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ドラゴンの力

 ボクはリリエに言われたことがショックでなかなか立ち直れず、暗くなるまでバラ園にいた。

 ひとつの同じ考えが堂々巡りする。

 暗い夜道を部屋に帰る間もずっとそれを考えていた。

 帰り着いて外から見たボクらの部屋の窓には明かりが点っていて、もうミネは仕事から帰ってきているとわかった。

 このまま帰ったらきっと化粧も崩れているし泣いたことはすべてミネにはバレると思う。

 でも、ボクはミネに打ち明けたいことがあった。

 こんなこと相談できるのはボクにはミネしかいないと思った。



「リョウ? 何があったの?」


 ミネは帰宅したボクの涙の跡で酷いことになっている顔を見ると、駆け寄ってそっとボクの肩に手をかけて聞いた。

 ミネは夕飯も食べずに待ってくれていたみたいだった。


「ちょっと友達とケンカしちゃって……。」

「……大丈夫?」

「……ううん。」

「リョウ、体が冷えてるよ。まずはお風呂にゆっくり浸かって。」

「うん。ありがとう。」


 ボクはミネが作ってくれていたお風呂に入りバシャバシャと顔を洗う。

 温かい湯で体も温められて気持ちが落ち着いてきた。

 これからボクはミネに言わなければいけない。

 心臓がドキドキする。

 でもボクは覚悟を決めた。

 ボクは魔法の剣を置いて部屋に戻った。

 ボクが風呂から戻ると、ボクが男の姿のままだったのでミネは驚いた様子だった。


「ミネ……。」


 ボクはそのままミネを抱きしめて言った。


「どうしたの? リョウ?」

「ボク……、ドラゴンをやめたいんだ。」

「ドラゴンをやめる……? それって……。」

「ボクはこんなこと、ミネにしか頼めない。」

「……ちょっと、考えさせて。」

「わかった。」


 ミネの答えを待つためボクがミネを抱いていた腕を解いて離れようとすると、ミネはボクの背に手を回して無言でボクにその場を動かないようにと示す。

 少しの時間が経ってミネが口を開いた。


「私もずっと考えてたの。リョウがそう言ってくれてうれしい。ちょっと待ってて。」



 ミネが部屋の照明を消す。

 そしてミネは棚の中から小さな箱を取り出し、その中に仕舞われていたお香に火を灯した。

 不思議な匂いに部屋が満たされる。


「そんなの持ってたんだ。」

「うん……。」


 ボクらはお互いに一度もそれを言葉にはしなかったけれど、それの儀式は淡々と進められていった。

 暗がりの中、ミネはついにベッドに横たわってボクを見て言った。


「こっちに来て。」


 薄暗い部屋をぼんやりと照らしているお香の火の小さな明かりが、ミネの身体にくっきりと分かれた陰影を付ける。

 ボクの身体もミネからは同じように見えているだろう。ボクはぎこちなくミネの上に覆い被さるようにした。


「キスして、リョウ。」


 ボクはミネに言われるままキスをする。

 ドラゴンの本能は痛いくらい早く早くとその時をボクに急かす。

 ボクはそれを我慢する。

 ミネは自分の身体の隅々までをボクのこの手が知ることを望んだ。


「……いいよ。」


 ミネの肌が熱を持っている。

 すでにミネの身体はボクのドラゴンの本能を受け入れる準備が整っていた。



「リョウ……リョウ……。」

「ミネ……大丈夫?」

「うん。平気。」

「もうすぐだから……。」

「……私ね……。」

「え……何?」

「リョウ……あのね、私ね……。」

「うん。……何?……ミネ?」

「私ね……リョウと一緒にいるために……。」

「ミネ……。」

「どうしてもドラゴンの力が欲しいの……。」

「え!?」

「……リョウ、お願い。」

「あっ……!」


 ドラゴンの力がミネに放たれた瞬間、ボクの腕の中のミネの瞳が紫色の輝きを放った。

 それはドラゴンの色だ。

 見る見るうちにミネの髪が紫に変わり、ミネの肌にドラゴンのウロコが現れる。


「どうして、ミネ!? これはいったい!?」


 そんな!

 ボクは間違っていたのか!?


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