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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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55/1587

ジャンガス

マイカの先導で広い城内を何とか抜けて

一階の中庭に出る。

頬に青あざがあるジャンガスが槍をもって立っている。

「ちっす。だいぶ待ちましたよ」

と言ってくる。

「ああ、制裁のための暴力ですか。暴力はいざと言う時のためのものです。

 日常的に使うのは感心できませんね」

とアルデハイトが顔を逸らして、横目でジャンガスを見る。

「いや、やっぱ殴られるっすよね。しかたねぇっすわ。たははっ」

辞めると言ったら、上官から殴られたんだろうなと俺は思う。

ミーシャが無言で、荷物の中から塗り薬を出して

ジャンガスの頬につけてやる。

「あざっす。わりぃす」

「勘違いすんなよ。私は兄さん一筋だ」

「ちょっと勘違いしちゃうかな。ははっ」

塗り薬を丁寧に塗るミーシャを見ながら

こうして兄離れしていくといいなぁと俺はロ・ゼルターナ神に祈った。

そして気付く。

「馬車も何も手配して無いんだけど、いいんかい」

「……アルデハイト……居る……」

マイカはいつの間にか手にもっていた折り畳まれた旗を広げてみせる。

かなり大きい、遠目からでも書いてあるものが確認できそうだ。

「……女王部屋前の……通路で……もらった……」

「なんて書いてんの?」

「……ローレシアン……公認……飛行物体……大老ミイ……」

「私の美学には反しますが、まぁいいでしょう」

アルデハイトは仕方なくそれをジャンガスの槍に取り付け

自分の背中に括りつける。

「……っぷ」

「笑うな。わざわざやってくれてるんだから」

笑い出しそうになったミーシャの口を俺は慌てて塞ぐ。

ジャンガスは

「いや、かっこいいっすよ。兄貴なんて名前でしたっけ」

とアルデハイトに名前を問う。

「アルデハイトです。どこにでも居る魔族なので、忘れてもかまいませんよ」

「いやいやいや、恩人っすからね。あー大冒険かあああ。やったあああ」

ジャンガスはテンション上がりまくっている。

そのまま俺たち四人に名前を聞いていく。

それに冷静に答える他四人は今までいろいろあったのでわりと平常心である。

俺はアルナをちゃんと助けられるのかということが心配で

はしゃげない。

「……あまりはしゃぐと……怪我するぞ……」

「マイカ姉御は、その歳で人生経験豊富そうっすね」

「……人は……見た目では……分からない……」

マイカは怪しげにフッと笑うと、自分の身体をアルデハイトの長い右足に括りつけ始める。

「……早い……もの……勝ち……快適な空の旅……だ……」

「あっ!そっか魔族だから飛べるのか……左足もらった!!」

ジャンガスは左足にマイカから縄を貰って自分を括る。

アルデハイトはため息をつきながら

「ミーシャさんは荷物を間に挟んで背中にどうぞ。タカユキ様は左手で構いませんよね?」

「どこでもいいぞ。どうせ、うっ血もしないし、疲れないからな」

全身に四人を括りつけたアルデハイトは、翼を広げて一階中央の庭園を低空飛行する。

兵士や女中さんたちが見守るなか、背中から伸びている旗が大きくはためく。

「大概な格好ですが、これが一番効率良い移動方法ですからねぇ……」

王都中央城の巨大な正門を低空飛行で潜りながら、アルデハイトが言う。

「うっひょー!!すげぇ!!飛んでるぜ!!いえーい!!」

ジャンガスは興奮しっぱなしだ。下に手を振りまくっている。

「……空、気持ちいい……空……好き」

マイカも満更ではないらしい。

天気雨がパラパラと舞い落ちる中、俺たちは進む。

城を出るとすぐに、王都中央軍の空中機動隊らしき

二人乗りの昆虫の羽根のようなもので飛ぶ、飛行機械に乗った兵士が近寄って来たが、

旗の内容を確認すると、機械の上から素早く敬礼して去っていった。

「あれが怖いんですよ。人間の勇者とマシーナリーの技術の合体です」

飛ぶスピードを少し上げ始めたアルデハイトは、愚痴る。

「俺も飛行隊に転属願い出しまくったんですが、二十回以上は蹴られましたね」

ジャンガスが去っていく空中機動隊を羨ましそうに見つめる。

「やっぱり、花形なの?」

「そりゃそうっすよ。モテモテですね。

 ローレシアン兵士なら一度は憧れる頂点ですよ」

「そうかぁ。強いのも何となく分かる気がするな」

眼下には王都のだだっ広い街が広がり、

しばらく見ていると、その一段下の俺の領地が見えてきた。

中央に盛り上がった形の王都を包むように東西南北に広がっているようだ。

分かってはいたが、相当な広さである。ネーグライク国よりも三段目の方が広いだろう。

「あれ全部は、いらんよなぁ。しかも一段下もだろ?広すぎるわ」

アルデハイトは「ふっ」と笑いながら

「領地なんてものは、生物が決めた形式でしかありません。土は土です」

とさっき食堂で話したことと似たようなことを繰り返す。

「タカユキ様!!いらないなら俺にちょっとくれねっすかね?悪徳領主になりたい!!

 女囲いまくって、裏金ためこむっすよ。思いっきり堕落してえええええ!!!」

「……ダメ……王道を……歩め……」

話を聞いていたジャンガスが俺にねだって、何故かマイカに怒られる。

「マイカ姉御はきびしいなぁ。あ、二段目が見えてきましたよ!!

