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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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巨兵戦

「本太郎さん、巨兵の弱点を教えてください」

本太郎の白紙のページを開いたアルデハイトが訪ねると

見開かれた二ページに文字が浮かび上がる。

「……ここから東に行った先にある、生物化学研究所の最深部のフロアで

 巨兵を昏睡状態にできるガス兵器が保管されている……と出ました」

「……行こう……我等……時間無い……」

「俺は大丈夫だけど、皆眠くないか?もう深夜だろ?」

「何か知らんけど、目ぇばっちり覚めてるわ。

 もうしばらくは行けそうよ」

胸元から取り出した美容液を肌につけ始めたタガグロが俺に言う。

「私も大丈夫ですね。消耗した分の体力は長期睡眠で補えますし」

「……問題ない……心配無用……」

そこでいきなり図書館の東側から物凄い地鳴りが聞こえて

図書館が揺れ始めた。

慌てたミサキとサーニャが冷や汗を垂らしながら中へと駆け込んでくる。

「巨、巨兵が動き始めました!!」

「崖をよじ登り始めています!!地上へと出るつもりのようです!!」

俺はダウンしているにゃからんてぃを脇に抱えて、皆と共に

図書館の外へと出ると

数十キロ先の崖を、巨兵が両手を使いよじ登り始めている。

「……これは……ある意味、ここに来て正解でしたね……」

アルデハイトが固唾を飲み込みながら、呟く。

マイカが機械槍を封印している白布をビリビリと破りながら

皆を見回して指示を始める。

「……二手に分かれる……アルデハイト……ミサキ……タガグロ……研究所へ……」

「分かりました!!さあ、お二人は私の体に自らを括りつけて下さい」

「ミサキちゃんの護衛は任せといてや!!」

ミサキも頷く。

「……私……タカユキ様……サーニャ……にゃか……巨兵崖から……引き摺り下ろす」

「う、うん!!やってみるか!!」

サーニャも双雷槍の白い布を破った、中からは幅広い金色の穂が

帯電しているようにショートし続ける槍が出てきた。

柄の部分は古代の呪詛の白い文字が取り囲むようにぎっしりと書き込まれている。

マイカは、喋り始めた機械槍に跨る。

「……敵性ミィーティアノイド確認……サイズ巨大……初遭遇……補助分析モード開始します」

「……仮登録者"マイカ"確認……血圧正常……生体内バランス良好……」

「……フライングモード発動します……」

機械槍からノズルが数本出てきて、さらに跨ったマイカに

銀色の蔦のようなものが絡みつく。振り落とされないためのもののようだ。

背後では、素早く二人を括りつけたアルデハイトたちが飛び立った。


マイカは両手を伸ばして、それぞれ俺とサーニャの手を取ると

「……行け……目標前方……巨兵……」

と自らが跨った機械槍に命じた。すると機械槍が浮き上がり始める。

「フライングモードとかあったのか……」

「……今は……説明する……時間無い……」

マイカは前方の崖をよじ登っている百メートルほどの体長の巨兵を指差す。

すると機械槍から伸びたノズルが噴射して

高速でそちらへと突入し始めた。

俺は振り落とされないようにマイカの手を握りつつ

抱えていたにゃからんてぃを落ちないように懐の中に入れた。

あまりに高速なので、流れ人の感覚変化がきたのか

それとも危機を感じた脳がをフル回転しはじめているのかわからないが

逆にスローモーションのように周囲がゆっくりと見え始めた。

俺は崖をよじ登っている巨兵を見つめて、考え始める。

……黒い軽鎧に隠れずに赤い肌が露出しているところは

首筋と、二の腕から先の腕、そして腰のわずかな繋ぎ目、

太もも、そして裸足の足元だ。

狙うとしたら、首筋だろうが、顔と腕に近いのでガードも容易いだろう。

ということは、足元の腱の切断を狙うべきか……いや、今はよじ登っている両手のどちらかを

指でもいいので切断するべきだろう。

あの巨大さだ。人間ではないと考えていい。流れ人のような回復再生能力もあるかもしれない。

殺すつもりで思いっきり剣を振るっても問題ないだろう。

考えが纏まったところで、我に返ると

崖をよじ登っている巨兵の体のすぐ近くまで飛んで来たマイカが

頭の上まで上昇して、俺を吊り下げて巨兵に落とそうとする。

「ちょ!!まて、ぎゃあああああああ」

俺は悲鳴を上げながら巨兵のフルフェイスの黒い兜の上に着地した。

……。恐る恐る周囲を見回す。巨兵はどうやら俺たちの存在にまだ気付いていないようだ。

巨大な両腕で崖をよじ登り続けている。

マイカは巨兵の右腕付近に飛んで行って、ぶら下がったサーニャの槍で

手の付近を攻撃しようとしているようだ。

……覚悟決めるか。ここ地上から数百メートルはありそうだが

流れ人の俺なら、なんかの間違いでここから落ちても、身体はぐちゃぐちゃに潰れるかもしれんが

まぁ……何とか再生するだろう。

意を決した俺は、全速力で巨兵の頭を降り、肩を伝って、左腕を全速力で駆け上がり始めた。

殆ど垂直の腕を駆け上がっているのである。我ながらよくやる。

降り曲がっている指の付近まで、駆け上がった俺は

彗星剣と霊刀を瞬時に抜いて、

意識の底で覚えた技の"みじん斬り"を巨兵の指に放つ

細切れに去れた肉塊になった人差し指が、真っ赤な血と共に下へと落ちていく。

次々に俺は巨兵の指を"みじん斬り"で俺は細切れにしていく。

左腕付近では、マイカに吊るされたサーニャが槍を突いて

その度に稲光が瞬いている。あちらも攻撃が激しそうだ。

右手の指が二本だけになった巨兵は、さらに左腕にも強烈な雷撃を浴びて

下へともがきながら落下していく。

俺も共に落ちていく直前に、機械槍に跨ったマイカが素早く近寄ってきて、

伸ばした腕を握り助けてくれた。


ズシャアアアアアアアアアアアアアアア!!!

