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Lord to Gloria  作者: 頭 垂
第一章 すべての始まり
18/49

躾のすゝめ

怒号は力となり、衝撃波のように魔獣たちに伝播する。

魔獣たちの思考にはもうどうやったら逃げるかということしか浮かんでいない。

逃げようとしたら、自分たちの頭に殺されるかもしれない。

だが、それでも逃げ切れる可能性は零ではない。

しかし、目の前の尋常ならざる殺気を放つ人間……いや、人の皮を被った自分たち以上の化け物を相手にしては、生き残れる可能性は完全に零だ。

そんな人の皮を被った化け物こと、グローリア・アザールは口を開く。


「魂ごと磨り潰す。逃げられるなどと言う戯けた思考は捨てることだな」


その言葉と共に、グローリアの姿が掻き消える。

グローリアの姿を探そうと、魔獣たちが感覚器官を全開にして探す。

だが、そんな行為には何の意味もなかった。

消えたと思った次の瞬間には、魔獣の首が宙を舞っていた。

その次の瞬間にも。

その次にも。

一瞬ごとに魔獣の命が失われていく。

そのことに恐怖しながらも、死んでいく魔獣は自分の首が切り飛ばされているということを認識するまもなく死んでいく。

グローリアは両手にファルシオンと呼ばれる武器を持っている。

これは短く重い片刃の剣である。身幅が広く、刃は緩やかに弧を描いているが、多くの湾刀とは異なり、棟は直線的である。鉈のように叩き付けて、相手の鎧ごと肉を断ち切るように使用する。密集戦でより威力を発揮する剣だ。

