灼熱尋問
後3話程で、新展開に移れそうです。
毎日投稿予定です。
91話
「気休めだ。飲め」
フレイは、後数分で死ぬ危険性があるカルロスに、
それなりの回復ポーションを飲ませた。
「ゴクゴクッ!…………もっと良いポーションねぇんスか?」
「後数本は、最低限必要な分だ。聴取の後に帰る奴には
渡せねぇな」
「まぁまぁ、彼は私が責・任! を持って病院に連れて
いきますので、ご安心を~~」
そう言いつつ、アーロンは1人だけで炎のカーテン
から逃げようとした。
「あ? 帰るのは事情聴取後だろ。何仲間見捨てて
逃げようとしているんだ?」
だが、フレイはアーロンに6割ほどの殺気を向け、
その動きを止めた。
「ぐぅお…………!!(初対面の時もそうだ!! 俺の方が
速い筈なのに、コイツを前にすると、勝利はおろか、
逃げられるビジョンすら浮かばない!! 隙が…………
無さすぎる!!!)」
生命の危機に過敏なアーロンは、速度だけでは凌駕
出来ない、フレイの実力を肌で感じていた。
「早速始めるぞ。まず、お前らは何故ここに居る?
任務はどうした?」
フレイは4割程の殺気を維持し、アーロン達に質問
を投げ掛けた。
「ええと…………」
カルロスは、かなり重症である為、頭が回らず
咄嗟の言い訳を出来ていない。
「実はぁ、私の防衛地区でぇ、とっっっても! 悲劇的
な出来事が起こりましてぇ、今ここに居ますぅ!!」
だが、アーロンは普段と変わらない調子で、悲壮感
漂う演技を始めた。
「感想は要らねぇ。"事実"を話せ」
対するフレイは、アーロンの演技に1つも心を
動かさず、冷静に指示を出した。
「(相ッッ変わらず、ユーモアのカケラもねぇ障害物
だなぁ)はいぃ。麗しきこの私が、電光石火の速度で
縦横無尽に草原を駆け回り、周囲はモンスターだらけ、
四面楚歌の状況にて、一騎当千、天下無双の大活躍を
繰り広げぇ! 瞬く間にモンスター軍団を物言わぬ肉塊
に変えてしまう、ぁ瞬殺撃ィイを超ゥ・展開ッッ!
していましたぁ!!」
所々に四字熟語を加え、妙な言い回しで武勇伝を語る。
(まさか、これで俺を怒らせて冷静さを奪うつもりか?)
そんなアーロンに、フレイは怒る気すら起きない
様子だ。
「で? それが何故悲劇的に敗走する結果になった?
後、今後は珍妙な四字熟語と言い回しを使わず話せ」
そして、肝心の結論をダイレクトに聞き出す。
「厄災…………です」
「種類と敗走の経緯を話せ」
「種族はシルバードラゴン。我が鋭利にして無数の
斬撃をもってしても、傷1つ負わせられませんでした」
この部分は、図らずしも事実だった。
(敵は偽らねぇのか)
フレイもアーロンの目や仕草、殺気を元に、真偽の
判断を下していく。
「っそしてぇ!…………そんなっ、敵にかすり傷1つ
負わせられぬぅ、らしからぬ麗しき私の姿をmi…」
「普通に話せと言ったぞ。俺を舐めてるのか? あ?」
「ッッゥ(うるせぇぇええええええ)!!」
ついついアーロンが回りくどく話したせいで、
フレイの殺気は8割まで増加。アーロンは5割の
恐怖を表情と仕草に反映し、残り5割の怒りを
心の叫びに反映した。
「時間を大切にしろ。要点だけ教えろ」
だが、フレイも立場を弁えて要るため、最速で必要
な言質を得るために、殺気を4割に戻す。
「…………苦戦する私を見た監視員達が、拠点の防衛より
私の生存を優先すべきと説き伏せてきまして、私は
泣く泣く移動技で敗走しました」
実にアーロンらしからぬ、見栄を潜めた供述で
あった。
「(当然、嘘を吐くか)確認する。お前の移動スキルなら、
連続発動であの場の全員を助けられた筈だ。何故、
彼等を見捨てた?」
フレイは、普段なら制裁も辞さない嘘をつかれて
いるのだが、怒る様子すら見せずに、供述のままメモ
を走らせている。
「(しつけぇ)…………恥ずかしながら、シルバードラゴン
の威容に怯え、冷静さを欠いた矢先に声を掛けられ、
咄嗟に私のみが離脱してしまいました」
「そうか。"冷静さを失い、咄嗟に自分のみ逃げて
しまった"のだな?」
「間違いありません」
その言葉を最後に『聴取 : アーロン・スパークマン
任務放棄理由』の欄を閉じた。
「分かった。さて、次はお前だ。カルロス、まずは
防衛地区を守り抜いたかどうかを話せ」
「…………守り…………抜きました」
(真偽半々か。雑魚は殺したが、レッドドラゴン戦を
放棄したから、こんな殺気になったのだろうな)
自身の区域は守られたが、常に貢献していなかった
ため、嘘と真実が半々であると見抜かれた。
「それは何よりだが、何故、"リジョンを通過"して、
こんな場所にまで逃げた?」
カルロスの本来の防衛地区は、ここからリジョンを
挟んだ位置にある。したがって、配置の相違について、
遠回しに訪ねた。
「通過ぁ? 俺は端からリジョn…」
『ギロォ!!!』
(クソ共が。清々しい程、滑稽なコントを見せつけ
やがって…………)
案の定、カルロスは無断配置替えの事実を口走り、
アーロンも隠す気のない怒りの眼差しをカルロスに
向けた。
「無断で配置替えをしたな? 「はい」か「いいえ」で
答えろ」
(正直に言っとけ!!)
