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召喚無双の最強暴君(ティラノサウルス)  作者: 月光壁虎
ティラノサウルス召喚!
14/43

刃と刃

 審判の号令と同時に、オレは地面を蹴ってレン先輩に接近する。


「うおおおお!!」  


 その勢いのまま、小ぶりな戦斧を振りかぶる。しかし——。


「甘い!」  


 レン先輩は軽やかに身を翻し、斧の刃を紙一重で回避する。


「おっと!?」


「かなりの勢いだな。だが、真っ直ぐ突っ込むだけでは見切るのも容易い!」  


 かわし際に、レン先輩のカタナが閃いた。


「させねえよ!」  


 オレは瞬時に反応し、斧を盾にするように振り上げる。  


 ガキィン!と鋭い金属音が鳴り響き、腕にズシリと重い衝撃が走る。


「ほう、大した反応速度だな」

「へへっ、昨日スカーレットにめちゃくちゃ叩き込まれましたからね!」  


 ちらりと見物席のスカーレットを一瞥する。


 ……プイッとそっぽを向くのも相変わらずだぜ。


 オレとレン先輩の激しい撃ち合いが続く。


「おいおい、あいつすごくねえか!?」


「あの生徒会長とサシであそこまでやり合うなんて!」  


 へへっ、ギャラリーの反応も上々。  


 だが、レン先輩はこの攻防の最中ですら、不敵に笑っていた。


「さすがだな、スタン! 私の見込んだ通りだ!」

「そうですかよっ!」  


 こっちはあんたのカタナを受けるので精一杯なんだけどな!


「——では、少し本気を出そう。雷鳴(ライメイ)!」


 レン先輩が叫んだ瞬間、バチッと鋭い電流が走る。


「おわっ!?」  


 手元に痺れるような衝撃が伝わり、斧を手放しそうになる。  


 慌てて後方に飛び退くと、レン先輩のカタナが青白い雷電を纏っていた。


「出た、生徒会長の雷鳴!」  


 観客席からどよめきが起こる。


「まさかそんな技が……!」


 だが、ここで怯むわけにはいかない。


「……だからって、今さら引き下がるわけにはいかねえよな!!」  


 再びオレは地面を蹴り、レン先輩に肉薄する。


「愚直だな、スタン。君のそういうところ、嫌いではないぞ!」


 刃がぶつかるたび、オレの手には鋭い電気ショックが走る。


「ぐっ……!」

「雷鳴のカタナとまだ撃ち合えるとは、さすがだな! ——だが、ここで決めさせてもらう。雷切(ライキリ)!!」


 レン先輩のカタナが、一瞬でオレの視界から消え——。  


 ——気づいた時には、すでに振り下ろされていた。


「ぐあああああああ!!」


「スタあああああン!!」


 スカーレットの悲痛な叫びが響く。  


 膝をつき、視界が揺らぐ。


「ここまで私を楽しませてくれたこと、感謝するぞ。……だが、私もみすみす負けるつもりはないのでな」


 遠ざかるレン先輩の声。  


 ああ……オレは負けたのか……?


 意識が闇に沈もうとした時——


「スターーーーン!! こんなところで負けちゃダメなんだからああああああ!!」


 スカーレットの声が耳に飛び込んだ。


 ……そうだ、オレは——アイツと約束したんだ!


「……まだだ!」


 ふらつきながら立ち上がる。  


 レン先輩が驚いたように目を丸くした。


「ほう、雷切をまともに受けてなお立てるか」

「跳ねっ返りの強い友達と約束したんです、誰にも負けないって。……それはレン先輩でも同じです!!」


 その時——斧を握るオレの全身に、得体の知れない力がみなぎった。


 魔力防壁とも違う、身体の奥から湧き上がるこの感覚。


「うおおおおおおおおお!!」


 咆哮とともに、オレは渾身の一撃を放つ。


暴君破砕牙(ティラノバイト)!!」


 紫に輝く斧が、雷を纏ったレン先輩のカタナと激突する!


「な、何だ!?」


「とんでもないことになってるぞ!」


 凄まじい衝撃波が吹き荒れ、ギャラリーが悲鳴を上げる。  


 オレの手に伝わる衝撃が尋常じゃない——でも。


「まだだ……!」  


 全力を込める。


「ぐ、ぐぬぬぬぬ……!?」


 そして、オレは——

 レン先輩を力ずくで組み伏せた。


「……私の負けだ」


 レン先輩が降参し、歓声が爆発する。


「オレ……勝ったのか……?」


 呆然とするオレに、レン先輩が告げる。


「おめでとう。君の勝ちだ、スタン」

「オレが……勝ったんですね」

「ああ、そうだ。……それと、そろそろ手をどけて欲しいのだが……」


 え?


 手元を見る。


 ——オレの左手は、レン先輩の形のいい胸をガッツリと鷲掴みにしていた。


 驚くほど柔らかい感触が手のひらに伝わり、オレの思考が一瞬フリーズする。


「うおおおおおおおお!?」

「スタン、貴様ァァァ!!」


 ギャラリーからも歓声とも悲鳴ともつかない声が上がり、スカーレットは鬼のような形相で拳を握っていた。


「はわわわっ、ごめんなさい!!」


 ああっ、やっちまった! 最近こんな失敗ばかりだ、どうしちまったんだオレ!?


 慌てて手を離すと、レン先輩はため息をつく。


「安心しろ、私は気にしていない。これは事故みたいなものだ」

「そ、そうですか」


 ふー、レン先輩が優しくてよかったぜ。  


 これがもしスカーレットだったら、今頃オレは消し炭にされてただろうな……。


 とはいえ、レン先輩の耳まで真っ赤なのを見て、罪悪感が消えないオレだった——。


 ともかく、こうしてオレはまた勝利を掲げることができたんだ。

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― 新着の感想 ―
そのうちラッキスケベのレベルが上がって、着替えシーンとかに出くわしそう…。
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