魔女化
「ミネ!! 大丈夫!?」
「はあ、はあ! 身体中が痛い! 苦しい……!」
「ああ、どうしよう!?」
ミネは凄い汗だ。
ドラゴンのウロコがミネの首元から胸のあたりまで広がっている。
ボクはまだ学校で回復魔法を教えてもらっていないし、それよりもこの状況は魔法でどうにかなるものなのか!?
分からないことだらけだ。
「ルカを呼んでくるよ! ミネ、ごめん! 待っていて!」
ボクは慌てて服を着て部屋を飛び出した。
服の横に立てかけてあった魔法剣も手に取る。
ルカが借りている部屋のことは教えてもらっている。
そんなに遠くないところだ。
「ルカ! ルカ! リョウだよ! ミネが大変なんだ!」
ボクはルカの部屋のドアを叩く。
ルカはボクの慌てようから異変を察して急いで部屋のドアを開けてくれた。
「いったいどうしたっていうの? って、あなたその髪の色はまさか!?」
髪の色?
そうだ、ボクはドラゴンの力を失ったのだ。
自分の姿を見ていなかったが、中央王国で会ったコウタさんのようにボクの髪の色も黒になっているということだ。
「そ、そうなんだけど、それでミネがドラゴンに!」
「どういうこと!?」
ルカはボクを一目見てボクの状況はわかったみたいだが、ミネに起きていることは信じられないと言ってボクと一緒にボクらの部屋まで来てくれた。
「これは……魔女化してるわ! でも、なぜ!?」
ルカはミネの様子を見て、そう結論付けた。
魔女化……ということは西の国でボクらを襲ったカラスの魔女とミネは同じ状態ということなのか!?
「ミネが魔女化って? そんな……、ボクのせいで……。」
「いえ、普通なら魔女化はありえない。魔物の魔力に作用する魔法を使わなければ……。」
ルカはしばらく考え込んで、何かに気付いた。
「この部屋の匂い……。なぜ、あなたたちがこのアロマを持っているの? ……魔女化はこれのせいね。憑依者の魔力を魔法を使わずに身体に取り込むための魔法道具よ。」
ルカはミネが持っていたお香を指して言った。
どうしてそんなものをミネが!?
「ごめんなさい、リョウ。私が悪いの……。リョウ、ごめん……。」
苦しそうに声を発するミネ。
みるみるうちにミネの手足がドラゴンのものに変わっていく。
もう背中には羽が生えかけている。
「魔法に耐性がないから、ドラゴンの魔力に飲まれてる……! このままでは完全にドラゴンに身体を乗っ取られてしまうわ!!」
「そんな! なんとかできないの、ルカ!?」
「……憑依術を使える神官であれば、ドラゴンの魔力をコントロールする方法を持っているかもしれないけれど、私には無理だわ……。」
「グアアアア!!」
ミネの姿が完全にドラゴンに変わってしまった。
「ミネ!!」
ドラゴンに変わってしまったミネが身体を起こし部屋の外に出ようと暴れ出した。
ボクは慌ててミネのドラゴンの背に飛び乗り抑えようとしたが、ミネはものすごい力でボクごと窓を打ち破り外に飛び出した。
やばい!
ボクはミネに振り落とされないように必死だった!
「グオオオオ!!」
ミネがそのドラゴンの羽をはためかせて宙に舞い上がる!
「リョウ! ミネ!」
ルカのボクを呼ぶ声が聞こえたがボクにはそれに応える余裕はなかった。
グングンと回転しながらミネは高く高く雲の上まで飛んでいく。
ボクはミネに必死でしがみつく。
今のボクはもうドラゴンじゃない。
ここで落とされたら死ぬ!
「ミネ、部屋に戻ろうよ! ドラゴンから戻ってよ!」
「オオオオオオ!!」
ミネはボクの声が聞こえなかったのかそれを無視して、再び咆哮すると今度は街の外れの山の方へと向けて、もの凄い勢いで飛んだ。
あっという間にその山を越えて、更にその先の山も越える。
もうボクらの街は遠く見えない。
ああ、魔法剣に眠りの魔法を入れたままにしてあったならば、ドラゴンになったミネを眠らせて大人しくさせることができたのに!
なんでボクはそれを性転換の魔法に変えてしまったんだろう!?
山を越え、谷を越え、いくつかの村のような明かりの上をボクとミネは通り過ぎた。
「ミネ、どこに行くんだよ……!」
ミネが向かう先にまた明かりのついた民家のようなものが見える。
まさかミネが人間を襲ったりしないよね!?
もしもこのままミネが完全にドラゴンになってしまったら、ボクはどうすればいいんだ。
「ミネ! 正気に戻ってよ!」
その時、前方の民家からキラリと何か飛んできたような気がした。
と同時にミネが意識を失ったかのように急降下し始める。
え!?
落ちる!?
あ……、ミネと一緒に落ちていくボクも意識が遠くなる……。
この感じは以前にもどこかで……。
これは……、魔法……?
ボクとミネは民家近くの草むらに落下したようだった。
「あら、こんなところで会えるなんて奇跡のような再会ですね。……いや、偶然ではないか。このドラゴン……ミネさんが無意識に使った探索の魔法で私を探しあてたのですね。」
ボクは意識を失う直前にその声を聞いた。