ズズズズズズズズズズ……


物凄い衝突音で地上のビルの廃虚群の中に落ち込んだ巨兵を

破壊された砂煙が包み、そして地響きが、この地中の大空洞中に響き渡る。

「何とか、なりそうだな」

機械槍の柄の部分に掴まったサーニャは厳しい顔でその様子を見ている。

「……まだ……おそらく……攻撃対象……なったはず……」

安心しかけた俺をマイカが気を引き締めさせる。

俺たちはゆっくりと地上へと降りながら

巨兵が落ちたビル群の砂煙が晴れるのを待つ。


いきなり砂煙の中から、太いレーザーが音もなく俺たちの横に飛んできて

背後の壁に当たり、爆発して大きな穴を空ける。


バガァアァァァァァァァァァァァァァァア!!!!


派手な音を立てたその爆発を唖然としながら

俺は振り向いている。

「ちょっと待て!!なんだありゃ!!ビーム兵器!?」

「早く降下した方がいいですね」

「……分かってる……行こう……」

マイカは機械槍を素早く降下させていく。着陸してすぐにさっきまで

俺たちが飛んでいた場所に再び砂煙が出ている

巨兵の落下地点からレーザーが飛んできて

背後のビル群に当たり、大きな音を立てて爆発して、崩す。

「照準が合ってきてますね……建物に隠れながら移動しましょう」

「……タカユキ様……我等……囮なる……足元……狙え……」

「それしかありませんね。ではあとは頼みます」

言うが早いか、サーニャとマイカはそれぞれの槍をもって

道路に出て

「私たちはここだ!!ここを狙え!!」

「……いまチャンス!!……」

などと騒ぎ出した。すぐに近くにレーザーが飛んできて背後の建物が崩れる。

俺はレーザーが飛んできた場所へとビルの廃虚群を迂回しながら

高速で駆けて行く。

走っていると懐に居るにゃからんてぃが起きて、俺の肩へとよじ登ってきた。

短く状況を説明すると、左肩を三回叩かれる。

おっけーにゃからんてぃ、やってることの筋は悪くないってことだな。

俺はそのまますれ違う残留思念たちを透過したり、ビルの屋上を伝って

となりのビルへと飛び移ったりしながら、高速で巨兵の落下地点までたどり着いた。

砂煙は晴れていて、しっかりと目視できる。

公団住宅のような高いアパート群に囲まれた場所に佇んでいる

巨兵はフルフェイスの兜が割れたようで、その疣だらけの真っ赤な頭についている

一つ目から三十秒に一回ほど、赤いレーザーを放っている。

俺は少し離れたアパートの屋上の陰に隠れて、その様子を観察する。

「こっそり近づけるだろうか?」

にゃからんてぃは、左肩を二回と右肩を一回叩いた。

「……成功率六割強くらいね。じゃあ、足の腱を切れそう?」

左肩を一回叩く。

「いけるが、大きな効果はないか。でも現状それしか手はないよな」

左肩が三回叩かれる。俺はその瞬間走り出していた。

にゃからんてぃは走り出した俺の左右の耳をひっぱり

上手く誘導して、巨兵の真っ赤な裸足の足元へとたどり着かせる。

周囲は巨兵が落ちたために殆ど瓦礫になっていて、遮蔽物が多いので、

さらに俺は距離を詰める。どうやら上手く行ったようだ。

こういう時の引きはいいのだ俺は。悪運というか……。

さぁ、久しぶりにあれをやるときが来たな。というか

現実世界では初じゃないか……。

と多少緊張しながら、衝撃波を手加減無しで三発足元に向けて放ち、衝撃波と共に走りよって

巨兵の右足元の腱を狙って、みじん斬りを繰り出し、

さらに巨兵がこちらを向き始める直前に、

体をエス字に捻って竜巻と共に二発の斬撃を足元に叩き込む。

「ハリケーントルネード斬り!!」

あ、言ってしまった。若干恥ずかしくなったが、とりあえず

効いているようで、腱を斬られ、竜巻に足を取られた

巨兵はバランスを崩して背中から倒れこんできた。

それをすばやく回避して、近くの瓦礫から様子を見守る。

パニックを起こしたらしい巨兵は、三十秒ごとに周囲に所構わずレーザーを放ち始めた。

周囲の公団住宅が次々に崩れていく。

俺は危険なので、とりあえず、にゃからんてぃにマイカたちの場所へと

導いてもらい、合流することにした。

にゃからんてぃの指示の通りに走りながら考える。

おそらく致命的ダメージは与えられていない。

流れ人のような再生回復能力くらいはあるだろう。

とすると、アルデハイトたちがガス兵器をもってくるのを待つしかないな。

走り続けていると、瓦礫になったビル群の近くの路上で

マイカたちが手を振っているのが見えてきた。

俺も手を振り返す。

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