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引越し

ある程度筋書きのある歴史物の方が描きやすいな。

 現実は、私が感傷に浸ることを許してくれない。侯爵に任じられた次の日から忙しい作業が始まった。


 父上曰く、領地を接収する際多くの騎士が領地の接収に反対したため、その多くが殺されるか追放されることとなった。そのため今領地には支配者層が殆どいないこととなる。



 これはとても良い報告だ。この殆どを直轄地として有することが出来たら、封建的軍隊ではなく、常備軍を設立することが出来る。



 この時代の軍隊は、封土を与えられた騎士達と臨時に徴兵された農民兵が主体である。そして騎士達は年に40日しか無償奉仕を行わない。それ以上は、給金を払わなければならないとこや、そもそも領地経営に忙しく戦に出てこないという自体も珍しくない。



 この様な自体を避けるために、戦に出ない代わりの税金として盾代の設立がなされた。そして盾代の徴収を行った所何と我が選帝侯の抱える約2千人いる騎士の8割が盾代を払うという事態に陥ったのだ。ただこれは悪いことではなく、好ましい傾向である。これによって、選帝侯直属の部隊の維持費を賄うことができるのだ。



 新たな軍事制度の設計を引っ越し作業と同時並行に行う。期限付きで兄上達からファウルファウルバー侯爵家に送られてくる家臣・兵士達を纏め、私兵団の主たる人物を騎士に叙任する準備も始めなければならない。



 軍事・政治共にやることは多いし、多額のお金がかかる。父上から貸し与えられていた土地からの収入では賄えないので、父上、兄上達から借金をする羽目になった。しかし、多くの困難を乗り越え遂に引越しの日の目処が立った。



 そして、これから家族が一同に介することはますます難しくなることを父上は悲しんだようで、家族内でのささやかな祝宴が催された。


 「皆、ファルケンファウバー侯爵がこれから自らの領地に赴かれる。侯爵のこれからの成長を皆で祈ろうではないか。」



 父上の音頭と共に家族内での団欒が始まる。互いの幼い頃の話や、領地経営の難しさなど多種多様に渡る話題で話は盛り上がった。この心地よい環境から出て行くのは後ろ髪を引かれる思いだ。



 それから3日後遂に、新たな領土の首都となるホフブロイへ出発することとなった。総勢3千人の軍勢を引き連れ100人余りの家臣団を引き連れて大河の渡し場に辿り着いた。



 ここで遂に父上達と別れることになる。私は、父上と最後の会話を交わした。



 「結局お前の訳有りの者が好きな性格は治らなかった。領地を得て彼らの主となった今しっかりと手網を握らねばならん。分かっておるな。」



 「父上に厳しく躾られました故、分かっております。」



 私の返事に父上は、笑いながら話を続ける。



 「最後にこれ以上女を囲むのは宜しくない。お前には、私が縁談を持ってくる予定なのだからせめて結婚するまではこれ以上囲むのをやめなさい。」



 「...はい。父上のおっしゃる通りに。」



 「バレていないと思っていたならまだまだ詰めが甘い。以後気をつけるように。そして、何かあったら直ぐに私を頼りなさい。お前が生きていれば、土地は何度でも取り返すことが出来る。お前は今や替えがきかないのだ。そのことも肝に銘じておくように。」



 「父上いや、アウエンミュラー選帝侯これからは領地が隣合う間柄よろしく頼みますぞ。」



 その言葉に父上は、私との固い握手で返答をしてくれた。そして直ぐに私は渡し船に乗り大河を渡った。父は、かなりの時間私を見送ってくれた。そして対岸に辿り着いた時、遂に私は侯爵として独り立ちを遂げることとなったのだ。



 行軍を開始しながら近隣の都市に立ち寄り、新たな支配者がやってきた事を住民に誇示する為だ。そして立ち寄った街の指導者達に親書、同時に着任式の招待状も渡す。



 領内を少しづつ見て回った印象としては、長年の戦によって重税をかけられていたのであろう都市は活気が無く、農村は荒廃しつつあることが確認出来た。



 街道も整備がされておらず石畳は剥がれていたり、地面が陥没している。野盗が徘徊しているとの噂もある。



 恐らく着任した後は、各都市の有力者との交渉が最初の大仕事になるだろうな。彼らの信頼を得る為にも確りと話し合いたい。信頼こそが領地を治めるのに欠かせない要素である。



 道中、3つの都市からそれぞれ近くに跋扈する野盗の討伐を依頼された。無論依頼を受けることとなった。実戦と練習も兼ねて野盗を殲滅した。



 選帝侯の配下から私を慕って我が侯爵家に移籍したエマヌエル・バルテル、私が小さい時からマリウス・バルリングこの両名に率いられた500の兵によって野盗は1人残らず討ち取られた。討たれた野盗達が持っていた財物は、7割を兵士達に振る舞い残りを我が侯爵に入れることとなった。



 この後、家臣と護衛の1部を切り離し領都となるホフブロへ急行させ、引き継ぎを行う。残った家臣と護衛を連れ約1ヶ月間、領地を視察も兼ねて巡業した。そして、領都に入り儀式を行い、政務を始めたのだった。

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