〜4〜
「いやはや、すまなんだのう」
なぜか今、僕の部屋には一人の陰陽師がいる。
少女のような容姿をしていながらーーーーまさかの男・・・
「いくらなんでも、その見た目でそれはないだろ・・・」
そういうわけでガックリを肩を落としている僕の肩に、彼女、じゃなくて彼は、そっと手を乗せる。
「そう気を落とすでない、天音少年。生きてれば、必ず良い事がある!」
「なに他人事みたいに言ってんだよ! 明らかに君のせいだからなこれ⁉︎ てかなんで僕の名前知ってるの?」
「そんなもの、お前様のクラスの名簿を見ればよい」
そうだった。この少年は、僕以外の人間には見えないのだ。今日の午後はオリエンテーションだったが、ずっと僕の頭の上でひらひら浮いていたが、他の誰一人として彼を見ていなかった。
「ん? ていうか君、名前はなんて言うの? 衝撃で聞くの忘れてたよ」
「そこそこ重要なもの忘れじゃのう。だが、まぁよい」
僕から手を話して、フワリと浮き上がると、
「わしの名は紫桜」
「平安時代から逃げてきた、陰陽師じゃ!」
・・・ぽっかーん
「は?」
「は、ではない! わしは陰陽師なのじゃ! 陰陽師だから陰陽師なのじゃ!!」
僕の反応に満足がいかなかったらしく、宙でジタバタしだした。くるくる回っている。面白いなあ。
「面白くなどない!」
・・・あと、勝手に人の心を読まないで欲しいんだけど。
「陰陽師なのは、見たらわかるよ。でも、平安時代から逃げてきたってなに? てか、なんで君、宙に浮いてるの?」
「一度に色んな質問をするでない。頭がごちゃごちゃしてしまうであろう」
こめかみを両手の人さし指で抑えて、目を瞑る紫桜。やはり可愛らしい。
「そもそも、この姿は、この可愛い可愛い女の姿は」
「だから勝手に人の心を読むな!」
「考えるやつが愚かじゃ。まあよい。この姿は、わしの本来の姿でないのじゃ。わしであって、わしでないのじゃ」
「? どういうことだ?」
「じゃから、これはわしの偽の姿で、本当はれっきとした男なのじゃ。身長もお前様なんぞより断然高く、知恵もお前様のウン倍あるわ!」
「ああ、ああ、わかったって」
宙でダンダン(?)と足を踏み鳴らしだしたので、僕はあっさり両手を挙げた。
「つまり、ほんとの君は男の子の姿をしていて、なんでか知らないけど今はその姿じゃないんだな?」
「ふむ、まあそういうことじゃ。わしよりはーるかに劣る頭にしては、よく理解したな」
僕をけなしつつ、ふんぞり返る紫桜。
「それでの、その麗しきわしの本来の姿はどこにあるかというとのーーーー」
どがっしゃああああああん
僕の窓ガラスが、突如割れた。
「え」
とこぼした時にはすでに、僕の上には白。
----白装束。
「ふう」
僕に覆いかぶさった体勢のまま、窓ガラスの破片たちを宙に止める紫桜。
「いきなり襲撃か。いやはや、困ったものじゃ」
左手で頭を押さえているのに対し、右手は人差し指をくるんっと回す。
それに従って、角が窓に向く破片たち。
「ほれ」
破片たちが、僕の視界から姿を消す。
「の?」
僕ににっこりとほほ笑みかける、紫桜。