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現・行・犯

少し内容がボリューミーです。

97話


壊滅(ルインズ)

『ゾククッッッ!!!!』


 アリスの詠唱を聞き、死の予感を感じたデュランの

意識が加速する。


(全員死ぬ!! 雑魚に構ってられねぇ!! 賭けしか

ねぇ!!)


 全てを"直感"に委ね、先ずは両足を全力で踏み込み、

後方に超加速しつつ、上半身を右回転、下半身を

左回転させる。


(無事でいてくれ!)


 後方への直進速度、上下逆の回転速度が高まる前に、

ローリーを最大限優しく地面に置き、彼女の減速で

得た反作用により、上半身の回転速度を更に上げる。


(ぬうッッッ!!!)


 身体が捻切れる前に、全身の筋肉に力を込め、

逆回転する上下の身体を相対的に無回転にする。


(レェ)……」

(後は…………)


 莫大な直線速度はそのままに、僅かに右回転して、

仰向けになっているデュランは、アリスの声から

極僅かの猶予を再確認し、ステッキの向きと目線

から、光線の発射角度を計算した。


『ザン!!』

(角度を整えろぉ!!!!)


 計算終了後、既にローリーとの距離が離れている

デュランは、足を開きながら、上下半身の逆回転を

再開。アリスの光線の直線上に、両手剣の柄を向けて

突き刺し、自身の運動量を両手剣に伝えることで、

ひたすら角度を微調節し始めた。


 そして、


(イィ)ィィィーーーーー!!」

『ジュオオオオオオッッ!!』


 アリスの詠唱が完了し、光線は溶かした。


『ドロォ…………』

「…………へぇ??」


 アリスの斜め左奥にある、壁の上側を。


『ズド!!』

『ギュルッッ!!』

「ハアッ!…………ハアッ!…………」



 そして、デュランは右足を地面に突き刺し、それを

軸足として、直立へと戻った。そう、


鏡剣(ミラージュ)逆光(カウンター)。うまく…………いったぜぇ…………!!」


 デュランは、鏡のような光沢を放つ剣の柄による、

光線の反射をやり遂げたのだ。


(あの娘と逃げるだけなら、簡単だった)


 光線の角度を見切り、上に跳べば一息だけ自身と

ローリーの延命は、可能だった。だが、自身が回避

すれば、間違いなく剣と斧を振った2人は腕を焼き

切られ、直線上で突撃の構えを取っていた女騎士は、

焼殺されていた。


(けど、やっぱり俺には、他の奴等を見捨てること

なんて、出来ねぇんだよ。マジでツいてたぜ)


 デュランの正義感は、その未来を許せず、少し角度

が違えば、全員を助けるどころか、自身諸とも更に

大勢が、犠牲になりえる一手を決行し、成功させたの

だった。


「「「「「「…………え? っええええええッッッ!?」

」」」」」


 彼と同レベルの冒険者にとっても、紛う事なき神業

が起きた。この事実に、うつ伏せのローリー以外の

全員が、驚愕した。


(こ、このモブ男…………、今、私の壊滅(ルインズ)光線(レイ)を、背後

の壁まで跳ね返したの…………!?)


 アリスに至っては、速いだけの眼中に入らない

ような見た目の男が、自身に抵抗をしてみせた事

に、硬直する始末だった。


(っ、今の内にステッキを弾く!)


 デュランは、減速で筋力を使い果たした右脚の分も、

左脚に力を込め、アリスの無力化を行おうとした。


『カッッ!!』

「「「「「「「!?」」」」」」」


 だが、今度は上から正午の太陽のような強光が差し、

動きを止められた。そして、


「イッツ・ショーーーウ・タイム!! ここからは深蒼(しんそう)

