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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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居なくなった後

意外と早く起きた。

ん……?寝室の外がうるさいな。何だろう


騒がしいリビングに出て行くと

包帯でグルグル巻きになっているアルデハイトと

顔が真っ赤になっているミシェルと、アルナと

そしてうんざりした顔のライーザが

大老ミイと女王ミサキとテーブルを囲んだソファに座っていた。

タガグロはまだ寝ているようだ。

ずい分人多いな。と思いながら話しかける。

「みんな、おはよう。アルデハイトもう動いてもいいのか?」

アルデハイトは手を上げて、ミイたちに視線を向ける。

「ああ!!良かった!!起きられましたか!」

と大老ミイが立ち上がり、俺に駆け寄ってくる。

「この魔族の少女が、私を国政に参加させろと……」

「だーかーらー!!私はいい年した年寄りだって言ってるでしょ!?

 ここの城から魔族追い払ってやったのも私じゃない!!あんたの目は節穴!?」

ミシェルも立ち上がって、大老ミイに詰め寄る。

「あんた、スガの娘でしょ!?私のこと聞いてなかったの!?」

大老ミイは困り顔で、虹色の髪を振り乱して自分を指差すミシェルと

俺を見比べる。

「えーとですね……」

どうやらミイへの説明に失敗したらしく、申し訳無さそうなミサキと共に

大老ミイにミシェルと会った経緯や、その高い能力そして年齢

亡命してきた魔族を受け入れたことを話して聞かせる。

そのついでに、昨日ルーナムと牢で会って、大老ランハムが生きていたこと

そして俺は、反乱を起こした王子たち本人以外は全員許したいという希望があることも

余さず、話して聞かせた。

ルーナムに悪いので、一応芸術家モルスァの件だけは秘密にしておいたが。


「……」

大老ミイはしばらく絶句してから

「……ミサキ様、タカユキ様も、大きくなられましたね……」

と母親のような顔になる。そして元の精悍な表情に戻り、

「分かりました。国法と照らし合わせて、まずルーナムはどうにかしましょう。

 大老ランハムについては、ライーザさんから場所は伺っているので

 これから元第三王子領に駐屯している兵に捜索を命じます」

「私はー!?顧問でいいのよ?」

「タカユキ様が仰っていることが本当だという確証が取れたら

 女王付きの顧問として採用いたします」

うむ。内政を一人で回している大老ミイからしたらそういうしかないだろうな。

ミシェルも納得したようで、大人しくなり

「分かったわ。私はミシェル・ランツヴァハァー。魔女と呼ばれているわ」

と大老ミイに手を差し出す。その手を少し戸惑いながら、大老ミイは握り返し

「では。国内の混乱の収拾と、元第一王子領戦後処理の計画を立てねばならないので」

ミサキを置いて、素早く部屋から出て行った。

すぐにミサキが皆に謝ってくる。

「ごめんなさい……色々と上手く伝わってないみたいで……」

その隣に座ったミシェルが

「私が顧問になったら、コミュニケーション能力から鍛えなおしてあげるわ。

 まぁ心配しなさんな。わっはっは!!」

と高笑いして、包帯グルグル巻きのアルデハイトが両手を広げ

ため息をついて、俺を見る。


その後は、起きだしてきたタガグロを交えて

ルーナムに面会しにいくアルナ以外の全員で、

この中央城の中心の広間に置かれているザルグバインの棺の場所まで

行こうということになった。

タガグロがスイスイと迷路のような城内を案内していく。

「けっこうぶっ壊れているわね。でもぬるいわ。

 おそらく占領した後に使おうという色気があったのね」

「結果的に助かったってこと?」

「そうやね。修復するのはそんなかからんと思うわ」

アルデハイトとライーザはずっと黙っている。

本来、あまり喋らないライーザは別として

アルデハイトはミシェルが居るので喋りにくいのだろう。

俺はよく喋るミシェルとタガグロに適当に返事しながら、

ミサキの手を引いて、皆の後を進む。

「ここやね」

タガグロとミシェルが扉を押し開けて中に入る。

大きな真っ白な棺が色とりどりの花に囲まれて安置されている。

頭上の高い天井のステンドグラスからは、冬の晴れた日差しが降り注ぎ

棺や花を美しく照らしている。


「……」

ゆっくり俺たちは近寄る。

そして、ミシェルが前に歩み寄り、棺の蓋をずらして開けた。

「ふー。綺麗な顔してるじゃないの」

寂しそうな何とも言えない顔でミシェルは言って、

俺の背中を押し、中を見るように促す。

ああ、確かに浅黒いスキンヘッドのザルグバインさんだ。

目を閉じて、豪華な貴族服を着せられて、棺の中の花に囲まれて居る様は

目を閉じてまるで、寝ているみたいだ。

