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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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闘神ロ・ゼルターナ神

「何回乗っても良いものですね」

ゴンドラに乗れたミサキは無邪気にはしゃいで喜んでから

所々無残に破壊された王都を振り向き、気付いて、しょ気る。

「ああ……そうですね……私ばかりが遊んでいるわけには……」

「ミサキちゃん、息抜きも大事やでほらほら」

とタガグロが強引にミサキの身体の向きを

王都の街が広がっている方へと向ける。

「あれ……」

全員同時に違和感に気付く。

そこには巨大な山しかないのだ。高い木々が鬱蒼と茂っている。

「あれ……王都は」

俺たちは焦りながら周囲を見回す。

後方にあるはずの今まで見えていた中央城も跡形も無い。

「な、なんやこれ……」

「ちょっと待て、落ち着こう。

 今までも変なことは一杯あっただろ?」

「そ、そうやな。にゃかが住んでた街なんて化け物しか居なかったし……」

「お二人が頼りです……」

ミサキは両腕で俺たちを引き寄せて、その背後に隠れた。

俺とタガグロは目を見合わせて覚悟を決める。

「ふう、おそらくここはなんかの異界やな。落ち着いたわ」

「だな。霊刀だけはあるから、敵がいても、まあ何とかなるだろう」

俺は背中に挿した木刀を触る。彗星剣は物騒なので、部屋に置いてきた。

「うちも短剣もってきとるよ」

「よかった。頼もしいです」

俺たちの態度を見て、ミサキも落ち着いたようだ。

ゴンドラはスルスルと進み続け、そして山の頂上付近の森に音もなく着陸した。

降りてみると、周囲の広葉樹の森を分けるように

一本の細く長い山道が頂上まで続いている。

ゴンドラに再び「我移動せんと欲す……」の文言の後に

色んな移動先を告げてみたが、まったく動かない。

そして全員、この状況を悟る。

「ここを進めと……」

「そゆことやろな」

「怖いけど、進むしかなさそうですね」

鳥の朗らかな鳴き声を聞きながら、俺たちは進み続ける。

見上げると空は高速で雲が通り過ぎていっている。

それを見て、俺は嫌な予感がした。

「……また勝手に時間が経ってなきゃいいけどな……」

「うわ、それ一番困るわ。冥界のあれやろ?」

「帰ったとき、一ラグヌス(年)後とかだと、ローレシアンが……」

全員かなり不安になってきたので、山道を急ぎ足で登りだす。

ミサキは辛そうだったので、俺が途中から背負った。

最終的には殆ど全力疾走に近い形で、俺たちは森が開けた山頂に到着する。

そこは中心部に大きな大樹が一本あるだけで、

何も無い野原が広がっているところだった。

「よしっ、ついたで!!はよ何か出て来い!!」

「木の根元に誰かいますよ!?」

「行こう。時間がないかもしれない」

ミサキを再び背負って、走りながら近づいていくと

どうやら木の根元に座った老人と女学生が、何やらボードゲームのような

ものをしているのが見える。

というか女学生の方は……。

「美射!?」

大声を出して駆け寄ると、セーラー服姿の美射は

「ちょっと黙ってて、今いいところだから」

とチェスのような立体的な駒が大量に並べられている盤面を睨む。

対局している、地面までつくような真っ白な長い髭を三本に結びわけ

長い豊かな白髪を「?」型に固めた奇妙な格好の御爺さんは、

かなり追い詰められているらしく、左右赤と緑で色の違う甚平をの袖を噛みながら

