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召喚無双の最強暴君(ティラノサウルス)  作者: 月光壁虎
ティラノサウルス召喚!
18/43

魔術使いとの戦いかた

 イリヤとの対戦を約束したオレは、スカーレットと共に実験室に戻った。


 すでに学園の魔力灯は復旧していたものの、待っていたのはラホール先生のこってりとした説教だった。


「まったく! 私は落ち着けと言ったのだぞ! なのに後先考えずに飛び出して!」

「ご、ごめんなさい……」


 ラホール先生、怒ると結構怖いな……。


 しっかりしぼられた後、オレは昼食を取るために食堂へ向かう。


「はぁ……」


 トレイの上の食事を前に、オレは思わずため息をついた。

 まさか魔術学科の天才と戦うことになるなんてな……。


 そんなオレの前に、向かい合わせに座る影。


「何、ウジウジしてんのよ」


 スカーレットだった。


 ……いや、それよりも。


「お前、そのプリン……でかすぎねぇか?」


 バケツで型を取ったのかと思うほどの巨大なプリン。

 しかも、彼女はそれを一人で食べるつもりらしい。


「はぁ? 甘いものはエネルギーになるのよ?」


 スプーンで豪快にプリンをすくいながら、スカーレットはオレをジロリと睨む。


「もしかして後悔してるの?」

「別にそーゆーわけじゃないけどさ……。ただ、相手が魔術の天才ってなると、どう戦うべきか……」


 そうぼやいた瞬間、オレの額に鋭い衝撃が走った。


「痛っ!?」


 スカーレットがデコピンをかましたのだ。


「なーにウジウジしてんのよ、らしくないわね!」


 彼女は不機嫌そうにプリンを頬張りながら、スプーンを突きつける。


「アンタはこのアタシを打ち負かしたんでしょ!? もっと自信持ちなさいよ!!」


 オレは思わず目を瞬かせる。


「スカーレット……ありがとな。おかげで吹っ切れそうだよ」


 素直に礼を言うと、彼女はぷいっと横を向いた。


「べ、別に! スタンが不甲斐ないせいで負けるなんて、アタシが許さないだけだから!」

「ははっ、それもそうだな」


 オレが軽く笑うと、スカーレットはなぜかほんのり頬を染め、少し言いにくそうに言葉を続ける。


「……どーせなら昼休み、アンタの特訓に付き合ってやるわよ」

「ホントか!?」

「火力だけならイリヤにも負けないと思うから。無駄にはならないはずよ」

「なんだかんだ、いつもありがとな、スカーレット」

「ふんっ。このアタシが力を貸すんだから、負けたら承知しないんだからね!」

「はいはいっ」


 オレは牛乳を一気に飲み干し、スカーレットとの特訓へと向かった。



 放課後、校庭に向かうと、イリヤが静かに佇んでいた。


「逃げずに来たことだけは評価します」

「へっ、オレだってバカにされて引き下がるわけにはいかねえからな」


 オレがイリヤと向かい合うと、いつの間にかギャラリーが集まっていた。


「またスタンが戦うのか?」

「あいつの相手、イリヤじゃねえか!」

「魔術学科の天才と勝負とか、無謀すぎるだろ!?」


 騒がしくざわめく観衆の中に、クラスメートのユリウスの姿も混じっていた。


「おいユリウス、スタンまた戦うらしいぞ」

「……相手はイリヤか。だが、本当に注目すべきは、あの召喚獣だ」


 何を話してるのかはよく聞き取れなかったが、ユリウスは手帳のようなものに、何かを熱心にメモしていた。


 そういえば、ジータを初めて召喚したときも、あいつだけやけに反応してたっけな……。


 オレが何となく引っかかりを覚えるのをよそに、ざわつく観衆にイリヤはわずかに眉をひそめる。


「……少々騒がしいですね」

「静かなとこじゃなきゃ魔法が使えないってわけじゃねえよな?」

「まさか。私を誰だと思っているのです?」


