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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 中二


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1330/1587

激怒

「貴様はすべてのエッチを放棄して

 私の軍門に下るべきだにゃ!」

ペップはまだ美射の胸ぐらを掴まえて

ヘラヘラと顔を右へ左へ逸らして

絶対に視線を合わせない美射に

顔を真っ赤にして説教している。

セイは少し離れてキドに抑えられながら

「なんだあいつは……エロスを全否定とか

 そんなことできるわけないだろうが……。

 芸術を何だと思ってんだ……」

まだブチ切れているようである。

このままでは埒が明かないので

「あの……ペップさん……」

「なんだにゃ、土下座男」

物凄い目つきで振り向きざまに睨まれた。

「いや、あの但馬孝之って言います……」

「ふむ……痴漢に名前があるとはにゃ……」

「だから、知らなかったんですって……。

 それは何度でも謝りますから

 あの、セイの城まで帰りません?」

いきなりキドを振り払ったセイが

俺たちに跳躍して詰め寄ってきて

「セイ様は、こんな芸術のことを

 理解できない低次元人を城に連れて行きたくない!」

ペップは美射を放り投げ

「あ?よくわかんにゃいが、私とやんのかにゃ?

 やんのかにゃ?」

二人は額をゴツゴツぶつけながら

睨み合い始めた。

投げ捨てられた美射が

服をパンパンと払いながら立ち上がり

「セイちゃん、地下世界のあなたの所有物件は

 あるでしょ?

 ちょっとそこでペップちゃんの身の上話でも

 聞こうじゃないの」

「ああん!?

 お前みたいにゃエッチが服着て歩いている変態に

 話す身の上はないにゃ!ふざけんにゃ!」

ペップはさらに美射にもガンを飛ばす。

美射はへらへら笑いながら

両手を広げて首を傾げ、さらに挑発し始めた。

しかし、すげぇな……ここまで血気盛んな人見たの

地元のヤンキーだった佐藤くらいだな……。

そう言えば、佐藤と木原は拠点で無事なのか……。

などと考えていると

キドがいきなり燃え盛る炎を纏い

サングラスを取って、まるで竜の目のような

恐ろし気な二つの両目から放たれる視線を

こちらへと向けてきた。

「……てめぇら……そろそろいい加減にしとけよ!!

 これからセイちゃんの所有する物件に行って

 みんな仲良く話をする!!

 いいなそれで!!」

全員をひと睨みすると、

俺含めて、あまりの恐ろしさに四人とも固まってしまった。

キドは大きく息を吐いて、赤い炎を消し

サングラスをかけ直すと

「すまん。つい熱くなってしまった。

 ……良かったら、行こうか」

俺たち四人は必死に頷くしかない。


さっきの場所から

凡そ、百キロほど離れている滝が見える崖の上に建った

二階建ての石造りの建物へと

セイは案内してくれた。

セイは飛び、キドはペップの手を取り宙を走り

俺はいつものようにモンスターサイコを背中に搭載して

宙を駆けて行った。

室内へと入ると、光る石が暖かく照らし出して

描きかけの絵がそこら中に立てかけられているのがわかる。

キドが照れ臭そうに

「ここは、俺が借りてるアトリエだな。

 たまにここに来て、絵を描いて心を落ち着ける」

「でもたまーにしか、来ないだろ?