重さで断ち切ることを主眼に据えて作られた剣だが、グローリアは持ち前の圧倒的な技量で首を断ち切っている。

その姿を月夜は『テラ・サイト』で眺めながら、恍惚の表情を浮かべていた。


「あぁ……やはり旦那様は凛々しいです……」


この恍惚の表情の理由には、さっきのことが関与していた。

さっき魔獣に襲い掛かられた時には、正直月夜は死を覚悟していた。漠然と、迫りくる牙を眺めていた。

そんな時、自分の『主人』であるグローリアが助けに来てくれたのだ。

そして、自分を助けてくれた後に、グローリアはこう言ってくれた。

テメェの一番大切なもの。

グローリアは月夜のことを一番大切なものと言ったのだ。

その言葉は、月夜に戦場にいると言うことを忘れさせ、その表情をとろけさせるのに十分すぎた。


「旦那様こそ、私が全てを捨てるに足ると思えるお方。旦那様こそ、私の生きる意味……」


恍惚に染まった表情で月夜が妄言を呟いている間に、二百前後いたはずの魔獣は全てグローリアの手によって物言わぬ死体になった。

二百近い魔獣が全て肉塊となるのに、五分もかからなかった。

場に残っている魔獣はたった一匹だけ。

グローリアの圧倒的な戦闘能力を見て戦意を燃やしているケルベロス。

戦意を持っている両者は示し合わすようなことはなかった。だと言うのに、全く同じタイミングで行動を開始した。

グローリアは先手必勝のために目測で二十メートルの距離を一瞬で詰める。

ケルベロスは左の首が口腔に炎を溜めはじめる。


「馬鹿の一つ覚えか!」


さっきの間から大体の溜める時間と言うものは把握することができている。

少なくとも、発射までは五秒かかるはずだ。

その考えをもったグローリアは、とりあえずブレスを止めるために左の頭を目指す。

こんな場所で広範囲狙いのブレスを吐かれてしまったら、最悪月夜にもあたる。

それだけは何としても避けたかった。

飛び上がり、次の瞬間には顎を貫ける。

そんな状況においてグローリアは悪寒を覚えた。

まださっきのタイミングから計った五秒は経っていない。それどころか、まだ三秒もたっていないだろう。だから、計算上は安全なはずだ。

その悪寒の正体はグローリアにはわからなかった。

だが、刃を突き刺す直前に、ケルベロスが笑ったような気がした。

それだけだ。何か論理的な理由があるわけでもない。その勘だけを頼りに、グローリアは強引に攻撃行動をキャンセルし、全力で体を捻って回避行動をとる。

次の瞬間。グローリアの横を一直線に真っ赤な炎の槍が突き抜けて行った。


「馬鹿か! テメェは!」


自分の頭の足りなさに苛立ち、悪態をつく。

たった一回しか見ていない攻撃をそれだけで、攻撃タイミングを計るなど愚の骨頂だ。

頭に血が上っているとはいえ、そこまで考えが至らなかった自分自身に腹が立つ。

ケルベロスは、少しずつこちら側に首を寄せている。槍とは言ったが、まだ吹き出し続けている。

回避行動をとったせいで、体が若干左に流れてしまっている。これではまともにファルシオンをふることもできない。

徐々に近づいてくるせいで、その炎の槍の熱波で体が焼かれていく。


「クソが!」


下から振り上げるようにして、蹴りをケルベロスの顎に放つ。

これは命中し、ケルベロスの口を閉じさせることに成功する。そのおかげで、炎の槍が止まる。

何とか、上手く地面に着地することが出来たが、落ち着いてはいられない。

グローリアの右から、その体をかみ砕こうと、大きな牙が迫ってきていた。

その攻撃を、ファルシオンを交差させることで受け止める。

両腕に伝わってくる衝撃はケルベロスの体格に見合ったもので、驚愕に値するほど重い。筋繊維から悲鳴が聞こえてくるようだった。

だが、そちらだけに集中しているわけにもいかない。

真上からは大きく開かれた口が牙をのぞかせて迫ってくる。

腕に力を入れることで、ぶつかってきていた頭を弾きかえし、バックダッシュをすることによって事なきを得る。

距離を取ることで、やっと一息つくことができる。

これほどまで多頭の魔獣の相手が面倒なものだとは思っていなかった。

冷静に考えれば当然の話である。

犬型の魔獣は爪や牙を使って攻撃することが多い。その攻撃手段である頭が多いと言うことは、それだけ攻撃タイミングも増えてくると言うこと。面倒で当然の話だ。

それを認識できたことによって、グローリアの頭がほんの少しだけ冷える。

この魔獣は頭に血が上っていては勝つことができない。

そう認識できたからだ。

思考は何処までも冷徹に、心のうちで激情を燃やせ。

誰の言葉だったか。遠い昔に誰かに教えてもらった言葉な気がする。


「……ここからが本番だ」


思考を冷やしたことで、さっきまではよく見えていなかった状況がより広く見えてくる。

敵である魔獣の姿。魔獣の体の微細な動き。足元の地面の状況。

どれもこれもが戦闘の行方を大幅に作用する要素であるが、頭に血が上っていた状況では全く見えないようなもの。

周囲の状況を確認したうえで、グローリアは幾重にも作戦を頭の中で組み立てる。

そして、組み立てた作戦をすべて打ち捨てる。

先程よりも世界がよく見え、思考が冷えたとはいえ、ケルベロスについての情報が少なすぎる。

単純に考えても、中央と右の頭についての情報が少ないのは問題だろう。

左は炎のブレスを放ってきた。ならば、残りの二つも何か特殊効果を持っていると判断するのが一番妥当だ。寧ろ、そう考えない方がおかしい。

だと言うのに、これまで中央と右が行ってきたのは単純なバイティングだけ。

これでは思考のしようがない。

使わなかったのだから、無いと考えることもできるが、それは早計すぎる。

それで何か打たれた時のデメリットが大きすぎる。


「……どれにしたって、あいつの情報を引っぺがすには刃を交えるしかないってことだな」


その交える過程で潰せたのなら、それが最高だ。

それほどうまくいくはずがないと言うのは、グローリア自身が一番知っているが。

思考がまとまったところで、改めてケルベロスに視線を向ける。

グローリアが考えをまとめている間、全く何のアクションも起こしてこなかったのが、不気味ではあるが、ラッキーだったと思うことにでもしよう。

解らないことを延々と思考しても時間と労力の無駄だ。

両手のファルシオンを構える。

すると、それに合わせてなのか、ケルベロスの方もアクションを起こす。

右の頭が口をカッパリと開ける。その口腔に今度は光が集まり始める。

さっきの右の頭の行動から推測するに、今度はレーザーでも放つつもりか?

