姉との休日
This Story IS Fiction―この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件には、いっさい関係ありません。
日曜の朝。バイトはない。月から土曜まで朝早くのバイトがある俺とっては至福の時。いつもなら5時起きの俺も何も考えずに10時までは寝てる。だが、そんな朝は一人の人物によって壊されることに。
「起きて~!夏輝~。なっく~ん。」
「あと1時間寝かせて。」
ってか、なっくんて人生で一度も言われたことないんですけど。
「起きろ!夏輝!」
あ~。うるさ。もう、無視しよ。
「・・・」
おっ!黙った。ラッキー。
「「起きろ!夏輝ーーーーー」」
超ビックボイス!!まてまてまて!ちょっと待て!ここ、アパートの2階だよ!一番端の部屋でもそれはだめだよ。
「グッドモーニング!夏輝」
なに「今、何かありまして?」って顔してんだよ。あんたが張本人だよ。気付いてない?
「・・・近所迷惑って言葉知ってる?」
「知ってるよ。」
意味までは知らないのか、この人。
俺の朝を壊した張本人、俺の姉、川見春。好物はプリン。好きな場所は家。格ゲーの神。高卒、職なし。現在俺とアパートで二人暮らし。
「なんでこんな時間に起こしたんだ。」
本当いやがらせとかだったらマジ勘弁。
「いやがらせ!」
・・・
「おやすみ!」
俺は布団にもぐりこんだ。
「ちょっ、待って待って。嘘!嘘だから起きて!」
朝っぱらからマジでうるさいな。マジ寝たいから早くして。
「出かけるから早く着替えて。」
これをいやがらせと言わなくてなんて言う。俺も?俺もなの?なんであんたの買い物に俺も行かなきゃいけないの?
「ひとりで行け!」
「あなたに拒否権はありません。いつも姉にお世話になっている弟は日曜日は姉の奴隷です。これは法律であります。」
なんてひどい法律なんだ。てかいつも世話してんのは俺の方だよ。恩を仇で返されたぞ、俺。
「それじゃ俺は対象外だな。」
「それじゃ、日曜日、弟は姉の奴隷ねっ!」
理不尽にもほどがある。全国の弟は日曜、姉の奴隷になるなんて・・・考えられん。
「って、こんなことしてる場合じゃなかった。とにかく、出かけるからさっさと支度!」
「いや、どこに出かけんだよ。」
「そんなのいいから早く!」
「まず朝飯食わせろ!」
「そんなの後で、」
「いいわけねぇだろがぁぁぁぁぁ!!」
前々から思っていたがなんて姉だ。着替えてから朝食を作ろうと思ったら強引に連れ出された。コンビニによる暇もなく電車に乗り込んだ。
「っで、どこに行くんだよ。」
この時点で俺はもうくたくただった。無理やり起こされ、朝食抜きで走り電車に乗り込む。いやがらせだよ。これ。
「ゲームセンターだよ!」
「一発分殴ったろかぁぁぁぁ!」
おっと。ここは電車の中だ。静かにしなくては。
「そんなに怒らなくてもいいじゃない。」
いやいや怒るよ、普通。相手が俺じゃなくても。買い物ならともかくゲーセンだよ。
「最近やってないから腕、落ちてないか不安でさぁ。」
まぁ、剣は一日握らなければ七日失うと言う、っと剣道部のダチが言ってたような気がする。でも、あんたの場合は一日中剣(コントローラー)を握ってるだろ。帰ってくるといつもパジャマでゲームやってるもん。
「ほら着いたよ。行くよ!」
ひとりで行ってくれよ。そんなこと言わずしぶしぶついてく。
「春。俺、腹へったからマック行ってくる。そこのゲーセンで格ゲーでもやってて。」
駅を出てすぐのところで姉と別れ朝食を取ることに。
「なんでこんなことに。」
ダブルチーズバーガーを食べ終わり、飲み物を飲みながらつぶやく。だってそうだろ。こんな日曜あり?強制で姉のゲーセンの付添いとかないだろ。
「ふぅ。そろそろ行くか。朝飯にしちゃ高カロリーのもの食ったな。」
食事が終わり、マックを後にする。そして姉のいるゲーセンに行く。あぁ、なんかいやな予感がする。あの人を一人にすると絶対に何かが起こる。
「そこのおねいさん。僕達と一緒にお茶しない!」
「あははは・・・。」
案の定。若い男性三名にナンパされていた。ってか、今時そんなナンパの仕方する奴いたんだ。
「何やってんだよ、春。」
状況は聞かなくても分かる。でも聞いてみた。
「いや、なんかさ一緒にお茶しようって誘われた。」
ビンゴ。俺が来てすぐにナンパされたばっかか。
「そんじゃ、行ってくればいいじゃん。あぁ、お兄さん方。姉を連れて行きたければどうぞ連れて行ってください。でも、条件があります。」
さっきまで姉に詰め寄っていた男三人がこっちに来た。
「条件ってなんだ。」
「格ゲーで姉に勝ってください。そしたらどうぞ姉をどこにでも連れて行ってください。」
一瞬沈黙が訪れる。
「だっはっはっは!」
沈黙を打ち破るように男たちが笑い始めた。
「いいぜ。やってやろうじゃないか。」
おっしゃ!罠にかかった。勝利確定。
そして、男たちVS姉の格ゲー勝負が始まった。