10800m分の水圧 *主人公覚醒
能力開花! 現実の胸糞シーンがあります。
想像しやすい分、閲覧注意!
うん、知っていたよ。初めから俺は、仲間じゃ
なかったんだよね。
俺の眼前で嗤う男の姿を見据え、声を聞きながら、
心の芯から理解すると同時に、心からこの男を憎悪した。
「てなわけで、1分以上稼げなかったら、天寿を
全うした後に虐めに行くからな!」
奴は俺の視線など、気にするまでもないといった様子で
発言し、爆風を洞窟中に轟かせながら、あっという間に
逃げおおせてしまった。
(とうとう死ぬんだな…………俺。1度目ならず
2度までも外道共に殺されるのか…………)
間近に死が迫って来ているためか、レッドドラゴンの
方向を向きながら、1度目の死を思い返していた。
~回想~
「ハッ!…………え!?」
目覚めると、両手両足を縄で縛られた芋虫状態に
なっており、見知らぬ沼地にいた。
「ヨォ、目覚めたかぁ?」
「おっ、おっ、お前ぇぇぇええええっっっ!!!!」
ソイツの顔を見た瞬間、猫が蹴り飛ばされていた映像が
フラッシュバックし、無意識に睨み付けて叫んでいた。
「うるせぇぞ」
「アガッッッ!!!」
前歯を殴り折られ、黙らされた。
「まーまー、安心しろよ。猫ならここに居るぞ」
「…………ッッ!!」
別のチンピラの手には、傷だらけでぐったりとした
猫が、首をつままれて垂れ下がっていた。
「(確か大人はああやって持たれたら息が…………!)今すぐ
離せ! 窒s…」
「あいよっ」
チンピラはそう言うと、平然と猫を沼へ投げ落とした。
「ニャーッ! ニャーッ!」
泳げないのか、底無し沼なのか、猫はもがく程に
沈んでいる。
「な、何て事を!! 今すぐ助けさせろぉ!!!」
「イイヨー♪」
そう言って、俺を押さえていた奴は、ナイフを
走らせて、俺を解放した。
「今すぐ助けるぞぉぉっ!!」
俺はその他一切を無視し、猫を助けることのみを
頭に、一直線に沼へと飛び込んだ。
「「ギャッハハハハハハ!!」」
「ショウっていったか? あの少年は底無し沼に猫
を落とし、それを助ける自演をしようとして一緒に
沈みました~って事だぜ!」
「証拠品から消えてくれて助かったよ!」
チンピラ共が、俺の姿を見て笑い転げている。
「ガバババッ!! お前だけでもっ! ガボボボボッ!!
生き延びろッッ!!」
「ニャーー!! ニャーー!!」
俺はパニクりながらも猫を沼の上…………自分の手の上に
抱き上げたのだが、猫もパニックなので、暴れてしまう。
「ああっ!」
「「「アーーーッヒャッヒャッヒャ!!」」」
俺が猫を落とした姿を見て、更に笑い転げた。
「長く苦しむのは見てられない。お手伝いしようぜぇ」
「石と共に素早く落下! 地獄へゴー!」
「更なる証拠を作ってもぉ、それも一緒に地獄へゴー!」
…………ああ、なんとおぞましき事か。奴等
は笑いながら、手当たり次第落ちている石を
投げつけてきた。
「お前は…………必ず救(…………う…………ぞぉ…………!!!)」
俺は猫を庇える位置へ移動し、石から守ったのだが、
とうとう猫諸とも沼の底へと沈んでいった。
~回想終了~
1度目の人生のは、野良猫を虐待していた
世界一最悪な連中から、猫を救えなかった上に、
底無し沼に沈められて終わったのだった。
(召喚だって…………地球上の岩の真下に穴を作って
落とすとか、プールの水をかける位しか出来なかった
…………すげぇレアな召喚だけど、んなもん役に立つ
かよ!!)
やはり、この世に噛み合わない才能しか持たない
無能は、録な人生を歩めないということか。ドラゴン
がこちらを見ている。
(…………3度目も人生があるとは限らないから、ここで
思わせてほしい。君は嫌だったと思うが、俺は最初の
死の時、君が一緒に居てくれて嬉しかったよ)
最期を悟り、あの猫の零体へ、思念を送った。
しかし、雑念は次から次へと沸いてくる。
(…………くそっ! 今の俺なら、猫の真下に召喚門を
開いて救えるし、あのゴミチンピラ共だって、
沼の底に穴を開けて、汚水を高圧水流で……………
底…………海底!! 待てよ! 何故そんなことも
思い付かなかった!! あれを召喚できれば
あっっ!!!)
死と隣り合わせだからか、俺は凄まじい案を
思い付いた。このレッドドラゴンだって、いや、
魔王すら殺しかねない技だ!
脚を折られ、後はレッドドラゴンに食い殺されるのを
待つのみ。俺はこんな状況だからこそ、今まで無力だった
この技の真の力を発見できた。
(状況は、音さえ聞こえれば把握は十分! スキル :
座標変更を用いて召喚先を変更だ!)
壁を壊して進む系のモンスターを察知できるように、
不本意にも俺の五感は外道共の無茶振りによって、
獣のそれをも超えている。
(早く…………早く早く早く設定するんだ! 召喚の穴の
座標を、水深約10800mのマリアナ海溝に!!)
『グオオオオオッ!!!』
そうこうしている内に、ドラゴンの口から
炎が燃え盛る音が聞こえてきた。
「大召喚! 食らえ、海底・攻城砲!!」
レッドドラゴンの業火と1億800万パスカルを
直径5mに圧縮した鉄砲水は、殆ど同時に放たれた。
『グボアッ!?』
しかし、威力の桁は、鉄砲水の方が圧倒的だ。
業火が、バケツの水で消される蝋燭の火の様に焼失し、
レッドドラゴンの首も反対方向へと凄まじい速度で
弾き飛ばされ、頭が背中へと激突したのだ。
最後までお読みくださりありがとうございます。