の衣を纏いし、名探偵・マリッジブルー様の出番だ

ぜぇ!」


 このタイミングで、マリッジと名乗る俺・ワイルド

が全員の前に躍り出た。ワイルドすら偽名なのに、

更に偽名を名乗るのはどうかと思わなくもないが、

ここは気にせず、場を支配しよう。


「な、何か変なのが出てきたぞ??」

「声が小物臭ぇな」

「どっからどう聞いても偽名だろ…………」

「絶対結婚したくないタイプね」

「今、取り込み中よーー!」

「消えろカス!」


 照明を弱めたタイミングで、中傷コメントの嵐に

あったが、やはり気にせず動こう。


(ボォク)は消えないよ~ん。しかぁし、Mr(ミスター).デュラン!」


「は、はい…………」


 俺はデュランの手を取り、立たせる。


「よくぞ背後のプリンセスを、皆のシュー諸とも守った!!」


「!」


 そして、褒め称えた。


「エブリワン! 皆のシュー! Mr.デュランに盛大なる

(ハック)(シュ)ーをォーー!!」

『パチッ! パチッ! パチッ! パチッ!』


 更に注目を集める狙いも兼ねて、拍手を煽動した。


「…………確かに、俺。アイツがいなかったら腕飛んでた」


「俺もだ…………」


「私なんか…………、巻き添えで死んでいたわ…………!!」


『パチパチパチパチパチパチ!!』


 結果、間違いなく助けられた3人が起点となり、

拍手が巻き起こった。


「さ、Mr.デュラン。Mrs(ミセス).アリスは(ボォク)が止めるから、

プリンセスちゃんの身体を起こしてあげなさぁい」

『トン』


「ら、ラァジャー…………」


 信頼を得るためには、力の誇示が有効。デュランの

肩を強めに握ることで、"マリッジ"の力を信頼させた。


「君、立てそうかい?」


「ローリー、です…………。はい、何から何まで…………、

ありがとう…………ございます…………!!」


 ローリーは、両目の涙に気づく事なく、デュランの

手を取り、立ち上がった。


 そして、俺の目の前には、不機嫌さを露にした

アリスが立っている。


「やぁやぁ、Mrs.アリス。悪行(アクギョ)ーをMr.デュランに

止められた挙げぇ句、誰一人キィル!! 出来なかった

気分はぁ、どぅおうッ・だぁいぃ??」


「悪行? どいつもこいつも、神の代行者たるこの私の

行動に、ケチつける気?(そして…………、よくも愛しき

アーロン様のヘッタクソな物真似をしたな?)」


 それとなく、アーロン要素を入れたキャラを演じて

いると、案の定、アリスは更に怒った。


 持ち前のサイコパスさといい、手酷い暴行を受けて

いながら、未だにアーロンを慕う心は、やはり理解

不能だ。


「全発言に異議あ~り! 先ずは悪行(アクギョ)ーねー。Mr.

デュランが指摘した通り、Mrs.アリスはMrs.

ローリーに手酷い怪我を負わせてマース!」


「だーかーらー、それはそこのモブ剣士の言いがかり

だっっつぅううのっっっ!!!」


「ノンノン! 証拠がある以上、Don(ドン)'t() escape(エスケープ)デース!

まぁずはMrs.ローリーの足の甲を踏んだ時に出来た、

踵の血痕! ライトォオン!!」

『パチン!』


 指パッチンと同時に、アリスのヒールに極小(ミニマム)召喚(ゲート)

