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リベンジ・ポアソン(前編)

唐突に始まるは、ザマァ(1/4)!!

87話 


~5秒前・ワイルド視点~


「あの、腐れ外道がああああああああっっ!!!!」


 俺は、過去一番の声量で、慟哭(どうこく)をあげた。


(俺が最後の一仕事集中してる合間に! ミュールと

バルディの父さんになんてことしてやがるんだああ

ああああ!!!!)


 何故なら、確実に魔王軍を完封するため、非戦闘

地区の視察回廊を閉じ、戦闘地区の回廊を増やし、

完封成功した矢先に、リジョンでカルロスが暴虐の

限りを尽くしていたことを知ったからだ。


(落ち着け! まずは2人をマトモな医療機関に送る!)


 速攻でカルロスを苦しめたい気持ちを抑え、まずは

明らかに奴に壊された2人を、相応しい病院へと周囲

ごと送る。


「大病院に移転します! 医者達との連携に移って

下さい!」


 丁寧かつ、最速で送りつつ、リジョン中の地形を

貪るように確認し、奴の居場所の確認も行う。


(ラッシュ家の岩槍はミュールの技か。意味不明な

こじつけで襲撃をかけた奴を、お父さんと一緒に

止めたんだな)


 そして、奴に手傷を負わされた。更に、バルディの

妹のハルちゃんが、数人の冒険者と山へ向かっている

様子、そして、バルディの姿がなく、強い踏み込みで

山へ飛び立った痕跡があることから、彼が奴と山で

争っていることを把握した。


(よく見れば遠目でm…っつ!? とんでもねぇ破壊跡

じゃないか! バルディ! 生きていてくれ!!)


 俺は回廊を超速で移動させ、斜面が抉れた跡、粉砕

した木々、放射状に砕けた崖、何かが叩きつけられた

大地、そして、林道にて、不自然に陥没した穴を

見つけた。


(木々が…………粉々じゃないか! 血痕の量も半端ないし

…………それに中心にある、新しい踏み込みの跡…………、

サッカーキックの痕跡に似ているな)


 痕跡から、蹴りの方向を向くと、ついさっき、

元々峠だった部分が崩壊していた事が分かった。


(ここにも血痕! あっ!!)


 奴の所業を見てから5秒。遂に…………、奴の姿を

捉えた。


「ケヒヒッ…………」


 五体満足ではあるが、周囲の回復効能を持つ木の実

が貪られており、回復仕損じと思われる痣が残って

いること、明らかに自身の出血でへばりついた血痕が

あること、そして、奴の悪趣味な両手斧が塵となって

落ちていることから、決して常時優勢の戦いでは

なかった事が伺えた。


 何よりも、奴は目の前の人物にとどめを刺そうと

しているにも関わらず、その表情は状況に反するよう

に引きつり、止めどない汗が流れており、彼に心底

怯えている事が伝わってくる。


 …………だが、


(お前…………死にもの狂いで戦ったんだな…………!!)


 奴が心底怯える人物…………バルディの容態は、今

正に死ぬ寸前に思える程の形相であった。


(顔面は踏み抜かれ、両腕の骨は粉々に折られ、肋骨も

全部折られ…………、そして、自慢の剛脚を切断寸前

まで切り込まれて、大量出血しているじゃねーか!

…………カルロス、全部お前がやりやがったんだよなぁ

ぁぁああああ!!!)


 刹那にも満たず、それでいて永遠に感じたこの時に、

目に飛び込んできた情報全てが、俺の怒りを振り切ら

せてきた。


 そして、考えるよりも早く、脚と口が動いていた。


(スモール)召喚(ゲート)目詐欺(イカスミ)(ミドル)召喚(ゲート)砲弾(シェル)(レガース)!!」


 なってない構えから、バルディに下段突きを繰り

出そうとしているカルロスに、至近距離からイカスミ

をかけて視界を封じ、先程加速した俺が回廊を潜り、

奴の鳩尾を蹴り込んだ。


『ドゴォッ!!』

「!?」

(ミドル)召喚(ゲート)深海(ディープシー)(ボトン)砲撃(バズーカ)


 更に、驚いて叫ぶ暇を与えず、深海を高圧水流と

して、発射する。


「ごあああああああああああ!!? 何だぁ!?」


 奴に大ダメージを与えると共に、物理的にバルディ

との距離を取ったのだ。


 直ぐ様追撃をしたいところだが、我欲に溺れて友を

捨てるほど腐ってはいないつもりだ。


「助けが遅れて済まない! 直ぐに病院に送る!!

