免許ももってます」
ミーシャが厳しいゴブリンやオークの幹部達を前に強がっているのか、
かなり盛って話す。いや、しかし、ちょ……待て、まだ免許皆伝させた覚えは……。
「その婚約者でタカユキ師匠の一番弟子のジャンガスです」
二人の肩書きにビビったのか、一斉に幹部たちは土下座に近い格好で
頭を下げた。……多少嘘が混ざって居るのもいいか……。
妹達を大事にしてもらえるなら。と俺は小さくため息をつきながら、
テント群から駆け寄ってきたにゃからんてぃを肩に乗せる。
こいつはこいつで、昼からずっとゴブリンやオークの子供たちと
遊びまわっていたのだ。
「ローレシアン剣術タジマ派とは……?」
恐る恐るミーシャに尋ねるナーズルたちにミーシャは
鼻の穴を膨らませて、語り始める。
いや、お前……まだ昨日、タジマ派の二番弟子になったばかりだろ……。
と心の中でツッコミながらも俺も黙ってそれを聞く。
「……というわけで私は師範代になったのだ!!」
と話が興に乗りすぎて立ち上がって語っているミーシャの
盛りに盛った壮大な武道ストーリーを
苦笑しながら聞き終わると、老幹部たちがミーシャに土下座して
「ぜひ!ぜひに!!その武術を我々にも!!」
と頼み始める。
「兄さん……どしよ……」
と完全に信じ込んだ老幹部たちに困り顔のミーシャが俺に顔を向ける。
うん。自業自得だよね。とは思ったが、一応助け舟を出してやる。
「ナーズルさん達」
「はいっ」
「うちの妹の流派は正式には、"タジマ派亜流ミーシャ派"というものです」
と新たな流派を思いついたままにでっちあげる。
「そうなのですかっ!!」
老齢の経験豊富そうな幹部たちが、いくらなんでも食いつき良すぎである。
これは他種族に騙されて、今まで苦労してきただろうなと思いながら
「本流の剣を使ったタジマ派では、まだ実力的に免許皆伝を与えられませんが
体術や弓術を交えたミーシャ派ならばということで、昨日、師範代に任命しました」
「ほんとっすか!?師匠、それ初耳なんですけど!?」
空気を読めなかったジャンガスも喰いついて来る。
いや、それは、今適当に創ったから俺も初耳だよ。
と思いながら、気にせず話を続ける。ミーシャは俺を見ながらポカンとしている。
「ということで、本流のタジマ派の修行は二人にそのまましてもらうとして……」
「してっ?」
老幹部たちが再び身体を寄せて、話に喰いついて来る。
「亜流のミーシャ派の特訓をゴブリンやオークの方々にしてもらおうかと。
本流の剣術に関しても、ミーシャやジャンガスが習得次第、
簡易化して教えてくれると思いますよ」
俺の見たところ、衝撃波以上の剣技はこの二人以外には、
よほど資質が無いと簡単に修められないだろうが、
基本的な剣の型くらいなら、誰にでも教えられるだろう。
「ありがたや、ありがたや……」
ゴブリンやオークの老幹部たちは感激して泣き始めた。
ああ、俺はこの人たちを無碍にはできねぇな。
と思いながら、とりあえず治めたこの場は二人に任せて、
寝そべってこちらを見つめる巨大なミャグルに
「皆をよろしくお願いします。二人は絵のモデルも了承してます」
と短く告げてから、俺はにゃからんてぃと共に、中央城へと帰ることにする。
皆の邪魔をしないように、流星群が降り注ぐ雲一つない夜空の下
大量のテント群からかなり離れたところまで歩き、
にゃからんてぃが再びマントから出してきた
ゴンドラの三角の誘導装置を埋め込む。
「我移動せんと欲す。ローレシアン中央城裏庭」
文言を唱えて、上空に伸びた光の線に沿ってゴンドラが移動してくるまで
俺はテント群の方角を見る。ミャグルが寝そべって
何万という並べられたテントたちも皆明るい。
全体の雰囲気として悪い感じはまったくしないな。これなら妹たちを預けても
大丈夫だ。と思いながら、にゃからんてぃを肩に乗せた俺はゴンドラに乗り込む。
流星群を眺めながら、俺たちが乗り込んだゴンドラは
夜空を西へと進んでいく。
ゴンドラが裏庭につくと、メイド服姿のマイカが待っていた。
倉庫から城内に入って歩きながら話す。
「……ごくろう……ゴブリンオーク兵団……補給……受けている……」
「そうか。よかった。他の兵団は?」
「……続々……集結中……王子や軍団長……中央城で……謁見している……」
「そうか、明日には一斉に北上開始だろうな」
「……だと……思う……」
「モルシュタインはまだ動けないよな」
「……大きな動きは……ない……」
前に聞いたアルデハイトの話によるとたしか、
魔族の軍は大きな決断をするときに、毎回国会の審議にかけられるので
それほどこちらの軍事的な動きに即応はできないらしい。
部屋にたどり着いて、ドアを開けると
生気を取り戻したアルデハイトとサーニャとライーザが談笑していた。
ミシェルに割られた窓や、蹴破られた窓枠はもう新品同様に補修されている。
「ああ、おかえりなさいませ。やっと元気になりました」
「ミシェルさんやばいなあれ……ハリケーンみたいな人だったわ」
「でしょう?」
「巨大なグリーンドラゴンに説教してたよ」
「ほんとですか!?それ詳しく聞かせていただけませんか?」
目を丸くしたアルデハイトの隣に俺は座って、今日起きたことを
ゆっくりと皆に話し出す。マイカが冷蔵庫から食べるものを出してきて
テーブルの上に並べていく。




