隕石衝突
80話
~ワイルド視点~
「中召喚・隕石衝突」
俺はとある辺境の大地、上空20000mに、2m
程度の回廊を生成した。
『バグゥォオオオオオオオオオン!!!!!』
刹那、地上に置けるマッハ20の速度で出現した
物体は、希薄な空気を圧縮して強引に高熱を発生。
その熱は自らをも瞬間加熱して、橙色の光を放ち、
同時に空気の壁を爆ぜ散らして、轟音を鳴り響かせた。
『ゴルルルルルル…………』
だが、光は兎も角、轟音が地上に届くのは、かなり
後。シルバードラゴンが赤熱光を認識し、落下物の
正体に気づく前に、ソレは奴の側へと着弾する。
『ドグゥア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"アアアアアン!!!!!』
着弾したソレは、爆弾の爆音等とは比にならない轟音
を響かせ、着弾点からシルバードラゴンが立っていた
位置にかけて、クレーターを作りつつ、奴が即死する
衝撃波と熱波を拡散させた。
「…………マジで隕石だったぞ」
「…………スゲェ衝撃だったな」
直前に、俺が警告したアーロン監視員達は、全員
身を屈めて爆風を回避できたようだ。ちなみに、森
の動物達の内、確実に死んでしまう範囲の者達は、
魔王軍の斥候が隕石に気を取られている内に、20km
程度奥へ一斉転移した。
幸いなことに、猫ちゃん達を始めとする人類共生型
の動物・モンスターは、この地に居なかったので、
10人程度の住人の四方を円蓋回廊で囲い、爆風から
守り抜くだけで良かった。
…………だが、
「分かっていたが、また多くの木を犠牲にして
しまった…………。所詮俺もエゴイストな人間に
過ぎないんだよな」
自身と同族の為に、"パフォーマンス"として平気で
森林を害した事で、自分もまた、愚かで残虐な人類で
あることを、今更ながら思い知ったのだった。
「ワイルド!…………さん、やっ厄災がっ、白目剥いて
死んでいます!!」
隕石衝突の衝撃から、言葉使いがおかしくなった
監視員が、報告をしてきた。
「それはなんとまあ、偶(必)然の巡り合わせですね。
流石に魔王軍やモンスターも近づいて来ないと思い
ますが、警戒だけは続けてください。厄災回収と
火災鎮火は折を見てこちらで行います」
「わっ、分かりました!」
「引き続き頑張ってくr…ださい!」
「忠告等々感謝です!」
何か、全員が釣られて敬語になっていたのは苦笑い
したが、"アーロンの下衆思考の犠牲者"が出なかった
だけ、良かったと思った。
それと、魔王軍は近づいてこそこないが、この様子
を"見に来て"はいる。
「…………ウソだろ? 厄災死んでるよ。直撃はして
いないけど、この距離感だと直ぐ隣に着弾したって
感じだし、どんだけ不運だったんだよって感じだ
…………」
工業都市で、大規模滅殺攻撃をするような奴が居る
にも関わらず、斥候を送り込むような連中だ。見えて
から約3秒で激突する隕石を、本物かどうか確認
しない筈がない。
~魔王軍~
『通常、流星の類いは、見えてから地に落ちるまで、
最低でも十数秒はかかる。…………じゃが、今回の流星は
たったの3秒じゃった。何かがおかしいかと思うの
じゃが?』
ゼブルは斥候達に圧をかけ、真実を話させようとした。
「そっ、そそれが…………っ本当に…………普通の隕石
衝突との違いが無く…………!!!」
「わっ、我々の頭脳では…………とても違いが分かり
ませぬ!!」
「衝突時のクレーター、シルバードラゴンの死に様、
燃え盛る森林。どれを取っても、"違和感"を感じられ
ませんでした!!」
斥候達の報告は、ゼブル自身が彼等の感覚を介して
観てきたので、"正直"である事は疑いようがなかった。
『…………そうか。…………(う~む、不自然なのは"時間"
のみ。それ以外は普通の隕石衝突と何一つ相違無し
か…………)隕石の組成を調べたい。着弾点付近にそれ
らしい残骸があるか確認せぃ』
「はい!」
斥候の1人に隕石の残骸を探させ、再び思考に戻る。
『仮に奴の魔法攻撃じゃとすると、超遠方のあの地
に照準を絞ったが、流石に多少は狙いがブレたと考え
られるのぉ。ファッファッファ、精度、速度、そして
範囲が桁違いの化け物レーダーに、魔王様を彷彿と
させる魔法攻撃力。じゃが、狙いが遠方であるほど、
少なくとも精度は落ちる。こんなところかのぉ』
時に起きる隕石による大量絶滅から、今回の攻撃を
"大自然の不運"で片付けられる所を、ワイルドの魔法
攻撃に繋げられた所は、参謀の腕が光ったといえる。
しかし、ワイルドが、"竜肉が欲しくて"わざと直撃を
させなかった隕石は、彼に思わぬ墓穴を掘らせた。
「ゼブル様! 隕石の残骸らしき欠片を見つけました!
