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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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31/1587

国王領へ

旅館へと戻り、ロビーに入り

レインコートを脱いでいるときにミーシャがふと気付く。

「アルデハイトが皆を王都へ飛んで連れて行けばいいんじゃない?」

あからさまに嫌な顔をしたアルデハイトは

「タカユキ様だけなら良いですが……いえ、百歩譲って人間のお仲間たちも良いでしょう。

 しかし、オークやら馬、そして馬車は嫌ですね」

ふーむ、プライドの問題か。

とはいえ、もし俺が彼の立場なら、便利屋扱いされたら間違いなく嫌だろう。

まぁ……しばらく、ここで待っていれば行けるようになるのなら、

わざわざ嫌な思いさせてまで、無理させることも無い。

それにミルバーン城を勝手に解放したことに続いて

また、国家や秩序を勝手に飛び越えることにもなる気がする。

たぶんこの先に、ルーナムさんが用意した王都までの手続きや手順があるだろうし、

勝手に飛んでいくのは、もう控えた方がいいだろうな。

と俺は思った。

しかしミーシャは食い下がる。

「アルデハイトと兄さんと私で、王都への道を塞いでいる雷精とかを討伐するのは?」

何とかしてください。という顔を俺に向けたアルデハイトに苦笑いしながら

「ミルバーン城のことは解決したわけだから、

 そんなに先を急ぐことないんじゃないかな」

「アルデハイトも自分が嫌な事をよくやってくれたよ。ちょっと休ませてやってくれよ」

「というわけです。では私は体力回復のために長時間睡眠に入ります。

 今後のことを考えると今がそのタイミングでしょう。では、タカユキ様と妹様」

アルデハイトは一礼すると、軽く手を振って二階の自室へと消えていった。

お、人間に興味のないアルデハイトがミーシャを俺の妹だと認識したようだ。

それだけでも十分かなと俺は満足した。

不満顔のミーシャの背中を押して自室へと帰る。

地球の時間なら大体今朝九時くらいだろう。

昨日丸一日と、今日の早朝と忙しかったので、今日はこれからゆっくりするのもいいかもしれない。


と思いながら階段をあがると俺の部屋の扉の前で

薄い綿の服を着たセミーラが扉を叩いて

「あけておくれよぉ!!」

と叫んでいる。扉の向こうではアルナが

「タカユキ様はいませーん!!お帰りさーい」

と必死に叫んでいる。

セミーラはパッと見ぽっちゃりした婦人に見えなくも無い。

そして彼女は俺の顔を見るなり駆け寄ってきた。

「まってたんだよぉ。さ、さっそく一発やろう」

次の瞬間飛び上がったミーシャの鉄拳がセミーラの頬を襲う。

余裕でそれを受け止めたセミーラは、ミーシャを押し返した。

吹っ飛ばされたミーシャがクルクル回って器用に着地する。

「タカユキ様、この娘だれ?」

ああ、初対面だったかと思い出して

「ミーシャ、こちらはオークのセミーラ。昨日話しただろ?」

「そしてこっちは俺の義兄弟のミーシャ。

 とはいえタジマの性をもつ正式な家族なんで、大事にしてやって」

「あ、妹さまでしたか。これはご機嫌麗しゅう」

頭を下げるセミーラに、怒りが収まらないミーシャは

「兄さんは私のものだ!!近寄るな!!」

と激しくセミーラの顔を指さし、俺をひっぱって室内へと入る。

そしてバタンッ!!という大きな音をさせて強引に扉を閉めた。

俺は室内からセミーラに

「ごめんなぁ。ヒマだったらモーラがオークやゴブリンの生活について

 もっと聞きたがってると思うから、やつに話してあげて」

「はぁい……」

セミーラは甘えたような声を出して、モーラの部屋の方角へと

足音を響かせ去って行った。


「こわかったぁ」

アルナが床にへたり込む。ミーシャは顔を真っ赤にして

