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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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一段目の内戦終了

虹色の鎧を着たザルグバインが真紅の斧を背負いなおしながら、俺に近寄ってくる。

2メートル半以上はありそうだ。こええええええ。

こんな大きい人間が居るのは重力の関係だろうかとか、地球なら巨人症だよなとか考えていると

皺の多い厳しく大きな顔から、話しかけられる。

「タジマ様だな。挨拶でけんで悪かったのう」

サーニャはザルグバインに身体を向けて、素早く跪いている。

「いえいえいえ、とんでもないですよ。お仕事大変でしょ」

「はぁ?……がっはっは!!!あんた、周りの状況、わかっとるかね?」

周囲を見回すと、鎧や武器を投げ捨てた何万もの兵士たちが俺に向けて祈っている。

ザルグバインも愛おしそうに兵士たちを見回すと、大きな声で

「おまえら!!!戦祭りは終わりだ!!タジマ様は帰ってよいと言っておられる!!」

「女王様とミイ様にはワシが話を通しておく!!無罪放免じゃ!!」

と手を広げて叫び、そして兵士たちの大歓声に俺たちは包まれる。

すぐにラングラール軍は武器や赤い鎧を投げ捨てて、砦を捨て

物凄い勢いで、散って行った。次々に砦から吐き出されてくるその数は数万はいそうだ。

ザルグバインは、細身の眼の鋭い兵士を十人ほど呼び寄せると

「敗残兵を追わぬ様に各所に通達せよ。これは国命である」

と告げて、馬に乗り込んだ兵士たちを各所に走らせる。

そして割れた鎧を着たまま、気を失っている長身のラングラールを右手で軽くつまみ上げ

「見所あると思ったんじゃがのう。どうにも視野が狭い」

と目を細めて眺めてから、膝を折って悔しそうにしているメグルスを見る。

「お前と王子は公開王国裁判じゃなあ。あとルーナムも見つけ次第な」

と低いしわがれ声で告げる。

そして砦から、出てくる人影を指差して

「タジマ様、話があるらしいですぞ」

と俺に教える。背後ではザルグバイン軍が撤収を始めだした。

ザルグバインから軽く投げ渡されたラングラールは兵士たちが数人がかりで受け止めて

鎧を脱がせて縛り上げ、馬へと乗せられ、連れて行かれる。

メグルスも縄をかけられて、屈強な七人の兵士に囲まれて連行されて行った。


顔をマスクで隠した黒装束の集団がいそいそと近寄ってくる。翼と角は消しているが

全員手足が長く、長身なので俺はすぐに気付く。魔族たちだ。

九人のその集団から、代表して一人がいそいそと俺に歩み寄ってくる。

マスクを取り、綺麗な黒髪を靡かせながら、そのシュッとしたイケメンは頭を下げる。

「……先ほどは失礼しました……株式会社アランマーク副代表のカラスラと申します」

「お、おう。な、何でしょうか?」

お前らさっきまで、俺たちを殺そうとしてたよね。というか株式会社……。

「うちの代表である。セイ様がそちらに捕らわれているはずですが……」

代表って代表取締役だろうか。つまりは社長だったんか。

俺はニヤニヤして話を聞いているザルグバインを見て、助けを求める。

巨体の老人は、無言のまま頭を下げて、魔族たちを指し示し"どうぞ"といったポーズを取る。

要するに、俺のお手並み拝見と言うことらしい。

しゃあねぇ。どうなってもしらんぞ。

「はい。俺が襲い掛かられて、殺されかけたところを何とか捕えました」

カラスラの顔に明らかに動揺が走り、背後の魔族たちもざわめき出した。

「……そ、それは、うちの代表が流れ人様に、大変失礼を致しました」

と頭を深々と下げてくる。俺はあえて怖い顔をして、カラスラの次の出方を待つ。

「少し、社員たちと協議してきます」

とカラスラは、背後の魔族たちのところへと急ぎ足で戻っていく。