とりあえず、何はともあれそれを撃たせないのがこの状況における最適解だろう。

地を踏みしめ、グローリアは疾駆する。もちろん、目的はケルベロスの溜めを邪魔することだ。

当然、ケルベロスは邪魔をされたくないから、グローリアが来るのを邪魔する。

中央と左の頭が速攻でグローリアに噛み付くために迫ってくる。

グローリアはその牙を避けようともせず、ただ直線的に行動する。

そして、一瞬後には牙がグローリアの四肢に突き刺さり、グローリアを絶命させようとする。その一瞬前に行動を起こす。

ケルベロスが狙っていたのは、グローリアの両腕。

その両腕を引いて、ケルベロスの牙に空気の身をかませる。

そして、その閉じられた二つの顎に下から一本ずつファルシオンを叩き込む。

同時に差したおかげか、両方の首が全くの同タイミングでノックバックする。口をファルシオンと言う串で貫かれて閉じられているせいで、悲鳴を上げることすらできない。

だが、右の頭は平然としながら、口腔に光を溜め続ける。

それぞれの頭で痛覚は別らしい。

そのことを認識しつつ、グローリアは右の頭に接近する。

口の中に集まった光が、一際大きな輝きを放つ。もう発射準備はオーケーだと言う合図のようにグローリアには見えた。

だから、それが発射される前に手元に生み出した武器で思い切り下から打擲し、頭をまっすぐ上に向かせる。

すると、ケルベロスの目から大筋の光が空に向かって発射された。


「口から出るんじゃないのか……」


唖然とした口調で言葉を漏らしつつも、追撃の手は緩めない。

武器を横なぎに振るい、ケルベロスの右の頭を横から思い切り殴りつける。


「グギャァ!」


口を固定されているわけでもないケルベロスの口から悲鳴のような声が漏れ、その巨体が倒れる。

グローリアがさっきから振るっている武器は、ゴーデンダックと言う長さ二メートルほどの打撃武器だ。

武装した農民が使った武器であり、ゴーデンダックと言う名称は「こんにちは」という皮肉的な意味を持っている。農具を基にした武器の一種であり、長い柄と打撃部、その二つを繋ぐ金属製の鎖で構成されている。先端の打撃部には等間隔に鋲が打ち込まれてあり、それがよりダメージを増やすように設計されていた。

長いと言うこともあり、遠心力から相当な威力を出すこの出来る打撃武器だ。

よろよろとした不安定な足突きながらも、何とか立ち上がろうと足に力をこめるケルベロスに横からゴーデンダックで横なぎに殴りつける。

また立ち上がろうとするところを、横から殴りつける。

立ち上がろうとするたびに殴りつけると言うことを延々と繰り返す。

それをルーチンのように繰り返すグローリアの顔には表情らしい表情は宿っていない。

ただ、淡々と続けている。

十幾度か目で、ケルベロスはもう立ち上がる気力もなくしてしまったようだ。

さっきからゴーデンダックでつけた傷はシューシューと煙を上げながら、傷口が修復されていく。

その姿は、傷がつけられる前に巻き戻しをされるようなものではなく、回復する様子を早送りにしたようなものだ。そのせいか、頭に突き立てられているファルシオンが修復されていくにつれてより刃が噛んでいく。

