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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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タガグロとにゃからんてぃ

そんなこんなで、擬似キャンパスライフも、もう五十日が過ぎた。

最初のうちは、授業に毎日出席して、

真面目に聴いて、高速で情報を脳みそに叩き込まれて

昼飯を美射と食べて、また授業を聴いて

そして宿舎に戻って、夕飯食べて、雑談して寝る。

という繰り返しだったのだが、次第にそれにも慣れてきて

俺は、休み時間などに、他の学生にも話しかけるようになっていた。

他の学生は全部で七人、人間三、魔族が一、マシーナリーが一、水棲族が一

そして種族判別不明のあと一人を加えると七人だ。

種族判別不明の彼については後々話すとして、

三人の人間は、一万年前から来たアルバス、七百五十年前のカイン

そして五千二百年後から来たナージャの三人である。

適当な雑談をしていると、各年代の風俗の比較などで

盛り上がった。彼らは好奇心旺盛で、流れ人や、地球の話にも耳を傾けてくれたので

俺は余計なことも含めて、沢山喋り、感心されて気分を良くしていた。

未来のネタバレになりそうな時は隣にいつも居る美射が

上手いことストップをかけてくれたので、俺たちは気兼ねなく何でも喋った。

そして魔族は、エッカルト・トイフェルという見たことも無いような

虹色の長髪を持つ美男子だが、気難しい男だ。

独自の世界を持つらしく、いつも授業の合間に空想の世界に浸っている。

名前くらいは聞けたが、基本的には交流できなかった。

美射曰く

「魔族中興の祖だね。この大学卒業後に、魔族に民主主義と言う概念を持ち込むことになるのは、

 彼だよ。ちなみに、但馬の百倍はここに在籍することになるの」

とさりげなく、ネタバレを交えて説明していた。

マシーナリーは、「2781」と名乗った。

リサと似たような全身銀色で、能面のような顔が液体金属で出来ていて様々な表情を作る。

宇宙空間で補助機械に自分を繋ぎ、星間監視の暇つぶしに

あらゆるデータをインストールして、世界の因果律についての試算を延々としていたら

いつの間にかここにたどり着いたそうだ。

とても先の未来から着たらしく、話せることはそう無い。と自重して彼自身のことは

殆ど語らないが、我々の話はいつの間にか輪に混ざり、興味深く聞いている。

水棲族は、タガグロ・シーズという青い肌とエラを持つ、小柄な女性だ。

海底火山があるような、深海まで潜っていると穴があったので

入ってみたら、迷いこんだと真っ青な顔と豊かな金髪を揺らして、ケタケタと笑っていた。

勉学は大嫌いらしいが、ここの授業は、聴くだけで面倒なことがないので、面白いらしい。

話してみたら、面白がられて懐かれたので、

美射がいつも微妙な顔をしている。

あと、最後に種族判別不明の彼は、何と周辺の街から

大学にもぐりこんだらしい。

姿は、二足歩行のかわいらしい三毛猫が白いマントを着ている……。

冗談みたいがそのままなのである。

「にゃからんてぃ」と名乗って、適当なことを喋り捲る彼の話を

次第に誰もまともに聞くことは無くなっていった、

その内容はこんな感じである。

「私は他の世界の神であった。その世界の獣人たちはにゃからんてぃ教を信じていたが

 あるとき神である自分に背き、ワンゲル教を立ち上げたのだ。

 そして信者を失った私はこんな混沌の狭間に落とされて、

 何億という月日を有象無象と過ごす羽目になった。しかしここで私は結婚したのだ。

 そう虚無とだ。虚無はいいぞ。世界の隙間と言うのは虚無から現れる。

 その隙間こそ、我々の生きるに値する場所である。闇だ光だというものは評するに値しない。

 虚無か違うか。それのみが我々の絶対的な評価基準なのだ。

 カリカリか魚か、勿論後者がのみが我々を幸せにする。

 良いか貴様ら、カリカリというのは虚無だ。健康に良いと言う延々と続く

 貴様らの人生のような虚無なのだよ。

 我々が求めるのは、ただ魚の肉のみなのだ。DHAが含まれる魚だ。

 もちろんカルシウムもだ。つまり魚こそ、我々の目指すべき先だ。

 だが結婚はいいぞ。それが虚無とだとしてもだ。老後のためにも結婚はするべきだ

 もちろん年金も貰え、そう、非課税でだ。税金とは血と鉄の……」

ニャーニャー言いながら、

