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赤黒く隆起する怒り

数日間、連投予定です。

93話


~ウァームタウン~


「無事に…………終わった。1人1人に高額報酬が

出されるらしいし、私とローリー、ドグロの3人

で、大分賠償金を払えそうね」


 サンドラは、今回の報酬により、リョウ達への

賠償金を大分払えると考え、浮かれていた。


(これで…………、あの酷い製造現場から早々に去れるわ。

クソしつこい幽霊については、リョウに頼み込んで、

2度と現れないようにしてもらおう。顔もそろそろ

傷が消えるだろうし…………、いっそ短期で夜の店の

バイトするのもアリね。これならリョウに願いを却下

されても、イケメン客とイチャついて、クソ陰キャな

幽霊の方から消えると思うし、うん! 我ながら(あったま)

良いワ~、わ・た・し!)


 浮かれているだけならまだしも、サンドラは現状に

陥った原因を何一つとして把握しておらず、リョウや

自殺に追い込んだ幼馴染みに、一辺たりとも反省の

気持ちを抱いていなかった。


 そして、はからずも、天罰が降ってきた。


『ドガッ!!』

「ギャイッ!?」


 突如襲いかかってきた衝撃に、サンドラは地面へ

転倒してしまった。


「痛t…」


 明らかに悪意をもってぶつかられたので、文句の

1つでも言おうとしたが、


『どぉこ見て歩いてんのよぉ!!!』

「!?」


 まるで、音響室で戦士が叫んだかのような圧を放つ

怒声を浴びせられ、一気に思考を吹き飛ばされた。


「オイ、小娘。聞こえなかったか?」

「ハッ…………ハッ…………!!」


 次の瞬間には、声の主、ローズの顔が目の前に

迫っており、般若の形相で凄まれた。


 当然、返事など出来ない。


「どこ見て歩いてんのよ。って、聞いてんだよっ

っ!!!」


 そんなサンドラに、ローズは追撃の恫喝を行う。


「何だ?」

「ローズさん、お怒りだぞ?」


 突如怒声が響き渡り、振り向けば有名人が、一般人

をどなりつけている。群衆が注目し始めるのは極自然

な事だろう。


「あー、皆ーー! 騒いじゃってゴメンねぇ! いやー、

この無礼な小娘が、私にぶつかっておいてぇ、謝りも

しなかったから、思わず怒鳴っちゃったのよぉ~~。

そしたらぁ~、なんかコケて、こぉんな格好になった

のよねぇ~~!! この小娘さえ謝れば、私は大事に

する気はないから、安心してねー!」


 ローズは、そのタイミングを見計らい、"自分に正義

がある"と大ホラを吹いた。


(え…………?? ぶつかったの…………ローズさんじゃ…………)


