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召喚無双の最強暴君(ティラノサウルス)  作者: 月光壁虎
サマー・ハーバーでのデート
26/43

憑依武装(スピリタルウェア)覚醒

 ジータと共に走り続けることしばらく——

 オレたちは牢屋の区画を抜け、怪しげな標識が壁に並ぶ薄暗い通路へと足を踏み入れた。


「……関係者以外立ち入り禁止、か」


 警告文や危険マークがやたらと貼られている。

 それだけでなく、壁の隙間からは低い振動音が漏れ、かすかに機械の駆動する音が響いていた。


 こんな場所にスカーレットが……?


 ——ふと、ジータが足を止める。


『小娘の魔力を感じる』

「ホントか!?」

『ああ。こっちだ』


 ジータが鋭い目つきで進行方向を示し、オレはその後を追う。


 だが、曲がり角を越えた瞬間——


 ブンブンブンブン!!


 無数の羽音が不気味に響いた。

 通路の奥から、大型の蜂が黒い嵐のように押し寄せてくる!


「エンパイアホーネット……!?」


 鋭い鎌のような顎、そして猛毒を秘めた巨大な毒針。

 一匹でも厄介な魔物が、何十匹と大群をなして飛び交っている!


「ジータ、気をつけろ! こいつらの数はヤバい!」

『フンッ……虫けらなど敵ではないっ!』


 オレの警告も聞かず、ジータはその巨体を揺らし、突進する。


「ギィイオオオオオオオ!!」


 咆哮と共に、目の前のエンパイアホーネットの胴体に喰らいついた!


 ゴキンッ!!


 一匹は一瞬で噛み砕かれ、光の粒子となって消滅する。


 この消えかた、誰かの召喚獣なのか!


 だが——残りの数十匹が、一斉にジータの背後を取る!


 素早い! この狭い空間でジータの巨体では回避が難しい……!


『チッ……!』


 ブンブンブン!!


 四方八方から襲いかかる針の雨。


「——くそっ、距離を取られたか!」


 ジータの巨体が仇となり、機動力の高いホーネットたちは自在に翻弄してくる!


『……ならば!』


 ジータが大きく口を開いた。


「グオエエエエエエエ!!」


 轟音の咆哮が、空間を震わせる!


 その瞬間——


 バチバチバチバチッ!!


 見えない衝撃波が炸裂し、ホーネットたちが壁に叩きつけられる!


「……ジータの音波攻撃!」


 咆哮の衝撃により、ホーネットたちは一瞬、体勢を崩した!


『フンッ、脆弱な羽虫め』


 ジータが次々と踏み潰していく……だが、その後ろで生き残ったホーネットたちが再び飛翔する!


「ジータ! 後ろだ!!」


 振り向くが、狭い通路では巨体をスムーズに動かせない!


 ホーネットたちは、それを理解したかのように、ヒット・アンド・アウェイの動きで襲いかかる!


『煩わしい!!』


 ジータの尾が壁にぶつかり、火花を散らした。

 このままでは、じわじわと削られてしまう……!


 「——ジータ! オレと力を合わせるんだ!!」


 オレの呼び掛けに、ジータが鋭くこちらを見た。


『……フンッ。貴様の指図に従うのは癪だが、今は乗ってやる』


 パアァァァァァッ!!


 ジータの体が光の粒子と化し、オレの手元へと収束する!


「——古の暴君よ、破壊の刃となれ!!」


 ジータの形が変化し、オレの腕に収まった。

 だが、それは以前の手斧とは違い——


「……戦斧(ハルバード)?」


 さらに、オレの下半身が紫色の装甲に覆われていく。


 まるでティラノサウルスの筋肉を再現したかのような脚部——


「これが……憑依武装(スピリタルウェア)……!」

『今の我は機嫌がいい。これもサービスみたいなものだ』

「ハッ……ありがとな!」


 オレは魔力が満ちた体で、大きく地面を蹴った!


 ——その瞬間、爆発的な推進力でホーネットたちの間を一閃!


暴君破壊斬(ティラノデストロイ)!!」


 振るった巨大な戦斧が、ホーネットたちを次々と両断する!


 そして——


「うおおおおおおお!!」


 強化された脚部で助走をつけ、一匹を思い切り蹴り上げる!


