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王の秘密

 リョウはミネと離れマリンに近づいていった。

 マリンがいるのは王墓の金貨の王の試練が行われるはずであった祈りの間……であった場所である。

 緑のドラゴンとガーディアンの戦闘で破壊され瓦礫が散見するその場所は、本来ならば竜の試練と戦士の試練を突破した時に開かれるはずであった。


「マリン……、それって?」


 マリンは瓦礫の中から、三つの試練を突破し王の資格を手にした者に与えられる三つの宝、『黄玉』、『金の仮面』、『金の木の枝』を見つけ出していた。

 三つの宝は歴代の王の中でも特に巨大な力を持っていた三人の王を表す宝であった。

 彼らが使ったという魔法は後世の誰も理解できず使うことはできていなかった。


「これさえあれば、王の試練は突破したことになるでしょう。」

「そうなんだ。」


 リョウは崩壊した王墓のことも、計画通りにいかなかった試練のことも本当は心配していたのだが、マリンが大丈夫だと言うならきっとそうなのだろうと信じることにした。


「これでボクの役目は終わったんだよね。」

「はい。城に戻る頃には約束通りリョウさんの王国民の証が用意できているはずです。」

「そうか。それなら良かったよ。ミネがすごい心配してたからさ。」


 マリンはさきほどまでのガーディアンとの戦闘で余裕無く見せてしまっていた素の顔をすっかり潜ませていて、以前のように天使のような微笑みを浮かべる。


「リョウさん。ミネさんのこと、ちゃんと大事にしてあげてくださいね。」

「うん。ボクはミネのことは……大事に思ってるよ。」

「それならいいのですが。」



 マリンは見つけた三つの宝をリョウに持たせた。

 リョウは『金の木の枝』を持とうとした時、その目線の先に一つの扉を見つけた。


「あれ? あそこにも扉があるけれど、あれは試練とは関係ないの?」


 リョウは扉に近づいた。

 そしてその扉にこの世界の文字で書かれている文字を読んだ。


「扉を開く魔法の言葉を唱えよ……?」

「ここは王墓ですから、本来なら歴代の王のお墓なのです。」

「あ、そっか。それじゃあ王様がこの先に眠っているってこと?」

「いえ、この扉については、この『魔法の言葉』が伝わっておらず開けることができないと聞いています。」


 マリンは扉の文字を指でそっとなぞった。


「扉を開く魔法の言葉か。『開けゴマ』とかじゃないの?」


 リョウは元の世界の知識を使った冗談を言ったつもりだった。

 ところがそのリョウの『魔法の言葉』に反応して扉の文字は淡く光り、ギィと動いて扉は開かれた。


「まさか開くなんて。」


 驚きつつ扉の中に入るマリンの後に続いてリョウも中に入る。

 扉の中の部屋の中心には棺が置かれていた。

 やはりここは王の墓……。

 おそらくこの棺は三百年前の王、金貨の王の棺だろうとマリンは推測した。

 棺を囲むように部屋の壁一面には大きな模様が描いてある……、とマリンは思った。

 しかしリョウにはその模様は別のものに見えていたのだ。


「これって……、日本語じゃん。」

「え?」

「私は田中仁志。西暦千九百八十年七月二十八日、日本の東京都世田谷区で生まれた。父の名は田中太一。母の名は田中佳子。兄の名は英太。小学校は……。」


 部屋の壁に描かれた模様をスラスラと読み出すリョウを見て、これは何かまずいことが起こっているとマリンは直感した。

 マリンはすぐさま杖を構えリョウに魔法を使った。

 忘却の魔法を。


「あ……。」


 マリンに魔法を使われたリョウは一瞬マリンと目があったが、すぐに意識を失い倒れた。

 すべて忘れさせる必要は無い。

 この扉に気付いたところから忘れればいい。

 それでこの王の墓の秘密も、リョウの目に映ったマリンの鬼のような形相も、リョウはすべて綺麗に忘れるはず。


「日本語……。憑依者たちの世界の文字……。それがなぜ三百年前の王の墓に刻まれているの? 五百年前から王の血は引き継がれてきた……。金貨の王は憑依者では無かったはずなのに……。」


 マリンにはそれをゆっくり考察している時間は無かった。

 リョウを追ってミネとルカがこちらにやってくる。

 ミネにもルカにもこの壁の『日本語』は模様にしか見えないだろう。

 リョウは疲労で急に倒れたことにすればいい。

 扉から外に出るとまた扉は閉じられた。

 この扉の中のことはまだ誰にも言えないとマリンは思った。

 もしかしたら王家の存在を揺るがすものかもしれない。


「いつか、この秘密と向き合う時が来るのかしら……。」


 マリンは手元の黄金色に輝く王の宝を見つめた。

 王の宝は魔法によってその輝きを永遠に宿していた。

 この王の宝の魔法もまた後世の誰も理解することができていない魔法だった。


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