 当然、サンドラは我に返り、ローズが嘘を広げて

いることに気づく。


「ああ、そう言うことだったのね~」

「ローズさんを、ここまで怒らせるなんて、どんな

命知らずがいるのかと思ったぜ」

「今日はクタクタだから、決闘とか見ようと思えねぇ

し」

「嬢ちゃん、早々に謝っておきな」


 しかし、ほぼ全ての群衆は、ローズがぶつかった

瞬間を見ていないため、彼女のホラを鵜呑みにする。


「え? でも、何かローズさんがぶつかった風に見e…」

「バカ!! あの人に逆らったらダメ! 焼き殺されるって

噂があるわ!!」


 そして、仮に見ているものが居ても、情報通が悪い

噂を根拠に止めるため、誰も彼女に逆らえないのだ。


「ねぇ、謝るの? 謝らないのォ??」


 その間にも、ローズはサンドラに圧をかける。


「あ…………えと…………」


「早くしなさいよ! 誰の時間食ってるわけ?」


「私…………ぶつかってna…」

「はぁあ!!? 謝るどころか嘘つくのぉ!? 信じられ

ない小娘ねぇ!!」

「ヒッッ…………!!!!」


「あんた何級よぉ? E級? 良くてD級? オラ、答えろ」


「しっ……Cですッ…………」


「あーら、見え張っちゃってぇ! C級風情がA級かつ、

勇者候補の私に何嘘ついてんのよぉ!!! そもそも

歩く時はちゃぁーーーーんとっ、前向きなさいよぉ

!!!! ぇえ!!?」

「ハッ……!! ハァッ…………!!!」


 矢継ぎ早の怒声に恐怖し、サンドラは過呼吸に

陥った。


 大衆がローズによる私刑を黙認しかねない状況。


「彼女は嘘ついてないッシィ、ぶつかってもない

ッシュウッ!」


 それを破ったのは、サタヤナだった。


「あんた…………、この愚か者の肩を持つ気?」


「ローズしゃんがぶつかった瞬間、アッシィ、見たの

ディエ、彼女の肩持ふっヒュ!」


 喉を含めた筋肉疲労が抜けきらず、錫杖を松葉杖

代わりにしながらも、ローズを見据えて意思表示を

した。


「あっそ。…………で? あんたの発言が真実だって、

どうやって証明するのォ? 見たところ、他に誰も

"私がこの小娘にぶつかった"なんて瞬間、見ていなさ

そうよぉ? この小娘みたいに痛い目を見ないうちに、

意見の撤回をしな……さいっっ!!!」


 そんなサタヤナの意思表示を、ローズは一切意に

介さず、挙げ句の果てにはサンドラに錫杖を振るった。


『バキッ!!』

「ギャアッ!!」

「なっ……!?」


 魔法使いとはいえ、高レベルなローズの一撃は、

成り立て戦士を凌駕する。即ち、中級魔法使いの

サンドラにとっては、歯が飛んで吐血する程の一撃

となるのだ。


 非常識な苛烈さを放ったローズの行動に、サタヤナ

も面食らう。


「さぁて、早く謝りなさーい」

「あうぅ…………!!!!」


 ローズはサンドラに謝罪を催促するが、彼女は痛み

で動くどころではない。


「また痛い振りで時間を無駄にするのか。いい加減に

謝ったらどうなんだぁ!!!」

『ブオッ!!』


 1度では飽きたらず、2度も殴打を繰り出した。


『ガッ!!』

「っ! 何止めてんのよぉ!!!」


 ローズは、間に入って止めたサタヤナに、体重を

掛けながら怒声を浴びせる。


「ハァ……ハァ……、不当な横暴は見てられないッス」

「どこが不当だぁ!!?(…………息が上がってるって

のに、ビクともしないだとォ?)」


 しかし、真っ当な返事を返された挙げ句、錫杖を

押しきれない為、内心で焦り出す。


~アント・ネット街国・工業地帯・ワイルドの拠点~


(まずは、サタヤナ達の救助だな)


 俺は表面が赤く、裏面が青のロングローブを表面で

羽織り、二重中回廊を通過した。


~ウァームタウン~


「早く退けよ。お前諸とも私刑に掛けるぞ」


「間違ってるのはローズしゃんっシュ! だから絶対に

退かにゃいっヒュ!!」


 人混みから覗いてみれば、あの女は健闘後で疲れ

はてたサタヤナに、本気で威圧している。


「その選択、せいぜい後悔しろやぁ!!」

「しにゃいっフュゥ!!」

『ガッ!! ガッ! バッシィ!!』


 ローズが繰り出した横薙ぎ、袈裟懸けを、体捌きを

駆使して最小限の負荷になるように、的確なガードで

受け、最後の振り下ろしを斜め上へ弾くことで、奴の

手から錫杖を撥ね飛ばした。


「ッツ! 猪口才なガキィ!! オラ退け!!」

「「ヒイッ!?」」


 杖が落下した地点の冒険者を追い払い、奴は再び

杖を手に取る。


「もう許さん。お前ら纏めて魔法で地獄に落とす」


「!!、絶対に死なない!」


 そして、お互いに構えを取った。直線上の冒険者は、

蜘蛛の子を散らすように道を作った。


「いいの? 私の魔法を相殺しようとしたら、左右の

連中が地獄に落ちるけど。大人しくお前らだけ落ち

とけよ」


「ハアッ…………!! ハアッ…………!!!」

「大丈夫ッス。君も、左右の人達にも、絶対に被害は

被らシェないっシュ!」


「ハッ! 大した自信ねぇ! どうせ脳筋ノロマの癖に」


「…………こう見えティェ、魔法学校の早打ち訓練で、

常勝無敗のトップだったっシュ。ローズしゃんは、

打つことシュら叶わニャイ」


「…………ニャイニャイシュッシュー、うるせぇんだ

よぉ!!! 業火(ブレイ)…」

衝撃(ショック)()…」


 内心でサタヤナを舐めているが故に、詠唱時間が

遅れがちな大魔法を唱えようとするローズ。対する

サタヤナは、杖を弾くのに十分な威力の魔法を、最速

で唱え、確実に封殺出来そうだった。


 だが、サタヤナの魔法が放たれる前に、俺は奴の

前へ躍り出た。

最後までご覧下さりありがとうございます。

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