(ミドル)召喚(ゲート)医室(メディカル)搬送(トランス)!!」


 出来る筈だった事をサボったことの謝罪。そして、

迅速な救命活動の遂行。奴を懲らしめるのは、その後

だ。


~アント・ネット街国大病院・2番特別治療室~


『致命傷を負った患者の治療をお願いします!』


「「!!」」


 俺の声と共に、惨い怪我を負ったバルディが送られ

て来たので、看護士達に動揺が走る。


「了解! まずは右足を迅速に縫合・止血するぞ!」


 だが、病院幹部でベテランの方が指示を出したこと

で、直ぐ様迅速な治療が始まった。


~リジョン郊外の山~


(…………こんな形だが、緊急策が役に立つとは…………

いや、立たせてしまった!)


 "完全勝利"を目標に定めた今回の戦だが、万が一にも

回復役の手に負えない重傷者が出た時を想定し、国が

誇る最高医療機関に、転送する許可をもらったのだ。

フレイさんに、病院まで出向いてもらって。


「もうお前に、これ以上の狼藉は許さん。一切の

自由を奪ってやる! カルロス!!! 多数(アロット)(ミドル)召喚(ゲート)!!」


 バルディを送れば、後はカルロスに思い知らせる

だけ。正体を隠すために変声魔法具を起動させつつ、

奴が飛んでいった方向へ走り出す。


海竜(シードラゴ)逆鱗(リバースケイル)!!」

『ドゴゴゴゴゴゴゴ!!!!』

「ガゴグォガァベァア"ッッ!?」


 回廊を開いては閉じ、別角度から開いては閉じ、

それを秒間数十回のペースで繰り返す。回廊から

出現する物質が、高圧水流であるため、さながら

海竜の群れによるリンチを受けているような状態だ。


 場所も大きく移動し、既に草原地帯へと降り立って

いる。


「傷口に塩、極小(ミニマム)(ハンドレット)召喚(ゲート)特濃(アルティメット)塩拷問(デスソルターチャー)


 連続で襲い来る強烈な打撃により、発生する裂傷の

数々。そこに、"死海"の特濃塩水を染み込ませてやる。


「ぎぃやぁああああああああ!!!!」


 肉体・精神共にダメージを与える打撃とは違う、

痛みに特化した精神攻撃。奴は痛みを和らげるべく、

染みる傷口を無意識に抑えようとするが、


海竜(シードラゴ)

『ズドオォッッ!!』

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」


 高圧水流によって、その動作を妨害する。さぁ、

痛みに苦しみ、悶えろぉ…………!!


極小(ミニマム)(ハンドレット)召喚(ゲート)(エネミー)塩送(ソルトラッシュ)!」

「いぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あ"っっ!!!!!」


 塩分濃度上昇! 即ち痛み激増!! 次はぁ、


全力(フル)雷撃(サンダー)!!!」


 MPを電気に変換する魔法道具で、小学生の如く、

出力最大放電だぁ!!!


「アギャギャギャギャギャギャギャ!!!!!」


 …………もっと苦しめたい所だが、コイツの魔法防御力

は大したことがない。俺のMPがタンマリ残っている

段階で死ぬだろう。


「墜ちろ。(ビッグ)召喚(ゲート)護謨(ルンバー)蹴撃(シュート)!」


 なので、中サイズの回廊に全速力で脚を突っ込み、

地球にある巨大硬質ゴムを蹴り、それを大サイズの

回廊に飛ばす。回廊は、カルロスの真上に繋がって

いる為、


『ドズゥゥウン!!!』


 巨大硬質ゴムは、奴を押し潰すことになったのだ。


「う…………」


 辛うじて生きていた奴が、うめき声をあげた。


「ほぅ」


 俺の耳はそれを聞き逃さず、中サイズの回廊を

作っては、全速力で脚を突っ込んだ。


『ズドォン!!!』

「グゥ!!」


 硬質ゴムを踏みつけることで、下敷きになっている

奴に更なる苦痛を味合わせるのだ。


「ぅ、おおおおおああああっっ!!(何なんだよ!?

