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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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84/1587

剣の魔力と強さの単位

病院のベッドで寝ながら俺は

脳内世界に入ってからの日数を数えていた。

まずは最初の日で一日、ドラゴン百日討伐+デート、

オフ一日(宇宙空間デート)、幽鬼討伐二百五十日、

オフ一日(彼氏の家デート)、キャンパスライフ百五十日、

サヨコで一日、討伐百七日、プラズマ球に敗戦で一日、それから連勝百三十日

で、菅に負けた一日と、眠っていた三日、で……えーと

今、脳内世界に来て七百四十六日らしい。残り滞在期間は二百五十四日だ。

流れ人手合わせは、三百だから……まだ六十日も残ってるのか……。

菅より強い流れ人って居るんだろうか……。

今のところ会ったことはないが……あいつにやられた敗戦で、

少なくとも、俺は戦術の練り直しをしないといけないということは分かった。

とりあえず、明日辺りから美射にもう一本剣出してもらって

菅に言われたように二刀流からやってみるか。

ボーっとそんなことを考えながら、俺は再び眠りに落ちる。


目覚めると、遠くで巨大な宇宙船が落ちていき

泣いている宇宙服姿の美射が「起きてーッ!!地球は救われたのよ!!」

という大げさなセリフを喋っているところだった。

……あくまで昏睡状態の俺をネタにデートを繰り広げるとは……。

若干、美射サイコパス説の可能性が出てきたな……。と思いながら起き上がる。

背後の建物の瓦礫の上では

「ドアボーイクロウズマイアーイ!!ドアナクロボーイアイズユー!!」

という謎の洋ロックバラード風の大げさなBGMを、

タキシードを着たにゃからんてぃが

同じ姿のロックバンドとオーケストラを引き連れて、マイクを握り締めて熱唱している。

まちがいなく英語はでたらめだが、上手い……。歌えるのか。

「但馬っ!生き返ったのね!!」

と美射から抱きしめられたので、ポンポンと肩を叩いて

「ふつうの景色に戻してもらっていい?傷開きそうなんだけど」

と一応言ってみる。

「もうちょっとまって」

と美射は囁いて、火花を上げながら遠くの海に落ちていく宇宙船を眺める。

「地球は……救われたのよ……っ」

「あーそれはよかったねー」

もう一度強く抱きしめられて、俺も一応少し抱きしめ返した。

こいつ意外と演劇とかも向いてるかもしれないな。

と、クリエイター系の才能が一切無い俺は、少しだけ、羨ましく思う。

「オオイエイアアアアアアアアアアアアアアアアア!!ナァウナァウアアアア!!」

背後ではノリノリのにゃからんてぃが、大昔のハードロックバンドのような

高音シャウトを何度もかまし始めた。


派手な映画のエンドシーンのような景色から

一変して、俺たちはどこかの爽やかな風が吹く高原の平野に座っている。

シートの上に、おにぎりやサンドイッチを広げながら美射が満足気に言う。

「あー楽しかったー」

「おまえはな」

「いいじゃないのよー。寝てる間ぐらい好きにしたって」

美射は頬を膨らませて、俺の頭を軽く突く。

「意識失って、四日目か」

「そうだね。でも、もう急がなくてもいいと思うよ」

「そうか?まだまだ強さが足りないような……」

あくまでモルシュタインを跳ね除ける強さを手に入れるのが

ここにきた目的である。

「ヒントは菅君がくれたでしょ?あとはそれに沿って練るだけだよ」

「同じこと考えてたわ」

「でしょ?」

美射は、おにぎりをハムハムと食べているにゃからんてぃの頭を撫でて

高原の風を受けながら

「もう一年無いのかー。これ終わったら但馬とまたお別れだなー」

と晴れ渡った空に向けて言う。

「ローレシアンのことが、色々片付いたら会いにいくよ。

 リングリングが場所は知ってるんだろ?」

「会えるかなぁ。忙しいしなー」

美射は微妙な表情で、寂しさをごまかすように、

俺にポットから入れたお茶を勧める。

「今日は一日、休みだな」

「そうしようよ。二人でいる時間は、大事にしないとね」

その後、にゃからんてぃも交えた三人で俺たちは

ダラダラと高原を散策したり、喋ったりした。


夜は木陰に小さな三角のテントを張り、三人で寄り添って眠る。

外では鈴虫が心地よい鳴き声で合唱している。