局所(ローカル)照明(ライト)で強い光を当てた。


「血だ…………」

「この赤さは、殆んど出血直後だな」

「足首に小さな血飛沫も付いているわ!」


「…………チッ」


 すると、アリスのヒールに付いた血が、生々しく

映り、野次馬にどよめきが起こる。当のアリスも、

誰にも気付かれない大きさの舌打ちをしたが、俺の

耳は聞き逃さなかった。


「そしてぇ、Mrs.ローリーの足の甲には、ヒールに

踏まれた陥没があります!」


 光をローリーの足に移す。


「うおっ…………!!」

「思い切り踏まれてるぞ…………!」

「ヒドイ…………!!」


 それを見て、群衆も簡単な因果関係に納得の様子を

見せた。


「この中でぇ、Mrs.ローリーがMrs.アリスに踏まれた

姿を見た者はぁ、挙手お願いシルブプレィ!!」


『『『ババッ!!』』』


 デュランを含め、6人ほど手が上がった。


「サンキュー、サンキュー! another!! Mrs.ローリー

への虐待行為を見た者は、挙手とトークをシルブプレ!」


『『『『『バババッ!!』』』』』


 実に、この場の3分の2が挙手した。


「アリスさん、踏んだ後に、ステッキの先端でローリー

ちゃんの傷口をつついていました!」

「しかもその後、ローリーちゃんが頭から転んで

いましたが、恐らくアリスさんの仕業よ!」

「俺は見えていた。信憑性は保証するぜ!」

「転んだ後に、手を取るふりして、親指の付け根を

爪で刺していたわ!」

「この中の様子を壁に耳当てて聞いていたけど、1度

壁に叩きつけられているぜ」


 そして、俺がアリスを牽制している甲斐あって、

次々と言質を得られた。


「証言サンキュー!! Mrs.ローリー、間違いないかい?」


「間違い、ありません。全て、私が受けた虐待です!」


 本人確認も、取れた。


「とのことデェス。いかがかなぁ? Mrs.アリス」


「ハッ、どいつもこいつも罰当たりだなぁ。私に

逆らって、ここから出られると思ってるのかぁ?」


 風向きが極めて悪いからか、アリスは早くも本性を

出し始めた。


「おやおやぁ? 認めたって事で良いのかぁい??」


 俺は敢えて奴の神経を逆撫でするべく、アーロンの

物真似を、極めて似せた。


「さっきから愛しの人を猿真似してんじゃねぇぇええ

えええええ!!」


 結果、奴はとうとう、狂気を惜しみ無く発散し

始めた。


「証拠なんてなぁ、こうすりゃ良いんだよ!!」


 奴のステッキが、ローリーの血痕が付いたヒールに

向く。


光線(レイ)!!」


 そして、血を蒸発させるのに十分な、最低限の威力

を確保した速射を行う。


「…………離せよ。汚らわしいクソザル」


「あらあらぁ、自己紹介オツですねぇ~~。俺の方が、

魔法攻撃力が格上だと分からない、おサルさんは、

どちら様でしょ~~~う、かっ!?」


 ローズの時と同じく、魔力を用いて強引に魔法を

ねじ伏せた。


「あー、右手にも、立てた爪に血痕が付いてる~~!」


「証拠隠滅の前に、お前を隠滅だ!!」


 冷静さを失った奴は、無意味にも程がある、左指

からの光線を繰り出そうとしてきた。


『ガシッ!』

「死ねええええええええ!!!」

『ジュオオオオオオッッ!!』

「Mrs.!! 残念でしたー!」


 案の定、俺に手首を反らされ、デュランに壊滅光線

を跳ね返された壁へ、魔法を放った。


「危ないからきっちり封殺して、ジャーンプ!」

「!?」


 そして、俺は左手からの魔法を封じた後、アリスを

飛び越えて前宙を行った。


「両腕関節ロック! か~ら~の~~」

「ぐぅうぅううう!?」


 流れるように、両肩を捻って両腕を後ろで極め、


『『カシャリ!!』』

「手錠OK! 暴行・殺人未遂容疑で、起訴しまーす!

Mrs.ローリー、これで良いか~い?」


 魔力を10分の1にする手錠を2つかけ、ローリー

に意思確認を行う。


「勿論です! 私のために、ありがとうございます!!」


「グレィト! 受けた痛みは、しっかり返さないと

ねー!」


「私は神の使者、天使だぞ!! 貴様ら全員、地獄に

落とすからなぁぁぁああああああ!!!」


 アリスは、両肩の痛みに悶えながら、正しく悪魔の

ような表情で、部屋中に響き渡る(きょう)(かん)を行った。


「悪魔みたいな顔で叫んでもー、説得力無いねぇ!

それとぉ」


 俺は皮肉を返し、最後に言うべき事を言う。


「この世界で神に近い存在は、お前じゃなくて女王様

だろ? 勘違いするな。それに、お前を憎む奴は、

この場の全員だけじゃねぇ。ここの10倍は超える

人々に、もっと大勢の動物たちもだ。お前はこれから、

今まで人にしてきた虐待を受け、気付けば地獄に居る。

楽しみだよなぁ。人にしてきた事を返されるのはよぉ」


「テメェ…………何者だ…………??」


「…………言うと思うのww。マジおサルさんだよ。

Mrs.アリス」


 …………今思うに、アリスと猿を並べた発言は、文字

通り、猿たちに大変失礼だったと思う。


 何にせよ、アリスはグロリアス王国の留置所で、

ヒールの踵、爪の血痕がローリーの血液と一致し、

ローリーの足の甲の傷と、アリスのステッキの先端の

形も一致したことで、公的にも罪から逃れられなく

なった。


 また、ローリーの怪我として残った証拠も、冒険者

達の言質と(ことごと)く一致した為、それら全ても裁判では

考慮されることとなった。


「あれ? マリッジさん??」


 そして俺は、


~アント・ネット街国・工業地帯・ワイルドの拠点~


「…………さてと、診断書取って、フレイさんに報告後に、

2人の側に付いてやらないとな」


 するべき報告をしてから、俺のせいで大怪我した

2人の側に付くために、大病院へと向かった。

最後までご覧くださりありがとうございます。

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