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75/104

Outboxing girl is playing -One side game-

攻撃も口撃もかなり激しいです。

75話


「クソがああああああっっ!!」


 宙で後方高速回転をし、身動きが取れないカルロス

は、怒りに任せて喚き散らす。


(下衆とはいえ、相手の実力はS級相当。バフが

かかっている内に、アイツ並みの速攻で沈める!)


 対するミュールは、バルディの前傾姿勢を思い

浮かべながら、やるべきことを定めた。


「はああっっ!!」


 始めに、ミュールは乱舞のごとき振り回しで、戦槌(せんつい)

から打撃を飛ばしたり、庭の地面を叩きつけた。


「ぐおおっ!?」


 視点が目まぐるしく変化し、飛ぶ打撃の軌道も

追えないカルロスは、なす術なく被弾していく。


『ドゴッ!!!』

「ぁあ!?」


 更に、地面から半径2mはありそうな岩の槍が

生え、カルロスに直撃した。異常なタフさで怪我

こそしなかったが、非現実的な景色に(すき)(さら)した。


『『『『ガッ!!!』』』』

「グホホホァッ!!?」


 その隙を突くかのように、自身の腕くらいの太さ

の小槍が大槍の側面から生え、全身の急所を的確に

突いてきた。


「ゴアアアッ!?」


 その上、先程の連打で発生した隙に、背後に生えた

新たな大槍からも、小槍の奇襲を受け、今度は左右

からも同様の攻撃を受けて、袋叩き状態になった。


「糞があっっ!!」


 カルロスは、タフさ任せに一切の被弾を妥協し、

全方位に飛ぶ斬撃を繰り出した。


「この程度で俺sa…マゴォ!?」


 斬撃で大槍こそ切り崩したが、今度は落下中の

岩から小槍が飛び出し、自身の口を塞ぐように

直撃した。


ん"()ん"()ん"()っっ!!!!」


 この攻撃の根源たるミュールを殺すべく、真下で

棒立ちしている人影に向かって、最大火力の飛ぶ斬撃

を放った。


『ボト』

『ボト』


『バギャッ…………』


 真っ二つに別れて倒れた人影を見て、カルロスは

更に頭に血を上らせながら、噛み砕いた口内の岩を

落とした。


「(小学生の図工レベルの人形で…………(だま)しやがって

…………)(いも)(おんな)の…………分際でぇ!!」


 何故なら、ダミーの岩人形は背丈以外、ミュール

と似ても似つかない、顔の表情すらない手抜き作品

だったからだ。


 最も、これはあくまでカルロスの冷静さを極限まで

喪失させる為の処置。


音速(ソニック)落岩撃(ミーティオ)

「!?」


 頭に血が昇っていたカルロスに、突如莫大な衝撃が、

無音で襲いかかった。


『ドッゴォォォオオオオオオオン!!!!』

『ドォン!!』


 直撃と落下の轟音(ごうおん)に遅れて、何かが音を置き去りに

した衝撃波が控えめに(とどろ)いた。


「攻撃の隙など、与えないわよ」


 音を置き去りにした者は、当然ミュールだ。

カルロスが小槍の連打に翻弄(ほんろう)されている隙に、

大槍の影に回って跳躍。飛ぶ打撃経由で絶えず

小槍を繰り出し続け、自身は気配を消すことで、

カルロスに気づかれることなく真上を陣取った。


 そして、カルロスが切り崩した大槍を足場に、

超音速で落下することで、音で気づかれるリスク

を克服し、岩を纏った会心の戦槌叩きつけを頭に

直撃させたのだ。


「フンッ!!」

『ドォン!!』


 岩に魔力を込めて、音速で飛ばす。飛ぶ強化打撃

とでもいえそうな追撃を行い、側に落ちてきた岩を

蹴って、カルロス死角へと移動する。


「ガアアッッ!! クソ芋o…グッ!?」


 地面へ叩きつけられたカルロスは、追撃の音速落岩

も頭に受け、ミュールを見つけるべく上を見上げたが、

その瞬間に地面から射出された音速の石で(あご)を殴られた。


「そこかぁ!! 後ろk…かはぁ!?」


 正面からの集中砲火を受け、カウンター気味に

飛ぶ斬撃を放てば、今度は背後からの集中砲火が

始まる。そして背後に攻撃しようとすれば、全方位

から尖った岩々が、音を置き去りにしながら喉に

直撃する。


「グ…………!! オオ……………………」


 過度の怒りに、度重なる頭部への打撃、激しく

動いた所への呼吸封じ。いかに最高峰タンク並みの

タフさが売りのカルロスといえど、失神寸前に至る

事が、無理な話とはいえないだろう。


「はあああああっっ…………、だりゃああああっっっ!!!」

『バゴォォォオオオオオオオオン!!!!!』


 ミュールは、カルロスが地面に倒れ込み、半秒

動かなくなったタイミングで、直線速度は超音速。

更に空気を弾き飛ばす程の縦回転を得た状況で、

渾身の叩きつけ攻撃を繰り出した。


『ゴギ…………!!』


 命中した背中から、何かが軋む音が聞こえた。


「おおおおおおおおおおおおおっっ!!」


 しかし、ミュールはその腕を止めることはなく、

何度も戦槌を打ちつけ始めた。


「お前は! 無辜の民や! 冒険者の後輩たち! そして!

