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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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作戦会議

アルデハイトは戦地に入らないように

若干北西側に遠回りしながら、王都へと飛んでいく。

俺はサーニャからしっかり抱きつかれ、

身体の柔らかさや香水の匂いにドキマギしながら、意識をしないように必死に

雑談したり、眼下を見ながら、いつもよりも長い時間を過ごす。

「なんでマカル好きなの?」

「……マカル……青い……甘酸っぱい……まさに……青春……だ……」

「何かそれ、わかります」

俺の苦し紛れの問いかけに、わけのわからない答えを繰り返すマイカに

サーニャがむりやり乗っかってきて、雑談が混沌としてきたころ

アルデハイトが遠くを指差す。

「見えてきました。とりあえず王都中央城まで直進しますね」

「……ザルガス後回し……まずは偉い……方から……」

アルデハイトは、王都中央山の人家が広がる一段目を超えて、

二段目、三段目とスピードをあげて飛んでいく。

王都中央軍の飛行警備兵たちも、例の旗をあげているので

一瞥して、すぐに去って行く。


国王領に入って、数十分ほどで俺たちは王都中央城にたどり着く。

アルデハイトがスピードをでたらめに上げていたので

普通の人間なら凍傷とか呼吸不全くらい起こしそうだったが

サーニャはピンピンとしている。さすが元八宝使用者というべきか。

と俺は思いながら、さりげなく間にアルデハイトを挟んで

先導をするマイカに続いて歩いて行こうとするが

「……離れませんから」

とサーニャは素早く近寄ってきて、ピッタリと身体をくっつける。

うむ。こええええええええええええええ!!!

