さらさら
吉田君はイケメンなのにバカなので、人気者です。
そんな吉田君が「どうしてチン毛ってパーマってるんだろうね」と聞いてきたので
「お前の髪の毛がそんなにサラサラだからだよ」と教えてあげました。
吉田君は大きな目をきょとんとさせてました。
「田中のチン毛見たことある?。違うよ、天パのほうの田中。あいつのチン毛はサラサラストレートだよ」
「なんで?」
「頭髪と陰毛は、反比例? の関係にあって、どっちかがサラサラになったら、どっちかは縮れるんだよ」
「そうなの?」
「そうなの」
「そうなのか…」
吉田君は素直なので、俺が言ったことはなんでも信じてくれます。
「どうしてもチン毛をストレートにしたいなら、髪の毛にパーマ当てろよ」
俺は彼の髪を触りながら提案します。毛の間に指を入れ上下に動かします。
吉田君はワックスをつけないので、こうやって髪で遊んでも手がベタつく心配がありません。
「じゃあ、チン毛がもっともっと縮れたら、もっともっと髪の毛がサラサラになるってことだよね!」
と、吉田君は言いました。まさかの展開でした。
「え、ああ、うん」
「よーし縮らそ♪」
そこでチャイムが鳴りました。お昼休みもお終いです。
英語の時間。俺は彼の髪の感触をゆっくり反芻していました。
あれは何かに似ているのですが、それを思い出せません。
持て余した右手を自分の髪に当て、洋梨臭い側頭部の髪を弄ってみます。
俺の髪はゴワゴワとひっかかります。吉田君のようには行きません。
横に一列挟んで斜め前の吉田君を見つめてみます。なるべく自然なふうに。
俺の隣の女の子も、努めて平静を装いながら吉田君を見つめています。
その目は明らかに『彼氏』に対する女の目でした。
昨日、竹田から聞きました。吉田君についに彼女が出来たそうです。
そう言えばこの子は、サラサラヘアーが好きだったなあと、どうでも良いことを思い出しました。