誰にも迷惑かけずに! 今日の試練を乗り越えようと

した! ハルちゃん達を! 傷つけて!! っ何が楽しい

んだぁっっ!!!!」


 更に、かつて自身が襲われかけたことや、フレイに

見せられた、裏付けされた悪行の証拠、そして今正に

その目で見た、卑劣極まりない蛮行を想起しながら、

怒りを吐露して戦槌を全身に打ちつけ続けた。


「…………ヒッ…………」

「!!」


 滅多打ちにされている、カルロスが発した僅かな

"嘲笑"。ミュールはそれを、聞き逃さなかった。


「らっっ!!」

「何が可笑しい!!!」


 振り下ろし時の隙を狙った足首掴みは、事前予測

による飛び退きで、回避しつつ、上を通り過ぎ様に

真下に戦槌を落とすように突く攻撃に繋げた。


「小賢s…デュブッ!?」


 更に、カルロスは振り向き様に背後から組みつき、

チョークスリーパーに繋げようとしたが、丁度

一回転半したミュールの戦槌が鳩尾に直撃し、後ろ

に大きく飛ばされた。


「小賢しいのもお前だろ!!」

「あぁ?」


 2回転目で大地に叩きつけた事で、ミュールと

カルロスの間に岩壁が出来、互いに見えなくなった。


「そk…!! うおおおっっ!?」


 カルロスは直前にミュールが浮いていた位置を参考

に、飛ぶ斬撃を放とうとしたが、股下から勢い良く

飛び出てきた岩の槍を、思わず全力で飛び避けた。


「テメェ!! どこ狙ってんだボケカスゥ!!!!」


 男の尊厳ともいえる金的を、躊躇なく破壊しようと

したミュールに、滅多打ちの直前以上に怒り、激昂

した。


「婦女暴行常習犯の分際で!! いつまでもぶら下げ

られると思うな!! お前の骨の髄まで女の恐怖を覚え

込ませて! 女を見ただけで動けなくなるようにして

やる!!!」


「ハァ…………ハァ…………(な、何だ…………!?)」


 カルロスは、前世を含めて生まれて始めての感覚に

襲われた。


(俺様が…………女に怯えて…………いる……………だと??)


 自身にとって、喰い物でしかなかった存在。それが、

現実として自身の尊厳を、物理的に破壊しかけている。


『パァン!!』

「ぬぅ!!」


 音よりも速く、周囲の空気ごと自身の尊厳を裂こう

とする土槍を、どうにか手のひらで受け止める


『『『ゴガッ!!』』』

「グエエッッ!?」


 しかし、尊厳を守り抜く代償として、非常に大きな

隙が出来る為、そこへ3つの石が超音速で直撃した。


「死ねゴラァ!!」


 ほぼ反射的に、完全なる山勘で、壁の向こうの

ミュールへと飛ぶ斬撃を放った。


「見えねぇのはテメェm…ッツッ!?」


 だが、その斬撃は、自身が見えない所で次の攻撃の

鋭さ増強に用いられたらしく、崩れだした壁から、

いきなり過去最速の土槍が飛び出てきた。


 咄嗟に膝を曲げ、背を反らせていなければ、今頃は

両目を貫かれていた事だろう。


『ドゴォッ!!!』

「はっ! その位置からは狙えねぇからなぁ!!」


 背中に、音を置き去りにした石が直撃したが、金的

を潰したかったであろうミュールの精神を揺さぶろう

と、喚き始めた。


「それに、テメェの攻撃は全く通じてね~んだよ!

所詮は女、力の程度が知れてますね~~wwwww

グブッ!?」


 カルロスの言うことが、全て外れている訳ではなく、

ミュールがここまで攻撃を当て続けたにも関わらず、

深手といえる程のダメージは、"一切"受けていなかった。


 現在進行形で岩や飛ぶ打撃に殴られながらも、走れて

いる事が全てを物語っている。


「必死に両手で金的を抑えて、内股で走っている分際

で、良く啖呵を切れたわね! お前は全世界の男の恥よ!」


「妄想オツwwwww」


 カルロスは、ミュールが見えてないことをいいこと

に、ハッタリをかましたが、


(コイツ…………透視能力でもあるのか…………!? 泥酔

させたあの日も、謎のパッシブスキルがあったし

…………、底が見えねぇ!!)