困っている。

「マブ・ガルスですか……」

「そやね。マブやわ。ミサキちゃんもやるの?」

「下手の横好きですが……」

「おお、今度やろうや」

マブ・ガルスとはボードゲームの名前だろうか、

俺はとりあえず黙って、状況を読もうとする。

「この局面やったら、どうする?」

「そうですね、副軍の大佐隊を寄せつつ、

 遊撃軍の少尉を下げますね」

その言葉を聞いたらしい奇抜な爺さんがいきなり喜んだ顔をして

二手連続で指した。

「ぐぬぬ、たんま!!ルール違反でしょそれは!!自分の頭で考えてよ!」

美射が立ち上がって、老人を指差し抗議する。

「ほほほ、盤外の手も戦の内じゃよ」

老人は涼しげな顔で言い返す。

「ちょっと、待ってて、あんたが呼び込んだのは

 私の友達なのよ。挨拶くらいさせてよ」

「しっとるよー?心乱れたじゃろ?作戦通りっ!!」

「うークソジジイ!!」

美射は涙目で老人に抗議して、

腕を振って、俺たち三人を樹から遠くへと誘う。

「……えーと、ミサキちゃんは初めてよね」

「……ええ、はい。どなたでしょうか?」


「但馬の幼馴染でガールフレンドの美射です。そして将来の嫁です」


ミサキが驚愕した顔で俺と美射を見回す。

「いや、ちょ、待て。そもそもまだ付き合ってすらいないし、

 そこまでは決めてないんだが……」

「ふふふ、もう逃がさないわよー」

美射は俺の左腕に手を回す。

「いや、そこはいずれ正式な話し合いをだな……」

「ふー、ミサキちゃんわかったやろ?たっくんは、瘤つきやの」

タガグロが俺たちの会話を遮りながら、ミサキに話す。

「……この女性は、ど、どのような方なのでしょうか?」

「……神いわゆるゴッド?」

タガグロがやる気無さそうに美射を見る。

「かっ神なのですか……この方は……」

「神なの!?」

驚いて尋ねる俺に美射は

「そんな既存の概念とは違うよー。あそこにいる変なのは神だけど」

と大樹の根元で、盤面を見ながら「?」の形になった髪の頂上を

手で固めなおしている奇抜なお爺さんを指差す。

「あの人、神なの!?」


「うん。闘神ロ・ゼルターナ神だよ。戦いの神で、人間たちの守護神よね」


衝撃的な美射の発言にしばらくその場が凍りつく。

ちょっと待て、はるか昔に人間達を他の種族から救い、

そして俺が散々「化身」だとか言ってきた神の正体があれ!?

もっとこう恐ろしいのを想像していたんだが、あれなのか!?

あの髪型の頂上が「?」の形に固められていて

髭をリボンのように結んでいて、赤と緑に半分から塗り分けられた

甚平を着ているあの凄く変な老人が

闘神ロ・ゼルターナ神!?

その名を俺が叫べば、城兵が皆震えて逃げ去り、城すら落ちたロ・ゼルターナ神!?

……。

俺はその場にへたりこんでしまった。

「たっくん……うちもその気持ち分かるよ……」

同じく脱力したタガグロがポンポンと肩を叩く。

ミサキはどうしたらいいか分からないようだ。

しばらく座り込んでいると、美射が隣に座って話しかけてくる。

「地球のオカルトな話でね、たまに知らない駅に電車がついたっていうのあるでしょ」

「うん……」

「あれってね、すごく簡単に説明すると

 特定の速度で移動する物体に偶然ある条件が揃ったときに

 かなり遠い平行世界に入り込むという現象なのだけれど」

「よくわからんがそういうものなのか……」

「そそ。それを意図的にあの変なジジイが起こして

 但馬たちをここに呼んだのよ」

「ボードゲームに勝つために?」

「そうよ。それだけのためにね」

「ほんとにそれだけ!?何か他に深い意味あるんじゃ……」

「それだけだと思うわよ。訊いてみたら?

