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神々の名残  作者: 月から落ちたうさぎ


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3/3

2)少年期 

10年前に書いた初作品、続きを投稿します。惑星改造の歴史を学びます。

 真っ暗な闇の中、満点に広がる星空。時折流れ落ちる星達。

 足元には鬱蒼と茂る木々があり、風に枝を擦りあわせる音で応じている。地平線近くには台座上の巨大な山が広がっている。

 そこへ天空から眩い光の固まりが、台座に向けて降りていく。

 その荘厳な光景は光が台座に着地し弱まったところで静止した。

 「このように、偉大なる神々は大地に降り立ちました。」

 徐々に室内灯が明るくなり、身近に多くの友人達が見えてくる。

 「愛深き神々は、この地を知的生物が住みやすいように改良し、同時に人類の知性化を進めたのです。これは遠い将来の人類の自立を願う愛ゆえの行為でした。」

 人類教育機関の初等部、神々の歴史を学んでいるところであった。

 「皆さんが住んでいるこの星は、当時は”青き星”と呼ばれていました。星の大きさは今よりもやや小さく、皆さんの体重を感じさせる重力は今よりも弱めで、体の大きな竜も素早く動ける程でした。」

 「すげ~」「こえ~」

 子供達が歓声を上げる。歓声が収まってから、育成士は続ける。

 「しかし、その環境は知性体が生きるには過酷でした。この星に住まい、現住生物の知性化を目標の一つとしていた神々は、我々の為に一大決心しました。惑星改造です」

 「おぉ~」「そこまでやるか!」

 子供達は素直に関心する。

 「まず、”月”を設置しました。地殻変動を誘発し惑星の大きさを変える為です。当時はまだ小さかった海の満ち引きを作り出し、海流と大気を循環させ快適居住可能域を増やす目的もありました。」

 子供達の頭上に立体の”青き星”が徐々に姿を現し、近づいてくる月がその周回軌道に収まる様子を観察できた。

 育成士は子供達を見回しながら、続ける。

 「地殻変動の一番激しい頃を過ぎてから、次に大海の創造です。”月”はもともと巨大な氷の固まりに土砂が積もってできた星ですが、その内部の凍土を融解、放出し、青き星に注ぎ込みました。当時の光景を直接目撃した神にお聞きしましたら、それは荘厳な光景だったそうです。」

 ”月”の穴から噴水のように水が噴き出て、細かな霧に変じてから”青き星”の厚い雲の層に変わっていく。その霧がいつのまにか現れた太陽の光に輝き、美しい煌きを見せる。

 「うぉ~」「ばっしゃ~ん!」「きれいだね」

 育成士は続ける。

 「それによって”青き星”には”大海”が生まれました。大気はより生き物の住みやすい組成に変わり、落ち着いた頃には重力も増えていました。それらは神々の母星とほぼ同じだそうです。この惑星改造の結果、空の色が濃くなり、以降、”蒼き星”と名を変えました。」

 目の前の惑星が紺色に変わる頃、穴のあった側は惑星の反対を向き動かなくなる。もし惑星の側にむいていたならば、この漆黒の穴が神の業として常に観察されただろう。

 「この時点で、以前25時間だった自転周期は24時間となりました。何故君達人類の体内時計が25時間周期なのか、これで解りましたね。」

 そこで子供が質問する。

 「神様は人類をより良くする技術をお持ちなのに、何故24時間周期にしなかったのですか?」

 「疑問を持つ事は大変良い事です。”蒼き星”以外では疑問を持たぬ事が生き易さにに繋がりますが・・それはさておき。」

 育成士が円を描くように手を振ると、星系全体が現れる。

 「”蒼き星”の外側には開拓中の資源開拓惑星”赤き星”、その外側には神々の都市惑星”緑の星”、その外側には巨大惑星”木目の星”など、様々な惑星が存在します。そのほかにも多数の惑星があり、星系外の宇宙、”神の庭”を超えれば数え切れない程の神々の管理する惑星があります。君達人類は、いつか様々な惑星に巣立っていきます。そのような未来があるなら、細かな調整をするよりは明るい朝の日差しで体内時計を初期化する方が合理的です。そのような、環境適応力を重視する設計思想から人類は造られています。」

 目の前の星系は急速に広がり、”蒼き星”が巨大になる。

 地表の生き物が見える程に拡大されると、地表を巨大な竜が歩き、豆粒のような猿が回りを跳ね回っているのが見える。

 「この素晴らしい惑星改造の結果、悲しい変化もありました。膨大な水による質量増大で重力は増加し、大洪水を生き残った竜などの巨大生物層が急激に死に始めたのです。環境の変化に適応しやすい標準的生物層が数を伸ばし、機敏な”餌”を食べれぬどころか逃げられずに食べられてしまう事例が増えました。」

