魔女ミシェル
「すごーいっ!!王都の光があんなに小さく!!」
にゃからんてぃを肩に乗せてはしゃぐミサキを横目に見ながら
マイカに尋ねる。
「空中軍に旗見えるだろうか?」
「……おそらく……大丈夫……暗視スコープも……あるはず……」
「ならよかった。女王が乗っていて、自軍から撃墜されたとかやばすぎるからな」
俺はやっと不安が晴れて、落ち着いて外の景色を見回す。
もう真っ暗だ。眼下には王都中央山の街の光がずっと続いている。
雪は少し強まったようだ。ゴンドラの窓に水滴がつき始める。
アルデハイト……帰ってきて早々すまん……と俺は
ゴンドラを持ち上げて飛行している奴の居る天井側に向けて、手を合わせる。
さすがに毎回ここまでしてもらうのは、悪いので
早めに飛行手段を手に入れたい所である。
瞬く間に、ライトアップされたような
巨大な王都中央山の街の光が背後に過ぎ去り
真っ暗な夜空の中をゴンドラは飛び始める。
ポツポツと小さな町や村の明かりは見えるが、高速で通り過ぎていく。
アルデハイトがスピードをあげたようだ。
「……そろそろ……着くころ……」
とマイカが皆に告げ、ミサキが
「あー楽しかったーっ」
と暗闇の中で両腕を伸ばす。
にゃからんてぃはいつの間にか俺の肩に乗っている。
次第にスピードを落としていくゴンドラが真っ暗な地上へと降りて行く。
予定していた通りに、森の中だ。
ドシンという音と共に地上に降り立ったゴンドラの天井にアルデハイトが
ゴンッと言う音をさせて、降り立つ。
俺はすぐにゴンドラの扉を開けて外に出て
「大丈夫だった?」
と天井を見上げて、問いかける。夜に目が慣れてきたようだ。
周囲の状況が見える。
「……疲れました……さすがに重過ぎますね」
とアルデハイトは息を切らして、ゴンドラの天井の上で横たわっている。
そして気だるそうに上半身を起こして、西側を指差して
「ああ、あちら側に歩けば、森の中心部にいけると思いますよ。
私は、ここで、しばらく体力回復を待ちます」
「幽鬼がいそうだけど大丈夫?」
「……我々魔族は、幽鬼と相性がいいので、お気になさらず……」
それだけ言うと、アルデハイトは再び横たわった。
俺はゴンドラ背後の旗がつけられている壁の周囲から
カンテラを二つ取り外し、一つをミサキの手を取って出てきたマイカに渡す。
「……西か……行こう……長くは……居られない」
マイカは戸惑う女王の手を引いて、スタスタと歩き出す。
にゃからんてぃを肩に乗せた俺もそれを慌てて追いかける。
「あはははっ」「きゃきゃきゃきゃ」「ギャーッ」
と言った幽鬼たちの笑い声や鳴き声が鬱蒼とした夜の森中に響いている。
いつの間にかマイカの手を離したミサキは俺の左腕に腕を絡めて
身体をピッタリくっつけている。
「……大丈夫でしょうか……」
フードを目深に被った女王は不安げに俺の顔を見上げる。
「マイカが平気な顔してますから、恐らく大丈夫かと」
と俺も一応は、平気な顔をして女王を安心させるが、かなり不安になってきた。
明らかに幽鬼の声の数が多い。以前通った森のザッと三倍である。
にゃからんてぃはそんな俺の左肩を軽く二回叩いて
「このまま行け」と落ち着かせる。
十五分ほど、マイカのメイド服の背中を見ながら森の中を歩き続けると
開けたところに、大きな蔦だらけの屋敷が見えてくる。
周囲を蔦の生い茂ったレンガの壁に囲まれたその様は
まるでお化け屋敷だ。
マイカは怖気づくこともなく、その屋敷の壁の間の門についている大きな扉をガンガンと叩く。
「……流れ人……タジマ様一行だ……はよ霊刀……くれ……はよ」
マイカが、何度も激しく古びた木製の扉をたたき続けると中から
「うるそうございますぞ……ご主人様の実験の邪魔になります……」