頭のおかしい、つじつまの合わない話ばかり繰り広げるにゃからんてぃは

相手にされなくなり、今では一人で喋り続けるようになった。

しかし授業は真面目に聴いているようで、その間はちゃんと黙っているので

俺たち他学生たちは、勝手に喋る変なマスコットとして、

いつの間にか、にゃからんてぃを受け入れていった。

ちなみに他の教室もあるのだが、見に行っても誰も居ない。

美射によると、他クラスの学生とは、微妙に存在する次元を調節しているらしい。

「人多すぎないほうが、集中できるでしょ?」

本当は、何十万と居るらしい。学部も各種多様なようだ。


というわけで、今日の授業も終わり、

美射との夜の暇つぶしの大学構内の散策もいい加減飽きたので

俺は今日は大学周辺の「有象無象」の織り成す街を探索しにいくことにした。

美射と話していると、タガグロが「うちもいこかな」

と後ろから付いて来た。

彼女はいつも大学から与えられた保湿のための不思議な格好をしている。

透けている服の布と身体の間に水が揺れている、なんというか着る水槽とでも言うのか

顔以外は、全身それで覆われている。その下は青い水着だ。

現実世界ではないので必要ないというわけではないらしい。

自己イメージは大事というように、美射は言っていた。

足も二本あるが、これは「擬装」なんだそうだ。本来は尾ひれらしい。

「二人きりのデートなんだけどー」

美射が俺と腕を絡めながら、かなり迷惑そうな顔をする。

というかもう四百二日も一緒にいるんだから、たまにはいいだろ……。

と俺は思いながら、タガグロも誘う。

頬を膨らませた美射と、それに構わずケタケタと雑談しながら歩くタガグロと並んで

広い大学構内の芝生の敷かれた中庭を歩いていく。

「しかし、よく作ったもんだよな」

「私の国の一番大きな学校より広いわ。水が無いのが唯一不満やけどね」

タガグロは頷く。美射は腕を組んではいるが、頬を膨らませてそっぽを向いたままだ。

「お、校門見えてきた。さー何が出るか……」

ちょっと楽しみな俺がいる。辺りは夕暮れになりつつあり、

ポツポツと点きだした街灯が大学の外の道を照らし出した。


大学の外には、煌く繁華街が広がっていた。

いつの間にか俺たち三人の隣には、ちょこんと、

夜の風に白いマントをはためかした、にゃからんてぃが立っていた。

「どうも、お父さんお母さん方。今からご帰宅ですか?」

とかわいらしい猫の顔で見上げながら尋ねてくる。

「探索だよ。帰宅はこの後かな」

「みなしごは八の字を描くと申します。傍に立つ柳の木は何色でしょうか」

首を傾げていると、不満顔を直した美射が意訳してくれる。

「ついていっていいかって訊いてるよ」

「どうしようか?」

タガグロは、ケタケタ笑いながら

「あははっ、いいんじゃないん。むしろ心強いかも」

「有象無象の中に入るからね……にゃからんてぃより変な話をするのはいないだろうし」

俺たちは、にゃからんてぃについてきていいと言って

にゃからんてぃも意味不明な返答をしながら頷いた。

電飾で煌びやかな繁華街の中に入ると、不思議な光景が目に入る。

歩いていく人たちは、皆一見、普通の人間や他種族なのだが、どこかが欠けていてないのだ。

例えば手や、足が無い者は分かり易いが、

顔の一部が欠けている者、身体の半分の色が無いもの、

上半身がぼやけているものなどが、客引きで煩い繁華街の中を歩いていっている。

概念界の化け物大博覧会を見た俺には、あまり驚くようなものではなくて

なんというか、見た目とは真逆のとても静かな光景に思えた。

まるで、誰かの思い出を悼んでいるような。

「電気だねーうちらの国にはないやつやなー」

タガグロが珍しそうに見回しながら話す。

「電気と言うのは魂の発色を模したものであります」

にゃからんてぃは、また得意げに意味のわからないことを話す。

俺に手を絡めた美射は、繁華街脇の小道の奥の小さな飲食店を指差して

「あそこがいいと思うよ」

と俺たちを誘う。


「らっしゃーい」

意外と普通の挨拶をした店員さんたちがこちらを見る。

皆、板前風の格好だ。店自体は小さな飲食店である。

微妙に設定を間違っているような印象を与える。

「へらっしゅ!!」

といきなりにゃからんてぃは飛び上がって

店員に大声を出した。その声に店員はニヤリと笑い、

俺たちを席へと案内する。

「通じるんだな……」

と謎の会話に感心しながら、俺たち角席に着席する。

小さな店内は人が疎らだ。俺たち以外に五人くらい