「ねぇ、きっと何があっても、私を探しに来てね」

目を閉じようとしていると、すでに寝息を立てているにゃからんてぃを挟んで

寝袋に入っている美射から話しかけられる。

「な……なんだよ、いきなり。行くに決まってるだろ」

「よかった……。忘れないでよ」

「地球に帰ったら、色々お前と話したいこともあるしさ」

「うん……」

「探し当てて一緒に帰るに決まってるわ」

「そうだね……」

「心配しないで、とりあえず今は俺を強くしてくれよ。

 あ、そうだ、もう一本剣くれ。なんでもいい」

「わかった。但馬の言う通りにするよ」

「おやすみ」

「おやすみ」

俺は目を閉じた。


翌朝、起きて近くの小川で顔を洗い、朝飯を食べて

色々と準備を整えていると、美射から白銀色に輝く刀身に

金色の装飾が施された光輝く抜き身の長剣を渡される。

「すげぇな……彗星剣より強そうだ……」

「王剣エクスクロスよ。私の知っている、もっとも強力な武器ね」

「もちろん脳内のみなんだよな……現実でもこれあれば

 モルシュタインに今すぐ勝てそうなんだが……」

俺は生唾を飲みながら、神秘的に輝く白銀の剣を見つめる。

「そうね。欲しかったら、面倒な手順を踏まないといけないわ」

「……何としても欲しいな、これは……」

「剣の魔力に呑まれるようなら、やはり、まだ早いわね」

と美射は指を鳴らし、俺の手の中から、エクスクロスを消す。

「ちょ……」

「但馬のためよ。じゃあどうしよっかな。

 まずは説明するか」

「ゲームで言うレベルで例えたらね。

 死んだときの菅君は82レベルくらいだったの」

「上限99だとして?」

「そう。で、但馬はまだ43くらいね。

 とはいえ現実単位では、まだ、来て数ヶ月でこれだから

 ほぼ、歴代流れ人最速の成長スピードなんだけど」

「そうか……でも、そんなもんなんだな」

「で、にゃからんてぃが補助についている時は60レベルくらいね」

「物凄く強くなった気がしたけど、やはりにゃからんてぃのお陰だったのか」

にゃからかんてぃの予知能力は地味だが、凄まじい回避能力を俺につけてくれている。

「そうね。エクスクロスを手にしたいなら

 素で65レベルは欲しいわね。そうなれば、にゃかんてぃが補助につけば

 90近い実力が出せるから、王剣の魔力に呑まれることもないわよ」

「要するにエクスクロスを握りたいなら、二人でいつか菅を超えろと……」

美射は無言で首を一回縦に振る。

「レベルで例えたら、サヨコとかマルケスはどんなもんなの?」

「サヨコさんは式神込みで57レベル、マルケスは素では12くらいかな」

「そうか……というかマルケス12って……」

「彼はその頭の良さと、それによって手に入れた様々な補助能力を

 換算すると96くらいね」

「おっそろしいなぁ……」

「ということで、レベル43の但馬さんにはこれで」

美射の出してきた剣を見て、俺はため息を吐く。

「木刀かよ……」

薄汚れて赤茶けた木刀である。

光り輝く王剣と比べたら、天と地程の差があるみすぼらしさである。

「魔族の森で伐採された霊木から創られた、霊刀シュガヌーンよ。

 刃が無いし、人殺しが嫌いな但馬にはピッタリでしょ」

俺は渋々とそれを受け取った。

うむ……思ったより手に馴染むな。彗星剣が右手で、霊刀が左手で

状況によって持ち手を変えるのもいいかもしれない。

気を取り直した俺は、

さっそく美射に「流れ人手合わせ、残り六十日頼む」

と頼んで、元居た闘技場に景色を変えてもらう。

にゃからんてぃは、素早く俺の肩に乗った。


それから六十日間、俺はにゃからんてぃと戦術を練りながら

戦い続けた。六十日の間、強敵も、とくに印象的な流れ人も居なかったが

新技は二つほどできた。

一つは「みじん斬り」

野菜の切り方のみじん切りに近い。

一、二ミリ単位の幅で相手に向けて、

超高速で二刀を横に流しながら切りつけ続ける技だ。

もちろん大きな隙が無いとできないので、

衝撃波やハリケーントルネード斬りの竜巻などで

先に相手のガードを無理やりこじ開けてからである。

自分より実力差がかなり下の流れ人に、これを試したところ

十秒で肉塊にしてしまい、俺は大慌てで美射に

ドクターストップを訴えたこともあった。

美射は「現実じゃないから大丈夫だよ」

と慌てる俺を冷静に諌めて、肉塊になった相手を消した。

思ったよりも遥かに強力なので、使いどころを選ぼうと

俺は肝に銘じる。