と迷惑そうな声がして、扉がギギギと開けられる。
「ヒッ……」
開けた人の顔を見てミサキが驚いて、俺にしがみつく。
「ああ、私の顔でございますか。申し訳ありませんが、これ以外はございませんので」
テンガロンハットを被り、穴だらけのスーツを着たそいつは
動く真っ白な骸骨だった。色んな化け物を見慣れた俺は
相手の異常な見た目程度では、もう何とも思わないので
むしろ殺気が無く、紳士的な態度にホッとする。
「他の方々は場数を踏まれているようで。ああ、霊刀でございますか」
「……そうだ……くれ……」
「ご主人様のお友達からお話は伺っております。どうぞ、そのまま倉庫へ」
とテンガロンハット骸骨は俺たちを、屋敷の庭に招き入れる。
伸びっぱなしの草木がホラーな雰囲気を引き立てる。
ミサキは腰が抜けたようなので、俺が背負って、
さらに背負われたミサキの肩ににゃからんてぃが乗っかる。
「……ごめんなさい……怖くて……」
「悪い人じゃないですよ。殺気はまったくないですし」
と俺はミサキを落ち着ける。
テンガロンハット骸骨はそのまま
俺たちを庭の端の錆びた巨大倉庫へと案内する。
ガラガラと倉庫の扉を開け、そして中へと招き入れる。
骸骨が、照明をつけると、中には
あらゆる種類の膨大な武具が埃を被って眠っていることが
俺たちに分かる。
「すげぇな……」
俺はミサキを背負ったまま、倉庫の中を見回す。
重鎧や、槍や、脳内世界で菅がもっていたものに似ている
白い棒まである。一瞬、立てかけられている
紫色の剣先が二又の禍々しい雰囲気の両手剣に手が伸びかけたが
にゃからんてぃが俺の身体を伝って降りてきて、その手をぺシッと叩いて、止める。
床に降り立ち、首を横に振るにゃからんてぃに「ありがとな」
と礼を言って、強引にそこを見ないように立ち去る。武器に魅入られてたか。
他の武器にも魅入られないように、距離をとりながら見学しつつ考える。
恐らく全て、高性能の名のある武具なのだろうが
全て床に放り出されたり、壁に立てかけられていたり
雑多に積み重ねられている。なんでだ。
「ご主人様は、戦乱の火種になりそうな世界中の魔具を
見つけては、ここに放り込むのが趣味でしてな」
骸骨は首をかしげている俺に、さりげなく説明をしながら、
倉庫の端に立てかけてあった霊刀を手にとり
埃を掃う。うっすらと白く発光しているその木刀を持ち
俺に近づいてきながら
「ふむ。シュガヌーンも喜んでいるようです。
"正しい所有者"というのは滅多におりませんからな」
と手渡す。俺は現実世界では初めて持つその木刀を手に握り
その久しぶりの感触に不思議な気持ちになる。
「本当にあったんだな……しかもすぐ近くに」
「ふふ。良い縁というのは、意外と近くにあるものでございますよ」
骸骨はテンガロンハットの角度を変えながら
勝手に杖を物色しているマイカの方へと歩いていく。
俺もおもしろそうなので、シュガヌーンを腰のあたりに括りつけてマイカの方へと歩く。
「……こいつ……好き……もらっていい?……」
とテンガロン骸骨にマイカは錆びた金色の杖を指し示す。
「万象の杖ですか……ふーむ、腐っても"八宝外"ですから、ご主人様に聞いた方がよいかと……」
「……固いこと言うな……錆びて……弱ってる……大丈夫……」
「いえいえ、一応は規則ですから」
「……うーむ……ならば……しかたなし……会うか……」
マイカは微妙な顔をしながら、首を横に振る。
「八宝外って?」
「……八宝なれなかった……武器たち……」
「ちょっとまて、超強力なんじゃない?穢れは?」
「……錆びてるから……マイルドなってる……大丈夫……」
「気をつけてくれよ」
「……おけおけ……任せろ……」
マイカはグッと腕を突き出して頷く。
