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長すぎる大人の階段   作者: 痛瀬河 病
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おまけ~大体ここだけ読めば、本文の雰囲気がわかるよ!~

SSです。ちょっとしたおまけみたいなものです。気まぐれに更新することになったので、楽しんでくれる方がいたら嬉しいのですが(^^;)

「笹箱君、学校七不思議に興味ないかい?」

 昼休み、伊万里さんと昼ご飯にカレーライスパン(カレーを米粉で作ったパンに入れてある)食べていると、不意におどけた調子で話題を提供してきた。

「学校七不思議? 学校の怪談みたいなもの?」

「そう、そんな感じ」

 すでに、七不思議の塊みたいな部活に入ってる僕からしたら、大して驚く話題ではないのだが、伊万里さんのキラキラした目を見ていると話しに乗らないわけにはいかない。

「へー、この学校も御多分に漏れずあるんだね」

 そんなものがあれば、噂話や不思議なことが大好きな伊万里さんが興味を示さない方がおかしいか。

 僕は話の続きを促した。

「ふっふっ、教えてあげよう」

 ポニーテールを揺らし、自信満々に不敵な笑みを作ってる伊万里さんは、飼い猫が捕ってきた鼠を自慢しているのに通ずるものがある。

「まず、その一、文化部の中で一つだけ異常に豪華な映画部の部室!」

 それは、うちの部長、深会先輩が校長を脅してるからだね。

「そのニ、文化部棟に出入りする幼女!」

 それは、うちの部長、深会先輩の姪孫(てっそん)の菜凪ちゃんだね。

「その三、文化部棟に出入りする警察官!」

 それは、うちの部長、深会先輩の後輩の三星(へんたい)さんだね。

「その四、その警察官が映画部周辺でプロレス技を掛けられているところを目撃した人がいるとか!」

 それは、三星(どへんたい)さんへのご褒美だね。

 なにこれ? 学校の七不思議って言うか深会先輩にまつわる七不思議なんですけど?

 いや、何十年も年を取らずに学校にいたら、七不思議ぐらいになってもおかしくないんだけどね?

 僕の反応がいまいちだったのか、伊万里さんはあざとく片頬を膨らませ、口を尖らせる。

「ちょっと~、全然驚かないね」

「まぁ、なんとかね」

 伊万里さんの夢を壊さないために、真相を話すのはやめておこう。

「で、あと三つは?」

 どうせあと三つも深会先輩関係か、しょうもない噂話だろうと大して期待せずに続きを促す。

「残りはねー、五、六、七が合わさって難攻不落の映画部~そこには隠された秘宝が~ってのだね」

「えっ? ここまでおとなしく聞いてたけど、なにそれ? 合わせていいの? なんでちょっと映画のタイトルみたいになってんの?」

 結局、映画部の不思議だしね。

 伊万里さんは可愛く小首を傾げて、やや投げやりな返事をする。

「さぁ、映画部だから、映画風にしたんじゃない?」

 最後まで聞いて完全に興味を失ってしまった僕は菓子パンの袋をゴミ箱に捨てようと立ち上がった時、伊万里さんは興味深いことをポツリと呟いた。

「確か、秘宝って言っても歴代の映画部の部長の恥ずかしい写真とかだったような」

 僕は、その場で丸めた菓子パンの袋を、スリーポイントシュートでゴミ箱に叩き込みと改めて自分の椅子に座り直す。

「その話、詳しくしかせてもらえるかい?」

 『酒場で言ってみたい言葉ランキング三位』のセリフである。

「たしか、恥ずかしがり屋の映画部の部長が、行事の際にカメラマンに取られた恥ずかしい写真をデータごと買い取ったとか、なんとか」

 映画部(真名・栄華部)は深会先輩が発足した部活だ。つまり、歴代部長は全て深会先輩、普段無表情気味の深会先輩が恥ずかしがる写真とはどんなだ?

「……きっと、部室にあるはず」

 僕は、一つの決心のもと、今日の放課後に向けて脳内で作戦を考え始めた。

 そこに、後ろから『酒場で言ってみたい言葉ランキング一位』で声を掛けられた。

「話は聞かせてもらったわ」

 そこには、幼馴染の伊勢 (あまい)がいた。

「私も連れて行ってちょうだい」

 彼女は大っ嫌いな深会先輩の弱みを握ってやろうとする魂胆が見え見えだった。




 文化部棟の二階。

 次の階段を上がれば栄華部の部室だ。

 パーティーは僕、伊万里さん、伊勢の三人だ。

「部室の扉のセキュリティーどうする? 私が開けようか?」

 とある事情によって栄華部の扉には指紋認証、虹彩認証等々のかなり過酷な状態になっている。僕としては、それらを普通に開けられる伊万里さんの方にこそ謎を感じてしまうのだが、それを知ったら余命が無くなってしまいそうなので聞けない。

「いや、最初は普通に僕が開けるよ。多分、深会先輩が部室にいるから何とかして外に連れ出すから、その後に伊万里さんたちが侵入して、探してみてよ」

 僕は普通に部員なので、セキリュティーは関係ない。

 部員は僕と深会先輩の二人なので、このセキリュティーを突破できるのは二人しかいないけど。


 僕は部室の扉を開け、部内に入る。

「こんにちはー」

 そこには、いつものように小難しそうな小説を読んでいる深会先輩がいた。

 僕が入ってきたことに気が付いて、手を止め、顔を上げる。

「あら、いつもより早いのね」

 僕は適当な理由をでっち上げて、何とかここから連れ出さなくてはと頭を回転させる。

「それって何読んでるんですか?」

「恥ずかしながら、偉人の名言集よ」

 へー、意外と中二っぽいもの読んでたんだな。

 深会先輩はポンッと手の平を拳で叩く。

「そう言えば、鈴原に用事があったんだったわ」

 鈴原先生はうちの部活の顧問にして、僕のクラスの担任だ。

 立ち上がると、僕の方を見て少し眉尻を下げ、申し訳なさそうに言う。

「来たばかりで悪いのだけれども、一緒に来てくれないかしら?」

 これは思わぬチャンスが巡ってきたと思い、二つ返事で頷く。

「全然いいですよ」

 僕らは部室から出ると、どこかに隠れているであろう二人に期待を込めて階段を降りる。

 不意に深会先輩が呟いた。

「……嫌いなものは殺してしまう、それが人間のすることか? 憎けりゃ殺す、それが人間ってもんじゃないのかね?」

「なんですそれ?」

 さっき読んでた名言集の中に載ってたのかな?

「シェイクスピアよ、因みに私は(アマ)が嫌いで、憎いのだけれども」

 アマというのは、深会先輩だけが使う俺の幼馴染、伊勢の蔑称だ。

 僕は嫌な汗が伝う。

「あぁ、そう言えば、さっき如何にも大切そうにしてある箱の中に、活きのいいタランチュラを入れておいたのだけれども、部室には誰もいないし大丈夫よね」

 嫌な汗が出てくる。

 部室の方から伊勢の悲鳴が響き渡る。

「……あの、深会先輩?」

「タランチュラの毒は意外と大したことないらしいから、大丈夫でしょ」

 好奇心は猫を殺すってね。


 なんとなく世界観が伝わってもらえればうれしいです。ちなみに『酒場で言ってみたいランキング二位』は「マスター、隣の人に俺から一杯奢ってやってくれ」です。

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