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歴史的快挙

72話


(うおおおおおおおっっっ!!!!)


 凪となった辺境地帯。その静けさとは裏腹に今、

頑強極まりないレッドドラゴンの腹部が、片方が

欠けた低品質の両手斧によって、下から上へと

一文字に切り裂かれている。


『グオオオオオオオオオオッッ!!?』 


 刹那、厄災の咆哮が発せられるも、その殆どが、

登り詰めてくる両手斧に吸収されていき、斬撃の

通りが更に増していく。


『グオオオッッッ!!!!!』


 だが、百戦錬磨という言葉で表せない数の戦闘を

経験した厄災は、斬撃が胸部に達した段階で我に返り、

頭蓋骨を守るために、全力で首を逸らせた。


(今のを避けられなかった時点で、テメーは大ケガを

免れねぇ! オラよ、衝撃(インパクト)爆散(エクスプロージョン)!!)


 厄災に挑む戦士・バルディは、逆鱗(げきりん)を蹴って離脱

する最中、引き抜く両手斧に蓄積した衝撃波を、全て

解放した。


『バグォォォオオオオオン!!!!』

『ゲギャアアアアアアッッッッッ!!!!』


 刹那にも満たない時間にて、巨岩を粉砕する程

の振動エネルギーが、厄災の全身を駆け巡った。

細胞、臓器、筋肉、骨。ありとあらゆる肉体に、

発生源に近い部位ほど大きなダメージが入った。


 だが、この衝撃波は、彼にも牙を向いた。


「ゴプァッッ!?」


 一文字の傷口の末端から吹き出た衝撃波に打たれ、

更には鱗に一瞬だけ接地した両足からも、かなりの

振動が伝わり、主に全身の内出血を中心とした怪我を

負ってしまった。


「ガオオッ!?」


 いきなりこちらへ吹き飛んできたバルディを、

ティグが間一髪で受け止めた。


「バルディ!」

「酷い内出血だ!」

「ポーションドコダ!?」


 ヒッデェ有り様の俺を見て、全員が心配してやがる。

もっと強くならねぇとな…………。


「ゼェ…………、ゼェ…………。ケッ、んなもん、掠り傷

相当だよ。何はともあれ、約束は果たしたぜ」


 俺が必殺技を打つ為に、コイツらは(いのち)()けで厄災の

足止めをしたんだ。なのに、攻撃を外すなんてヘマを

して、英雄(ヒーロー)を名乗れる訳がねーよ。


 …………しかし、目が痛ぇ上に(かす)んでる気がするな。

ちっと損傷しちまったか?


「つーk…ッまだ終わってねぇ!!」

『ズン!!』


 霞む目で、腹カッ(さば)かれた野郎が踏み込む姿を

見ちまった。ティグに身体預けてる場合じゃねぇ!!

俺とミュールが同時に構えた。さて、こっからどう

攻略しようか…………。さっきの作戦は、MPがほぼ空

だから無理だな。MPを回復しようにも、ポーションを

飲んでいるところに爪が落ちてきて、避けようとして

むせて殺られるとか、冗談じゃねぇぜ。


 …………ん? ミュールが何か言ってやがる…………?


「首を狙うわよ!」


 声が聞こえる寸前に、アイツの戦槌(せんつい)から飛ぶ打撃の

変化球が飛んだ。


『グオオッッ!?』


 そして、打撃が野郎に直撃した瞬間、野郎は痛みに

(もだ)え苦しみやがったんだ。


「やっぱり効いたわね。あんたが最後に放った衝撃波

のお陰で、レッドドラゴンの防御力が下がったのよ」


「斬り込んで、内部で爆発、エゲツナイ」


「肉がズタズタになって、ダメージが通りやすいんだ。

本当に(みょう)(あん)だったよ! バルディ君」


 どうやら、野郎の首回りの肉体が(もろ)くなり、打撃が

通じるようになったらしい。そうと決まりゃあ、やる

ことは1つ。


「うっしゃあ! だったら(たた)()けて、伝説を作るぞぉ!!!」


 連続攻撃で仕留めきるまでだ!


『グオオオオオオッッッ!!』


 俺の突撃に合わせ、野郎が渾身の爪攻撃を放って

きた。…………分かるぜ、事すれば俺らに殺られかねない

この状況に、(あせ)っているのがよぉ!


「オラァ!!!」

『グオアアアアッッッ!!!』


 野郎の爪を完璧に見切った俺は、少し左に逸れて

から跳ぶことで、紙一重で回避しつつ、鳩尾に跳び

蹴りを炸裂させた。


『ミューちゃん!』

岩石(ロックス)機関砲(ガトリング)!!」


 野郎が火力王の俺様に気を取られている隙に、

女達(アイツら)が大量の硬岩(こうがん)を連発した。


「ゲイル!」

『ガルルルァッッ!!』


 そして、無数の硬岩に気を取られていると、今度は

二虎(ティグとゲイル)の拳が直撃し、


「どこ見てやがるっっ!!」


 体勢を立て直した俺の拳も炸裂するぜ!