 イリヤは細身の腕を腰に添え、誇らしげに胸を張る。

 小柄な体躯ながら、その堂々たる態度に妙な迫力を感じた。


「では始めましょう。まずは召喚獣をどうぞ」

「言われなくてもな! ――我、汝を呼び求む。時空を超えて我が呼び声を聞け。古の暴君よ、顕現せよ!」


 紫の魔法陣が展開し、ジータが咆哮とともに出現する。


「ギャーオ!」

『こいつを叩きのめしても構わんのだろう?』

「おいジータ、挑発に乗るなって!」


 オレがツッコミを入れたところで、イリヤが冷ややかにジータを見つめた。


「やはり解せませんね。あなたのような未熟な術者が、これほどの召喚獣を従えているなど」

「ごちゃごちゃうるせーよ! とにかく勝負だ!!」


「――審判はわたくし、シルヴィアが務めますわ! 始め!」


 シルヴィアの合図とともに、オレは即座に指示を飛ばす。


「ジータ! 突撃だ!」

「ギャーオ!!」


 ジータが力強く地を蹴り、一気にイリヤへと距離を詰める。


(いい、スタン! 魔術使いは詠唱の間隙ができる! その隙を突いてしまえばこっちのものよ!)


 スカーレットの言葉が脳裏に蘇る。

 単純だが有効な作戦――そのはずだった。


「なるほど、詠唱前に潰す作戦ですか。悪くないですね……相手が私でなければ、ですが」


 イリヤの冷静な声が響く。


「――火よ爆ぜろ、炸裂の気(エクスプロージョン)


 バシュンッ!


 ジータが噛みつこうとした瞬間、虚空が炸裂。爆発が視界を覆い、ジータはたたらを踏んだ。


「ギャウッ!?」


「え、呪文ってこんな短いのか!?」


「魔術の詠唱は、効率を突き詰めればこのくらい短縮できるのです」


 イリヤが淡々と説明する。


「……ってことは、詠唱の隙を突く作戦は通じねえってことかよ……!」


『なめた真似を……!』


 ジータが怒気を孕んだ咆哮を上げる。


「ウギャウ!!」


「風よ刻み踊れ、風の舞踏(ウインド・ステップ)


 イリヤは杖を軽く振り、地面を蹴るように滑らかに動いた。

 まるで風のような速さで舞い踊るようにジータの攻撃をかわす。


「風よ切れ、疾風の刃(ウインド・カッター)!」


 放たれた風の刃がジータを狙い撃つ。


「クギュウ!?」


 ジータはかろうじて身を翻して回避するも、距離を詰めることすら許されない。


「土よ阻め、土塊の障壁(アース・ウォール)


 今度は地面から分厚い土の壁が隆起し、ジータの進路を塞いだ。


「これが天才の戦い方かよ……!」


 流れるような連携、無駄のない魔力制御。

 あらゆる手を打ってジータの動きを封じてくる。


「水よ縛れ、水の鎖(アクア・チェーン)


 青い魔法陣が浮かび上がると、そこから無数の水の鎖が伸び、ジータの体を絡め取る。


「ギョギャア!?」


 身を捩るも、鎖は強固にジータを拘束した。


「……くっそ、まるで隙がねえ……!」


 歯を噛みしめるオレに、イリヤは冷淡な声を投げかける。


「あなたの感覚的な召喚術は、この程度ですか?」

「そんなわけねえだろ! ジータ! 水の鎖を引きちぎれ!!」

「ギョワーオオ!!」


 オレは右手の紋章を通じ、ジータに魔力を注ぎ込む。

 ジータの筋肉が膨れ上がり、ギリギリと鎖が軋み――ついに引き千切られた。


「ほう……なかなかの力ですね」


 イリヤは初めて微かに目を見開いた。


「ですが、これならどうでしょう――光よ降り注げ、星降る神光ディヴァイン・スターマイン!」


 杖を高く掲げると、無数の光の矢が天から降り注ぐ。


「しまっ……!」


 ジータもオレも、回避の動作すら間に合わない。


「ジータぁ!!」


 瞬間、視界が光に包まれ、オレの目の前が真っ白に染まった。

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