 管理してるのは、ミラクとドワイトだぞ」

セイが生真面目な顔していうと

キドはもじゃもじゃの髪をかきながら

「いや、すまない。みんなには頭が上がらないな」

先ほどの激怒とは、対照的ないつもの物腰柔らかな

態度を見せる。

一階のテラスからは崖の向こうの

広大な滝から水が流れ落ちている様が見える。

キドとセイはテラスのテーブルを素早く拭いて

椅子を全員分並べ

「ここにしよう。ここなら、皆もゆっくり話せるだろう?」

キドがそう提案して来たので

残りの全員は即座に従った。

実はまだ、先ほどの激怒の恐ろしさが

体に染みている。

パフェランテが、何でゲキドというあだ名をつけたか

ようやく理解した気がする。この人は怒らせると怖すぎる。


落ち着いたペップはポツポツと

身の上話をし始めた。

「ある凄く悪いやつが支配する惑星に私は居たにゃ。

 それで、仲間とめっちゃ戦って悪いやつ倒して

 平和になったにゃ」

セイが不思議そうに

「……それで何で、ゲシウムまで来たんだ?」

「仲間の一人が、宇宙人だったにゃ。

 それで、その仲間を元の惑星に戻すために

 みんなでまた冒険を始めたにゃ」

「もっと具体的に頼みますねー」

美射が涼し気な視線を送ると

ペップは睨み返しながら

「……それで、次元の歪みから抜けた

 私たちは、あるブックホールの事象の地平の先を目指したにゃ。

 別の宇宙に抜けるにはそれしかにゃいと

 私たちの仲間の一人が気付いたからだにゃ。

 だけど、その目指したブラックホール周辺の歪みの

 巣くってる悪い奴らに沢山邪魔されたにゃ」

なんか急に難しい話になったぞ……。

ついていけそうもない俺が内心焦っていると

キドがサングラス越しに真剣な顔で

「……君は、仲間の犠牲になったのか……」

ペップは頷き

「そうだにゃ。仲間たちは一人、また一人と

 悪い奴らに捕まって

 どこか別の世界に飛ばされたにゃ。

 それで、私が残った四人の盾になって

 捕まったにゃ……気づいたら、あの森だったにゃ」

「嘘くさーい。今はなしを作ってませんかー?」

美射がいきなり挑発すると

ペップが立ち上がって

「……あの滝の藻屑になりたいかにゃ……?」

本気でブチ切れた目をした。

即座にキドがサングラスをずらして

再びあの恐ろしい両目で二人を見つめると

美射は顔を横にそらし、ペップは静かに座る。


キドはサングラスをかけ直して

両眼を隠すと

「そのペンダントは元々は君のだね?」

俺の首にかかっているペンダントを見つめる。

ペップはゆっくりと頷いて

「そうだにゃ。森をさ迷っていたら

 バンクスとか言う、白髪の女に声をかけられて

 それでペンダントをたくしたにゃ」

キドとセイが同時に

苦い顔をする。

「苗字がバンクスで白髪って、地下世界を散策していた

 ミラクだろそれ……貼りついたような笑顔じゃなかったか?」

ペップが頷くと、キドが苦笑いしながら

「さすが、俺の親友だな。口が堅い。

 ペップさん、続きを頼む」

ペップは頷いて

「……あのペンダントは実現可能な願いをかけると

 それを一度だけ叶えてくれるレアものだにゃ。

 仲間の一人が、もしもの時のために

 私に持たせてくれたにゃ」

ペップは、テーブルに並べられた

ティーカップの一つを手に取り、一揆に中身を飲み干すと

「私は、バンクスに立ち会ってもらって

 私のことを救える真の勇者がペンダントを持って現れるまで

 あそこで、石板になって待つと願いをかけたにゃ。

 そして、ペンダントを置く場所はバンクスに任せたにゃ」

「それで、あの廃屋にあったのか……」

「これは、ミラクを問い詰めないといかんな……。

 セイ様、まったく聞いてないぞ」

キドが苦笑いしながら

「俺たちが尋ねなかったからだろ。

 まったく彼女らしいよ」

ペップはいきなり沈んだ表情になって

チラチラと俺を見ながら

「でも、現れたのはペンダントを下げた土下座痴漢と

 エッチが服を着て歩いている変態と

 小難しいことを言いながら喧嘩うってくる銀髪女だったにゃ……」

「誉め言葉ね!」

美射がへらへら笑いながらまた挑発して

ペップは横を向いて、見ないようにする。

彼女もキドは怖いらしい。

どうやら恐れていないのは

モンスターサイコだけのようだ……。


その後、俺と美射とセイがそれぞれ自分の

大雑把な身の上話をして

最後にキドが話をすると

ペップは目を丸くして

「あにゃー……みんな苦労してるにゃー……」

どうやら、こちらを見る目を変えたようだった。

「土下座痴漢とか言って、すまんかったにゃ。

 ちゃんと、タカユキっていうにゃ」

「いやいや、こちらこそ、不快な思いをさせて

 悪かった……」

いや、良かった。分かってくれて

本当に良かったなぁと思っていると

美射がまたヘラヘラしながら

「エッチ撲滅委員会とか認めませんから」

いきなり挑発してきた。

ペップは呆れた顔で

「その弄りは、もう効かないにゃ。

 それにみんながどう言おうと

 これは、私の生き方だにゃ。エッチなのはダメだにゃ」

「つまり、私と永遠のライバルなるのね?」

「いや、その場のノリで永遠のライバルなろうとするな……。

 ペップさん、ごめんなさい。こいつ十七億ラグヌス(年)

 生きてるのに、一切空気読めないんです……」

「……もう、分かってるにゃ。

 その変なコミュニケーションを切欠に

 私と友達になりたいんだにゃ?お断りだにゃ」

美射はいきなり、ガクリとうなだれた。

図星だったらしい。

アホだ……そして自業自得である。

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