跪いたままだったサーニャが立ち上がって、俺に近寄ってきて

ザルグバインの顔を見る。アドバイスしていいか無言に尋ねている様だ。

「どうぞ。ワシは冥土が近いからなぁ。若い者同士協力したらええわ」

ザルグバインは座りやすそうな、廃虚跡へと下がっていって

どっしりと腰を下ろし、こちらを見据える。顔つきがどこか楽しげである。

「どうしたらいい?」

「引き渡さぬのが吉ですね。

 王国側からすると魔族と交渉する重要なカードになります」

「分かった。なんか捕らえたの社長らしいぞ」

「ということは、あの女が傭兵会社の元締めだったのですか」

サーニャは目を真ん丸くして驚く。

「社長が前線に出てるって、人手不足なのでしょうか……」

というかどんな会社だよ。大丈夫か魔族。

しかし……一瞬だけ戦った感触ではかなり強かったからな。

前線に出てくるのも何となくは分かる。しかし社長とはな……。

サーニャのサポートが無ければ、俺はここに居ないかもしれないし。

いやしかし、ザルグバインも思いっきり前線に出てたな。

よく考えたらあの爺さんも領主だよな……。

ラングラールは、俺らに捕えられたが、

屈強な兵士に囲まれて一応前線からは距離取っていたな……。

そんなことを難しい顔をして考えていると

カラスラが黒髪をなびかせながら、こちらへと駆け寄ってくる。

うーむ、やはり男の俺でも惚れ惚れとするような長身美男である。魔族ってこんなんばっかか。

イケメンイケジョパラダイスなのか。

「交渉の余地はありますか?

 身柄を引き渡してもらえれば、我々としては何でもするつもりですが……」

カラスラは繊細な顔を歪めて懇願してくる。

「ないっぽいですね。もう王国に引き渡したので」

「そうですか……せめて、拘留中の命と健康の安全だけはここで保障して頂けませんか」

カラスラは心底困った顔で頼み込んでくる。もう泣きそうだ。

「それは大丈夫だよな?」

「大丈夫だと思います。こちらとしても大事な交渉カードなので」

サーニャの毅然とした答えに、カラスラはホッとした顔をして、目頭を拭う。

「東部の紛争終結で契約終了したので、我々は本国へと帰還します。

 くれぐれもセイ様をよろしくお願いします」

深々と頭を下げて、カラスラは魔族の一団へと戻ると、

一斉に漆黒の翼を広げて北へと飛び立って行った。

ところでアルデハイトとマイカと機械槍とザルガスたちは何をしているんだろうか

予定では、そろそろ砦の背後から忍び寄って

爆弾で鉄壁に穴を開けている時刻なのだが、そして魔族とメグルスに囲まれた

俺とサーニャのところへとアルデハイトが機械槍を投げ入れて、

一気に戦況を逆転する手はずだったのだが

何か上手く進みすぎて、その必要がまったく無くなった。

ザルグバインが俺らの想定より、遥かに強かったのもある。


そう考えていると、ザルグバインが立ち上がり

空を指差す。アルデハイトが自身の身体に縛り付けられたミノやマイカと共に

グルグルに縛られ気を失ったルーナムを連行してきた。

「王都中央山中の大通路から、兵士たち共に、二段目に侵入しようとしていた所を捕らえました」

「……それで……遅くなった……すまない……」

俺の手前に着地したアルデハイトが、ルーナムを投げ出してながら言う。

「五千くらい、お供の兵士が居たんですが、

 御頭と俺たち手下と、アルデハイト殿と、あとマイカさんで追い返しましたぜ」

マイカもか……どんな戦闘能力を発揮したかは微妙に聞きたくない。

ミノがそう言ったあとに、頭をかきながら、

「旦那。ご帰還お待ちしておりました」

と俺の前へと跪く。俺は手を握ってミノを立ち上がらせてから

「心配かけてごめんな。あれ、ところでザルガスは?」

「……二日酔い……吐き出したから……ライガスたちに頼んで……屋敷に……」

「ああ、よくやってくれたよ」

「がっはっは!!!」

といきなりザルグバインが笑い出し、俺たちはそちらを見る。

「元盗賊に魔族に元八宝使用者、そして異界の者か!!