俺はその姿に余計に心配が増した気がした。マイカ自身に対する心配というより
こいつが、一体、何の悪巧みに杖を使おうとしているのかだ……。
気付くと俺に背負われていたミサキは安心して寝てしまった。
スースーと背中から寝息を聞きながら俺は、
倉庫を閉めた骸骨に屋敷へと案内される。
さっきから静かなにゃからんてぃはミサキの肩の上で周囲を見回しているようだ。
草木伸び放題の庭を歩いていると、
屋敷の方から
「あーっ!!!アル坊じゃないかあああ!!こらっ!!逃げるなー!!」
という十歳くらいの女の子のキンキンした声が聞こえてくる。
すぐに屋敷のドアが開けられて、周囲を見回したアルデハイトが
カンテラをもった俺たちを見つけると大急ぎでこっちへと駆けてくる。
「厄日です。完全に失敗しました」
と青い顔をして、俺たちの背後に隠れるように長身を屈めるアルデハイトを追う様に
ブカブカの深緑色のローブを引きずって、腰までもあるような輝く虹色の髪を
振り乱した小さな少女が駆けて来る。
「ネイサン!!アル坊どこ!?」
と俺たちの背中に隠れたアルデハイトには気付いていない様子の
その少女は真っ暗な庭を見回す。
「ミシェル様、お客人を前にあまりにもはしたないかと……」
ネイサンと呼ばれたテンガロンハット骸骨は、咳払いをしてたしなめる。
そこで初めて俺たちの存在に気付いた少女は
「流れ人、ローレシアン女王、元絶対神、その他ね。ふーん」
と一瞬で俺たちの正体を見抜いて、顔を見回すとマイカを二度見して
「あらーっ!!マイカちゃんじゃなーい!!」
とハイテンションで腕を握り締めてブンブンと振り回す。
「……どうも……ひさしぶり……」
マイカはかなり嫌そうに、顔をそむけて挨拶する。
「その後どう?調子はいい?」
「……おかげさまで……」
「よかったーっ!!実験は成功ね!!」
マイカの手を離して、ピョンピョンと俺たちの周囲を飛び跳ねる少女は
俺たちの背後に隠れたアルデハイトを見つけて
すぐに駆け寄って抱きしめて、嫌がるアルデハイトに頬を擦り付ける。
「アル坊ーっ!!逃げないでもいいじゃないーっ!!」
「……どうも、おばさん……久しぶり……」
アルデハイトもかなり嫌そうに、抱きしめ返した。
……この二人、なんかこの少女に関係ありそうだ。
というかミシェルって呼ばれてたな。ということは……この少女が……。
「流れ人の君っ!!私が、ミシェル・ランツヴァハァーよっ!!」
と腰に手を当てて、胸を張った少女が俺の目前にいきなり立って
自己紹介をかます。ああ……これは付き合うの大変だわ……。
少女に屋敷内に連れて行かれて、俺たちは
アンティークだらけのやたら重厚な応接間で、
テンガロンハット骸骨のネイサンが入れてくれたお茶をご馳走になる
「ネイサン、ケーキはー!!ケーキいいいいいいい!!」
と俺たちの対面のソファに一人座ったミシェルは、
手足をじたばたさせて駄々をこねている。
「ご主人様、真夜中のお菓子は健康や美容に悪いかと……」
「えー!!今更見た目とかどうでもいいじゃないーケーキいいいい!!」
「魔女としての威厳と気品も大事でございますよ」
「うー。じゃあ、明日の昼、絶対ね?」
「よいですよ。ショートケーキでよろしいですか?」
「うん!!たくさんね?いい?沢山ちょうだいね?」
「はいはい。お任せくださいな」
と笑いながらネイサンは応接室から出て行った。
扱いなれてるなーと俺は感心しながらそのやり取りを見つめる。
両隣を見回すと、アルデハイトとマイカは珍しく小さくなっている。
早く帰りたそうだ。
にゃからんてぃは、部屋の端のソファに寝かされたミサキの傍に
ついていてくれている。ありがたい。
虹色の長髪を手串で、整えたミシェルがこちらを見て
いきなり俺に口を開く。