これはどう考えてもストーカーとかメンヘラというやつではないだろうか。

ミーシャがジャンガスとくっついて、やっと解放されたと思ったらこれである。

つまり美射→ミーシャ→サーニャだ。

何の歴史かは言いたくない……。察して欲しい。


周囲では、俺の顔を見て、慌てた兵士たちが

各所へとパニックになりながら伝令に走っている。

だが、誰も近づいてこようとはしない。

皆、幽霊でも見るような目で恐々と俺を見つめている。

アルデハイトは呪布が巻かれた機械槍につけていた旗を取り払いながら

「マイカさん。最短ルートで頼みます。

 日が暮れるまでには、ザルガスさんの所へ行きたいので」

日の傾き具合から言って、今、午後三時くらいではないだろうか。

雪山の村→マルガ城→クァーク要塞→王都。

と俺たちも一日で、でたらめな距離を移動している。

「……らじゃ……任せて……おけ……」

マイカは走るような速度で王都中央城の中を進んでいく。

見失わないように俺たちも走り続ける。

「……本当は……思念の部屋……も行くべき……」

進みながらマイカが俺に話しかける。

「そうなのか?」

「……冥界見た……ロックレベル……開放……されてるはず……」

「今は時間が惜しいので、後日頼みます」

「……うむ……急がば……回れ……」

マイカはアルデハイトに頷くと、脇道に入り

突き当たりの壁で、隠しボタンを押して、壁が左右に開くと

その中に出現したエレベーターに乗り込む。

「……直通……シークレット……エレベーター……」

「よし、これで。時間を短縮できますね」

アルデハイトはホッと一息つく。あれだけ走って来たのに

俺含め、誰も汗一つかいていない。

今回のパーティーは相当強力なのは確かだな。

と思いながら、エレベーターの扉が開き、女王の執務室の前の

例のガラスケースに様々な展示品が置かれている広い通路に出た。

アルデハイトは、迷うことなく

刀の"月影"が展示されているケースの前に行き、

音を出さずにガラスケースをぶち破る。

そしてサーニャに、投げ渡した。

「しばらく使っててください。サーニャさん用の武器が手に入ったら

 タカユキ様に渡してください」

月影をキャッチしたサーニャは、すぐに意味を理解して頷いた。


「さ……王子様の……登場……間に合った……」

冗談めかしたマイカが女王執務室の大きな扉を押し開けると

中には天井のシャンデリアから吊るされた縄を自分の首にかけて

死のうとしている椅子の上に立った女王ミサキが居た。

俺は次の瞬間全速力で駆け出して、高く跳躍して

シャンデリアから吊るされた縄を両腕で引きちぎり、

勢い余って反対の壁の本棚に激突して、本の洪水の中に埋もれる。

何とかして顔を出すと、呆然としたミサキが椅子の上に立ったまま

こちらを見ている所だった。

本の山を振り払って立ち上がる。

「いやーすいません。危ないところでしたね」

とあえて軽い調子で、自殺しかけていた女王へと近寄ると、

椅子から降りて、駆け寄ってきた女王から抱きしめられる。

クラーゴン、サーニャに続いて、これで三度目である。今度は華奢な身体だ。

前よりも痩せたような気がする。食べてなかったんか。

チラッと向こうを見ると、

サーニャが嫉妬のような絶望のような何とも言えない顔をしている。

いやなんか、すいません……ほんと俺ごときが、色々すいません。

と心の中で全力で誰かに謝り倒しながら、

五分ほど抱きしめられて、顔を合わせると

さらに一分ほど力強く唇にキスをされる。

どんよりした雰囲気になったサーニャは、アルデハイトとマイカに引っ張られるように

部屋の外へと連れ出され、悪い顔をしたマイカがオッケーサインを出しながら

部屋の扉を静かに閉める。


「私、あなたが帰ってくると思っていなくて……」

女王は、ソファに座って話し始める。

「いや、いいんですよ。俺が悪いです」

「良かった。本当に良かった……」

「痩せましたよね?食べた方がいいですよ」

「はいっ。今日から食べます。ふくよかな方が好みですか?」

「自然でいいです。無理に痩せる事も、太ることもありませんよ」

「わかりましたっ。貴方のために、健康になりますね」

何を言ってるんだ俺は、と思いながら

会話が流れていくに任せる。

「ずっと、居てくださいね。もうどこにも行かないでくださいね?」

少し間を空けて、俺は答える。

「この国を守るために帰ってきました。だけど……」

黄泉で大老夫妻に任されたし、まぁ菅の国だからな。

それに国家一個が崩壊したら路頭に迷う人も大量に出るだろう。

だが、たぶん、ずっとは居られないだろう。嫌だと言っても

何かが起こって、どこかへと連れて行かれるだろうし。

そういう運命なのだ、ここの世界での俺は。もう諦めた。

沈黙の先の意味を理解した女王は

少し悲しそうな顔をした後に、それを振り払うように

「私、あなたがこの世界に居る限り、もう負けません!