 マブ・ガルスは、私が次の手考え付くまで休戦だし」

俺はうな垂れて、美射に手を引きずられながら

他の二人と共に老人に話を聞きに行く。


「おう。若者たちよ。

 ありがとうな。この娘のような何かはやたらこれに強くてな」

「何かとか言わないでよー」

美射は頬っぺたを膨らませる。

「……お爺さん……ってロ・ゼルターナ神なんですか?」

「わし?わしはただの偏屈なジジイじゃよ」

「ボードゲーム勝つために呼んだんですか?」

「わしごときにそんなことが出来るわけなかろう」

奇妙な格好をした老人は、俺のは質問にすっとぼける。

美射は俺の隣で、首をかしげてため息を吐いた。

「……一局、どうですか?」

ミサキが意外にも老人に大局を挑む。

「ふむ。良いじゃろう。あんた今代の女王だよね」

「はい……ですが、今は一介のボードゲーマーです」

「かははっその心意気やよし。立場と言うのは本質には関係ないからのう。

 有能な王もおれば無能な王もおるし、そもそも能力を測る基準の外に

 我等の本質はあるのじゃよ」

「難しくて私には分かりにくいですが……もう並べ終わりましたよ」

「あらあら、以前の対局がわからなくなってしもたのう」

「駒の並びは覚えてるから大丈夫よ。続けて」

美射が勝ち誇った顔で、老人に言う。老人は残念そうな顔をして

ミサキと対局し始めた。

老人はパチパチと駒を打ちながら、俺たちに話しかけてくる。

「女を砦に男を軍隊に例えるとな。やはり沢山の砦を落としたほうが

 良い軍隊だとは思わぬかの。なぁ、そこの臆病者よ」

「お、俺のことですか!?」

「ん?わしは空に向かって言ったんじゃよ?知り合いの妖精が見えたもんでな」

とバレバレの嘘ですっ呆けながら盤上を見る老人に

「いや、男と女と言うのは、もっとこう心の結びつきからですね……」

と説明しようとすると

「ふっ、心か。心というものは身体に引きずられるものじゃよ。

 飢えては居ないか、病気は無いか、よく寝ているか。

 そんな簡単なことで心の在り様なんてもんは変わってしまう」

「……確かに、そんな話も良く聞きますけど……」

老人は集中しているミサキと、駒を打ちつづける。

「わしはな、御主の背後に沢山の目を感じるのじゃ。

 どこか遥か遠く、良く分からんところから、御主を見ている目達をな」

「……?」

「彼等や、いや女性たちもおるな。まぁどちらにせよ、その目たちは

 戦いや女難に遭う御主を楽しんでみておる。見つめ続けているものや

 無論、途中で去ったものも多い」

「どういうことですか?」

「さぁな……。とくにそれを知る意味はないだろうな。

 我等と違う世界に棲むものたちよ。

 語られ始めてから、多角的な時間軸で御主を眺めている」

「強い光は、濃い闇を生む」

美射が呟く。

「概ねそういうことじゃな。その目たちも多数の期待をしてるものや

 極僅かな、御主の大破綻を待っているものなど様々じゃよ。

 御主は思っているより、遥かに多数の目で見られ

 成否様々な想いに支えられておるのよ。すでに一人のものではない」

……よく分からんが、真面目にやらんといけないということは

何となく伝わった。俺を形造っているのは他人だということは

シャドウ戦ですでに理解しているが、似たような話だろうか。

「物を語るというのはな、タジマ君よ」

「何で名前を……」

「それに付随する様々なものを呼び寄せるのじゃ。期待や失望、闇や光もな。

 だが見失ってはならんぞ。御主は誰であるのか、どうしたいのか。

 どういう未来を望むのか。それを見失ってはならん。

 それこそが闇を照らす強い光になる。濃い闇を生むための光にもな」

老人はミサキに

「五十八手先に詰みじゃ。嬢ちゃん中々強かったぞい」

告げて、ゆっくりと立ち上がり、俺に不意に


「化身を名乗るのならば、もう少し力強く頼むぞい。

 まあ、その行為自体は認めてやらんでもないが」


と言うと周囲に風を巻き起こして消えた。

「……」

「なんやったんや……わけわからんことが続くなー」

黙って聞いていたタガグロが頭を抱える。俺も泣きたいわ。

なんか知らんけど説教された気分である。

美射は微笑んで、

「変なジジイにつき合わせてごめんね。

 予定では当分先に出てくるはずだったんだけど、

 マブに負けそうで、我慢し切れなかったみたい」

ミサキはまだ盤上で集中したままだ。

途中で放り出して消えた老人の打ち筋を考えているようだ。

「……あと少しで何かが、分かりそうなんですけど……」

と考え込むミサキの邪魔をしないように

俺たちは距離を取って話す。


「本当にロ・ゼルターナ神なの?」

「うん。間違いなくそうよ」

「うっわー皆、あれ信仰してるのか……きっついなぁ」

タガグロが考え込む。

「昔はもっと凛々しかったんだけど、飽きちゃったみたいで

 今はあの見た目がお気に入りみたいよ」

「化身名乗るの考えたくなるわ……何か他にかっこいい神知らない?」

見た目も悪くない炎神とは戦ったが、こっちの世界ではご縁が無い。

「化身として正式に認められたみたいだし、そのままでいいんじゃない?」

「認められたんか……」

マジか……俺はあれの化身をこれからも名乗り続けるのか……。

「うち、もう戦場で聞くたびに爆笑してしまいそや……」

「ある意味、いいかもしれないよ?効かない事を利用できるでしょ?」

「おお、美射ぱいせん頭ええな!!それや!!」

何か新しい連係技の試案ができたところで、

納得したらしいミサキが立ち上がり、こちらに歩いてくる。

「……城に持ち帰って、考えてみようと思います」

「うん、それがいいよ」

美射は空に手をかざして、ゴンドラを山頂まで呼び寄せる。

「なにそれ!?」

「ああ、ここって平行世界に似せた作り物だから

 こういうことができるのよ」

「元の世界では無理なのか」

「そうね」

美射は三人をゴンドラに乗せて

「じゃ、私はここで。彼の者達移動させんと欲す。移動先、ローレシアン王都」

窓越しに手を振る。ゴンドラはゆっくりと空へと上昇し始めた。

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