「で、何の話だっけ」
「霊刀シュガヌーンを貰いました」
「ああ……いいわよ。リングリングちゃんと話はついてるから。もってって」
あっさりと俺に答えて、興味を失った俺を視界から外したミシェルは
興味深そうにマイカとアルデハイトを見回す。
「マイカちゃんも何か欲しいものあるでしょ?」
「……万象の杖……くれ……いや……ください……」
珍しく下手に出ているマイカに俺が目を丸くしていると
「んー、どしよっかなぁ」
とミシェルがマイカをじらし始める。
「……無理にとは……言わない……」
「まぁ、いいわよ。マイカちゃんなら使いきれるだろうし、あげるわ。
でもちょっと、身体調べさせてもらえない?経過観察がしたいの」
とミシェルは欲望丸出しの嫌らしい視線をマイカに浴びせて
マイカは仕方なく頷く。
ガッツポーズしたミシェルは、今度はアルデハイトに顔を向ける。
「ねぇーアル坊ー。小さなお前に、特製の成長ホルモン剤を投与して、
人並みの背丈にしてあげたのは誰のお陰だったっけー」
「……おばさんです……」
「身体の弱いお前に、門外不出の秘薬も沢山あげたわよねー。何でも解毒する薬とかー」
毒矢で死に掛けたミーシャが飲ませて貰ったやつだ。と俺は即座に気付いたが
言ったらこじれそうなので、そ知らぬふりをする。
「……もらいました……」
「それもこれも、我が一族で抜群に頭の良いお前を
私の跡継ぎにするつもりだったんだけどー。ずっと私言ってたよね?」
「……でも、おばさんが先に我々親戚の前から消えたでしょ?」
「知的好奇心に溢れたあんたなら、いつか私を一人で探し出すと分かってたからね。
そして今日、ここに来た訳だ。いやー大慶大慶!!計画通りっ!」
ソファの上に立ち上がり、あっはっはと高笑いするミシェルを眺めながら俺は考える
どうやら、アルデハイトと親戚のようだな。
「作った薬の特許料やら、富をもたらす新薬の開発ばっかり求める
ド貧乏なクソ親戚や、阿呆ばかり製薬会社や、国の木っ端役人どもを回避して、
あんただけを呼び寄せるには、これが一番だと私は分かってたわけ。
おばさんの頭の良さわかった!?」
「それは、魔族国の誰もが知っていることでしょう……」
アルデハイトは頭を横に振って、ため息を吐く。
「遠くから、姿だけ見て、帰るつもりが……」
と俺に申し訳無さそうに、囁く。
その様子を紅茶をがぶ飲みしながら見ていたミシェルが
「ふーん。アル坊、その弱そうな流れ人と主従関係なのね」
と瞬時に見抜いて、俺に興味を再び抱き始める。
「タジマさん……だっけか。スガちゃんからバトン渡されたのよね」
「ええ。はい。大体そんな感じです」
「スガちゃんは好きだったわー。我が魔族国を延々ボコってたのがね。
あれでうちの国もだいぶ現実知ったからねぇ」
「そうなんですか……」
「戦後は色々と彼の実験に手を貸したわ。マシーナリーとの橋渡しもしてやったし」
「おばさん!?それは本当ですか!」
「何よ。周知な事実じゃないの?魔女ランツヴァハァーにできないことがあるとでも?」
ミシェルは不愉快そうに、小さな身体でソファにふんぞり返る。
「ローレシアン王国から実は、鉄製のゴンドラに皆を乗せて
私がそれをもって飛んできたのですが……」
「……ぶっ、あっはっは!!今時、そんな原始的な飛行方法で!?あははははは」
ミシェルは腹を抱えて笑い出した。俺たちは目を見合わせる。
原始的も何も、それしかないんだから仕方ない。
しばらく笑い続けたミシェルは、やっとそれが収まると涙目を手で拭いながら
「あー面白い。ゴンドラで来たって言ったわよね?」
「はい。なので、おばさんの知っているマシーナリーさんに飛行方法を……」
「あれね。本当にロープウェイなのよ」
「……?」