これでは、引き抜くときもとても痛いだろう。


「……高速修復ってのは、魔獣の標準装備なのかね。どうでもいいが」


他の小型の魔獣にも、高速治癒を持っている奴は多い。

だからこそ、小型でも魔獣と戦うときには一撃で殺すことが求められるのだ。

小型であればそれだけ回復スピードは遅くなるが、それでも馬鹿にはできない。

魔獣の生命力は普通の獣よりも圧倒的に上。瀕死の重傷にしたところで、時間さえあれば魔獣どもは元の元気な状態に復活することができる。

実に便利な能力だ。


「さて……飽きたし、死ねよ」


打撃部が血に塗れているゴーデンダックを投げ捨てる。

ケルベロスクラスの大型の魔獣に対して、ゴーデンダックのような打撃武器は相手の集中を阻害したり、肉体の深部にダメージを与える用途で使われる。

はっきり言ってしまえば、打撃武器だけで大型の魔獣を一匹殺すのはだいぶ手間がかかることなのだ。

だから、殺すのには剣などの武器のほうが時間と手間がかからなくて済む。

グローリアの手元に現れたのは、先ほど魔獣を斬り飛ばすのに使ったフランベルジェに似た波打った刀身を持つ武器だ。

名をフランベルクと言うこの武器は、フランベルジェの下となったとも言われている武器で、フランベルジェを短く、軽くして片手用にしたような武器だ。

いや、正確を期するのなら、フランベルクの威力を上げるために重く、両手持ちにしたのがフランベルジェなのだと言ったほうが正しいのかもしれないが。

何はともあれ、フランベルクであれば、傷口を広げることもできるし、ちょうどいい。


「多少も苛立ちは晴れなかったが、もういい。くたばれ」


流石のケルベロスと言えども、首を全部切り落とされては高速治癒も意味がないだろうし、死ぬだろう。

そう思って、首を切り落とそうとしたところに、背後から声がかかる。


「旦那様」

「……何だ、月夜」

「その子が良いです」

「……良いとは?」

「旦那様はさっきペットが欲しいと言っていたではありませんか。私の願いを聞き入れていただけるのなら、その子がペットに欲しいです」

「……正気か?」


グローリアには月夜の言葉の意味が全く理解できなかった。

自らを殺そうとした魔獣であるケルベロスをペットに欲しいと言った月夜の言葉の意味がグローリアにはわからなかった。

だが、正気かと言われた月夜は笑みを深める。

自分は至って正気だ。正気で、そのペットが欲しいと言っている。

そう月夜の表情は何よりも雄弁に語っている。


「……駄目ですか?」


上目づかいでグローリアに哀願してくる月夜。

正直、グローリアとしてはこのケルベロスをペットとして飼うのは御免だった。

別に魔獣がペットだと言うことが嫌なわけではない。

純粋に、月夜を殺そうと指示を出したこのケルベロスを買うのが本気で嫌なのだ。いつ月夜をまた害そうとするとも限らない。

そんな奴はさっさと殺してしまうに限る。

過激だと思われるかもしれないが、グローリアは至って普通の思考だと思っている。

危険の芽は潰すのが最適解だ。

だが、なんだかんだと身内には甘いグローリア。月夜のお願いを振り払えるほどの精神力は持ち合わせていなかった。


「……はぁ。わかったよ」

「ということは!」

「あぁ。飼っていい。だが、その前にこのケルベロスに聞いてみないとな」


グローリアはケルベロスに近づくと、頭に剣の突き刺さっていない右の頭を持ち上げる。


「おい。月夜がお前をペットにしたいって言ってる。どうだ? ペットになるか?」


ケルベロスは、言葉を理解出来てはいないだろうが、不本意な空気を感じ取ったのか不服そうに唸りを上げる。満身創痍だろうに、元気なことだ。

言葉がわからないと言うのなら、しょうがない。

言葉の通じないゴミには実力行使こそが最適解だ。

左と中央の頭に突き刺さっていたファルシオンを引き抜く。

再生の過程で随分と肉が噛んでしまっていたのか、肉を切る感触が手に伝わってくる。

それと同時に血も吹き上がり、悲鳴も上がった。

「端的に行こう。ケダモノ。うちのかわいい月夜がお前をペットにしたいって言ってる。お前に対する怒りはまだ燻っちゃいるが、月夜のペットになるってんなら生かしておいてやる。生か死か。お前はどっちを選ぶ?」


グローリアは行ったことは守る。

自分の口から発されて力を持った言葉は必ず実行する。

それがどれだけふざけたことでも。どれだけに突飛なことでも。

だから、言ったからには、月夜が泣こうが喚こうがケルベロスがペットになることを拒否したら容赦せずに殺す。

ケルベロスは、全身の毛を逆立てたかと思うと、腹を見せる。

服従のしるしだと言うように、弱々しい鳴き声すらあげている。これなら、急に月夜に襲い掛かると言うこともないだろう。

一応、万が一のために後でリテラエに鍵を掛けさせるが、こいつには《セレーノ》の番犬にでもなって貰おう。


「月夜。もう大丈夫だ。飼っていいぞ」

「ありがとうございます!」


月夜は自前の尻尾をぶんぶんと振りながら、ケルベロスの左の首に抱き着く。

ケルベロスは何だこいつはと言う空気を一瞬出すが、グローリアの殺気をぶつけられたらすぐにだまった。

こいつには言葉を使おうとするよりは、殺気をぶつけたほうが楽かもな。

そう思いつつも、ケルベロスに言い聞かせる。


「お前のご主人様がこの月夜だ。こいつの指示には従えよ?」


ケルベロスは三つの首をぶんぶんと勢いよく縦に振っている。

魔獣と言えども所詮はケダモノだからか、自分よりも強いものには従うらしい。

これで……今回の依頼は完全に終わったのか?

