6 グンショウ君
「祐真くん、ちょっと来て。事件よ事件」
「……おまえの“事件”は9割ファンタジーかギャグだろ」
「今回は違うの。これ見て!」
つぐみが差し出したのは、昨日額縁に飾った“感謝状”……の下に取り付けていた金色の勲章。
いや――正確には、“しゃべっている勲章”だった。
『吾輩は勲章なり。名を、グン賞くんと言うぞ!』
「自己紹介したーーー!?!?!?」
『功績ある者に与えられるべきこの吾輩が、スライムに授与されたなど屈辱の極み!!』
「ちょ、私まだスライムじゃないから!?」
『ゆえに吾輩は、真の“功績者”を見つけ出し、己の“主”を選び直すことに決めた!』
「急に自己決定権持ち始めた!?!?」
『この家の中で最も“人間として立派な者”に吾輩はつく。さあ、人格審査開始!!』
次の瞬間、勲章がぷるぷると浮遊しながら部屋の中を飛び回り始めた。
『……まずはこの観葉植物。規則正しく成長している点、好感が持てる!』
「ちょっ、観葉植物に負けるの私!?」
『次、洗濯機。決して文句を言わず、使命を全うするその姿、誠実なり!』
「人間じゃねえよ!!!」
『ベッドバインディングⅦ世――お主はもう喋ったので却下だ!』
『は? 貴様ごとき金属装飾に主を選ばれる筋合いはない』
『黙れ寝具の分際で!』
「喋る家具のケンカうるさいーーーー!!」
祐真が立ち上がり、目を細めて勲章をにらんだ。
「おい、おまえ。そうやって勝手に主を選びなおすって、筋通ってないだろ」
『ツッコミ圧!!?』
「つぐみに渡されたってことは、お前の“発行者”は異世界AIだろ? AIの意思を無視して“自我”出すとか、
お前こそ、一番設定ガン無視してる存在だぞ」
『うっ……た、確かに……』
「じゃあ、どうするか。俺たちで“人格修正クエスト”に行こうぜ。
お前を、ちゃんと“勲章としてふさわしい人格”に作り直してやるよ」
つぐみがパチンと手を叩いた。
「うん! じゃあ次の異世界ログイン、君も一緒に行こうね、“グン賞くん”!」
『……うむ。吾輩は、お前たちを“真の功績者”と認めよう――!』
そして勲章が輝いた瞬間――また天井が割れ、異世界ポータルが開く。
「ま、またか……!!」
「もう日課みたいになってきたね」
『行こう! 名誉と栄光の彼方へ――ツッコミの世界に!』
今回は間のおつまみ感覚なので18 00に投稿させていただきました。
また別の話が始まります。