不可思議な顔をする俺たちにお構い無くミシェルは話を続ける。
「行ったことある町や拠点なんかに、小さな装置を置いて繋げば、
光の線が繋がって、それに沿ってロープウェイとして移動できるから
あとはゴンドラに乗るだけで上空を行き来できるわ」
「……?」
言っている意味が分からない。
ちなみにマイカはさっきからうな垂れて黙り込んでいる。
「つまり、誘導装置がいるってことよ。じゃあテストしましょうか。
ネイサン!!ロープウェイの駅設置装置お願い!」
と部屋の外に向けてミシェルが言い放つと、五分ほどして
ネイサンが「どうぞ」
と光り輝く小さな三角の装置をふたつもってきた。
ミシェルは、俺とアルデハイトをさそい、外に出て庭の角まで歩くと、
その装置のうち一つを穴を掘って埋めた。そして
「駅設置完了。我、移動せんと欲す」
と空に向けて呟く。すると上空に一本の光の線が延びていき、三分くらいすると
その線に沿ってぶら下がって、俺たちが乗ってきたゴンドラがこちらに近づいてきた。
「……マジかよ……」
「なんですか……これは……」
俺たちが呆然と見上げている間もなく、屋敷上空まで来たゴンドラは
空き地を選んで音も無く着地する。
「あとはアル坊が、これをローレシアン中央城の裏庭にでも埋めて
"駅設置完了。我、移動せんと欲す"って呪文唱えたら
私の家とローレシアン城がロープウェイの直通で行き来できるようになるわけ」
とアルデハイトに残った一つの装置を投げ渡して、
早口で説明をし終えたミシェルは、早くも背中を向けて
屋敷へと歩いていく。俺たちも慌てて、その背中を追う。
再び、応接室のソファにふんぞり返って座り込んだミシェルは
「で、今渡した三角の装置、まだ一杯あるんだけどー」
とニヤニヤしながら、上目遣いでアルデハイトを見つめる。
「……分かりましたよ。時間があるときに、ここに通いますから
あるだけ頂けますか……」
アルデハイトガックリと頭を落としてミシェルに頼み込む。
俺も一応頭を下げる。
「ずっと居てほしいけど、リングリングちゃんによると
これからあの、えっらそうなクソモルシュタインぶちのめすんでしょ?
まぁ、そういうことならたまにでもいいわ。許したげる」
輝く虹色の髪をかきあげながら、ミシェルは
「ネイサン!!さっきのあるだけもってきて!!」
と部屋の外に向けて、指示をする。
十分ほどすると、一杯の黄金の三角装置を詰めた布袋をもったネイサンが
部屋へと入ってきて、一礼して、その布袋をミシェルに渡し
サッと去っていく。
「じゃ、アル坊はこれで私の正式な弟子ね。定期的に修行しにきなさい」
「……はい。おばさん……」
とアルデハイトは渋々とパンパンになった布袋を受け取る。
「さ、マイカちゃんは、脱ぎ脱ぎして、今から経過観察しましょーねー」
勝ち誇ったミシェルは、うな垂れたマイカを連れて部屋の外へと消えた。
呆然としていると、ため息をついたアルデハイトが
「成長ホルモンの異常で、身体が小さいまま大人になる病気があります」
「うん……」
人間にもある病気だ。聞いたことがある。
「ただし、魔族がその病気になった場合、高確率で知能が平均よりかなり高くなります」
「そうなんだ……」
「おばさんもかつての私と同じ病気です。ただ彼女は小さな自分が好きらしく……」
「あえて、治療せずに子供のままだと」
「そういうことです。あれでも五百ラグヌス(年)は生きています……」
「そうか……長生きだな……」
にゃからんてぃはいつのまにか部屋の隅で寝ているミサキの懐に入って眠り込んでいる。
俺たちは二人で話し合って、まずはマイカを待つ間に、アルデハイトに
ローレシアン中央城の裏庭まで飛んでいってもらって、
ロープウェイの光の線を張る装置を埋めてもらうことにした。




