がしゃ髑髏9
がしゃ髑髏を巻き込んだ竜巻は次第にその形を小さくしていく。
消え去った後には、多少の傷は負ったものの今だに健在している骸骨の姿があった。
『小癪な…』
大きく手を振りかぶる。
その先には小さな淡い黄色の妖ー。
私は疾風の前に躍り出た。
しかし前から来ると思っていた私の予想は大きく外れ、横から薙ぎ払うように手が迫ってくる。
結界を貼った途端、大きな衝突音と共に爆風が起こった。
その凄まじい轟音の中、耳に届くのは何かにヒビが入る乾いた音。
さすがに急ごしらえの結界では、強度が足りなくて一度の衝撃を防ぐだけで精一杯か…
ヒビは衝撃を受けた所から徐々に入り、中盤辺りから一気に入ってガラスが割れるような音を立てて破れた。
結界が破れると同時に、疾風を抱いて飛び退く。
「ほっ…危ないところでした…」
ホッと一安心したのも束の間。
すぐさま態勢を整えた相手の攻撃に反応が遅れる。
しまった…!
「おぅりゃあっ!!」
威勢のいい掛け声と共に、私とがしゃ髑髏の間へと割って入ったお稲荷さんが斬りかかった。
大きな歯と刀がぶつかった時、小さな火花が散る。
『邪魔を、するな…』
「邪魔なんかいくらでもする!
手なんかっ…出させるかっ!」
ギンッ…
甲高くけれどもどこか鈍い金属音が、幾度となく夜の闇に響いては溶けていく。
「がしゃ髑髏っ…お前の狙いは何だ!」
『我の狙いは、楿の姫の力を手に入れ…我が主に差し出すことだ…!』
そう言うや否や、向こう側は間合いを詰めてきた。
相手の真の狙いに思考を僅かに巡らせていたお稲荷さんには交わすことが出来ない。
「はあぁっ!」
私は力を込めてお稲荷さんを守る結界を作る。
結界に阻まれて、がしゃ髑髏の攻撃はギリギリで届かずに済んだ。
「悪い、辭。」
「先程助けてくれたのでお互い様ですよ。」
目を閉じ札に力を込める。
力を流した札から眩いまでの輝きが放たれた。
「強き光よ!彼者の宿し邪気を払え!
邪光払い!!」




