厄介まみれの注目株共
90話
~森林地帯・上空~
(…………ワイルドの殺気が忽然と消えた)
フレイは炎熱で気流を作り出し、ホバリングに
よって、空中で静止している。
(殺される奴は大概、最期にありったけの憎悪を放った
後、息果てて殺気が消える。今の殺気の消え方は、
瞬間移動等でその場を離脱した場合に類似しているな)
アーロンの殺気が増大した直後、ワイルドの殺気が
消失した為、彼が殺されたか否かを推察しているのだ。
(五体満足で生きてるなら、もうじき…………)
~アント・ネット街国・工業地帯・ワイルドの拠点~
(流石に殺されはしない…………いや、殺される?
…………怖い、けど、早めに報告すれば生存率は
上がるっ!!!…………多分)
俺がしでかしたことは、私情による職務放棄と同義
だった。その為、フレイさんから手痛い罰を受ける
ことがほぼ確定となり、復帰報告を行うことに戸惑い
を覚えていた。
「スー、ハー…………よし!」
先ずは深呼吸で落ち着き、魔法を的確に発動できる
精神状態を取り戻す。
(そうだ! 防衛地区が無事であることが、何よりの戦果
だ。先ずは全地区の確認・奇襲対処だ!)
5分以上放置した防衛地区を、空から俯瞰視点で
確認する。
「…………奇跡だ。最後に見た時と、変わらない」
次に、カルロスがいた場所…………の、上空5000m
に回廊を開いて視察した所、森の上空200m付近で
ホバリングしているフレイさんを見つけた。
俺の殺す気のない殺気に反応し、即座にこちらを
向いてきたのだが、カメラ目線のハエトリグモに
見えたことは、内緒だ。
~森林地帯・上空~
『フレイさん、私情行動を取り、申し訳ありません
でした!』
「正気に戻ったな。先ずは各所の状況を教えろ」
当然、怒りの感情は感じるが、それ以上に、彼に
似つかない"焦り"の感情が読み取れた。
『先程確認したところ、全地区死者0人でした!』
「……了解」
報告直後の"間"。この瞬間で、彼の心から焦りが消え、
そのオーラに僅かながら、安らぎが宿った。
やはりこの人は、言動に粗野な部分があれど、下の
者を思いやる心も兼ね備えているのだと確信した。
「では、引き続き各所を見守りながら、こうなった
原因を説明しろ」
『はい。戦争の終盤、なるべく多くの冒険者達の力で
厄災を滅するべく、俺は防衛完了地区の回廊を最小数
にし、冒険者達のサポートに注力しました』
「パフォーマンスのクオリティを上げたのだな」
『はい。…………ですが、とっくに防衛が終了していた
リジョンにて、カルロス・ストライカーが、元S級
冒険者・ポール・A・ラッシュ氏の屋敷に襲撃をかけ、
それをミュール・M・ジョルニアとバルディ・I・
ラッシュが食い止めていました』
「確認だ。2人の怪我はどれくらいだった?」
『ミュールは複数箇所の骨折と打撲。バルディは
…………、重度の骨折・打撲に、右裏腿の切断及び、
致命傷レベルの大量出血です』
「確認直後、病院に送ったな?」
『見つけて即、送りました』
「そうか、場所を押さえた甲斐が"あった"、か」
一瞬、彼に哀しみとも取れるオーラが宿った。
『ゲスをよく知っていたにも関わらず…………監視を
怠った俺の責任です』
「そうだな。一方で、その監視は本来あっては
ならない仕事であるのも事実だ。お前が次の行動
に走った気持ちも理解できる」
『はい…………過去に受けた仕打ち、それ以上に、仲間
2人を傷つけられた怒りが、俺の感情の制御を奪い、
奴への報復へと駆り立てました』
「想像通りだな。俺からも1つ報告だ、お前が奴に
復讐を決行している時、魔王軍から次の宣戦布告が
あった」
『!!』
「被害が起きなかった事は紛れもない幸運だったが、
何かに心を奪われていると、こういった重要な事を
聞き逃す。あの場に俺が居なければ、こうしてお前に
伝わることもなかっただろうな」
『…………』
「詳細は後で教える。お前は各司令塔に戦争終結の
アナウンスを指示しろ。その後は、カルロスの被害者
達の診断書と蛮行の証拠を纏めろ」
「はい。…………それと、俺が今正気に戻ったのは、
命令違反のアーロンの殺気に怯えたからです」
『殺気で分かっている。アースヒーローズはつくづく
害悪だな。最低でもあの2人には、脛に傷を負わせて
やる。残り2人の行動にも気を配るのだぞ』
『分かりました。どうか、お願いします!』
「ああ」
~各司令塔~
『こちら、ワイルド・サモン・フェリン。先程、
モンスターの全滅及び、次回の宣戦布告を確認
しました。よって、戦争終結のアナウンスをお願いします!』
「お、終わった…………!!」
「俺達の…………」
「「「「勝ちだーーーーーー!!!」」」」
「うっしゃあ! 頑張った冒険者達にも報告だぁーー
ーーー!!!」
俺の報告を受けた各司令塔は、2ヶ所を除いて歓声
に包まれた。
~リジョン~
『なお、リジョン支部は、モンスター沈静化直後に
発生した人災トラブルの、証拠集めをお願いします』
「了解!」
「えっと、戦争終結のアナウンスと関係者召集を
呼び掛ければよろしいですか?」
「そうだな。俺は探偵班を結成するわ」
「了解しました」
居ないことを祈るばかりだが、万が一、この中に、
アースヒーローズの息がかかった者が居ることを想定
し、俺も粗方痕跡を記録することにした。
~辺境の大地~
「…………まぁ、俺らは運良く無人で大金星上げたような
ものだったけどな」
「アーロンに見捨てられたから、不幸とも取れそう
だが…………」
「皆生きてる以上、それまでの働きは、どうカウント
されるんだろう?」
アーロンに見捨てられた彼等は、俺が隕石で救った。
その功績は、俺ではなく大自然の幸運だと捉えられて
いるが、シルバードラゴンの経験値を沢山手に入れて
満足しているので、これ以上言うことは無いだろう。
「そういや、アレの回収にギルド長が向かっているらしいぜ」
「厄災の骸とか、今にも動き出しそうで近づけねぇよ」
「元SS級だけあって、作戦立案も荒事もこなせて、
正に天は二物を与えるって感じだよなー」
「今、俺らが生きているのも、天の恵みだ」
「感謝しねぇとな」
「「ああ」」
フレイさんは、もうじき厄災の素材を回収する。
~荒れ果てた草原~
『バキッ!! ズドオッ!!』
「ゴオッ!!ガアッ!!」
「お前はよぉ~~、マジで何なんだよぉ~~?」
馬の骨に完敗したカルロス、そして奴に突きと蹴り
で制裁するアーロンと、
「っつ!?」
『ゴオオオオッッ!!』
炎のカーテン内で、
「よぉ、パーティーメンバーにパワハラとは、感心
しねぇぞ」
コンタクトを取った後に。
「幾つか確認してぇことがある。正直に話しな」
一方、俺は、残り2人が起こした問題の解決に
向かった。
最後までご覧下さりありがとうございます。