 変な仲間ばかり集めおってからに!!がっはっはっは!!」

心底楽しそうに、ザルグバインは腹を抱えて笑い出す。

「あれ、ザルグバインの大将じゃないっすか」

ミノが小さく俺に呟く。

「知り合い?」

「ええ。御頭と飲み仲間っすよ。統治をもたいぶ助けて頂きました」

「そうかぁ。お世話になりまくりだな」

近寄ってきたザルグバインが、兜を脱いで、よく焼けたスキンヘッドを触りながら

「ワシは冥土の土産が増えたわ。大老たちやライーザとあの世で出会ったら

 タジマ様を肴に、良い酒が飲めそうじゃ」

「大将。寂しいこといわないで、また飲みに行きましょうや」

「そうじゃな。長男のバカ王子を片付けたら、皆で王都に飲み歩きに行くとしようか」

「ひゃっほー!!いいっすねぇ」

ミノと話し込み始めたザルグバインはそのままにして

ルーナムをザルグバイン軍の兵士に引き渡した後に

残りの俺たちは、廃虚に座り込んで、今後のことを話し合う。


アルデハイトが背負っている機械槍を俺に手渡しながら、

「作戦とはまったく違う結果になりましたが、そちらも大戦果のようですね」

早くも解体が始まっている、砦の方を見ながら話す。

「魔族の捕虜も捕まえたよ」

「そ、それは本当ですが、くれぐれも大切に扱ってください」

「勿論だ。株式会社アランマーク代表のセイっていう名前らしい」

俺の言葉に、絶句したアルデハイトは、しばらく考え込んで

言おうか言うまいか迷ったあげくに、口を開く。

「モルシュタイン閣下の一人娘です」

「……?モルシュタインってあの、第一王子と同盟した魔族の?」

「はい。魔族国では、相当なはねっかえりとして知られていて、

 娘を溺愛する父から軍への入隊を断られても

 自身で大学の友人たちと、軍事会社を設立したほどの困ったお方です」

「……物凄い気が強そうだな……」

株式会社もかなり驚いたが、魔族には大学もあるそうだ。

「かなりの変人として有名ですよ。国会でも悩みの種の一つですね。

 セイ様に関連しての各種法規制も検討されているほどです」

「それが、何でラングラール軍に派遣されてたんだ」

「おそらくは、間違い無い勝ち戦と見た父親が、

 せがむ娘に負けて、仕方なく手を回したのでしょう」

「ああ、絶対安全だと思いこんでいたのか」

確かに、数百隻の精鋭揃いの王都空中軍を、

学生上がりのたった七名で奇襲できるのだから、根本的な身体能力が違うんだろうな。

「流れ人が居らず、内戦が起こったローレシアンなど、

 魔族にとっては、遊び場にしか過ぎませんから」

「軍事会社ごっこさせるには、打って付けと……」

「ですね。人間たちにとって迷惑な話でしょうか……我々のマナーとしてもどうかと……」

アルデハイトは頭を抱える。セイの会社は魔族の同胞にとっても困ったものらしい。

黙って聞いていたマイカが、

「……バカ娘……いらないなら……煮るか?……焼くか?……」

とニヤニヤしながらアルデハイトに尋ねて慌てさせる。

「モルシュタイン家は魔族七名家の一つなのです。その跡継ぎは大事にしてあげてください」

「……ふふ……分かってる……あえて……言ってみた……」

粉雪が止んで、空が晴れ出した。

サーニャも口を開く。

「まぁ、色々と事情はあると思いますが、まずは大戦果を喜びましょう」

「だな」「そうですね」「……うむ……でめたい……でめたい……」

「二日後くらいには、各地からの大兵団が王都周辺に到着すると思いますので

 それまで、ゆっくりと休憩して英気を養いましょう」

「ですね。ラングラール様の敗戦に加え、セイ様が捕えられたのと、

 そしてタカユキ様の帰還を、同時に三つも知れば、

 我が国の国会がさらに紛糾すると思うので、安心して休んで良いと思いますよ」

アルデハイトが太鼓判を押して、俺たちは解散ということになった。

俺とマイカはアルデハイトと共に、王都の自室へと飛んで向かい、

中央山一段目の戦後処理は、領主のザルグバインと、

こちらの代表としてサーニャとミノに任せることにした。

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