念のため、他の怪しげな欠片も回収します!」
『うむ』
まずは、レーダー性能と呼ばれているワイルドの
情報収集能力及び、攻撃の命中精度を過小評価させた
こと。
「シルバードラゴンも回収しますか?」
『いいや、これを回収する様を見られたら、ワシ
の能力が1つバレてしまう。怪しげな石を回収後、
速やかに木陰に隠れぃ!』
次に、レーダー性能の過小評価による慢心から、
斥候モンスターと会話している様子を、普通に
見せつけてしまったこと。
「了解しました! 本部までの転送、よろしくお願い
します!」
そして、戦地への転送能力とは異なり、予め発覚
を想定していない、"アジトへの回収能力"を教えて
しまったことだ。
「聞(き~~)いちゃったっ!」
それを聞き逃さなかったワイルドの両目は、上に
大きく開かれ、下はつり上がる量頬に押し上げられた。
更に、
「配置完了!」
『では、戻すぞぉ』
『『『フッ!』』』
斥候モンスター達が、突如消え去る様子を見て、
「見ぃちゃっっとぅあぁぁああっっ!!」
口が裂けるかと思うくらい、つり上がった量頬に
寄せ、見た人10人中9人が爆笑しそうな極悪な
笑みを浮かべた。
彼の場合、それこそ光速で動くアーロンでもない
限り、高速移動物体は残像以上の明確な像を結ぶ為、
正直な報告を行う限りは、情報の精度が高く保たれる
のだ。
「フレイさん、シルバードラゴンが出現したので、
隕石で撃退した所、魔王軍の斥候がゼブルという名
の幹部と、リアルタイムで話していたこと、そして、
ゼブルに遠距離の対象を回収する能力があることを
確認しました」
「そうか、よく確認したな」
真偽の程を、心眼の判別能力を有するフレイさんに
判断してもらえば、人類最高峰の格付けが完了する。
「ただ、威力こそ海底攻城砲レベルに抑えましたが、
隕石攻撃を発動3秒後に炸裂させたので、自然現象
ではなく、"俺の攻撃"だと認識された可能性が高いです」
逆をいえば、魔王軍がそれを上回る隠匿性を有して
いれば、人類滅亡の可能性が飛躍的に上がってしまう。
「どれくらい正確にバレたと思う?」
「奴等、隕石の残骸を回収していたので、最低でも
"宇宙から直接呼び寄せる物理攻撃"程度に認知される
のは、時間の問題かと思われます」
「…………まぁ、結局は最後に魔王を倒せるかどうかが
重要だ。お前はその判断で、12人の命を救った事
には変わりない。彼等の救出をどう呼ばせるかは、
今後のお前の賢さ次第だ。常に先を読んで動くことだ」
要するに、今件については、俺が奴等の取るで
あろう"対策"を上回る攻撃手段で、魔王を倒せれば
問題ないということだ。
「はい! 気を付けます!!」
だから、今後はより一層攻撃手段を悟らせないよう
にしつつ、臨機応変に力を示せば良い。
「死骸の回収は、全体が落ち着いた頃に俺を送れ」
更に、シルバードラゴンの回収を、フレイさんが
担当してくれる事になった。俺の能力を隠せるように
配慮して下さったのだろう。
「!、ありがとうございます! "厄災狩り"なら、怪し
まれずに済みますもんね!!」
「騒ぐな、俺が自画自賛しているみてぇじゃねぇか」
ただ、本心から褒めたつもりが、照れ隠しをさせて
しまったりもした。まぁ、嘘ついて殺されかけたり
マジで殺られたりするより、断然良いんだけどね。
「あと少し、自分の仕事に集中しな。俺は下手を
打たねぇから、心配無用だ」
「はい!」
けど、不安除去も含めて、俺達が動きやすい配慮を
欠かさない人なのも事実で、俺は改めてサタヤナと
ローズの地区や、他数ヶ所の地区のサポーターに
徹する事が出来た。
…………そう、先程"考えろ"と言われたにも関わらず、
"カルロスが居る"、ミュールの地区に、"チラ見回廊"
すら開くことも、考えられなかった。
その…………せいでっ!!
