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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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巨大都市ホワイトリール


……そこを右じゃ。では、わらわは国に帰るぞ……


再び丁寧に帰り道を教えてくれたリグに再び感謝をしつつ

俺たちは銀鈴を鳴らしながら、足早に森の中を進む。

「頭の中に言葉が響くって、不思議だねえ……」

ミーシャが衰弱したライガスを乗せたライオネルの綱をひきながら述べる。

「テレパシーってやつですわ。水棲族は水の中で生活しているから

 言葉や目を使わず、相手の位置を知り、交信するとは聞いていましたが……うぅむ」

ザルガスが髭面で唸りながら感心する。水棲族とは初対面だったようだ。

「不思議な出会いだったけど、とにかく俺はライガスが無事でよかったよ」

俺は後ろを振り向き、馬の背中に括りつけられたライガスを確め

安心する。

「ほんとすいませんねぇ……ご迷惑かけちまった」

「仲間でしょ!」

小柄なミーシャがジャンプして大柄のザルガスの背中を叩いて

「へへ、ありがてぇこった」

ザルガスは感謝しつつ照れている。

「まぁ、リグさんともどこかで会うことがあるでしょう。

 とりあえず俺たちは広場へと向いましょ、お、」

ザルガスが前方を指をさす。兵士たちと進んできた林道が見えてきた。

「ここまでくれば、さっきの広場へと向うだけだな。急ごう」

俺たちはさらに速度を速めて、小走りに進んでいく。

林道を抜けると、広場には

馬に乗ったルーナムと百人ほどの赤鎧の歩兵、そして十三人の元盗賊団たちが待っていた。

俺たちの食料などを積んだ馬車もきちんといる。

俺たちに気付くなりルーナムが馬で駆け寄ってきた。

「ご無事でなによりです!!」

ルーナムは馬上から手を合わせて、俺たちの無事に感謝の祈りを捧げると

「若様は軍の安全を重視して、メグルスと先に森を抜けられました」

「我々も急ぎましょう。あと三ダール(時間)もすれば日が暮れます」

と俺たちを急かす。

駆け寄ってきた、安全な場所で十分に休息して

血色のよくなった元盗賊団たちが

わーわー言いながらライオネルからライガスを降ろし

馬車に丁寧に乗せると

馬車の中から不要なものをさらに広場の地面に捨てていく。

そして大人二人分くらいの荷物を捨てると

「御頭!!旦那!!どうぞ!!」

と皆で俺たちの周囲に近寄ってきて、全員でひざまずき、

一斉に馬車へと伸ばした利き腕を向ける。

「おう、すまんな。働きすぎてもう限界だ」

ライガスは素直に馬車へと向かい、まったく疲れのない俺は

「パナス、乗ってやってくれ」

と細身のパナスにゆずった。彼も村から働きづめである。

「旦那すまねぇ、皆いいか?」

「おうよ!!」

すっかり元気になった残りの十二人の屈強な男たちは

一斉にパナスの背中を押して馬車へと乗せる。

ミーシャはライオネルに水を飲ませると

「もうちょっとだからね。頑張ってね」

と身体をさすり、飛び乗る。

「よし、よいですな。では森をでますよ」

馬上のルーナムが鈴を鳴らしながら、広場の奥の狭い道へと進み始める。

兵士たちは瞬時に二列に隊列を整え、その後ろを整然とついていく。

俺とミーシャがその後ろを続き、パナスが御者をした馬車と

その後ろから十二人の男たちが力強く歩き出す。

「みんな、安心したみたいだね」

「そうだな。仲間が無事で元気が戻ったみたいだ」

ミーシャがライオネルの馬上から徒歩の俺に微笑んだ。


兵士の背中を見ながら

一時間半程ほど林道に沿って歩き続けると、恐ろしい幽鬼の棲む森をあっさり抜ける。

広場を出てからは、森の中でも恐ろしいうめき声や笑い声の類は聞こえなかった。

あの樹精たちを倒したので、森の反対側の幽鬼たちは沈黙したのかな

とか適当な想像をめぐらせていると、

ライオネルとともに先へ駆け出していったミーシャが

「兄さん!!凄いよ!!」

と俺を呼びに来る。