 この国を貴方が帰ってきた時のために……しっかり治めてみせます」

晴れやかな顔で、俺を見て、そう断言した。

そこで扉が開けられる。

「タカユキ様!!」

軍服を着た大老ミイが、俺たちに駆け寄って

俺の両手を握り締めて、再会を喜ぶ。

良かった。抱きしめられるシリーズは三回で終了のようだ。

続いて、マイカとアルデハイトと、肩を落としてどんよりした雰囲気のサーニャが入ってくる。

サーニャ……なんかごめん……。と心の中で再び謝りながら

大老ミイと女王を交えて、テーブルを囲みながら

俺たちは話し合いを始める。


「分かりました。北部の魔族は動かないんですね?」

大老ミイがアルデハイトの作戦説明に驚愕しながら訊ねる。

民主主義国家がいかに戦争をしにくい体制なのかを

丁寧に説明していた。

「だと思います。本国の内閣が戦闘開始の許可を出すまで

 国会が紛糾して、七日はかかるはずなので、その間に全戦力を

 東部のラングラール様に集中すると良いかと」

「メグルスに手を焼いているのですが……」

「……メグルス……タカユキ様……に任せろ……サーニャ……もいる……」

チラッと見ると、サーニャはまだどんよりとした雰囲気のままだ。

俺は目を逸らす。怖い。

「通常兵の制圧は、手の空いた王都中央軍にやらせてください」

アルデハイトは、流れるように作戦の概要を説明した後に

「魔族と決戦になった場合、私はしばらく身を隠します。

 その時の指示は、マイカさんから受けてください」

大老ミイは、しばらく微笑んでいるマイカを観察して

「わかりました。信じましょう」

と言った。

「北部の守備は、やはり八宝使用者が?」

「はい。第四王子領に居るコムラス以外の三人を向かわせましたわ」

「ナギ、グレンベル、ハーリーの三人です」

「もしも正面衝突した場合は、あっさり全滅すると思うので、

 予めタカユキ様に、使い手の居なくなった八宝の使用許可をくださいませんか?」

アルデハイトははっきりとと言い切り、大老ミイは顔を歪める。

「それほどに、率いるモルシュタインは強いのでしょうか」

「全盛期のスガ様に少し及ばないくらいと言えば、正確かな……」

「……魔族兵も……やっかい……アルデハイトが……七千……居る感じ……」

うわああああ。それは勝てる気がしない。

絶望的じゃないか。頭を抱えていると

女王室の扉の外から兵士の声が聞こえてくる。


「ミイ様!!ゴブリンとオークの二十万の集団が、王都目指して北上し始めている模様!!」


「第四、第二王子領からも、大兵団が王都へと向かっているようです」


「なんだと!!」

青い顔をした大老ミイを落ち着けるように、ニヤリとした顔のマイカが

「……すべて味方……第四王子には……手を打っておいた……」

「あの手紙、ミーシャたちを待たすためのものじゃなかったのか」

俺は即座に気付く。あの村に置いていった手紙だ。

「ジャンガスさんに、タカユキ様の妹君であるミーシャさんとの婚約をダシに、

 第四王子を動かしてもらいました。流れ人の親族は無碍にはできませんからね」

「……それに、特に彼には、ここで大功を残しておいて貰わねばなりませんから」

アルデハイトが意味ありげに呟く。

「……クラーゴンの方は……我等……言わずとも……やる……勝機……逃さない……」

「ゴブリンたちは?」

不安そうに大老ミイがマイカに尋ねる。

「……マシーナリーの……口ぞえ……だろう……。

 ゴブリンたち……タカユキ様……慕っている……」

難しい顔をして一応頷いたふりをするが、俺自身も完全に忘れていたことである。

そう言えば、オークのセミーラは元気にしているのか。

ミノとの仲は続いているんだろうか。

「嬉しい想定外でした。下等生物たちにも恩を感じる心はありますからね。

 その数ならば、コケおどしと、弾除けくらいにはなりますよ」

アルデハイトは見下した物言いで、ニッコリ微笑む。

大老ミイはすぐに室外で待機していた兵士たちに

全軍味方だということを伝達させて

混乱を収拾させるように手配してから、

「助かりました。直ちに配置転換を始めて、明朝には作戦にとりかかります」

「八宝の方は、少し考えさせていただきます」

と俺たちに告げ、通路に出て、階下へと足早へ向かって行った。

女王は、隣に座る俺の手を握り締めて、

「これで勝てますか?」

と残った全員を見回して問う。アルデハイトは涼しげな顔で

「現状の育ちきっていないタカユキ様と、元八宝使用者サーニャさん、

 そして八宝使用者三人と、全軍合わせて五十万程の異種族兵が北方に集合すれば、

 我ら魔族軍も、二百人程度の犠牲は覚悟するでしょうね」

「全然ダメじゃないか……怖い指揮官に加えて、兵士が七千も居るんだろ?」

「いえ。これが抜群に効果あるのです」

アルデハイトは心底嬉しそうに

「戦況がそんな抜き差しなら無い状態に陥ったと本国が知れば、

 国内の反戦運動が活気付いて、内閣支持率が急落するのを恐れ

 すぐに撤退命令が出ることでしょう」

「……その後は……その巨大兵力で……第一王子領……再併合……するだけ……」

「人命重視なんだな……」

「はい。数の少ない我々にとって、同胞の命はこの星より重いのです」

戦争はしにくそうだが、ある意味、

そのくらいが平和を維持するにはいいのかもしれない。

しかしどこかで聞いたような話である。

「まぁ、まずは、ここの東部に取り付いている

 ラングラール様に土を舐めて頂きましょう。

そのためにはザルガス殿たちを、引き入れないと」

「……ラングラール……叩きのめさぬと……始まらぬ……」

と言いながらアルデハイトたちは立ち上がり、女王に一礼すると

部屋から出て行った。暗黒オーラを身に纏ったサーニャも一礼して、うな垂れながら続く。

俺も一礼して、出て行こうとして、ミサキに頬に素早くキスをされる。

「今度、居なくなるときは、教えてくださいね。お供しますから」

と真っ赤な顔で、言われて

「……はい」

と搾り出すように答え、俺は逃げるように扉を閉めて出て行く。


通路ではブツブツとサーニャが端で独り言を言っている。

「ライバルが女王陛下とは……どうしたら……忠誠心と愛……どちらを……」

内容が怖いので俺は距離をとる。全て不可抗力である。

むしろどうしたらいいんだよ!!全員とつきあえばいいのか!!

全員嫁にして、やりまくればいいのかよ!!

しかし、どう考えても、それは俺の主義ではないし、

もしそんなことやったらさすがに……誰かに刺されるんじゃないだろうか。

「行きますよ。夜までにザルガス殿たちに生存報告と、作戦への合流を頼まないと」

アルデハイトは、呟き続けるサーニャの手を引っ張って

通路を歩き出す。それに続く俺に、マイカが俺の背中を叩きながら

「……もてる……男……大変だな……」

とニヤニヤと囁いた。

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