重なる二人の気持ち
「スカーレット……!」
目の前に立つ彼女は、深紅の瞳にまっすぐな意志を宿していた。あのとき、オレの想いから逃げた彼女とは別人のように見える。
「スタン……この前は……ごめん……!」
そう言ってスカーレットは、いきなりぺこりと頭を下げた。
「お、おい落ち着けって! オレはその、もう気にしてないからさ」
「嘘よ!」
顔を上げたスカーレットが、涙をこらえるような強い声で言い返す。
「スタン、あのときすっごく落ち込んでたじゃない! ……あんな顔、見たくなかった……!」
「バレてたか……」
気まずくて、オレは頬をかきながら視線を逸らす。……どこまで顔に出てたんだ、オレ。
すると、スカーレットが小さく息を吸い込み、そっと問いかけてきた。
「ねえ、スタン……。あのときの告白、あれって……本気だったの?」
まっすぐに、逃げずに、オレの瞳をのぞきこむスカーレット。
覚悟を込めたその目に、オレもまた胸を張って応える。
「ああ。あれは冗談なんかじゃない。オレは今も変わらず、お前が好きだよ、スカーレット」
再び言葉にした瞬間、彼女の目が潤み、手で口元を覆った。
……なんだか後ろの植え込みの陰から「キャーッ!」とかいう女子の黄色い声が聞こえたような気がするが、今はそれどころじゃない。
「……そっか。スタン、あんなに覚悟して言ってくれたのに……アタシ、逃げちゃって……!」
「もういいよ。今は、オレが知りたいのはただひとつ……お前の“本当の気持ち”だ」
「……っ」
小さく唇を噛んだスカーレットは、ためらうように一歩、そしてもう一歩、オレへと近づいた。
そしてーー。
「スタン……!」
勢いよく飛び込んできた彼女の腕が、オレの背にまわされる。
「うおっ!? スカーレット……!」
思わず身体がこわばった。
けれどすぐに、彼女の髪の香りと、細くあたたかな体温がオレの胸に広がる。
そして耳元で、かすれるような声が聞こえた。
「……アタシも、好きよ。スタンのこと……ずっと……!」
頭が真っ白になった。
何も言えない。
ただ、この瞬間が本物だって、全身で感じてた。
「アタシね、ずっと怖かったの。スタンが優しくしてくれるたびに、嬉しくて……でも、もし拒絶されたらって思うと、素直になれなくて……!」
「……スカーレット……」
「それでも、どんなときもアタシのそばにいてくれたよね。強がってるアタシの裏側も、ちゃんと見てくれてた……。そんなスタンが、……大好きよ」
抱きしめてくる彼女の腕が、少しだけ震えている。
それはきっと、勇気を振り絞った証。
だからオレは、そっと彼女の肩に手を添えて、顔を見つめた。
「なあ、スカーレット。……本当に、オレなんかでいいのか?」
その言葉に、スカーレットはびっくりしたように目を丸くしてから、ふっと微笑む。
「……今さら何言ってるのよ。アタシが好きなのは、あんただけ」
その瞬間、オレの胸の中にあった不安が、すぅっと溶けていった。
「ありがとう、スカーレット。オレも……お前じゃなきゃダメなんだ」
オレはそっと彼女を抱きしめ返す。
その柔らかな髪を感じながら、オレたちはしばし、何も言わずそのままの時間を分かち合っていた。
「これからもよろしくな、スカーレット」
「うん、こちらこそ……よろしくね、スタン」
ーーこうして、オレとスカーレットの気持ちは、ようやく重なり合った。