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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 中二


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降下


「当然、佐藤をぶっ殺しにいくのよね!?」

いきなり元気のいい美射の声が頭の中に響いた。

「ぶっ殺すかはわからないけど

 オギュミノスと何か関係はあるんだろ?」

美射は「くっ、くくく……」狂った笑い声を立てる。

「大丈夫か?」


「分かりやすく説明するとね。

 この月に使徒となって存在していた佐藤が

 因果律を弄ってオギュミノスを創り出して

 ネルモグの中にあった宇宙船を破壊して

 しかも、私と但馬が結ばれる可能性を消し去ったの」


「……最後の一つで全て許せるわ」

いや、冗談である。たぶん冗談ですよ!

誰に言い訳をしているんだ俺は……。

「それは聞かなかったことにしてー。

 佐藤は、半分の但馬や虚無の王、そしてマイカちゃんの

 思惑をも掻い潜って、

 わ・た・し・に・い・や・が・ら・せ・を・し・た・の」

「……まぁ、嫌がらせは置いといて

 因果律操作して、オギュミノスを創ったのは許せんな。

 迷惑をこうむった竜たちが沢山居ただろうに。

 宇宙船はよく分かったよな……お前も存在に気付かなかったんだろ?」

「……だから、不気味なのよ。

 何でそんなことができたのか……マイカちゃんと裏で繋がっていたのか。

 それとも、時間停止できる私と組んでいたのか。

 ……いや、もしかして……」

"但馬しゅきぃ……"という思考がそこら中から流れ込んでくる。

「……あの、真面目に考えるふりは、やめて貰えませんかね……」

美射の声は嬉しそうに

「隠せませんねー。

 月の核ならば、月の裏側にある大空洞から行けますよー」

「……分かった」

……美射の自我が次第に俺を侵食して行っているのが分かる。

哀しみの後は、快感と共に愛しているという感情が

そこら中からあふれ出してきた。

これは急いだほうがよさそうだ。

長く合成されたままだと完全に取り込まれる可能性がある。

「くっ、くふふふ……一つになりましょうよぉ……」

頭の中で響く声は無視して

超巨大竜の身体を、黄金の炎を纏ったまま月面を進ませていく。


音のない灰色の荒野の上を超巨大竜になった俺が

両翼を羽ばたかせて速度を上げ、ひたすら飛行していく。

頭の中では、妙な快感と共に美射の一方的な愛情が溢れ出している。

思わず耐えきれなくなり

「……俺への想いを堪えてくださいませんか?」

下手に出つつ、頼み込んでみる。

「……いや、ここは愛で脳内物質を噴出させて

 多幸感で私のやる気を出し続けないとですね……。

 佐藤は、私の存在の根幹に関わるトラウマですので……」

「わかりました……なら、ちょっと抑えて頂けませんか?」

「……頑張ってみます……」

多少は思考中の愛情が減ったので楽になった。

深い崖を抜けて、無機質な岩場を越えて

巨大なクレーターの後を下に見ながら、

音のない世界を黄金の炎を纏って飛び続ける。

相当な距離を進み続けて、辺りが暗くなっていき、暗闇に包まれた。

激しく燃える黄金の炎が辺りを照らし出すと

クレーターだらけで、地面の凹凸が激しいのが分かる。

「地球の月と同じね。

 隕石を防ぎ続け、傷付きつづけたのよ」

「何か、哀しいな」

「物理現象に過ぎないわ。私の人生の方が

 よっぽど悲しいんですけど!」

「お前に関わった全てに謝れよ……」

振り回された側のことは考えないのか。

するとまた

"但馬ぁ……大しゅきぃ……しゅきぃ……"

と流れ込んでくる思考の中で、愛情が溢れ始めた。

「……すいませんでした……傷つけたのは謝るので

 もう少し堪えて頂けると……」

「あっ……ごめん、我を失ってたわ……佐藤が現れてから

 何かおかしくて……居るのは、知っては居たんだけど……」

「……そうですか……」

色々と言いたいことはあるが、美射への悪意は今は持たないことにする。

どうやら相当に脆くなっている。

あの佐藤の出現が相当に堪えたようだ。


更に暗闇を照らしながらクレーターだらけの

どこか哀し気な光景を飛んで進んでいく。

音がしない静寂の景色だ。

飛びながら、大小のクレーターを見回していると

数百メートル先に一際巨大な山脈……いや恐らくは

何かが衝突した際にできた土の盛り上がりが見えてきた。

「月の大空洞よ。クレーター内に大きな穴が開いてるわ」

頭の中の美射の声の言うとおりに盛り上がった土の山を飛んで越えていくと進んでいくと

確かに、数十キロ……もしかしたら

数百キロの長さの延々と囲むように伸びている

異常な大きさの土の盛り上がりが

真っ暗な大空洞になっている中心地に向かって下っている。

躊躇なく、その空洞へと全速力で突っ込んでいく。

黄金の炎が暗闇を照らして、空洞の中が見えてくると驚愕する。


「十七億ラグヌス(年)前は分からなかったけど

 今は意味が分かるわ」

美射の声が頭の中で響く。

異常に広い空洞の壁面は赤や白、そして黄金の炎が燃え盛っていた。

こう言うと矛盾があるが、明かりの無い炎である。

燃えているのに、照らし出されるまで色も光もない。

「アルカロナノイドに寄生されてるのね。

 但馬と同じように」

「俺の炎と同じか……っていうことは

 高エネルギーなのか?この空洞は」

確か高エネルギーの物体に寄生する物質だったはずだ。

「光が無いのは、今はエネルギーがないからじゃない?

 あっ……近づいてみたら面白いかも」

すぐに俺の勘が反応した。

「危険だな。壁面には近寄らずに降下していくぞ」

頭の中で美射にそう言うと

「そうかぁ、但馬の勘ってこういう風に働くのね。

 精神世界内では分からなかったから……」

それには答えずに

延々と、暗闇を照らしながら大空洞の中で降下していく。

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