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04チェンジで




 異世界転生したとは言え、前世の年齢がプラスされて精神年齢がぐんと上がる、なんてことはなかった。見た目そのまま。


 本当に残念。


 この体に引っ張られているのか、はたまたどこかで前世の私の精神年齢が止まったのかはわからないが、些細な事で揺れ動くメンタルはティーンエイジャーのそれだった。


 だからだと思う。


 大きく波打つ心臓の音が、耳のすぐそばで鳴っているようだ。胸がウズウズするし、締め付けるような痛みも存在していて複雑だ。

 期待もある。

 でも、不安の方が大きいのは、ひとえに目の前の男の反応が気になるからだ。


 後日、お義姉様と準備を重ねて一人でもセットできる様になったその日に私の計画は決行することになった。


「ど、どうかな……」


「……」


 いやいやいや嘘やろ……。

 めちゃくちゃ恐ろしい形相。

 女の子に意見を求められて、どうしてそんな凶悪な顔ができるの……?

 どうして私の背後を睨むの?

 あ、背後にはロドムお兄様がいるのね。


 でもどうして背後にいるロドムお兄様を睨んでいるんや?

 違うやろ?

 わいや。

 わいやろ?

 どんなんでもいいから視線はこっちやろがい。


 せやろがい……。


 この際なんでもいい。似合う似合わないとかもどうでもいい。せめて視線だけでも、こっちを見て欲しい。


 銀の髪までは真似できずとも、髪は念入りに毛先までピンとストレートにして、ケアまでエリィお義姉様と一緒にしてもらったので、髪から香る匂いも一緒。顔も肌の色を合わせて少し白く。

 目元もお義姉様のお化粧方法を真似して似せた。

 服も髪も化粧も。頭の先から爪の先まで全部エリィお義姉様と双子コーデ。


 へへへ、本当の姉妹みたいで嬉しいなぁ、なんて言ったら、思い切りエリィお義姉様に抱きしめられた。「う、嬉しくて」と恥じらうお義姉様が素敵すぎたので、なんだかロドムお兄様に申し訳ない気持ちになった。エリィお義姉様の可愛いとこ独り占めしちゃった。ごめんね。


 何も答えないし、固まったジェンから何か言葉が出るのを大人しく待つ。

 貴方の好みの寄せたのよ、なんて年甲斐もないおめかしをしたのだ。

 憧れのエリィお義姉様のお化粧道具も香水もお借りして頑張ったのだ。

 ロドムお兄様を魅了し、ジェンの心を揺さぶり掴む、お義姉様のような見た目になりたくて。


「な、何か言ってよ」

「……ちっ」

「ひんっ」


 待てずにそういえば、盛大に舌打ちをしたジェンの目がカッと見開いた。怖い。


 しかしやはり視線はお兄様へ向かったままだ。


「あの、ジェン、私は反対したのよ……一応、一応ね。でも、やってみてわかる事もあると思うの、ほら、私だってそうだったし。だから……」


「そうだよ、ジェン、可愛いじゃないか。うんうん、ん……? すんすん……わぁ、香りまでまるでエリィのようだねぇ」


 鼻をぴくと動かして、至近距離で「本当に可愛い」と柔らかな笑みが私に向かい、さらに言われ慣れない賛美の言葉に恥ずかしさで顔に熱が集まる。


「ろ、ロドムお兄様……」


 ———バキッ


 恥ずかしさが限界突破して、カスカスの声が漏れた瞬間。


 ジェンの持っていた、あれなんだろう。何かが真っ二つに折れた。


 た、短剣?短剣の(つか)……?


 嘘だろそんなバカな。

 ゴリラ?

 ゴリラなの?


「こい」

「ひゃ」


「あ、こらジェン」

「あ……ダメよ、乱暴はっ」


 ロドムお兄様とエリィお義姉様の静止の声など聞く気もないのか、ジェンは私の手を掴んだと思ったら、腕を強く引っ張り応接室の扉を力任せに蹴飛ばした。

 二人の声はもう耳に入ってこない。


 勢いよく開いた扉の向こうにいた使用人は、びくりと肩を震わせて、顔を青くしながら私を見ている。


 その気持ちわかる。

 多分私も同じ顔をしているはずだ。


 力任せに引っ張られたせいで、体はよろけて躓き転げそうになる。


 ジェンはほんの一瞬心配する様にチラリと私を見たが、唇を噛み締めるとすぐにぐいと私の腕を引っ張って乱暴に体制を整えさせた。腕が無理に引っ張られて、ズキリと痛みが走って「いた」と声をあげればほんの少し腕を握る力は緩んだものの、それでも解放されることは無い。

 そしてまた直ぐに足早に床を蹴る。

 妙に苛々と、そして焦る様な表情が何故なのかわからない。


 顔を青くして目を白黒させた使用人達は、何が起こったのかと「ジェン様……?どうなされましたか……?」「いったい何を……」「ロアお嬢様!?」と口々に声をかけてきたが、それにも返事をする事なくジェンは視線だけ送ってズンズン進んでいく。


 幾人もかき分けて、しばらく無言で歩けば、ある部屋の前でジェンは足を止めた。


 扉を開いて、乱暴に中に押し込まれると真っ暗な部屋に灯りが灯る。


 ようやく腕が解放されたが、随分と長い時間圧迫されていたものだから、肌はジェンの手のひらの形で赤くなり、その部分がジンジンと痛んだ。


 痛む部分をさすると「ちっ」と舌打ちが聞こえて、その声の方向を見やればジェンが憎々しげに眉を歪めさせてこちらを見ていた。


 

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