お前も芋女みてぇなパッシブスキルを持ってるの

かぁ!?)」


 だが、奴は腐っても人類No.1の怪力男。俺の脚ごと

ゴムを跳ね上げ…………た、までは様になっていたが、

俺と正反対の方向へと一目散に逃げ出したのだ。


 様子を見るに、俺をバルディと勘違いし、ミュール

を初めて襲った夜のような目にあっていると思って

いるらしい。


(フン、最早バルディに物理攻撃力で負けていて、今更

お前の土俵で張り合うつもりは無いさ)


 レッドドラゴン討伐によるレベルアップで、力が

俺を上回ったバルディをもってして、コイツを倒し

きれなかった。それなのに、真正面から接近戦を挑む

バカはいない。


「オラッ!!」

『ズドォオッッ!!!』

「ガハァ!?」

『ドォン!』


 だが、俺の肉弾が弱いという訳ではなく、少しとは

いえ、彼よりも精密さは長けている。ならば、極力

不意を突き、速く、鋭く打ち込んでいけば、反撃の

隙を与えずに確かなダメージを与えていけるだろう。


「フッ!!」


 先程、超音速で追い付きつつ、ほぼ360℃を蹴り

抜いたのだが、俺は中召喚を発動しつつ、背後に生成

した回廊に後ろ蹴りを打ち込んだ。


『ゴキィ!!』

「カハァ!?」


 後ろ蹴りは、奴の背後で座標固定された回廊に

出現し、奴の背骨の芯を捉えた。


「フゥッッッ!!!!」


 更に、俺は特段足首にスナップを効かせた前蹴りを

繰り出しつつ、小召喚を行った。


『スパァァァン!!!』


 地球を介し、再びこの世界に戻ってきた俺の爪先は、


「ギャア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッッッ!!!!!」


 奴の睾丸に衝突し、乾いた音と濁った慟哭を同時に

響かせた。


「(女子に熱心に教えていた技が、男子に役立てられる

何て、思ってもいないだろうなぁ)オラァ!!」

「ア"ボゲェ!?」


 俺はシャールさんが、筋トレ同好会女子に金的蹴り

を熱心に教えていた姿を思い浮かべながら、踏みつけ

を小召喚で転移させ、横っ面を蹴り飛ばした。


『ドサッ!』

(スモール)召喚(ゲート)


 更に、"1度目"のとどめを刺すべく、倒れこみを

狙って、スタンダードな召喚を行った。


内部(インターナル)爆撃(エクスプロージョン)

『バオ"オ"オ"ォ"ガバア"ア"ッッ!!!」


 そう、奴の胃に爆弾を送り、起爆したのだ。


 正に生きるか死ぬか、生命のボーダーライン

スレスレのダメージを与えた。


『モクモクモクモク…………』

『ガシッ!』


 俺はカルロスをそのまま放置せず、黒煙を召喚して

目眩まししつつ、側面から奴の頭を掴みあげ、回復

ポーションを手に取った。


 何で"そんなこと"をするのかって?


「ゴミの悪臭を嗅ぎながら、贅沢に飲む高級回復

ポーションの味はどうよ? テメェは断じて楽に

死なせねぇぞ。俺の、他の大勢の冒険者への、

果ては"前世"の悪行も含めて、その数倍の苦しみ

を与えてやる。せいぜい楽しめ、下衆野郎」


「オ"……!! ガ……!! ガァ…………!!!」


 視界が効かず、耐え難い悪臭の中、無理やり回復

ポーションを飲まされる奴の両目には、滝のような

涙が溢れていた。

最後までご覧下さりありがとうございます。

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