 でっけええええええ!!これも全部一人のものとかいいなあああああああ!!」

一々リアクションが新鮮なジャンガスは放っておいて

俺は気になっていたことを尋ねる。

「ミーシャ寝た?」

「ええ。怒りすぎて疲れたようです」

「女王も困ったもんだよな」

「……恋する女は……美しい……無下にするな……」

「そうは言ってもなぁ……」

王都中央山の一段目が見えてきた。アルデハイトに訊ねる。

「一段目の領主って誰なの?国王?」

「大老ザルグバインの領地ですね。

 彼と彼の部下達が日々、国王領防衛に目を光らせています」

「元々、二段目と三段目は誰の領地だったの?」

「夫妻であった大老マムーシャと大老ミゲルスの共同領地でしたが、

 賢明な二人が子供に継がせることを拒否したので、

 二人の死後、7ラグヌス(年)ほど、王家直轄地になっていました」

「資産を受け継げなかった子供たちはどうなった?」

「独立して学者や、占星術師として人間界に名を馳せているはずですよ。

 彼等の邸宅はタカユキ様の領内にあるので、落ち着いたら、訪ねてみてはいかがですか?」

「初めて知った!!兄貴頭いいな!!」

聞き耳を立てていたジャンガスがアルデハイトを褒める。

「……知ること……大事……知識は……武器……」

マイカがまたジャンガスにチクッと言う。

妙に厳しいのと同時に、こんなにマイカが

他人に何かを教えようとしているのを見たことが無い。

同僚のアルナにさえ、これほどアドバイスはしていないと思う。

「ういっす!!みんなについていって耳学問します!!」

ジャンガスはあくまでポジティブである。

一段目に入り、何度か王都中央軍の小型飛行艇とすれ違うが、

連絡がいっているようで、俺たちを皆スルーしていく。


アルデハイトは王都中央山を過ぎて、そのまま西へと飛び続ける。

マイカは目的地周辺の大まかな地形をアルデハイトに告げる。

「今、下方に見えるのが第四王子領ですね。

 無口なルナテリス王子が治める領地です」

村や城が点在しているのが見える。

「王子の居城に挨拶していかないでいいの?」

「そうですねぇ。連絡は、いっているはずなので良いでしょう。

 帰りにでも寄りましょう」

「ところで、王子領って中央の国王領に五つくっつくようになってて

 ローレシアン王国全体の形は星型って聞いたんだけど、

 星の右足の部分ってどうなってんの?」

何となく疑問に思ったことを尋ねる。

西寄りの南部に第二王子領があるのは分かったが、

星型ならばローレシアン南東にあるべき、それの存在を誰からも聞いたことがない。

「ああ、第五王子領ですか。十ラグヌス前にだいぶゴルスバウに削られて

 かなり小さくなってますよ。若年だったアルス王子も戦乱の最中に行方不明のままです」

「今まで一言も聞かなかったぞ」

「……王子たち……仲……悪い……中央政界も……王族……きらい……」

「権力の濫用を防ぐために、あえて不自然にスガ様が作った結果ですよ。

 うまく連携がとれないのです」

そしてアルデハイトは小さく呟く。

「……あの謁見室をみる限り、自分の死後に国が自壊していくのも計算のうちかもですが……」

それにしても大老ミイから何か説明があってもいい気がするけどな。

北部にあるはずの第一王子領のことも俺は良く知らない。

第一王子がムカつくやつだということくらいしか。

「……ついでに取り返しますか?今なら余裕ですよ」

「いや、作戦も無しでいくと、相手方の人死にが激しそうだからやめとこう」

たぶんこの力を何も考えずに軍隊に向けると、でたらめな数を瞬時に殺すと思う。

それは俺は絶対に嫌である。

「賢明だと思います。急ぐことはありません」

「あ、マイカ、ルーナムてどうしてるの?」

お世話になった第三王子補佐官だ。俺たちを王都まで連れて行ってくれた。

あれだけ恩がありながら、今更思い出す俺も俺である。

「……だいぶ前に……帰った……よろしく言ってた……」

よかった。アルナのことは知らずに帰ったわけか、

早く取り返さないとやばいことになりそうだな。

ジャンガスはふむふむ言いながら、さっきから俺たちの話を黙って聞いている。

さっそく耳学問を始めたようだ。素直な性格らしい。


「お、あそこですよね」

マイカが「……そうだ……」と答えたのを聴いたアルデハイトは

第四王子領の北西端のうっそうと広葉樹が茂る山中に

ゆっくり着地していく。

そして目前に広がる大きな洞穴の入り口を指差す。

「この中ですね。あと、この周辺山脈全体が幽鬼の巣です。

 まだ日があるので大人しいですが」

とアルデハイトは空いた左手だけで、旗とミーシャを背中から器用に降ろして、

自分の手足から身体を外している俺たちを眺める。

「私は幽鬼は好きですが、人間のジャンガスさんとミーシャさんは

 この場所に、長居はしない方がいいかと」

身軽になったアルデハイトは機嫌良さそうに、真っ暗な洞窟の中へと入っていく。

俺は相変わらず寝ているミーシャを素早く背負うと、

食料や日用品などを詰めたナップザックを肩に引っ掛け、

マイカとジャンガスと共に、アルデハイトを追う。

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