 立体映像の地表では、動きが緩慢になった竜を槍をもった猿達が取り囲み次々と倒すところを見せている。

 「これは神々の予想を超える事でした。その現住生物、”猿類”達に大きな可能性を見出した神々は、”猿類”の1種に知性化を始めました。もうおわかりですね。これが君達人類の始まりです。」

 「さるだったの!?」「お前さるに似ていたのはそれが理由だったのか」

 「むむ!」

 背後で、鐘の音が鳴り響くと育成士はほっとした顔を一瞬見せてから手で静粛を求める。

 「はい、これで本日の体感授業は終了です。自由時間後の夕食には遅れない様に。」

 ”礼”をすると、蜘蛛の子を散らすように子供達が部屋を出ていく。

 表に出た途端に歓声を上げ、別の育成士に注意されている様だった。

 徐々に歓声が遠のき、静かになった教室を見渡してから満足そうな顔をして育成士も帰路につく。

 夕暮れのなか誰もいなくなった真っ暗な教室。扉の縁からふいに子供の顔が覗き込む。アムであった。

 「さて、装置は動くかな。」

 星系の不思議に魅入られたアムは、自分の思うままに探索したいと思ったのだ。

 「これだな。」

 主電源と思われる壁の機構を操作すると、真っ暗な闇のなか、先程の”蒼き星”地表が表示される。

 手を四角く振ってからなにやら文字のようなものを空間に描くとと、そこには立体映像の精密制御盤が浮かび上がった。

 「先生が早朝に操作してたところは、しっかり覚えているもんね」

 記憶を探りながら操作し、時に手振りをいれる。

 ”蒼き星”の地表は急速に小さくなり、先の居住惑星領域が描かれる。

 大きな身振りで星系の縮小を行うと、星系全体が描かれ、部屋一杯にの領域に星系を取り囲むような球がうっすらと現れる。そこには無数の黒点がゆっくりと移動していた。初めて見る映像であった。

 「まるで僕たちの星系を閉じ込めるような。あるいは外界から守ってくれているのかな?」

 様々な想像をめぐらせながら、さらに星系を縮小していく。

 母星系が部屋の角に小さくなり、途中多くの無神星系が表示される。

 ようやく別の支配性系が文字付きで出始めると、物凄い数の星系が表示されはじめる。  

 文書情報を引き出し表示させるには別の高度な仕組みを立ち上げる必要があり、そこまでやってしまうと外部から不正操作が解ってしまう恐れがあった。ゆえ、残念と思いながらも機器に内臓されている”星々の歴史”と”宇宙図”の範囲で操作を続ける。

 「若い人類にはこんな高度な事はできないと思ってるんだろうな。ちょっとしゃくだけど、おかげで保安装置は簡単なものだし、機器操作も自由自在」

 宇宙図の倍率がかなり大きくなった頃、母星系から一番遠い位置に神々の本国星系が現れる。みたところ、そこがこの文明圏の中心のようで、離れる程支配星系が減少していた。

 「僕達の母星系は、神々にとっては最果てにあたるんだね・・・」

 支配星系の集団からだいぶ離れた位置にぽつんと孤立する様に佇む自分たちの母星系。”蒼き星”が世界の中心などとは考えないくらいは聡明であったアムも、この世の果てともいえる位置にいるとは思わなかった。

 そこでふとある事実に気づく。神々は、何故このような辺境に来る必要があったのか。この星系を支配する最上位の神が政争に敗れたのか?最果てに向う程の希少な何かがあるのか?

 それらが大人の人類と会わせてもらえない理由に繋がるのか?

 知りたい事がまた増えてしまった。

 「さて。せっかくの機会だから神々の母星系詳細を観察してみよう。」

 巨大な帝国(といっても本国については何も教えてくれないが)を映像の中心にあわせ拡大を始めると、いま少しで母星系の内容が見分けつくところで動きが緩やかになる。

 「なにかな?保安上の理由・・により、権限の無い者は拡大を許さず。認証を始める!ま、まずい!」

 全速力で壁際に走り、装置の全ての機能を終了する。

 「間に合ったか?いや、念の為ここを出よう。」

 教室を飛び出し出入り口の保安機構を元どおりにしてから、あとは宿舎まで全速力で走る。

 ざわめく食堂の手前で息をととのえ、眠そうな顔をして中へ入ると、

 「あ、きた。アム寝てたん?」「遅いぞ。」「もぅ。」

 「キタン、タム、イフ。待ってなくても良かったのに。でもありがとう。」

 人垣をかきわけながら、声をかけられた仲間の方へ笑いながら向う。

 楽しげに談笑する子供達。

 いずれ知るであろう過酷な現実を、この時点で予測していたのはアム一人であった。


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