そうだな。人が死んだときっていつもこんな感じだった。

いつの間にか優しかった祖父が死んでいて、何なのか分からないまま

棺の窓を開け顔を見て、悲しい雰囲気に押されるように葬儀に参加して

理解できずに呆然としているうちに、その身体が火葬場で焼かれるんだ。

けっこう昔、小学生のころの思い出が重なるように蘇る。

少し、立ちすくんで涙ぐんでいると、ミシェルから手を引かれて

「はい、次ミサキちゃんー」

と俺は押し出されるように、棺から引き離される。

そのまま少し遠くから、

ミシェルが次々と、全員を棺の前に連れて行くのを眺める。


見終わったアルデハイトが

「死がすべての終わりではないことは知っていますが。

 もう戻れない分岐点なのは確かです」

としんみりしながら俺に話しかける。

「初めて、知っている人が死んだ……」

「故人の意思のどの部分を受けるかは人それぞれですが

 タカユキ様は、ザルグバイン様から何を受け取りましたか?」

「凄く短い付き合いだったから分からないけど、

 見たとき殺した魔族たちに殺意は沸かなかった……」

「復讐ではないと……」

「そうだな、浮かんだのはモルシュタインたちの顔じゃなかったよ」

「では、なにが……」

「ザルガスたちと酒飲む話をしてた、おっきくて陽気な爺さんのことが……」

そこで俺は再び涙が溢れてくる。なんで、こんな

そんなに知らない人のためにも俺は泣けてしまうんだろう。

どうしてだろうか……。

しばらくその場にうずくまって泣く。

泣き続けていると、

タガグロから背中を叩かれる。

「たっくん、もういこや。進もうよ」

「……そうだな」

毅然とした顔のミシェルが、広間の扉を開け放ち

俺たちは粛々と、外へと出て行く。


その後、高級士官用の食堂で朝食をゆっくりと済ませた俺たちは

それぞれにやりたいことや、やるべきことをするために解散した。

ミシェルは通路の窓を開けて、

「ちょっくら、ライグァークやリサちゃんの協力とりつけてくるわ」

と羽根を広げて、そこから飛び出していった。

ライーザは朝食前に俺の背中を叩くと、ふらっとどこかへと消えた。

ミサキを女王執務室まで送り届けて、残りの三人はで俺の自室まで帰ろうとすると

「あの……しばらく、ここに居て頂いても?」

と申し訳無さそうに上目遣いで、寂しそうなミサキが頼んでくるので

全員で快諾して、執務室のソファでゴロゴロすることにした。

書類の山に判子を突きながらミサキはザルグバインの思い出を語る。

「私のこと、女王としては認めてはくれてなかったみたいですが

 でも人としては、とても優しく接してくれました」

「そうですか……」

「大老ミイと大老ザルグバインが居てくれたからこそ、

 王都は安定していたのですね」

アルデハイトが執務室の本棚から取り出してきた

ハードカバーの本を読みながら喋る。

タガグロは外に出て、高層にある執務室のテラスから

見える景色を眺めている。

「あの方は、スガ様の死後は、黙ってずっと次の世代の出現を

 待っていたような気がします」

「……調印式のときにマーキィーさんとここで話してたときに、そんな話してましたね」

「ええ。先ほどミシェルさんが私に仰ったのですが

 『何もやり残したことがないような、満足した顔してるから大丈夫』

 と言われて、そして『悲しまないでこの男の意志を継ぎなさい』と……」

「おばさん、さっそく仕事してますね……」

「きっとタカユキ様やお仲間たちがこの国に出てきたので……」

「貴女もですよ」

と俺はミサキの目を見てはっきり言う。

「私は……」

まだ自信なさげにミサキに

「俺の仲間のアルデハイトやアルナが命がけで貴女を守ったのは

 それだけ人としての価値があると思ったからです」

包帯だらけのアルデハイトは、恥ずかしそうに頭を搔く。

「……頑張ってみます。でも、皆さんもずっと居てくださいね?

 居なくなったらダメですよ?」


「はい。居ますよ。ずっと、みんな、ここに居ます」


そう言った後に

今とんでもない嘘を吐いた様な気がして、自分で戸惑う。

俺は地球にいつか帰りたいし、帰れるならすぐに帰るだろう。

アルデハイトやタガグロも

俺が居なくなればこの国をあっさりと去るだろう。

そうすると、このローレシアンという不自然な造りの大国は

俺が来る直前のように、機能不良を起こし出して、周辺国にすぐに飲み込まれるはずだ。

そうならないためには……どうしたらいいんだろう。

ああ、きっとこれがスガを見続けてきたザルグバインが

俺に残して行った宿題なんだな。

これをやりきらないと俺はたぶん帰れないんだ……。

それに何となく気付いて、鳥肌が立つ。

「どうなされましたか?」

と本を置いてこちらを見るアルデハイトに

「ううん。なんでもない」

と言ってから、心配そうに俺を見ていたミサキに微笑む。

外のテラスから戻ってきたタガグロは、

「たっくん、アルちゃん、晴れてるし、午後は王都探索せん?