「あいつ!!絶対シメてやるわ!!」

と天井に向かって腕を振り上げて宣言する。

「オークって性欲強いのな……」

「堕落してる!ロ・ゼルターナ神から天罰が落ちればいいんだ!」

ミーシャは激しく批判する。

「お、おう……」

種族の特性ならしかたないんじゃなかろう。

とはいえ俺は彼女とやる気はまったくないんだが。


その後、俺たち三人は

腰に下げてきた彗星剣の模様や刀身を観察したり

アルナの王都での、母娘そしてたまに帰ってくる

ダメ親父シンタロウの織り成す、愉快な貧乏暮らしを聞いたり

そしてミーシャが行商で行った各地の話を

幼少時のあやふやな記憶で語ったりした。

ふと思い出して俺は尋ねてみる。

機械種族(マシーナリー)って会ったことある?」

人間、水棲族、魔族、ドラゴン、幽鬼族は一応会った。

あと会えていないのはマシーナリーだけである。

「うーん。私はないなぁ。

 あんまり詳しくなくて、さっきのアルデハイトの

 浮遊城の話も始めてきいたくらいだよ」

「王都に住んでいた時に、使節団が歩いていたのは見ました。

 でもみんな人間とそっくりでしたよ」

「形を自在に変えられるのは聞いたことある」

「そうか器用なんだな。ありがと。いずれ会うんだろうな」

「いい人だったら良いですね」

アルナが俺たちに微笑んで、ミーシャが頷いた。

その日の残りはずっとダラダラと過ごした。

ミーシャは時々、部屋を訪れるアルナと馬たちの世話をやりにいっていた。

外は相変わらず土砂降りの雨である。


翌朝早く、ルーナムが部屋の扉を叩く。

「雷精とナルバスの群れが南へと移動し始めているようです。

 出発するなら今がよいかもしれません」

「分かった、すぐ朝食食べて準備する。二人も起こすわ」

寝ぼけ眼の俺は了解した。

一時間ほど後に、すっかり準備を終えた全員がロビーへと

所狭しと並ぶ。一人だけ色の違うアルデハイトを除き、

全員灰色のレインコート着用済みだ。

アルデハイトは俺に

「少し、空から周辺の様子をうかがって参ります。

 御用のときはあの黄金笛でお呼びください」

と告げて外へと出て行った。

俺はザルガスとルーナムにその話を教え、

二人は少し安心した表情で頷く。問題ないようだ。

……彼らとしては面倒の種をもってくるアルデハイトは

居ないなら居ないでいいのかもしれない。

以前の元盗賊団十五人に、ルーナム、メイド二人

そしてミーシャと俺に

ピチピチレインコートを着たセミーラを加えて

再び、俺たち一団は街を出て、王都への大道へと戻り、そして進みだした。


土砂降りの中、二台の馬車と馬二頭、そして徒歩の集団が

レインブーツで地面の水を跳ねながら歩いていく。

「なぁ、このレインコートやブーツってどうなってんの?」

疑問に思ったので隣を行く馬上のミーシャに尋ねる。

「マインクの花油を皮の上から塗ったものだよ。

 塗ってから一ワンハー(月)ほど干したり熱したりすると

 こんなになるんだって」

「そうなんだ」

一つ賢くなった気がする。

そう思いながら俺は雨で視界の悪い平坦な道を皆と進んでいく。

数時間進むと、道の左側遠くにパチパチ光って飛んでいる大きな物体が数体見える、

その近くには数体の横に広がったピンクの巨大なトカゲが蠢いている。

「雷精とナルバスですね」

ルーナムが馬上から教えてくれる。

「光るほうが雷精で、ウゾウゾ歩いていってるほうがナルバスだよ」

「あれがそうか……」

なるほど関わったらめんどくさそうな感じである。

「なんで一緒に移動してんの?」

「雷精の光に別の水棲族が引かれてやってくるところを

 肉食のナルバスが食べているそうです」

「そうかー自然の理なんだな」

「あれは小集団ですが、南には何万対もの大集団もいます」

「何日も道の通行止めてたってやつね」

「そういうのに居る雷精のおっきいのは、変なこと沢山喋るからね。あれは怖いよ」

経験したことあるらしいミーシャが身体を震わせる。

「そうなんだ」

