表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

兄達の帰還

 あれから色々な事を学びながらフラフラと都市を彷徨う日々が続いていた。その様な中、次男のレンナルト、三男コンラートが兵を率い帰ってきた。恐らく敵から奪ったであろう多くの軍旗を掲げた凱旋であった。


 この凱旋を屋敷に残る最高位の者として迎え入れる。2人の兄の頭に月桂冠を被せ、彼ら2人が偉大なる勝者であることを示す。


 細々とした儀式を終え、屋敷に入った2人の兄を労う。


 「兄上達2人が先に帰ってくるとは思いませんでした。能力・性格を考えるとレンナルトの兄上が殿として現地に残り、エッケルハルトとコンラートの兄上が帰ってくるのでは?」


 「それは簡単だ。我らに助けを求めたアーペント伯爵が急死し、敵対していたアンテール伯爵を我らが討ち取った。するとどうだ?争っていた両者が消えちまった。しかも、両者若くして亡くなったせいで、子供がおらず近くに親戚も居ない。父上と長男のエッケルハルトの両方が領地を無理矢理接収して統治をやっている。」


 3男のコンラートの兄上が会話に割って入り、父上と長男の置かれている現状を教えてくれた。統治者の居なくなった土地を狙った周辺諸侯を撃退し続けていたからこれ程までに時間がかかったのか。


 「つまり、父上は本領の行政をレンナルトの兄上に、軍事をコンラートの兄上に任せるために帰られたのですか?」


 「そうだ、やはりお前はどこかの筋肉バカ(コンラート)と違い頭が良い。」


 自らの弟に毒を吐くのは我が家2男であり知恵袋でもあるレンナルトの兄上だ。行政などの内政を得意としている。更に文学などの教養豊かであり一流の文化人でもある。戦の方面に関しては、動と静がはっきりとした戦い方を好む。機会を見つけるまで辛抱強く待ったり、機会を生み出すために軍隊を思いもよらぬ所に動かすなど敵の意表を良く突いている。


 容姿は、コバルトブルーの髪を長く伸ばしポニーテールで止めて体の前に垂らしている。湯上りの時などは、謎の色気を振り巻きメイドや女中の心を奪っている。我がミュールハイム家の分家であるレムシャイト伯爵家を継いでいる。穀倉地帯であり、人口も多い重要な地を任されている。


 このレンナルトの兄上と正反対なのが、三男のコンラートの兄上なのだ。コンラートの兄上は、我らが4兄弟の中で最も戦争・戦いに強い人なのだ。戦場においては、獣のような感を働かせ、相手の見えづらい弱点を的確に突いてくる。2mを超える偉丈夫であり、全身に分厚い甲冑を着込み重種の馬に跨った姿は、存在するだけで味方を鼓舞し、敵を恐れさせるのだ。また、戦場での一騎打ちを行う事10回、その全てに勝利している。私はこのことを十全武功と称している。


 性格は、とても明るく誰に対してもフレンドリーだ。現にレンナルトの兄上の吐いた毒も、意に介せずと言った感じだ。やはり天才肌の人物なので戦場においては頼りになるのだが、平和になると偶に我の分からないことを言っている。


 ただ、必要最低限の教養はあるがそれ以外を全て鍛錬等に費やしている為、兄上が継がれたレックハウゼン伯爵家の領地の経営などは、レンナルトの兄上が選出した人材が行っている。コンラートの兄上が率いる家臣団は、軍事に偏重しているため領地の経営をやってくれる彼らの存在は疎ましがるどころかとても喜んでいるようだ。兄上自身もレンナルトの兄上の事はわるく思ってもないし、逆もまた然り。ここにはいない父上と長男も含めた我ら1家の絆はとても固く、深いものなのだ。


 「アルノルト、私は疲れを癒すため数日休ませて貰う。あと僅かだが君がこの屋敷の代表だ。確りとしてくれたまえ。」


 そう言ってレンナルトの兄上は、部屋に入っていった。慣れない地での戦は相当に疲労が

溜まるから当然のことであろう。


 「コンラートの兄上はどうされますか?」


 「お前の私兵団が中々強くなったと聞いたから、少し味見してくる。構わないだろ?」


 「兄上に鍛えていただけるとは彼らも喜びましょう。」


 疲れが溜まっていないのかコンラートの兄上は、私の私兵団と戦いたいと言い出した。無論彼らにとっても何度か手合わせしたことがある存在するなので断わる選択肢など存在しない。


 「おっそうだ!アルノルト、良かったな!お前領地貰えるぞ!」


 去り際に大きな爆弾を残して去って行った。慌てて詳しく話を聞こうとしたが、既に馬上の人となり、門に向かっていった。


 その発言を少しづつ噛み砕く。兄上の言った発言をゆっくりと噛み砕いていくと、私は誰も居なくなった屋敷のエントランスで踊り狂う。正直諦めていた自らの領地が手に入る可能性が極限まで高くなったのだ。コンラートの兄上は、正直者でありその発言には裏表がない。しかし、まだ周囲に言いふらすことは出来ないと自らを落ち着け、父上とエッケルハルトの兄上が帰ってくるのを待つ。2人の帰還は、そう遠くない事を帰ってきた2人の兄上達の雰囲気から察している。


 少しでも自制心が揺らげば再び踊り出してしまいそうな気持ちの中、これからの日々を過ごすことになりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