『グオオオオオオッッッ!!』

「うわっ!?」


 野郎の尻尾薙ぎ払いに、ティグの反応が遅れた。

つーわけで、


「気ぃつけな」

「た、助かった!!」


 真っ赤に染まった脚を動かし、俺様が見事に助けて

やったのさ。


「1発かましてやれぇ!!」

「ガルルルォォッッ!!!」

『グギャアアアアアッッ!!』


 更に、野郎の目線がこちらに戻る前に、ティグを

ジャイロ・フォーシームの豪速球で投げ飛ばし、

ズタズタの傷口を更に(えぐ)り広げたぜ。


『グオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』


 と、ここで、野郎がミュールの方へと最大火力の

火炎を吐き出した。余程硬岩が厄介だったと見えるぜ。


(ロック)浮遊(フロート)!』

「助かります!」


 だが、ヴィヴィアンが勢いよく浮かせた地面から

ジャンプすることで、間一髪避けていたぜ。幽霊(ヴィヴィアン)

燃えねぇから問題ナシ!


「フッ!」

「おうよ!」


 野郎が炎を俺の方へと移そうとしたのだが、高々と

飛んでいくミュールが飛ばした打撃を蹴ることで、

回避に成功した。


『思い切りやりな!』

「あたぼうよ!!」


 更に、その先に浮いた岩を蹴り、野郎に蹴りを

お見舞いしてやった。


『グオオオオオッッ!!』


 そして開いた大口に、ゲイルが跳躍で向かう。


柴犬(シヴァ)分離(セパレーション)!」


 更に、俺は見たぜ。合体してゲイルの一部となって

いた柴犬のシヴァが、分離して加速しながら、勢いよく

野郎の食道へと突っ込んだのをよ。


怨霊(グリフ)合体(ドッキング)2人(ダブル)半々(ハーフ)!!」


 その直後、リョウの呪文によって、他の奴等が

ヴィヴィアンとシヴァに、半分ずつ合体した。


『グオオオオオッッ!?』


 直後、野郎が訳が分からねぇといった様子で、腹を

押さえて苦しみ始めた。シヴァが胃を噛んだのだろう

な。


「俺達は外側からやるぞぉ!!」

「オウ!!」


 そして、俺とティグは、引き続き外部から殴り続け

て、注意を集めた。


 全ては、とどめに繋げるために。


究極(アルティメット)岩石付与(エンチャントロックス)!!』

『!!』


 野郎は、声高らかに大詠唱したヴィヴィアンの方を

向いたが、何も起きていない。ヴィヴィアンはあくま

で"サポート"しただけだからな。


 じゃあ、サポートを受けた奴は誰かって?


隕石(メテオ)

『!?』


 気配を消しつつ、超高速回転しながら落下していた

ミュールだ。アイツの戦槌に、突如半径10mの巨大硬岩

(まと)わりつき、野郎が何も出来ない状態で、


落撃(ストライク)!!」

『ズガァァァアアアアアアン!!!!!!』


 直撃したのさ。


『…………グ…………オ……………………!!』


 厄災の名は伊達(だて)じゃなかった。それは、全身ボロボロ

の状態でアレを食らっても、身体は原型を保っていた事

と、"死ぬ直前に(うめ)き声を上げれた事"が、物語っていた。


 だがよぉ…………、


「ゼエッ! ゼエッ!…………あ…………」


「ぼ、僕…………達…………」


「ハァ…………ハァ…………うんっ!」


「遂に、野郎の首を取ったぞおおおおおおおっっ!!

!!! オラァーーーーーーー!!!!!」


 厄災を、ぶっ飛ばしたぜぇ!!!


「B級以下の冒険者だけで厄災を倒すなんてっ!」


「歴史的快挙だよ!!」


「俺…………未だに信じられない…………」


「何にせよ、俺様の実家を守り抜いたことは、

褒めてやるぜぇ! お、おおおおおおっっ!!」


 んでもってぇ! こんな"格上"をぶっ飛ばせば、

半端ねぇ経験値が、全身に潜り込んで来るって訳

よぉ!!


「最ッッッ高だぜぇ!!!!!」


 俺は、過去1番に気分が高揚(こうよう)していた。…………守って

いた実家に、今正に驚異が迫っているとも知らずに。


~ラッシュ家~


「アイツめ、想像以上に成長しやがって…………」


 父・ポールは、危機が過ぎ去ったことを確認し、

斧を下ろした。


「パパ…………もしかして、お兄ちゃん達が怖い

モンスターを退治したの?」


 そこに、妹のハルがやってきた。


「おう、確実に倒しおったぞ。俺の出る幕なぞ

なかったわ」


「すっごーーーい! さっすが兄ちゃん達!!」


 兄達の活躍に喜ぶ親子、そこへ…………、


「ん? お前、何故持ち場を離れてここに来ている?」


 兄と同じく、両手斧を得物にした大男が歩いて

きた。


「おお、まさかあのクソガキの親が、こんな有名人

だったとはなぁ。お前、元祖S級冒険者のポール・

A・ラッシュだな? 戦士の座学書で見た顔まんまだ」


 大男・カルロス・ストライカーは、有名人の姿を

見て、どす黒い笑みを浮かべた。


(し・か・も、後ろには妹か~~。ぶっ壊したら、

あのクソガキ、どんな面するのかな~~??)


 その胸の内は、顔の比にならないレベルでどす黒

かった。

最後まで御覧くださりありがとうございます。

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