二つ目は「クロスカウンター斬り」

身体の前で、Xの形に交差させて構えた二刀流で相手の攻撃を受け流し、

そのまま全力で二発の斬撃を入れるというものだ。

単純だが、こちらに向かってくる相手の勢いも斬撃に加わるので

意外と致命的なダメージを与えることが出来る。

もちろん予知能力のあるにゃからんてぃがタイミングを指示してくれるから

できる技である。一人でも出来るみじん斬りとは違い、

この技は連係あってのものだ。


「終了ー三百日もよくがんばりましたーっ」

対戦相手を消してからセーラー服姿の美射が観客席を飛び降りてくる。

「お前とのデートも試合もよくがんばったよ……」

当たり前だがアクロバティックデートも延々と続いていた。

「たのしんだよ。でしょー」

ニコニコしながら美射は俺の肩を叩く。

「昔の影がさ迷う事は、皆が生き続けることと同義であります。

 籠の中の鳥は魂だけだとしても、かならず飛び立ちます」

にゃからんてぃも意味不明なことをいいながらも、何となく満足気だ。

「俺、レベルで例えたらどのくらいになった?」

という質問に美射は目を細めて、

「素で50ね。凄まじい成長力よ」

「にゃからんてぃ入れたら?」

「70レベルくらいよ。強者として、十分合格点だわ」

「おお……モルシュタインに勝てるかな」

「ちょっと足りないわね。でも仲間がいるでしょ?もう大丈夫」

「そうだな。心強い味方がいるな」

久しぶりに俺は、アルデハイトやマイカ、ザルガス、サーニャ

そしてミーシャやジャンガス、ザルグバインや元盗賊団たちの顔を思い浮かべる。

それにタガグロもだ。彼女もくるのだろう。

元気にしてるかなぁ。と言いたい所だが

現実ではまだ一日経っていないのか。そうか懐かしいのは俺だけだな。

と頭をかいた。

「今日で八百七日目かー」

にゃからんてぃを肩に乗せた美射は、

どこか寂しそうに俺の周囲をクルクルと大またで歩く。

「あと百九十三日もあんのか……」

おそらく強さはもういいだろう。文字や言語も憂いは無い。

世界の秘密の一部にも触れ、超強力な式神すら手に入れた。

そろそろ帰ってもいいころではある。

「ねぇ。今、帰りたいって思ったでしょ」

美射が顔を近づけて、鼻を俺の鼻とつき合わせてくる。

「……正直。もうよくないか」

「うーん……何か足りないものが無いか、二人で考えない?」

美射は寂しそうに提案してくる。気持ちはわからんでもない。

「良い波を待っています。サーファーとは鋭い感性そのものです」

数に入れられなかったにゃからんてぃが美射の肩で手を振り回して抗議する。

「ごめんごめん。三人でね」

「まぁ、いいか。もう少し居ようか」

「よかったぁ……」

美射は、ホッとした顔で腕を組んで、俺によりかかる。

「あ、そだ。霊刀気に入ったんだけど」

と俺は背中に挿している、霊刀を抜いて腕を組んだ美射に見せる。

このやたら硬い木刀は、彗星剣との相性もいいし、

斬撃と打撃の使い分けができる点も気に入った。

「現実でどこで手に入れたらいいの?」

「ふっふっふ。美射さんはそこは抜け目がありませんよ」

と美射はパチッと指を鳴らして、

どこかの城の執務室の中へと景色を変える。

そして棚から大きな地図を取り出すと、

ソファに囲まれた低いテーブルの上に広げた。

「今、但馬が居るところがここね」

ローレシアン中央山を指差す。

「そして現実で、霊刀があるところがここよ」

と中央山の西側の少し離れた大きな森の中心部を指差した。

第四王子領側の国王領の関所の北側だ。

アルデハイトと飛んでいけばすぐ着きそうである。

「人間の勢力圏にあるの?」

「そうね。そこに隠遁する魔族のミシェル・ランツヴァハァーと言う

 長寿の魔女の家の倉庫に、埃を被って転がってるわよ」

「どっかで聞いたことあるような……」

毒矢で苦しんだミーシャにアルデハイトが飲ませた薬を、

創った人が確かそんな名だったな。

「もしかして幽鬼だらけなの?人が近寄れない感じ?」

「だね。だからミシェルは研究に専念できていいみたい」

「知り合い?」

「菅君とも知り合いよ」

「そうなんだ。脳内世界から出たら、会ってみるか」

俄然興味が沸いてきた。にゃからんてぃも行く気らしい。

美射の肩でにゃーにゃー言っている。

まずは、出てすぐの目的ができたな。と思いながら

俺はソファに座り込んだ。

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