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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 中二


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完全に同化

何も遮蔽物のない草原まで声によって引き出された俺は

停止した世界の中で

「おい!出てこい!」

激怒しながら怒鳴りつつ

時間停止できる残り時間が恐らく無いことに気づいた。

とっくに三分など経過している。

身体に異常がなかったのでまったく気づいていなかった。

一度、時間を動かすか……と決心した瞬間に

「ふ、ふふふ……大丈夫よ。

 今は私が停めているから」

美射の声が背後から響いて振り返ると


身体が霧のように揺らめいている美射が

ニヤニヤしながら立っていた。


「……おい、説明しろ」

いつでも消滅させられるように

右手を美射に翳しながら言うと

「ふっふっふ……とうとうやったわ。

 但馬たち三人の力の発動中に私の反物質の力を使って

 あ、さっき、そこまでは話したわね?」

「言ってたな」

美射は揺らめきながら

「……とうとう、私は反物質と完全に同化して

 反物質で出来た宇宙へと旅立てるわ」

「もっ、もしかして……」

驚きで声が出ない。

「そ、そんなに驚いてくれるの!?」

嬉しそうな美射に、何とかこの湧き上がる喜びを悟られないように

「ま、マイカに続いてお前も去るのか……」

必死に悲しみに満ちた顔を作る。

「や、やっぱり私のこと……そうか……」

美射は名残惜しそうに

「……す、すぐだから……反物質の世界は

 こちらとは逆さに時間が流れているから

 きっと、すぐに帰ってこられるわ……こっちの時間だと一瞬よ」

「そ、そうか……良かった」

心の中で舌打ちしまくっていると美射は

「……時間を停められたのは、一瞬だけあなたとも同化して

 存在を誤認させたからよ。何度もやってるでしょ?」

その件は未だによくわからないが

突っ込むと話が長くなりそうなので

「それについての説明もいつかは聞かせてくれ。

 今は、お前の旅立ちを応援したい」

もうこうなったら、万に一つの何か事故が起こっての

反物質界での永遠の行方不明に賭けるだけである。

反物質で出来た宇宙の皆さんには

こんなモンスターサイコを送り込んでしまって申し訳ないが

できれば何か罠にでも嵌めて、永遠に封印して頂きたい。

両手を合わせて拝んでいると

「……そんな、大げさに無事を祈らなくてもいいのに。

 じゃ、行くから……時間は動かすわ」

美射は寂しそうにそう言って、スッと消える。

辺りの時間が動き始めた。


まずは、即座に時間を俺の力で再度停止させて

美射が辺りに戻ってきてないか確認する。

居ない……よっし!

一瞬で還ってきていないということは

これは反物質界で何かアクシデントがあったな。

誰も見ていないので身体を逸らしながら天を見上げ

「よっしゃああああああああああああああああ!!」

と雄叫びをあげつつ

大げさにガッツポーズする。

スキップしながら宙を全速力で駆け

中央山が完全に復活しているのを見届けつつ

元の、皆が居る場所へと戻り、時間を再び動かした。


「セイ様、ちょっと確認してくる!」

セイが目の前に聳え立つ崖に見上げた次の瞬間には

真っ白な翼と輪っかを出現させて

上空へと飛び出ていた。

にゃからんてぃは落下した瞬間に小さな穴に吸い込まれて消えた。

俺たち家族は、目を合わせてすぐに

「あなたはタジマ・ナーニャ!あなたは全てではない!」

ナーニャを元の状態へと戻した。

「あ、できてるね」

「ミイぱいせんは?」

不思議そうなタガグロに

やつは謎の能力を開花させて、旅立ったと話すと

「……まぁ、ほっとこか」

「だな」

子供たちの手前、すぐに還ってこなかった美射の不幸を

大っぴらに喜ぶわけにもいかないので心の中で祝うことにする。


五分ほど後に戻ってきたセイが

「……人はいなかったけど、城も街も完全に復活してたぞ……」

呆然とそう告げてくる。

ナーニャが残念そうに

「人までは無理だったよー……精神体が冥界に居るから

 ダメなんじゃないかなぁ……」

「そうやろな。まあ、その辺りはアルちゃんたちに任せよか」

そう言ったタガグロと俺たちは

上空から微笑みながら降りてきたアルデハイトを見つめる。


その後。


復活した中央山はアルデハイトが連れてきたローレシアン軍が

元々駆けつけていた飛行部隊と共に安全かどうかの大規模探査を始めることとなった。

魔族国のマスコミや、様々な種族の一般の野次馬まで駆けつけ始めたので

俺たち家族は、一応、安全のために大いなる翼へと

ナーニャのフォルトゥナで空間移動して戻ることにした。


自室に家族六人とセイで戻る。

「おおーセイ様想い出の我が家だ!」

セイは自分の寝室へと駆けて行った。

「久しぶりやな……あー疲れたわ……ちょっと休もか……」

タガグロはソファに座りこんだ。俺も隣に座る。

「母上、私とノアはマシーナリーの方々に状況を説明してきます!」

「母さん、操縦室へと行ってくるよ」

「悪いけど頼むわ。あとでうちも行くから大体でいいで?」

アシンとノアは頼もしく頷いて部屋を出て行った。

ハルとナーニャはテーブルを挟んだソファに座る。

「マイちゃんも、ぱいせんも行ってしもなぁ……」

「そうだな……」

まだ喜びをタガグロに語るタイミングではない。

深刻そうな顔をして頷く。

「きっとまた会えるよ!」

「ママ……」

「ハル、あんたのママはちゃんと帰ってくるわ。

 強い人や。そうやろ?たっくん」

「ああ、あいつほど、しぶとい存在は居ないと思う……。

 大丈夫。絶対に帰ってくるよ……」

ハルのために真実を言うしかない。

いや、願望としては永遠に還ってこないと言いたいが

あいつが簡単に封印されることは無い……。

というか、そのうち俺が尻拭いに行かないといけない気がする。

気がするが……今は考えたくない。

深刻な顔をして天井を見上げていると

ナーニャがテレビを点けた。


画面内では魔族国の若い男性キャスターが

喜びを爆発させた顔で

「なんと!失われた中央山が復活しました!

 魔王を倒しただけでなく、タジマ様はどれほどの奇跡を

 我々に見せてくれるのでしょうか!?」

ナーニャは

「良かったねー」

とニコニコしながらザッピングし始めた。

タガグロは気づいたら隣で俺の肩に頭を置いて寝始めている。

ハルは立ち上がり

「ちょっと、私も寝てくるね」

と言って俺が頷くと、寝室へと歩いて行った。

ナーニャは両眼を輝かせながら

テレビのチャンネルを変え続けて

「私たちの話ばかりだねー」

と俺を見てくる。

「そうだね。ナーニャもよく頑張ったね」

「うんっ!上手くいって良かったねー」

俺は微笑んで頷く。

少し疲れたな。タガグロを寝室に連れて行こうか。

そう思っていると、急激に眠気が襲ってきた。

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