思いつつ、グローリアは後ろ向きに倒れる。空は晴れやかで、高く澄んでいる。


「おーおー、そっちも終わったのか……って、何で月夜はケルベロスの首に抱き着いてんのぉぉぉぉぉ!?」

「すごい光景だな。まぁ、いつも通りか」

「私も、モフる」

「お姉ちゃーん! 勝手に行かないでぇ!」

「眠いぃ……」


他の場所で防衛にあたっていたであろうリテラエたちがグローリアのところに合流する。

リテラエはいつものように叫んでいるが、ウルヴァーンに至っては軽い苦笑を漏らすだけで現状を受け入れている。ウルヴァーンと比べると、リテラエの小物っぷりが浮き彫りになるようだ。

セキルは月夜と同じように右の首に抱き着いている。無表情ではあるが、満足しているようだ。

ケルベロスの前に行ったヘキルはビクビクとしながら、そんな姉を見ている。

プリスはマイペースに目をこすっている。尻尾と耳もたれていて、もう限界のようだ。

要するに、戦闘が終わった直後だと言うのに、概ねいつも通りだ。

傷を負っているものもいないし、今回の依頼は完璧にこなすことが出来たと考えていだろう。


「ぐ、グローリア。あのケルベロスはどうすんの?」

「最初に言ったろ? ペットが欲しいってな」

「ケルベロスをペットにすんの!? どんだけ餌代かかると思ってんだよ!? それ以前に、街を襲ってきた魔獣の頭を飼える訳ねぇだろ! 住民に反対されてうちのギルドがつぶれるわ!」

「その辺はお前に任せる。何とかしろ」

「無茶振りはやめろ! 俺だって……クソ! 拘束する意味なんてなかったじゃねぇか、畜生がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


何やら、リテラエが大声で叫んでいるが、グローリアの耳にはもう届いていない。

改めて空を見る。

良い空だ。




結果論。

町の住民は《セレーノ》がケルベロスを飼うと言った時に、特に反対することはなかった。

《セレーノ》が信頼されているというのもあるだろうが、そのケルベロスをしばき倒したグローリアの存在が大きかったのだろう。

と言うか、多少は不満もあったようだが、グローリアのたった一言で町の住民たちはグローリアたち《セレーノ》がケルベロスを飼うことを認めた。


「ケルベロス飼っていいなら、今回の報酬は要らん」


街を、六百匹を超える魔獣から防衛したのだ。

単純に考えて、《セレーノ》に払わなくてはならない報酬も破格のものとなったことだろう。

それを、魔獣の存在を容認するだけでタダになるのだ。

それに、グローリアはケルベロスが暴れた場合の被害に対する修復代もすべて《セレーノ》で賄うことを約束した。

そこまで言われては、反対しようと言うものは皆無だった。

《セレーノ》の子供たちもケルベロスが来たことに反対はしなかった。

寧ろ、新しい遊び相手が来たことを喜んでいる。

ケルベロスも、グローリアに逆らうだけ無駄だと言うことを認識したのと、《セレーノ》での暮らしが満足いくものだったのか、しっかりと番犬の役目を果たしているし、子供たちの相手も楽しんでやっているようだった。

ケルベロスが《セレーノ》に来たことを喜んでいないのは、たった一人だけだった。


「また……根回ししなければ……。それに、あのケルベロスの食費が……」


リテラエの悲しげな呟きは、子供たちの楽しげな笑い声の下にかき消されたのだった。


これで第一章?的なものが終了になります。

第一章なので、この後ものんびりと続きます。

エタらないように頑張ろうとおもったりおもわなかったり……。

まだまだストックは残っているので頑張っていきます。

まぁ、最近この作品の熱も再熱しているので、大丈夫だとは思いますが。


これからもよろしくお願いします。

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