 事実を突かれた事に、内心で大焦りしており、

特大ブーメランすら、突き刺さっていた。


 そして、金的やその他の急所のみを死守しながら、

遂に壁の向こうへと躍り出た。


「左手ダサ!! プー! クスクスwwwww」


 その瞬間、ミュールはここぞとばかりに、カルロス

の滑稽な姿を嘲笑した。


「テェンメエエエエエエエエッッッ!!!!!」


 またもや、カルロスの怒りは"記録更新"し、"金的"

以外に致命的な隙を作った。


「愚鈍!!」

「ゴフゥ!?」


 ミュールは最高速度で間合いを半分詰め、その勢い

を乗せた最速の突きから、打撃を飛ばしてカルロス

の腹に当てた。


「低劣!!」

「っつ!!」


 次に、体1つ分間合いを詰めつつ、左手で防がれる

と分かっていながら、土槍を飛ばして金的攻撃をした。


「腰抜け!!」

「ホザケェエェエ!!」


 それによって出来た大きな隙を突き、回転しながら

飛ぶ打撃・変化球を連続で当てた。


「クソがあっっ!!」


 タフさ任せに猛撃をものともしないカルロスは、

回転終わりに隙を作るであろうミュールへと、

全速力で接近し始めた。


「鈍重が」

「!?」


 だが、ミュールは戦槌の運動エネルギーと、自身の

足捌きを駆使して、動きの緩急を大幅に作り出し、

ほんの一瞬だけ数人の影に分かれたかのような挙動

を見せた。


「フンッ!!」

「グオオオオッッ!!」

『バギィ!!』


 次の瞬間、ミュールの戦槌はカルロスの脇腹に

めり込み、ヒビが入っていた肋骨の一本を、完全に

折った。


「ウガァ!!」

「愚図が」

「ゴフッ!?」


 吹き飛びながら放った腰の高さの飛ぶ斬撃も、

最小限の跳躍でかわされた挙げ句、振りかぶった

戦槌の背面に当てられた事で、飛ぶ打撃の威力向上

に利用され、脳天を後ろに弾かれる結果となった。


「クソがぁ!! 調子に乗りやがってぇぇえええ!!

!!」


 その後も、自身の死角の外から数発の打撃を

当てられ、バフ込みとはいえ、格下相手に手も足も

出ない現実に、屈辱を吐露するしかなかった。


「!?」


 壁際で踏みとどまり、顎を引いたカルロスは、

ミュールが持っているはずの戦槌が見えない

ことに戸惑った。


「グボッ!?」


 理由は、ミュールが土ごと掬い上げるような挙動で

戦槌を振り抜いていたからであるが、その際に放った

飛ぶ打撃の先端には、多量の土塊が付着していた。


「クソアマァ!!!!」


 土を払い、激昂しながら目の前の人影に両手斧を

振りかぶったが、振るわれることはなかった。


「な" あ" あ" (再三、クソクオリティー図工だとぉ!!?)」


 二度、同じ手で、カルロスはミュールを見失った。


「終わりだぁぁぁああ!!!!」


 そして、柱を足場に、最速で最高火力の叩きつけを

頭に食らうという、同様の失態を、またもや犯したの

だった。


「立つな立つな立つな立つな立つなぁぁああ!!」


 ミュールは、今度こそこの外道を再起不能にすべく、

頑丈さを担保にバルディだと10回死ぬレベルで

頭蓋骨に連打を繰り返した。


 今回は戦槌に硬岩が付着している為、一撃の重みが

増している。…………だが、


「るっせぇんだよぉ!!!」


 それでも、カルロスは起き上がり、ローキックを

繰り出してきた。


「しゃ」

「!?」


 ミュールは、カルロスが予備動作をした時点で

飛び上がっており、ハンマーを振りかぶり、背を

反らしながら蹴り上げを顎に当てていた。


『ガッ!!!』


 更に、カルロスの蹴りが戦槌に当たったことで、

戦槌が急加速。それと時を同じくして、全身の筋肉

を収縮させたことで、戦槌は更に加速した。


 結果、


「べるなぁ!!」

「グゥウッッ!!」

『ビキビキィ…………!!』


 戦槌は自身の攻撃力も上乗せして、カルロスの

頭蓋骨に直撃した。そして遂に、頭蓋骨にヒビが

入った。


「…………へっははっ」

「!」


 だが、カルロスは軽く笑い声を上げて、ミュールに

見下した笑みを浮かべた。その間、彼女は警戒を続ける。


「こんだけやっても、お前は軽度の骨折しか与え

られねーんだなぁ…………」


 非力な女に、俺を倒せるわけがない。言外に、

そう言っていた。


「人類の希望とか言われている分際で、格下の

芋女に一撃も与えられなくて、恥ずかしくないの?」


 一方、ミュールも引かずに言い返し、痛い点を

突いた。


 しかし、


(ジョセフのバフが、時間切れになった…………!!)


 これまでワンサイドゲームに持ってこれた要因

である、身体能力のバフが切れてしまった。


(それに、バルディなら加勢に来ていていい時間よ。

お父さん達を送り届ける事を優先したのなら、良い

のだけど…………)


 自己主張が激しい一方、任務等への取り組みは、

自らに匹敵する誠実さのバルディが、まだ来ない。


 この事実は、ミュールの精神に暗雲となって

立ち込めていた。


~最前線~


「い、生きてるの…………!?」


「どうすれば、こんな内出血が起きるのよ…………?」


「ディー君! 聞こえる!?」


 身体も、castle製装備もボロボロになったビキニ戦士

3人。その眼前には、内出血で全身が赤黒くなった

バルディが、横たわっていた。

最後までご覧下さりありがとうございます。

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