「死者からの言葉とも、予言とも云われていますが、我々人間にはわかりません」

ルーナムが俺らの左を南側に進んで行く小集団を眺めながら言う。

俺たちはそのまま土砂降りの中を進み続ける。


昼過ぎに小さな町で小休憩をとっていると

虹色のレインコートを脱ぎながらアルデハイトが帰ってきた。

小さな酒場には入りきれずに、寒さで疲れている元盗賊団たちと大食のアルナ

まとめ役のルーナムを中に入れ

俺とミーシャとセミーラ、マイカは馬車内で昼食をとっていた。

「タカユキ様」

「ん?何だ」

パンをかじりながら俺は尋ねる。

「情報収集ついでに、雷精の長に色々と訊いてきました」

「おまえ、喋れんの?」

ついさっき話していたことである。

とはいえこいつは、魔族だから不思議ではないのか。

「ええ。人間たちにも分かる言葉で説明すると

 "南で大乱が起こる""王都に流れ人がたどり着く""船が浮かび上がる"

 と予見していました」

「二つは分かるけど、最後のは?」

大乱はゴルスバウとローレシアンの衝突、流れ人は俺のことだろう。

「私にもさっぱりですが、

 "兎穴の因果"と"底なし沼に飛び込んだ双頭の蛙"という言葉を使っていたので、

 おぼろげに推測するに、どうも我々に関連することのようです」

「そうか……」

ちょっと難しすぎて、よくわからないが、

いつか海でも航海するのだろうか。とりあえずは覚えておこう。

「みらいは……つねにかわる……当たるとは……かぎらない」

「……」

あれ以来、すっかり中二病患者になってしまったマイカの発言を流しつつ

黙々と食べているセミーラに

「だいぶ馴染んだなー」

と声をかける。

「そうかい?まだまだだよ」

意外な謙遜した言葉はアルデハイトが睨んでいるからかもしれない。

そして彼は俺の耳元で囁く。

「あれとも仲良くせねばなりませんか?」

よほどオークと一緒に居ることが嫌らしい。

「苛めたりしなければ、放っといていいよ」

「……胸のつかえが取れました」

アルデハイトはホッとした顔で、レインコートを被って

「また情報収集へと言ってまいります」

と一礼して外へと出て行った。

「色々と知っとかないといけないんだろうな」

「魔族のお仕事も別にあるのかもね」

ミーシャが意外と鋭い意見を言い、それだなと俺は直感的に思った。


長い休憩の後に昼過ぎに俺たちは再び王都へと歩き出す。

町から出てしばらく行くと、道脇の看板に何かが書かれているのが見える。

「ここからはローレシアン中心部、国王領です」

とルーナムが俺たちに教えてくれる。

ここまで休憩を抜くとおよそ二日半か。

道行く人たちは疎らだが、さっきまでと比べると増えてきた。

「もう少し歩くと、大きな関所が見えてきます。

 私に任せていただければ問題なく通れるかと」

「頼むよ」

ルーナムは俺たちを進ませたまま、後ろへと関所の存在を伝えに行く。

「もしかして、結構ややこしい?」

「ローレシアンは民のため、めったに関所を置かない国で有名なんだけど

 かわりに数少ない関所がとても厳しいんだよ……」

訊かれたミーシャがライオネルの上でうな垂れる。嫌な思い出があるのか。

「セミーラは我等が捕えたということにして

 馬車内に手錠をつけて、元盗賊団の数名と入ってもらいました」

「アルデハイトはお呼びにならないでください。ややこしくなります」

「憲兵からお名前を聞かれたらはっきりお答えください。

 アルデハイト、セミーラ以外の名前はすでに関所にも通達されています」

戻ってきたルーナムが俺たちにもすばやく指示をだす。

「わかった。いわれた通りにして、大人しくしとくよ」

「同じく。憲兵ほんっといやだなぁ……」

さらに歩くと、土砂降りの視界の中、

南北に延々と広がる2メートルほどの低い石で造られた城壁と

横に広い開け放たれた大きな城門が、前方にうっすらと見えてきた。

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