 ホーネットは、悲鳴を上げる暇もなく壁に叩きつけられ——


 ドシャッ!!


 ついに最後の一匹が絶命した。


『……フン、ようやく静かになったか』

「へっ、スゲェな、ジータ……!」

『当然だ。我は古の暴君だからな』


 オレは荒い息を整え、斧を構え直す。


 すると——


『あちらに怪しい輩がいるぞ』


 ジータが前方を示す。


 通路の暗がりに、白づくめの男たちの影がちらつく。


「……おい、待て!!」


 オレが叫ぶと、男たちは一斉に逃げ出した。


「逃がすかよ!!」


 オレは魔力強化された脚で地面を蹴り、一気に白づくめの一人に追いつく。


 そのままタックルで押し倒し、組み伏せる!


「スカーレットはどこだ!!」


 オレが腕を捻り上げて問い詰めると、男は苦しげに顔を歪めながら、途切れ途切れに口を開く。


「スカーレット……あの小娘のことか……。あいつなら……今頃……アガッ!?」


 ——次の瞬間、男の意識が途絶えた。


「おい!? どうした!?」


 突然の失神に戸惑うオレの隣で、ジータが冷静に分析する。


『……どうやら、自白しようとすると気絶するように魔法が組み込まれていたようだな』


「な……なんだそれ……!」


 仲間にすらこんな術を仕込むとは……白き爪痕、マジでヤバい連中だ……!


 オレは歯を食いしばり、拳を固く握りしめる。


「絶対に……スカーレットを助け出してやる……! 行くぞ、ジーターー……っ!?」


 オレが踏み出そうとした瞬間——


 ズシンッ!!


 突如として全身が鉛のように重くなり、思わず膝をついた。


 同時に、オレを覆っていた憑依武装(スピリタルウェア)が霧散し、ジータも光と化して元の姿へと戻る。


『……時間切れか』


 ジータは鼻を鳴らしながらそう呟く。


「くそっ、まだ……行かねえと……っ!」


 必死に足を踏み出そうとするが、全身が鉄鎖で縛られたみたいに重い。


 ここまでの激戦と、魔導管を通り抜けた影響か……。


 だが、オレが歯を食いしばりながら一歩を踏み出そうとしたとき——


『仕方がない、我に乗れ』

「……え?」


 ジータが鋭い目を向けながら、自らの背を差し出してきた。


『急ぐのだろう?』

「いいのか?」

『フン。言っただろう、機嫌がいいと』


 そう言うジータの表情は、どこか穏やかで——まるで信頼を寄せてくれているようにも見えた。


「……それじゃあ、頼むぜ、ジータ!」


 オレは力を振り絞り、ジータの背に飛び乗る。


『しっかり掴まっていろ』


 ——次の瞬間。


 ジータの強靭な脚が地を蹴り、ものすごい勢いで地下通路を駆け抜けた!!


 ドンッ! ドンッ! ドンッ!!


 巨体が迅雷のように激しく進み、風圧がオレの頬を切る。


 ジータの機動力は伊達じゃない。

 この狭い地下通路をものともせず、まるで闇を切り裂くように突き進んでいく!


 ——そして。


 最奥の巨大な鉄扉の前に、オレたちはたどり着いた。


『この向こうだ……炎上小娘の気配を感じる、間違いない』


「スカーレットが……!」


 だが、前に立ちはだかるのは分厚い鋼鉄の扉。


 見るからに頑丈で、魔法の防護結界も施されている。


「ジータ、この扉……ぶち破れるか?」

『造作もない』


 ジータは鼻を鳴らしながら、一歩踏み込む。


 グググッ……!!


 空気が張り詰める。

 ジータの巨体に膨大な魔力が収束し、両脚に力がこもる。


 ——次の瞬間!!


『グオオオオオオオオッ!!!!』


 ドゴォォォォォン!!!


 ジータの頭突きが炸裂!


 分厚い鋼鉄の扉は、まるで紙屑のように吹き飛ばされた!!


 破壊の衝撃で辺りに土煙が舞う中——


「スカーレット……!」


 ——オレの目に飛び込んできたのは。


 暗い部屋の中。


 椅子に座らされ、両腕に魔力抑制装置のような器具を装着されたまま——


 虚ろな瞳でうなだれる、スカーレットの姿だった……!!

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