~リジョン・ラッシュ家の庭・ミュール視点~
「オラァ!!」
カルロスが、力任せに腰の入らない大振りの横薙ぎ
を繰り出してきた。
「当たるかアホ」
首を跳ね飛ばす狙いが見え見えだったので軽く
屈んで避けつつ、腰をいれた本当の横薙ぎを、折れた
肋骨に叩き込んだわ。
「ぐああっっ!!」
感触から、内蔵も相当しぶといようで、ゴムのよう
に伸縮することで、左肋骨を受け流し、辛うじて貫通
を回避していたわ。
「クソガァ!!」
奴は私が追い付けない速度で後退を始める。
「逃げるな臆病者!」
私は簡潔に煽りながら、それでも追いかける。
「真っ二a…」
「同じ場所!!」
案の定、"男の尊厳を踏みにじられた"的なノリで、
逆上して突撃からの唐竹割りを繰り出してきたわ。
こんなもの、予備動作さえ見逃さなければ、最小限の
横移動から、渾身の横薙ぎに繋げられるに決まって
いるでしょ。
『バズッ……!!』
「ガアアアッッ!!」
今度は軽く内蔵に刺さったようで、これまで以上に
痛がった。
「フッ!」
「アガァ!?」
更に、打ち込んだ戦槌を引っ込める反動で、上段
足刀蹴りを顎に当て、脳を揺らして一瞬思考停止
させる。
「はああっっ!!」
「ゴォウッ!?」
続けて、踏ん張っていた右足を更に踏み込んで加速
し、次の瞬間には、左足を踏み込んでからの強化打撃
を正位置に戻った顔の額に直撃させた。
「らあっっ!!」
「グオアアアアッッ!?」
先程の一撃で、軽く地面に埋め込み、矢継ぎ早に、
中段回し蹴りで肋骨の通りを、更に深くする。
「グォアアオッ!!」
奴もこれまで経験したことの無い痛みだったの
だろう。破れかぶれになって、袈裟斬りを繰り出し
てきたわ。
「スゥゥ…………」
攻撃速度こそ"まあまあ"だったけど、その程度で
バルディ並みに隙だらけだと、本当に"避けてください"
って言っているようなものよ。
私は脚を引っ込めつつ、回転しながら限界まで身を
屈めて袈裟斬りを回避し、地面の土を利用して戦槌に
岩を纏った後、逆サイドで右足を踏み込み、
「だりゃああああっっ!!」
「ガアアアアアッッ!!」
渾身の強化岩装打撃を逆袈裟に薙ぎ上げ、逆サイド
のヒビが入った肋骨に叩き込んだわ。
『ブスッ!』
「ゴハアアッッ!!」
肋骨は奴の臓器に刺さり、明確に吐血を引き起こした。
「降参してお縄につき、罪を償いなさい。死にたい
なら、続けるけど」
これ以上は流石に命に関わる。私は一抹の望みを
かけて、奴に贖罪の問いかけをした。…………けど、
「ガフッ…………、けっ、誰がんなことするかよバーカ」
やはり。が、正しいわね。奴の脳に、"償い"の考えは
無かったわ。
「じゃあ、せめて戦士の後輩かつ、女の私が、お前に
最大の屈辱を与えて、この世に引導を渡してあげるわ」
最悪、息の根を止めてでも、この外道は再起不能に
しなければならない。それが決定した瞬間だった。
「ケケッ! お前は一撃も食らえない。辛い道のり
だぞ~~!」
奴はヘラヘラした様子で、相変わらず煽ってきた。
それは別に何とも無かったのだけど、
(にしても、コイツに一撃も当てれねーの、マジで
癪だぜ。…………ん? ありゃあロートルオヤジとガキ
じゃねーか)
私が下衆と会話なんか試みたせいで、必死で山下り
をしているハルちゃん達が、見つかってしまったわ。
(ヒャハハッ! 妙案見ーつけたーーー!!)
狙いに気づいた時には、手遅れだったわ。
最後までご覧くださりありがとうございます。