「はい…………」
「では、どうやって違う馬車に乗り込んだ?」
「…………操縦士に金を掴ませ、後ろに移動しました」
「(真だな。どちらにせよ)そうか。不真面目な奴等にも、
相応のペナルティが必要だな」
フレイは、カルロスの聴取から、アースヒーローズ
に与する者も、ついでに割り出した。
「ごもっともです! 可愛い女戦士の噂に釣られた俺
にも、相応の罰を下さい!(こういっときゃ、ロートル
襲撃はラクショーでごまかせるだろwwwww)」
(フッ、犬なりに賢明な判断を出来たねぇ)
「殊勝な自白だ。心意気は可能な限り反映させる
(愚直なアホが。調子に乗った分は確実に"反映"
させるぞ)」
「ありがとうございます!!」
カルロスは、心証が悪くなった事を知らずに、
嬉しげにお礼を述べた。
「それと、可愛い女戦士とやらが気になっていたが、
会って何をした?」
「はい! 所謂…………ナンパをし、防衛後に1週間程
遊ぶ約束をしました! あ、女は全員で3人です!」
「…………如何わしい事が目的か?」
「滅相もございません!! 彼女達は戦闘中も傷1つ
負わせず、超絶紳士的に接しました!」
「そうか。…………いや、俺としたことが、お前に纏わり
つく"噂"がふと浮かんでな。邪な事を考えていないの
なら、それで良い」
「不肖カルロス! 誠心誠意がモットーであります!
(あっるぅえぇえぇーーーwwwww、今日のギルド長、
なんかチョレェエぞぉおおーーーーwwwww)」
(フッ、所詮底辺上がりはコレが限界なのサァ~)
あまりにも、嘘を"見抜かない"フレイ。この2人は
違和感に気づかず、彼の思惑に乗せられていく。
「話が逸れたな、次こそ本題だ。防衛に成功したお前
が、何故ここまで敗走する事態に陥った。要点を
述べろ」
フレイは内心、アーロンの言い回しに辟易していた
のか、カルロスにも釘を刺した。
「はい。要点言うと、可愛い女戦士に殺されかけ
ました」
「…………ふざけてるのか?」
あからさまな嘘だった為、フレイは殺気を8割に
して、威圧的に聞いた。
「本当…………です…………。彼女達は…………モンスター
で…………、俺と…………他3人の戦士を…………ズタズタ
に…………痛めつけまし…………た」
それでも、カルロスは嘘を押し通す。
「…………具体的には、どんな手段で痛めつけてきた?」
だが、"目的"を果たす為、この嘘も水に流した。
「はいっ、1人は戦槌で俺をボコボコに、もう1人は
斧で、他3人の戦士をズタボロに、そしてリーダー格
の女が…………ロングソードすら使わず、肉弾で俺ら
4人を完膚なきまで痛め付けました」
「今の証言、間違いないな」
「間違いありません! 奴等は…………人の姿で上級
モンスターのパワーを発揮する、魔王軍でした!」
そう、カルロスは3人の武器を思い出した事で、
自身とポール、ミュール、バルディの傷を一致させ、
自身の蛮行を女戦士3人に擦り付けようとしたのだ。
「成程…………。リジョンの状況は分かるか?」
「分かりません。そしてここからが本題です! 奴等
には、1匹のペットがおりまして、ソイツが曲者です」
「ペット?」
「赤毛のゴリラのような姿をしており、俺並みの
パワーに、俺が視認するのが難しい程のスピード
を兼ね備えていました」
「随分と攻撃的な奴だな(いきなり雑にしてんじゃねぇ
…………)」
急にバルディとの経緯をほぼそのまま話し始めた
ので、フレイは内心で、開いた口が塞がらなくなった。
「俺は持ち前の物理防御力と打撃耐性でどうにか猛攻
を凌ぎきり、何とかとどめを刺そうとしました」
「この様子だと、出来てねぇな?」
「はい。突如視界が塞がれ、次の瞬間にはタコ殴り。
攻撃はそれにとどまらず、拷問と回復を繰り返され
ました」
「それで、どうやってついたかよく分からねぇ怪我を
負っているのか」
「…………正に悪魔の所業。こんなことを行うのは、人間
ではありません!!」
(とどめを刺そうとして、返り討ちにあった。この
タイミングでワイルドと入れ替わってるな…………だが)
フレイは、カルロスの最後の発言を聞き、心の中で
怒りを燃やしていた。
「(悪魔の所業。普段貴様が他者を虐げている分際で、
良く被害者面出来たものだ)人の皮を被った魔王軍の
精鋭に、お前は完膚なきまでいたぶられた。間違い
ないな?」
「間違いありませぇん!!」
「分かった」
フレイは、『聴取 : カルロス・ストライカー任務放棄
理由』の欄を閉じた。
そして、次はこの場で起きた身内同士の事件に
ついて、事情聴取が始まる。
最後までご覧下さりありがとうございました。