 三日もあれば、下の階層含めて大体見られそうやん」

と俺たちに声をかけて、なぜかミサキが

書類の山を放り出し

「いきますっ!!同行させてください!!」

と必死に右腕を上げる。

「仕事はいいんですか?」

アルデハイトが尋ねると

「今から一ダール(時間)で終わらせますっ!!」

猛烈な勢いで書類に判子を突き始めた。

びっくりしたタガグロはミサキのその様子を見て、面白そうに微笑む。


判子を押しまくっているミサキを横目で見ながら

しばらく執務室でゴロゴロしていると、軍服姿の大老ミイが入ってくる。

「おお、皆さん、おそろいですね」

一応襟を正して、ソファに座った俺たち三人に

「ルーナムを釈放しました。しばらく厳しい監視をつけますが。

 反逆の可能性が無いと判断したら、いずれ新しい役職に復職させられると思います」

「ありがとうございます」

俺はミイに頭を下げる。

「アルナ嬢はルーナムの監視役も含め、しばらく同行させようと思いますが

 よろしいでしょうか?」

「良い考えだと思います」

アルナが監視の一人なら、ルーナムも嫌な気持ちはしないだろう。良采配である。

「良かった。ではこれで」

「あ!ミイさん」

「なんでしょうか、女王様」

「午後からタジマ様たちと、中央山内に視察に出ようと思うのですが……」

「ふむ……書類は終わりましたか?」

「あと半分です!!」

「……よろしいでしょう。終わったらぜひどうぞ。

 皆さまは、くれぐれも女王様の護衛をよろしくお願いします」

大老ミイはキビキビとそう喋ると、素早く執務室を出て行った。

「本当に政務を一人で回されていますね……判断と対応が並みではないです」

アルデハイトは舌を巻く、タガグロが補足する。

「あの人居るから、たっくんが無茶言っても、上手くいっとるとこはあるよね」

「そうだな……もう頭あがらんな……」

俺がいくら「反逆した者を王子以外全員許す」と言っても、

あの人の速やかな協力がなければ

ローレシアン国内では何も物事が進まないのは、よく分かる。

そういう意味では、最大の理解者なのかもしれないな。と俺は思う。


午後になる前に書類の山を攻略してクタクタになりながら

ローブ姿に着替えたミサキを背負いながら

また高級士官用の食堂に俺たちは行く。

またもウェイトレスに頼んだもの以外の豪華な食べ物が出てきて、

食堂に居る全員から総立ちで拍手をくらいながら

今度はミサキが居たので、上手く宥めた彼女のお陰で

すんなりとそれをかわして

俺たちはゆっくりと食べ始める。

適当に雑談しながら、食べ終えた俺たちは食堂を出て

通路を通り、倉庫を出て

周囲の戦闘の跡が痛々しい裏庭に出て行く。

ゴンドラは昨夜、ミシェルの屋敷から乗ってきたままの状態で停まっている。

仲間たちは誰も使用しなかったようだ。


そこで話し合った俺たちは

まずはアルデハイトに先行して飛んでもらって

ゴンドラの誘導装置を埋めて貰い、そこに残りの三人でゴンドラで

移動することにした。

「耳目を集めない良い移動ポイントを探しますので

 半ダール(時間)ほどしたら、ゴンドラで移動してきてください」

「移動先の文言は、王都でいいよな」

「他にポイントがないのでそれで移動できるはずです」

「わかった。ありがとう」

俺たちは草の伸びきった裏庭で、再び雑談に興じる。


「マイカちゃんとにゃかは大丈夫かな」

「あいつら混沌とした所の方が生き生きしてるからな……楽しんでるよ」

「タカユキ様にとって戦場ってどうですか?楽しい?」

「普通に怖いですよ。できれば戦争とか無い方がいいです」

「そうですか……やはり平和を目指すべきですよね……」

しばらく話していると、タガグロが腕時計を見て

「半ダール経ったわ。呼ぼか」

「そうだな」

頷いた俺はいつもの移動の文言を空に向けて言う。

「我移動せんと欲す。移動先 王都」

あれ、光の線が伸びない。

「おかしいな。言い間違いか」

「ちょっとうちも言ってみるわ」

タガグロが今度は「我移動せんと……」と言ったが光の線が伸びない。

「アルデハイトさんに何かあったのでしょうか?」

「あいつは、そういうミスはしない男ですから……」

と心配する女王をとりあえず落ち着かせて、

いや、……ちょくちょくそういうミスしてるなと俺は思いだす……。

いや、しかし、ありえん、今は不安要素は何もないはずである。

「言い方変えてみたら、どやろか?例えば、

 我移動せんと欲す 移動先 王都南」

すると光の線がスルスルと上空に伸びてきて、俺たちは一息を吐く。

ゴンドラに全員乗り込み、扉を閉めると、ゆっくりと上昇し始めた。

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