カウンター席や、テーブル席に座っている。皆繁華街ですれ違った通行人のように

どこか欠けていて、そして普通に店の食べ物を食べている。

テーブルに設置されたメニュー表は、古代語と竜言語の相の子のような

複雑な文字で書かれているが、俺は何とか解読できた。

「モグノのアルファ炒め?逆さ焼十地固め?ヌテーキ?」

「……なんだろ……全然分からない」

タガグロも困惑している。にゃからんてぃはメニューを一通り見ると

また椅子から飛び上がって

「闇の扉はなぜ赤い!!」

と意味不明な大声を出して、店員を呼ぶ、そして勝手に四人分の注文をした。

「美射……大丈夫なの?」

「この店なら大丈夫だと思うよ」

美射はそう言って、何故か耳の角度を気にしているにゃからんてぃを見つめだした。

「にゃからんてぃ連れて行くかなぁ。式神まだでしょ?」

「うん、まだだけど……こいつを!?」

「なになに何の話ー?」

タガグロが話しに混ざってくる。

「美射が、にゃからんてぃを俺の式神にしたいんだと」

「式神かー。たっくん、流れ人やもんなー。いいなー」

いつの間にかタガグロは、たっくんと俺のことを呼ぶようになった。

俺は一通りの身の上話は、話せるクラスメートにはしている。

「人は人の前に人を作らずに人の後ろに人を作らず、神は斜め上を飛びます」

にゃからんてぃは、俺たちの会話の内容を理解しているのかいないのか

ジッと美射の顔を見つめ返してくる。

「うちもついて行ったらダメかなー。美射ちゃんどう?」

美射が特別に事情のある俺についてきているというのも、皆は良く知っている。

「だめー!と言いたいところだけど……」

「タガグロちゃんと但馬は、殆ど同時代なんだよね」

「おお、そうなんだ。どのくらいラグあるの?」

「三ラグヌス(年)くらいね。但馬の方が遅い」

「つまりうちが、三ラグヌス捨てれば、すぐ合流できるんか」

「そんなに急がなくても、大学出て、故郷に帰ったら、その分、

 準備しながら、待ったらいいんじゃないかと思うけど……」

美射はため息を吐きながら、言う。

「頭いいーっ!そうか、それだけ準備期間があれば、色々できるなぁ」

「そうだ。うちの故郷に彗星剣っていう、埃被ってる宝剣があるんやけど要る?

 たっくんにピッタリな感じよ?」

「それならリグ・ベイシャっていう水棲族の使いから貰ったけど……」

ここには持って来て居ない。美射が勉学に武器は不要と言ったからだ。

「リグちゃんから?あれ、ということは未来の私が手回したんかな」

タガグロは真面目な顔をして、考え始める。

「はいーっ!ヌテーキ四人分!!」

と店員が緑色の煮立ったステーキの様なものを置いていき、三人で即座に

それをにゃからんてぃに押し付けて、雑談を続ける。

にゃからんてぃは

「ハムホフホフッ!!ハムッホフ!!ポン酢……ポン酢が足らんでごわす!!」

と文句をいいながらも、景気良く全員分のヌテーキを

ワイルドに手づかみで食べ始めている。

俺は幽鬼の棲む森で、偶然リグと出会った話を

タガグロに詳しく話す。

「ふむふむ。そうか。ここで聞いたうちがリグに伝えて

 たっくん達を助けたんやろな」

「そうだったんだ……」

リグは偶然を装っていたのか。確かにサポートが妙に決め細やかだった気がする。

「槍とか使う仲間居る?双雷槍バルヌウスっていう埃被ったのも、うちの地元にあるんやけど」

「サーニャさんが使うかもなぁ。と言うかタガグロは何者なの?」

踏み込んだ話をしたことはない。本人がしないからだ。

いつも雑談ばかりである。

「海帝の第四子。ばっりばりの皇族やで」

「マジか……お姫様だったのか……」

「いや、実は出来がすごく悪くてな。両親や周囲からはほっとかれてますよ」

テーブルに頬杖をついたタガグロはニッコリと微笑む。

「そうかぁ。ところでリグは何なの?」

「私の大親友で、貴族の跡取りやね。

 偉い流れ人様の血筋らしいけど、勉強してないからようしらん」

「シェカハンド!!スクラップアンドビール腹!!」

にゃからんてぃが奇声をあげながら飛び上がり、

再び近寄ってきた店員に注文を告げる。

すぐに四人分もってこられた、黄緑の炭酸水を

俺たち三人は、にゃからんてぃに押し付けて

雑談を続けた。

にゃからんてぃは「これがいいんですよわよね。奥さんの鼻には」

と誰も居ない壁に話しかけながら、炭酸水のそれぞれのコップに

ストローを刺して同時に吸い上げていた。

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