「んー?」

前方で一時休止して、ルーナムと何かを話し合っている

百人の兵士たちを追い越し、

俺はライオネルの後ろを。数百メートルほど走ってついていく。

するとそこは切り立った崖だった。

下までは五十メートルと言ったところだろうか。

「うわ……」

俺はそれよりも崖の下から地平線まで広がる光景に目を奪われる。

周囲を高低それぞれの山々に囲まれた、とてもとても広い平野の中心に

高い塔を何本も持つ、真っ白な巨大な城がそびえ、

その城壁の周囲を何十万という物凄い数の家が……というか巨大都市が囲んでいる。

さらに街の周囲には広大な小麦畑やら巨大な菜園が幾つも、幾つも並び、

それらがまとめて、暮れていく夕日に照らされている。

地平線の端には山と山を繋ぐとても長い城壁も微かに見える。

いつのまにか俺たちの後ろに来ていた元盗賊団たちが

その景色を次々に眺め、感嘆をあげ

「これがローレシアンの都ですか……すげぇや」

「こんな巨大な街みたことねぇ……」

「見ろ……ボロい家が一軒もねぇぞ……」

と口々に呟く。

馬車から降りてきたザルガスが

「いや、ここは地方都市にすぎねぇ。たぶんラングラール殿の居城だ」

と皆に教えて、盗賊団たちはさらに目を丸くした。

「だよな、"知識のモーラ"!教えてくれ!!」

ザルガスが元盗賊団たちの背後にぼーっと立っている

今まで目立たなかった緑の頭巾を被った

猫背の暗そうな茶髪の男に声をかける。

「はい御頭。あれはローレシアン領、再東端に位置する地方都市ホワイトリールです。

 そして、ラングラール王子の領土の中で、経済と軍事的中心地です」

とだけボソボソと喋ると、男は再び後ろに引っ込んだ。

「俺の語った頭良さそうな知識は、大体あいつの受け売りなんすわ。がっはっは!!」

休んで、すっかり元気を取り戻したザルガスは髭を揺らしながら

博識な部下を自慢げに讃える。

そこへ話し合いが終わったらしいルーナムが、近づいてくる。

「お話よろしいか?」

そう俺とザルガスとミーシャを手招きする。

「ルーナムさんと話してくる。おめぇらは景色見ながらゆっくりしてろ」

ザルガスはそう告げると、俺とミーシャの背中を押して

ルーナムとともに、元盗賊団から離れていく。


「今頃、ラングラール様が派手に凱旋なさっているころだと思います」

ルーナムは眼下の巨大な城下街を見下ろしながら話し出す。

「我々は、日暮れを待ち、城下町の脇道から城内へと入ります。よろしいか?」

「要するに、旦那がめだたねぇほうがいいんだな?」

ザルガスが鋭い目つき、髭を触りながらルーナムに問う。

「ええ。城下町や城内の間者に気付かれる時間をできるだけ遅くしたいとの

 ラングラール様のご意向です」

「……間者って、要するにゴルスバウのスパイのことか?」

俺がはっきりと言った言葉に、ルーナムは沈黙して、ザルガスは大きく頷く。

「旦那を秘密兵器にしたいんでしょう。

 他国に喧伝したほうがよさそうなもんなのに、わざわざ隠すのには何か理由があるんだよな?」

「ええ……以前に」

とルーナムは言いかけたところで、ハッと気付き口を閉じる。

「……理由があって今は言えませんが、追々分かると思います……」

「……旦那はどうしますかい」

俺は、森の中で水棲族のリグから言われた

"ローレシアンから丸め込まれている"という言葉が気になっていた。

俯いて迷っていると隣で話を聞いていたミーシャが

「兄さん!!行こうよ!!今は進むしかないよ!」

と立ち上がり、拳を振り上げて俺を見つめる。

「……分かった。ルーナムさんにこれからの進行は任すよ」

老執事は心底ホッとした様な顔をして

「助かります。これで若様も……」

と何かを聞こえない声で呟いた。


ルーナムが赤鎧の兵士たちを全員先にホワイトリールへと帰らせ

その後、ザルガスや元盗賊団たちそして俺とミーシャは、

崖の壁に打ち込まれて造られた幅の広い鉄製の道を

夕日が沈み、赤く染まっていく巨大都市の全景を見おろしながら

ゆっくりと降りていく。

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